去る10月31日に54歳の誕生日を迎えた岡部幸雄にとって、積み重ねてきたキャリアは実に30年を超える最早“ベテラン”とか“名手”の一言では形容に窮するジョッキーにとって、中山のターフは自身の庭も同然か。天皇賞(10/27)ではシンボリクリスエスとのコンビで、ビワハヤヒデ以来実に8年振りとなる古馬(芝)中長距離GⅠを制したかと思えば、その翌週には1000万条件戦を連勝して格上挑戦してきた関西馬サンライズジェガーを初騎乗ながらステークスウィナー(アルゼンチン共和国杯)へと導いてみせた。

両レースとも非常にスムーズな競馬。道中は中団馬群の中で待機し、最終コーナーを抜ける頃にはいつの間にか好位置へ進出してきているといった印象を受けた。勝負所の3~4コーナーで懸命に進出を開始する有力各馬に対し、岡部の手綱は持ったままの状態。直線に入り満を持して追い出された岡部の愛馬は蓄えられた末脚を見事に爆発させてみせたのだ。

馬の強さ、馬に適したレース展開等、スムーズな競馬の要因にはいくつか挙げられるだろう。その要因の1つに“岡部幸雄”という存在を忘れてはならない。勝負所でのスムーズな進出、そして勝利をものにしたラストの鋭い反応は、折り合いをつけてスムーズに勝つための騎乗、中山で勝つための騎乗を知り尽くした岡部だからこその年季の入った一級品の芸当なのだ。

混戦の天皇賞で古馬の一線級を一蹴とまでは言えなくとも退けたシンボリクリスエスの次走にはジャパンカップが予定されている。海外からはキングジョージを制したゴーランを初め6頭が日本に乗り込んでくる。しかし手強いライバルとなるのは、実は身近な馬たちだろう。天皇賞では年齢による衰えどころか逞しささえもみせた6歳馬ナリタトップロード、次は末脚勝負に賭けたいサンライズペガサス、復調気配のただようエアシャカール、そして春の天皇賞以来となるディフェンディングチャンピオンのジャングルポケットや、菊花賞では落馬という憂き目に遭ったが、トライアルレースの神戸新聞杯での末脚(クリスエスには完敗したが)が印象深い皐月賞馬ノーリーズン等、クリスエスのGⅠ連勝は容易ではない。

また岡部騎手のお手馬からはもう1頭、重賞連勝中の6歳セン馬マグナーテンも出走を予定しており、ジョッキーとしては体が2つ欲しいところだろう。しかし、もしジョッキーに選択権があるのなら、まず間違いなくクリスエスを選ぶのではないだろうか。1990年代終盤以降、国内である程度の能力をみせた馬たちは、調教師の方針や馬主の理解などの環境に恵まれてさえいれば、それ以前に比べ積極的にその活躍の場を海外へと広げている。幸い藤沢和雄調教師や、シンボリルドルフでの無念を忘れてはいないであろうシンボリ牧場の和田孝弘氏といった、海外を意識させてくれる環境がクリスエスには整っている。

岡部幸雄もそんな無念をなめた1人である。あれからもう15年以上の歳月が経過した。海外との距離が急速に縮まってきているこの時期に“シンボリ”軍団から海外を、それもクラシックディスタンス(2400メートル)を意識させてくれる馬が出てきた。しかもその背には岡部がいる。この現状は、旧来から『岡部・シンボリ』を追い続けて来たファンたちを“ルドルフの無念を今こそ晴らせ”という心理状態にさせるには十分なものではなかろうか。岡部自身の胸中にも「クリスエスで海外へ」という気持ちがあるものと思いたい。だからこそジャパンカップ当日は、シンボリクリスエスの鞍上に岡部幸雄の姿があって欲しい。

