ワイルド・ジャンボリー

なまけもののおぼえがき。


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女性監督による自主製作の新作短篇映画の上映企画「桃まつり」が一年の充電期間を経て再始動。今年は「すき」をテーマに各3本×3プログラムで計9本を上映。以下、各作品についてのメモ。カッコ内は監督名。

1.『帰り道』(竹本直美)
監督は前二回の桃まつりで『地蔵ノ蔵』『迷い家』と、柳田國男的な伝承物語をモチーフにした作品を発表したひと。今回はアプローチを変えているが、郷愁がベースとなっているのは共通している。Uターンして故郷の土を踏んだヒロインは幼い日に出会った老人のことを思いだす。暮れなずむ都会で放心したように虚ろな表情だった彼女が、故郷の明るい川面に佇んだとき、穏やかな顔になっている。中・長篇の導入部としてみたら秀逸だが、独立した短篇としては肩透かしの気分も。監督補に榎本敏郎。

2.『フィガロの告白』(天野千尋)
中学生男子の妄想の果てのコクり大会の顛末。全篇手持ちキャメラでヴィヴィッドな表情や仕種をねらうが、中学生男子という世界でいちばんバカな種族を演じるには、ジャニ予備軍みたいな少年たちはボンクラ度が足りない。サゲの着地はおみごとでした。

3.『the place named』(小森はるか)
まったく関連のないふたつの場所に生きる人びとが、ソートン・ワイルダーの戯曲『わが町』のことばを媒介に、つながらないようでつながっている。作者が描く世界をじゅうぶん把握したうえで、役者とともにつくり上げてゆくエチュード的な作風は新鮮だが、余白の多い作品はもうひとつわからなかった。

4.『春まで十日間』(ステファニー・コルク)
桃まつり史上初、海外から参戦。3.11の震災後、アムステルダムで働く日本人女性が日本にいる母親と連絡がつかず、繰り返し電話をかける。留守番電話に何度も何度もメッセージを残す彼女のことばに、不安と肉親への愛情がにじむ。

5.『口腔盗聴器』(上原三由樹)
タイトルどおりの奇想がひんやりした筆致で描かれる。歯科医を主人公にしたフェティシズムのベースは無論、谷崎潤一郎の『白日夢』だが、江戸川乱歩『屋根裏の散歩者』の覗視症のアップデート版の趣もある。黒川幸則の怪作『ある歯科医の異常な愛 狂乱オーガズム』では執拗な口腔の接写がみられたが、こちらは聴覚に訴える。咀嚼音や吐息、ピアノなど強調された音響の暗喩が想像力のエロティシズムを刺激するいっぽう、ぬけぬけとバナナのアップを映すあたりがおもしろい。

6.『最後のタンゴ』(熊谷まどか)
大友克洋のある初期短篇を思わせる展開が一転、裏返るというか、表返してゆくくだりが鮮やかに決まった。それまでほぼ室内だけ、リアリズムで描いていただけに、室外へ飛びだし、時空も自在に跳ねるモンタージュの自由さが解放感でいっぱいなのは、ヒロインの心理の変化に沿っているからだろう。管理人のおばさん、杉浦千鶴子の演技が秀逸。

7.『さめざめ』(星崎久美子)
会話のなくなったカップルが交わす付箋のことばに肉体が、しかも女性の側が勝利する。前半の無言劇はみごとだったが、後半、禁を破って堰を切ったように会話が交わされてからはふつうの映画に収まった印象。しかし意外や濡れ場もあるエンターテイナーぶりは「ポルノチック」に参加してもらいたいほど。トイピアノを使った音楽のとぼけた音色が物語に合っていた。

8.『LATE SHOW』(佐藤麻衣子)
密室に見立てた屋上にふらりと現れた少女といえば若松孝二の『ゆけゆけ二度目の処女』だが、こちらの青年たちはレイプや復讐とは無縁に、停滞した時間のなかを過ごしている。そこからの訣別とそこにとどまる者のあわいを、オートバイにタンデムした少女が走り抜けてゆく。舞台は魅力的だが、なにかもうひとつ伝わってこなかった。

9.『SAI-KAI』(名倉愛)
開巻いきなりの片腕切断! モロ、70年代東映やくざ映画ふうに始まった作品は、まさに松浦祐也が川谷拓三そのままの役柄を演じる。今どきの自主映画の男性監督がまず描かないアウトローの青春映画を女性が監督して、きっぱり娯楽映画に仕立てているのがおもしろい。アクションシーンはへたっぴな部分もあるが、死んだ彼女の唇に指で紅を塗ってあげる描写はちんぴらの純情が滲む、いい場面だった。

全体にバラエティに富んでいるが、今年の桃はやや小粒の印象を受けた。女性監督の上映会としてそれなりに認知されてきたいま、新しい才能との出会いの場として、関係者のみなさん、どうかこれからも大切に育ててください。
3月17日よりユーロスペースで公開。公式HP http://www.momomatsuri.com/
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