世紀の1戦!

世紀のGⅡ。


とは言うものの、大将サイレンススズカは前走宝塚記念までこの年5戦全勝という申し分のない実績を備えていたが、挑む若駒2頭は無敗とはいえ、まだ同世代の域を出ないもの。グラスワンダーに至っては2才戦しか経験していない。“世紀の”キャスティングに相応しい実績を有しているとは言えなかった。

それでも戦前から世紀の対決とうたわれるぐらいだから、エルコンドルパサーとグラスワンダー両雄には実績という物差しだけでは計ることのできない「スターの資質」が、このとき既に備わっていたと言える。


骨折から復帰したばかりの2才王者グラスワンダーは、ここで初めて優等生ではないことを走りで暗示させ、以後現実となって的場均を苦しめることになる。

対して、結果的に騎手生活最大の幸運が舞い込んできたことになる蛯名正義を鞍上に迎えたエルコンドルパサーは、前走NHKマイルカップ以来のレースになるが、骨折明けのグラスより分があるのは否めない。しかし人気はグラスに譲った。

だが今回の敵は並大抵の古馬ではない。



3才馬相手に負けることなどできないサイレンススズカは、1.4倍の1番人気。再び戻った武豊を背に、スタートから自慢のスピードそのままに、これまでのように逃げ切った。

もちろん目一杯追われることのない、余力を残したレースである。


しかしエルコンドルパサーは真剣に競馬をし、ただ1頭稀代の快速馬に2馬身半差まで迫る脚を見せた。同じ次元で戦える片鱗を見せた。だが完敗だった。そして次走、ジャパンカップを完勝する。


同じようなことが過去にもあった。

1993年の京都大賞典。王者メジロマックイーンは、レガシーワールドを全く問題にしない走り、2.22.7で駆け抜けた。そして故障。引退に追い込まれる。完敗のレガシーワールドは次走、ジャパンカップを制覇。


サイレンススズカも、子供扱いした2頭の以後の大活躍が励みになる部分はある。しかしそれ以上に、“スズカが無事なら…”という思いが強いのだ。

翌年の凱旋門賞でも賞賛されたエルコンドルパサーを全く問題にしなかった馬が、あの時日本にはいたのだという事実を、日本人なら誇りに思っていたい。


ちなみに岡部騎手のプレストシンボリは完全なる脇役での4着。
3才時に「海外でも」と名手に一瞬抱かせた馬は、無敗のグラスワンダーに首だけ先着する底力をみせた(笑)。しかしその後気まぐれになったグラスワンダーに先着する馬は結構出てくる・・。

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