一方サンライズジェガーの次走はステイヤーズS。今回は主戦の福永祐一が京都でピースオブワールドに騎乗(ファンタジーS/1着)するため岡部に白羽の矢が立った(と思う)という背景があったため、次走の鞍上については分からない。サンライズジェガーが、別定重量となる次走で好勝負をみせるようであれば、来春の天皇賞戦線でも無視できない存在になるだろう。軽ハンデ(53キロ)とはいえ、ラストは押さえる余裕をみせる圧勝劇(2着コイントスとの着差は3馬身)が余りにも鮮やかであったため、日本最長距離(3600M)の舞台でサンライズジェガーと再びコンビを組む岡部騎手を見たいものだ。
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タニノギムレットがラストチャンスをものにした。末脚の鋭さという観点から言うと、敗れた中にも強さを見せた皐月賞やNHKマイルCにおけるそれほどではなかったが、不利を被ることもなく“追えば確実に伸びる”末脚を如何なく発揮できたことで、一番大切な“1着”をもぎ取った。皐月賞、NHKマイルCと連続して1番人気に支持されたにもかかわらず、結果は両レース共3着に終わった同馬。しかし、ダービーでも2.6倍の断然の1番人気に支持されたように、“1番強いのはタニノギムレット”というのが大方の競馬ファンに共通する考えであった。春のGⅠ3度目の挑戦で、ようやくタニノギムレットは名実共に3歳王者に上り詰めた。

大混戦だった。着差こそ最後には1馬身差がついたが、4着のメガスターダムまでは一かたまりでゴール版を通過したようなものだった。上位馬の道中の位置取りは、メガスターダムとマチカネアカツキが中団の前、シンボリクリスエスが中団、ノーリーズンとタニノギムレットは中団より少し後ろであった。

内枠(2枠)スタートのタニノギムレットは、再度のNHKマイルCのような失敗(直線で内を狙ったものの前方馬群をさばききれず、挙句の果てには致命的な不利も被ってしまい力を出し切れずに敗北)は許されず、鞍上の武豊は馬群の外を狙って追走する。これに対しケント・デザーモ騎乗のマチカネアカツキは馬群の内から徐々に進出していった。

3コーナーから4コーナーの中間点。テレビカメラのアングルが通常よりも上方からの角度にシフトした。馬群の斜め上空から接近したこの見慣れない視点は、道中の真横からのアングルだとどうしても分かりづらかった“横の距離感”を明らかにしてくれる、視聴者側に配慮したアイデアと言えるだろう。その新アングルから、シンボリクリスエスの鞍上岡部幸雄が他馬に囲まれないように進路を外へ移そうとする様子がうかがえる。そして4コーナーを終える頃には、これまでの見慣れた視点へ戻った。

ポジションを上げてきたマチカネアカツキが、最内を狙って一気にスパートする。タニノギムレットは予定通り大外へ持ち出し、既に武豊のムチが放たれている。そしてシンボリクリスエス。4コーナーを抜けて各馬一斉にスパートしたときも、ただ1頭仕掛けを遅らせてそのタイミングを見計らっていた。残り400メートル地点、岡部は右後方を確認した。その視線の先には、タニノギムレットのギアを最速に入れようとする武豊の姿があっただろうか。残り300メートル付近、岡部はようやく追い出しを開始した。

先頭争いは、最内からしぶとく伸びてきたマチカネアカツキ、ダート戦2連勝でこの檜(ひのき)舞台に挑戦してきたゴールドアリュールの2頭の先行勢、そして追い込んでくるシンボリクリスエスとタニノギムレットに絞られた。坂の中間点辺りまで追い出しを我慢して末脚を温存していたシンボリクリスエスだが、以外にも手応えほど鋭い反応はなく、粘る先行勢をとらえるのすらままならない様子だ。これでは大外から他馬とは1段階速いギアで追い込んでくるタニノギムレットを抑えることは容易ではない。

ゴールドアリュールが後退しマチカネアカツキが先頭に立ったのも束の間、外からシンボリクリスエスとタニノギムレットが猛追してきた。一旦はこの3頭が先頭で並んだが、ラストの決め手勝負でタニノギムレットに軍配が上がった。1馬身差の2着には何とか先行勢に追いついたシンボリクリスエス、頭差3着にマチカネアカツキ、頭差4着にメガスターダム、首差5着にはゴールドアリュールが入った。

勝ったタニノギムレットが皐月賞、NHKマイルC、ダービーという新世紀のローテーションで結果を出したことで、来年以降これに倣う陣営が増えてくるだろう。だが、このタニノギムレットの成功(勝てるGⅠを負け続けた陣営としては100%の成功ではないかもしれないが、ここでは3戦続けて好成績を収め、また最も肉体的に辛い3戦目のダービーで結果を残したことを成功と考える)は同世代では1枚上の能力、若駒らしからぬ筋骨隆々の逞しい肉体、ハードローテーションに耐えうる精神力があってこそのものであり、並みの馬では結果を残すどころか、逆に不甲斐ない結果に終わることにもなるだろう。

