玄海原発の再稼働、佐賀知事が容認姿勢
「日本経済新聞」によりますと、
「九州電力玄海原子力発電所2、3号機の再稼働問題で、
海江田万里経済産業相は29日、佐賀県庁を訪れ、
再稼働を認めるよう古川康知事に要請しました。
古川知事は原発の安全性について経産相から説明を受けた後、
「疑問に思っていた問題点がクリアできた」と述べ、
再稼働を認める姿勢を見せました。ただ
最終的な決断は「県議会のやり取りを踏まえて判断したい」としました。
古川知事は菅直人首相が再稼働問題で明確な姿勢を示していないと指摘。
「佐賀に来ていただけるか分からないが、
何らかの形でお考えを確かめたい」と首相が見解を明らかにするよう求めました。
福島第1原発の事故後、
停止中の原発が立地する自治体は運転再開を認めていない。
佐賀県が容認に転じれば、
福井県など他の自治体の判断にも影響を与えそうだ。」とのことです。
★ 『急接近:飯田哲也さん 原発事故と原子力ムラの関係をどう見る?』
「毎日新聞“インタビュー急接近”」によりますと、
<KEY PERSON INTERVIEW>
「東京電力福島第1原発の事故後、
安全を唱えてきた研究者らは「想定外」と繰り返し、
無責任ぶりに驚きが広がった。
「原子力ムラ(村)」と命名したNPO法人「環境エネルギー政策研究所」の
飯田哲也所長に事故の構造的原因やエネルギー政策について聞きました。
◇発言封じ込め安全軽視--環境エネルギー政策研究所所長・飯田哲也さん(52)
--国や東電は事故原因の津波被害や長期の全電源喪失を
なぜ想定しなかったのですか。
◆ 想定しなかったのではなく、
「想定したらまずい」と考えたのでしょう。
ムラの人々は原子力推進に支障がないよう事実の方を曲げてきました。
一見緻密に見えても、大きく見ると間が抜けているから、
いざ事故が起きれば「想定外」を連発せざるを得ない。
想定した範囲が狭すぎただけです。
--ムラには都合の悪いことを想定しない雰囲気があるのですか。
◆ 原子力は事故のリスクもあり、
絶対に正しいと言えるものではありません。しかし
内部では自由な発言を封じ込める重苦しい空気があります。
電力中央研究所で勤務していたころ、
使用済み核燃料の「貯蔵」という言葉を
「柔軟的管理」と言い換えさせられたことがあります。
使用済み核燃料を全量再処理する「核燃料サイクル」が日本の国策。
貯蔵だと全量再処理と矛盾するように受け取られるから都合が悪かったのでしょう。
原子力ムラでは不都合な言葉をよく言い換えます。
「これは一生の仕事ではない」と感じました。
--そもそも日本の原子力技術は本当に高いのでしょうか。
◆ 日本が原子力を導入して約50年もたちますが、
ドイツやスウェーデンと違って
日本独自型の原発は今もできていないし、
「もんじゅ」(高速増殖原型炉、福井県敦賀市)の
事故(1995年12月)で分かるように
国産の独自技術はことごとくつまずいてきました。
今回の事故でも、発生した汚染水処理や、
がれきの撤去などに使うロボットなども海外のものばかり。
日本独自の技術はほとんどありません。
私はよく日本の原子力を映画のセットに例えます。
表面上はとても立派で、安全管理も徹底していると世界に触れ込んでいる。
ところが裏側を見ると、ベニヤ板でできたハリボテです。
--それを聞いていると、安全性にも不安を感じます。
◆ 今回の事故の直接的原因が津波とすれば、
構造的原因は安全を軽視してきた原子力ムラと国のあり方でしょう。
私は鉄鋼メーカーに勤務していた当時、
国の安全審査を受けたことがあります。
技術的なデータをそろえて審査の書類を作るのですが、
通産省(当時)の官僚から聞かれたのは表面的な字面ばかり。
市民団体やマスコミから突っ込まれないよう形式的な安全を整える発想です。
一方で、地震や津波、金属構造などの最新知見をふまえて、実質的な安全を考える文化はありません。
--今後の事故処理を進めるために何が必要でしょうか。
◆ まず事故の検証を通してこれまで
原子力を推進してきた体制の責任を問う必要があります。また
電気料金から天引きされ、
もんじゅの維持など原子力に投入されている予算は
事故処理に充てるべきです。
核燃料サイクルの費用として
約3兆円もの埋蔵金がありますが、
これも事故処理に充てるべきです。
核燃料サイクルは元々不必要で、実現性も乏しい事業です。
◇「自然エネ」へかじ切れ
--一方、事故影響で夏の電力需給が問題になっています。
◆ 東京電力管内であっても供給は問題ないでしょう。さらに、
電力会社は逼迫(ひっぱく)時に大口事業者に対して使用削減を要請できる
「需給調整契約」があり、すべての大口事業者に適用すれば
十分に需要調整ができます。
原発停止分の電力は、一時的に天然ガスで賄いますが、
省エネ分も織り込めば、
単価は上がっても総エネルギーコストを下げられるでしょう。