ベストは末脚の切れを最大限に生かせるマイルから2000メートル辺りだろうか。秋の府中でジャングルポケットやマンハッタンカフェと激突することを考えると、「府中なら差し切れるのでは」とか「武豊はジャングルとギムレットのどちらを選ぶのか」等、想像は尽きない。

2着のシンボリクリスエスは、道中は岡部騎手が懸命になだめながら追走していた。それが、追い出されてからの反応が物足りなかったことの原因の1つだろう。追い込み一辺倒の脚質から脱却したことで大きく成長した同馬。タニノギムレットとの力関係をこのレースだけで論ずるには材料不足である。シンボリクリスエスには更なる成長を期待し、是非ともタニノギムレットに再度挑戦してほしい。

4着のメガスターダムは道中かかり気味で鞍上の松永幹夫を困らせていたが、いざ追い出されると手応えが悪そうに見える中でもしぶとく末脚を伸ばし、最後は上位に接近してきた。直線でまともに追えなかった皐月賞を5着。そして、前走プリンシパルSではその鬱憤を晴らすかのような鮮やかな差し切り勝ち。この2戦の内容を考察すると今回の9番人気という評価は余りにも低すぎた。同馬の父は名マイラーのニホンピロウイナー。言うまでもなく産駒の良積は短距離に集中している。距離を克服して秋の天皇賞を勝った同じ父をもつヤマニンゼファーに続きメガスターダムが中距離戦線で以後活躍することができたら、父の名声は更に高まるだろう。そしてまた、メガスターダムはそれだけのことが出来る器だと思う。

6着にはアドマイヤドンが入った。若葉Sで敗北する以前の評価に比べたら物足りない成績だが、何もできなかった皐月賞よりは後方から良く追い込んできた今回の方が納得のいくレースだったであろう。復活の兆しが見えてきた。皐月賞馬ノーリーズンは8着に終わった。タニノギムレットと同じようなポジションから、全くいいところ無しに終わってしまった。仕切り直しだ。



※ちなみにダービー直前に私の推奨した4頭は、1着から4着を独占しました。長い間予想をしてきましたがこんな事はめったにありません。この感覚を大切にしていきたいと思います。
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3コーナーから4コーナー。圧倒的1番人気のモノポライザーが、武豊のサインに従い馬群の外から進出してくる。最終コーナーを抜けるとき、そのポジションは4番手にまで上昇した。モノポライザーは、この勢いでヴィクトリーゴールを目指す。前方には大逃げを披露したサンヴァレー。そしてマチカネアカツキ。同馬の背には、昨秋のいちょうS以来のコンビとなる岡部幸雄の姿があった。道中は、4馬身前方のサンヴァレーを深追いすることなく2番手をリラックスして追走した。最終コーナーを回る段階でも岡部は前との差を詰めようとはしない。そのとき、武豊のモノポライザーが外から一気に並びかけてきた。

モノポライザーを待っていたかのように、ようやく岡部が追い出しを開始する。内に名手岡部幸雄とマチカネアカツキ、外には天才武豊とモノポライザー。互いに一歩も譲らない競り合いは、残り150メートル辺りで岡部に軍配があがる。モノポライザーを競り落とし、内で粘りに粘っていたサンヴァレーをもかわして先頭に踊り出た。このまま先頭でゴールインすれば、ここ3戦連続2着という惜敗続きにようやく終止符を打てると同時に、ダービーへ向けて最高のステップレースにすることができる。だが岡部とアカツキが先頭に立っていられたのは、ほんの僅かの間であった。

名手2人の競り合いを直後から眺めることになった松永幹夫とメガスターダムが、外からまとめて差し切ってしまったのだ。道中はモノポライザーの前につけ、最終コーナーではインコースから直線に入った。すぐ目の前にはマチカネアカツキとモノポライザーがいる。2頭の競り合いが始まったとき、必ずしもメガスターダムの反応がいいとは言えなかった。サンヴァレーを含めた前3頭の争いになるかと思ったが、坂を上りきって残り200メートルを過ぎた辺りから再度鋭く末脚を伸ばしてきた。そして前3頭を外から並ぶ間もなくかわし、ゴール前では楽な手応えでマチカネアカツキに1馬身1/4の差をつけた。

メガスターダムの父は、日本を代表するスピード馬ニホンピロウイナー。既に2000メートルでの優勝実績があるが、これ以上距離が延びることは歓迎材料ではなかった。しかし今回2200メートルを克服した同馬に対し、更に200メートル延長となるダービーに向けて「問題ない」とは手綱をとった松永幹夫の言葉だ。

勝ち上がるのに時間を要した同馬だが、2歳時には今回下した評判馬マチカネアカツキやモノポライザーと接戦を演じ、先の皐月賞でも直線で前が壁になり、まともに追えない中で5着に入った実力馬である。そして迎えたダービートライアル第2弾、プリンシパルS。皐月賞での不完全燃焼を払拭するかのように十分に追われ、それに応えるしぶとい末脚を見せたメガスターダム。いよいよ目前に迫った第69回日本ダービーの舞台に、この勝利で胸を張って参戦することができるだろう。

4ヵ月振りのレースとなったマチカネアカツキは、いちょうS、東スポ杯2歳S、ラジオたんぱ杯2歳Sに続き4戦連続の2着に終わったが、今回はモノポライザーとの勝負に徹していた感があり、勝ち馬には敗れたもののモノポライザーとの競り合いをきっちりと制してみせるなど、本番前の試走としては及第点が与えられる。兄姉に短距離を得意としていたノースショアーやノースサンデーがいることから、この馬にも長い距離への不安が漂っていたが、今回のようなじっくりと体力を温存するレースができればダービーの2400メートルは問題ないだろう。

3着に終わったモノポライザーは、皐月賞の大惨敗(16着)から考えて今回の2倍を下回る過度の人気は異常だった。だから今回の結果は、やはり皐月賞で惨敗したヤマノブリザードが青葉賞で3位に入線したように、皐月賞の悪夢から見事に立ち直ってみせたととるべきだろう。デビュー3連勝の頃のような瞬発力を見ることはできなかったが、このレースを以後の飛躍へ向けての契機としてほしい。

4着には逃げたサンヴァレーが入った。3着との差は11/4。ここ2戦はマイル戦で二桁着順を繰り返していたが、距離を延ばした今回は身上の粘り腰を大いに発揮した。忙しい流れのマイル戦よりは中距離の方がこの馬には合うのだろう。ダービー馬ウイニングチケットを父にもつ同馬には、本番でも粘りに粘ってレースを盛り上げてほしい。
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その瞬間、確かに背筋がぞっとするような感じを受けた。ダービートライアル青葉賞の直線での攻防。ターフビジョンにはいつの間にか漆黒の馬体が大きく映しだされていた。武豊を鞍上に迎えたシンボリクリスエス。トライアルにエントリーした藤沢厩舎3頭のうち最も勝利に近いとされ、あたかもダービーを意識していたかのような長距離中心のローテーションを経てきたこの外国産馬は、我々人間が勝手に思い描いていた、秘めたる能力を遺憾なく発揮してみせた。

3頭出しで臨んだ藤沢厩舎は、上位3頭独占とはならなかったものの見事に1着と3着に入り、輝かしい成績の師としてはこれまで全く縁のなかったダービー制覇へ向けて視界が大きく開けたと言っていいだろう。

■悪寒の理由

1) ★シンボリクリスエスの強さ★
前の先行勢、後ろからくる追い込み勢が懸命に追っているのにもかかわらずひたすら前が開けるのを待ち、開いたと同時にそこへ潜り込む。そしてスパートすると瞬く間に加速し、先に抜け出していたヤマノブリザードや追い込んできていたバンブーユベントスを全く問題にせずに突き放す次元の違う競馬を披露。レースの上がり3ハロンが34.6の中で一瞬にして突き放すのだから、性能が違う。

2)★武豊騎手が岡部騎手のお手馬とコンビを組み、強い競馬で重賞制覇★
藤沢勢3頭の前走はいずれも岡部幸雄が手綱をとっている。地方から転厩してきた経歴をもつヤマノブリザードとのコンビは先の皐月賞1戦のみだが、他の2頭シンボリクリスエスとボールドブライアンは岡部が主戦であり、デビューからいわゆる名手による“教育”を施されてきた馬である。今回の割り振りは人気の高い順に、1番人気シンボリクリスエスに武豊、2番人気ヤマノブリザードに柴田善臣、そして1つ人気を下げて4番人気ボールドブライアンに岡部幸雄となっていた。