--中長期的に見て、日本のエネルギー政策をどう変えるべきなのでしょうか。
◆ そもそも原発を続けていくなら
安全性強化のため必ずコストは上昇します。
廃炉にも莫大(ばくだい)な費用がかかります。
日本の原発は老朽化が進んでおり、今後は段階的な廃止が進みます。ですから
新増設をやめるだけで自然に原発の設備容量は減少していきます。
原発に代わるエネルギー源は自然エネルギーしかありません。
ドイツでは電力に占める自然エネルギーの比率が
10年前の6%から17%に高まり、今後10年で約40%に高める計画です。
日本も同様に現在約10%(大規模水力を含む)の比率を
今後10年で30%にすべきです。
世界全体で見れば、風力発電は毎年30%ずつ市場を拡大し、
昨年には原子力発電の半分に当たる約2億キロワットに達しました。
これに太陽光、バイオマスなどの発電容量を加えると
既に原子力を追い越しています。一方、
日本はこの10年間、「原子力ルネサンス」などとPRし、
自然エネルギーを抑えこんでしまった。
太陽光発電は毎年約10%ずつ安くなっており、
普及が加速すればさらに安くなります。
自然エネルギーへ大きくかじを切ることを真剣に考えるべきでしょう。
政策提言は環境エネルギー政策研究所のホームページ
(http://www.isep.or.jp/)に掲載しています。
==============
■ことば
◇原子力ムラ
原子力に関わる技術者・研究者らの業界体質を示した造語。
内部、他分野からを問わず、
原子力推進の方針を批判しにくい雰囲気が強いとされ、
閉鎖性をムラ社会に例えた。
官民にまたがるため規制が機能せず、
隠蔽(いんぺい)や改ざんなど
スキャンダルが起きる原因とも指摘される。
==============
■人物略歴
◇飯田哲也(いいだ・てつなり)
京都大工学部(原子核工学)卒。東京大大学院博士課程単位取得満期退学。
大手鉄鋼メーカーや電力中央研究所で核廃棄物を研究。
総合資源エネルギー調査会委員などを歴任し、現職。」とのことです。
★★ 7月18日いわき市にて
“ハイロアクション・オープニングイベント”が開催されます。
飯田哲也さん、前福島県知事の佐藤栄佐久さん、
澤井正子さんらが出演されます。
本当は3月26・27日に開催予定のはずでした 。
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「日本経済新聞」によりますと、
「九州電力玄海原子力発電所2、3号機の再稼働問題で、
海江田万里経済産業相は29日、佐賀県庁を訪れ、
再稼働を認めるよう古川康知事に要請しました。
古川知事は原発の安全性について経産相から説明を受けた後、
「疑問に思っていた問題点がクリアできた」と述べ、
再稼働を認める姿勢を見せました。ただ
最終的な決断は「県議会のやり取りを踏まえて判断したい」としました。
古川知事は菅直人首相が再稼働問題で明確な姿勢を示していないと指摘。
「佐賀に来ていただけるか分からないが、
何らかの形でお考えを確かめたい」と首相が見解を明らかにするよう求めました。
福島第1原発の事故後、
停止中の原発が立地する自治体は運転再開を認めていない。
佐賀県が容認に転じれば、
福井県など他の自治体の判断にも影響を与えそうだ。」とのことです。
★ 『急接近:飯田哲也さん 原発事故と原子力ムラの関係をどう見る?』
「毎日新聞“インタビュー急接近”」によりますと、
<KEY PERSON INTERVIEW>
「東京電力福島第1原発の事故後、
安全を唱えてきた研究者らは「想定外」と繰り返し、
無責任ぶりに驚きが広がった。
「原子力ムラ(村)」と命名したNPO法人「環境エネルギー政策研究所」の
飯田哲也所長に事故の構造的原因やエネルギー政策について聞きました。
◇発言封じ込め安全軽視--環境エネルギー政策研究所所長・飯田哲也さん(52)
--国や東電は事故原因の津波被害や長期の全電源喪失を
なぜ想定しなかったのですか。
◆ 想定しなかったのではなく、
「想定したらまずい」と考えたのでしょう。
ムラの人々は原子力推進に支障がないよう事実の方を曲げてきました。
一見緻密に見えても、大きく見ると間が抜けているから、
いざ事故が起きれば「想定外」を連発せざるを得ない。
想定した範囲が狭すぎただけです。
--ムラには都合の悪いことを想定しない雰囲気があるのですか。
◆ 原子力は事故のリスクもあり、
絶対に正しいと言えるものではありません。しかし
内部では自由な発言を封じ込める重苦しい空気があります。
電力中央研究所で勤務していたころ、
使用済み核燃料の「貯蔵」という言葉を
「柔軟的管理」と言い換えさせられたことがあります。
使用済み核燃料を全量再処理する「核燃料サイクル」が日本の国策。
貯蔵だと全量再処理と矛盾するように受け取られるから都合が悪かったのでしょう。
原子力ムラでは不都合な言葉をよく言い換えます。