3頭全ての前走に騎乗していた岡部に、最も勝機のあるシンボリクリスエスへの騎乗権がありそうなものだが、実際には単勝オッズの数値のみから考察すると最も勝機の低いボールドブライアンに騎乗することになった。そして結果は直線失速。府中競馬場のターフビジョンを見ていた私は、岡部の馬に余力が残されていないことを歯がゆい思いで見ていた。そして次の瞬間、あの漆黒の馬体である。

失速していく岡部と入れ代わるように先頭に立ち、ターフビジョンに鮮やかに映しだされる武豊。それはまるで、10年内に起こるであろう世代交代、つまり岡部幸雄という1つの時代の終焉(しゅうえん)を意味しているようであった。


シンボリクリスエスの圧倒的な勝利を目の当たりにした後、すぐ様人込みをかき分けるようにして帰路についた。その間私の頭の中は、「ダービーで岡部騎手はシンボリクリスエスに騎乗できるのだろうか」という自問で一杯だった。武豊にはNHKマイルカップとダービーを共にするタニノギムレットがいる。先約で、しかも実力のあるギムレットを拒絶してまでシンボリクリスエスを選ぶということは相当なリスクを背負うことになる為、クリスエスを選ぶことはまずあり得ないだろう。

一方の岡部には、トライアル第2弾プリンシパルSに登場するマチカネアカツキというお手馬がいる。昨年末以来5ヵ月振りとなる同馬の成長度合いにもよるが、現時点でシンボリクリスエス並みのパフォーマンスは難しいのではないだろうか。

同じレースにお手馬が数頭出走する場合、騎乗馬を決定する材料は騎手の意見だけではない。馬主や調教師等様々な人物の意見が絡み合ってくるのである。しかし、岡部幸雄を起用せずして外国人や地方のジョッキーを起用することは、少なくとも私にとっては不快な現象である。なるほど確かに現在の競馬界は岡部の時代ではない。武豊の時代だ。だが岡部が落ちぶれた訳ではない。いまだに年間100勝する実力を保持している。岡部自身も「まだ若い者には負けない」という意志を貫いている。昨秋の事故からも見事に立ち直ってみせたように、ベテランはまだまだ健在なのである。

シンボリルドルフ以来18年振りとなるダービー制覇を、当時と同じ勝負服で達成することができたら、何とも感慨深い2002年のダービーになることであろうか。

武豊 驚異の回復力

武豊がターフに復帰した。地方や海外のスタージョッキーがJRAのGⅠレースに登場することがごく当たり前になった昨今ではあるが、東の岡部幸雄、西の武豊が存在する競馬とそうでない競馬とでは、やはり重みの差は歴然だ。「岡部、武がいるレースは引き締まる」というのは正にこのことであろう。全治3~6ヵ月と診断された症状を、そのわずか1/2の1月半で復帰できるまでの状態に戻したことも凄いのだが、いきなり重賞を含む4勝をマークしてしまうのだから恐れ入ってしまう。

復帰した土曜日に1勝、そして日曜日には9レースからメインの11レースまで3連勝を決めて見せた。そのいずれの勝利もが僅差のものではなく快勝とよべるものだったことに、やはりこの人独特の華やかさを感じざるを得ない。

メインレースのアンタレスS(GⅢ/ダート1800M)では3番人気ハギノハイグレイドを勝利に導いた。道中は中団を追走し、勝負所でインから差を詰めて最終コーナーでは先団の直後にまで接近。ここからが巧かった。終始インコースを通り最終コーナーでもインを狙うかに見えたが、4、5頭が密集しており馬群を割るのが難しいと判断するや否や無理をせずに冷静に外へ持ち出して追い始めたのだ。ハギノハイグレイドはここ3戦連続2着の鬱憤を晴らすかのような鋭い伸び脚を見せ、前の5頭を外からまとめてかわし鞍上に重賞をプレゼントしたのだ。

直線に入り、エンジンを全快にすべきところで逆にブレーキを踏んで進路変更することは勇気の要る行為だ。しかしあの場面、外へ持ち出さなかったら前方が塞がれてしまうことは目に見えていた。かといって少しでも躊躇してそのタイミングが少しでも遅れると、今度は逆に追い込んできた馬に外側を塞がれ、四方八方塞がりの最悪の事態を招いてしまう。武豊のスムーズな進路変更。そしてその後鮮やかに騎乗馬の末脚を引き出す点(少し前のフサイチエアデールでの桜花賞トライアルが好例)は、本人はいとも簡単そうにやって見せているが、実際は冷静且つ的確な判断を要するのであろう。