「これは一生の仕事ではない」と感じました。
--そもそも日本の原子力技術は本当に高いのでしょうか。
◆ 日本が原子力を導入して約50年もたちますが、
ドイツやスウェーデンと違って
日本独自型の原発は今もできていないし、
「もんじゅ」(高速増殖原型炉、福井県敦賀市)の
事故(1995年12月)で分かるように
国産の独自技術はことごとくつまずいてきました。
今回の事故でも、発生した汚染水処理や、
がれきの撤去などに使うロボットなども海外のものばかり。
日本独自の技術はほとんどありません。
私はよく日本の原子力を映画のセットに例えます。
表面上はとても立派で、安全管理も徹底していると世界に触れ込んでいる。
ところが裏側を見ると、ベニヤ板でできたハリボテです。
--それを聞いていると、安全性にも不安を感じます。
◆ 今回の事故の直接的原因が津波とすれば、
構造的原因は安全を軽視してきた原子力ムラと国のあり方でしょう。
私は鉄鋼メーカーに勤務していた当時、
国の安全審査を受けたことがあります。
技術的なデータをそろえて審査の書類を作るのですが、
通産省(当時)の官僚から聞かれたのは表面的な字面ばかり。
市民団体やマスコミから突っ込まれないよう形式的な安全を整える発想です。
一方で、地震や津波、金属構造などの最新知見をふまえて、実質的な安全を考える文化はありません。
--今後の事故処理を進めるために何が必要でしょうか。
◆ まず事故の検証を通してこれまで
原子力を推進してきた体制の責任を問う必要があります。また
電気料金から天引きされ、
もんじゅの維持など原子力に投入されている予算は
事故処理に充てるべきです。
核燃料サイクルの費用として
約3兆円もの埋蔵金がありますが、
これも事故処理に充てるべきです。
核燃料サイクルは元々不必要で、実現性も乏しい事業です。
◇「自然エネ」へかじ切れ
--一方、事故影響で夏の電力需給が問題になっています。
◆ 東京電力管内であっても供給は問題ないでしょう。さらに、
電力会社は逼迫(ひっぱく)時に大口事業者に対して使用削減を要請できる
「需給調整契約」があり、すべての大口事業者に適用すれば
十分に需要調整ができます。
原発停止分の電力は、一時的に天然ガスで賄いますが、
省エネ分も織り込めば、
単価は上がっても総エネルギーコストを下げられるでしょう。
--中長期的に見て、日本のエネルギー政策をどう変えるべきなのでしょうか。
◆ そもそも原発を続けていくなら
安全性強化のため必ずコストは上昇します。
廃炉にも莫大(ばくだい)な費用がかかります。
日本の原発は老朽化が進んでおり、今後は段階的な廃止が進みます。ですから
新増設をやめるだけで自然に原発の設備容量は減少していきます。
原発に代わるエネルギー源は自然エネルギーしかありません。
ドイツでは電力に占める自然エネルギーの比率が
10年前の6%から17%に高まり、今後10年で約40%に高める計画です。
日本も同様に現在約10%(大規模水力を含む)の比率を
今後10年で30%にすべきです。
世界全体で見れば、風力発電は毎年30%ずつ市場を拡大し、
昨年には原子力発電の半分に当たる約2億キロワットに達しました。
これに太陽光、バイオマスなどの発電容量を加えると
既に原子力を追い越しています。一方、
日本はこの10年間、「原子力ルネサンス」などとPRし、
自然エネルギーを抑えこんでしまった。
太陽光発電は毎年約10%ずつ安くなっており、
普及が加速すればさらに安くなります。
自然エネルギーへ大きくかじを切ることを真剣に考えるべきでしょう。
政策提言は環境エネルギー政策研究所のホームページ
(http://www.isep.or.jp/)に掲載しています。
==============
■ことば
◇原子力ムラ
原子力に関わる技術者・研究者らの業界体質を示した造語。
内部、他分野からを問わず、
原子力推進の方針を批判しにくい雰囲気が強いとされ、
閉鎖性をムラ社会に例えた。
官民にまたがるため規制が機能せず、
隠蔽(いんぺい)や改ざんなど
スキャンダルが起きる原因とも指摘される。
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■人物略歴
◇飯田哲也(いいだ・てつなり)
京都大工学部(原子核工学)卒。東京大大学院博士課程単位取得満期退学。
大手鉄鋼メーカーや電力中央研究所で核廃棄物を研究。
総合資源エネルギー調査会委員などを歴任し、現職。」とのことです。
★★ 7月18日いわき市にて
“ハイロアクション・オープニングイベント”が開催されます。
飯田哲也さん、前福島県知事の佐藤栄佐久さん、
澤井正子さんらが出演されます。
本当は3月26・27日に開催予定のはずでした 。
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