今年も海外での戦いが多くなるであろう。海外を主戦としている間、頻繁に日本の競馬に参戦する武豊に対し、「しばらくは腰を据えて戦え」という外部からの声を耳にしたことがある。本人はチャンスがあるところへは可能な限り参戦するといった姿勢でのことだろうが、武豊が余りにもハードなスケジュールで各国を飛び回るものだから「強欲すぎやしないか」といった視点で見てしまうのではないだろうか。

しかし今回も医師の下した診断の半分という驚くべき回復力、復帰への気力、努力を見せた武豊のことだ。周囲が余り批判的にならず本人に任せて伸び伸びと戦わせてあげて欲しいと思う。

また、2月に故障からレースに復帰した岡部騎手も、復帰直後に重賞を制している。まだまだ武騎手としのぎを削り競馬を盛り上げていってもらいたい。1997年の天皇賞(秋)のような両ジョッキーによるマッチレース(エアグルーヴとバブルガムフェロー)をまた見たいものだ。
ここ2戦人気を集めながらの惜敗が続いていた藤沢和雄厩舎期待の若駒、サスガがすみれSを勝ち上がったが、関東の岡部幸雄の存在感には“さすが”と脱帽せざるを得ない。先週復帰したと同時にクイーンカップを良血馬シャイニンルビーで制したかと思えば、今週はトウカイテイオー産駒のトウカイポイント(せん馬、6歳)を操り、古馬GⅡ戦の中山記念を勝ったからだ。
クイーンカップでは、最後の直線で前方が狭くなりかけるも焦らずに待ち、開いた最内を突いてお手馬の鋭い伸び脚を引き出すという冷静沈着な騎乗技術を発揮した。一方中山記念では昨夏の札幌シーズン(HTB賞=1着)以来の騎乗となったパートナーを当時と同様に中団から競馬をさせた。勝負所で外からジワリと進出すると、最終コーナーで先団を射程圏内にとらえ、60キロを背負わされた分早めに動いた昨年末の香港マイルの覇者エイシンプレストン(5着)が内で伸びあぐねるのを尻目に力強く抜け出し、最後はトラストファイヤーとの競り合いを首差制した。3着には昨秋に復帰して以来、全盛時の走りには遠く及ばない競馬が続いていたラスカルスズカが後方からよく伸びて入線した。しかし、主戦の武豊が同日のレースで落馬による骨折を患った為、田中勝春に乗り替わってのことだった。

トウカイポイントの勝利には、8番人気に支持したファンはもちろんだろうが、当の岡部も「手応えはあったが、(エイシンプレストン等相手のレベルを考えると)相手が更に良い脚を使ってくる」と予測していたようで、多少の驚きは隠せない様子だった。上のクラスでも通用するといった類の賛辞は飛び出してこなかったが、「この辺りのクラスで十分活躍できる」と、今年の古馬中距離路線で期待してもよさそうだ。

落馬による負傷から復帰後、2週連続の重賞制覇と早くも十分な結果を残した岡部幸雄だが、当の本人は「幸運」の一言で片付け、あくまで謙虚な姿勢を崩そうとしない。岡部幸雄、53歳。彼ほどの実績、経験を積み上げていても、恐らく何かしらの“やり残したこと”があるはずだ。我々ファンに見える部分では“桜花賞制覇”がそうであろうし、岡部本人が胸のうちに秘めているものもあろう。

武豊に代表されるような華やかな海外転戦のスタイルをとることは恐らくないだろう。今の岡部に求められるのはそのようなことではない。体力の続く限り長く、中身の濃い競馬を見せ続けて欲しい。その中で、必ずや訪れるであろうビッグチャンスの際には、是非ともその存在感をアピールして欲しい。

クロフネ引退

クロフネが引退した。外国産馬へのダービー開放元年となった昨年、あたかも登場する時代を見計らっていたかのように現れ、僅か1年という短い期間でターフを去っていった。最大の使命であったダービー出走も、直前のNHKマイルカップを制しGⅠホースとして臨んだことで、既に引退していたアグネスタキオンの抜けた穴を見事にふさいでみせた。だが、クロフネはこれで終わるような馬ではなかった。

秋。陣営は、天皇賞出走が絶望的と判明するや否や、急遽武蔵野ステークス(ダート1600M)にクロフネを出走させた。この挑戦的な姿勢がクロフネの潜在能力を開花させることとなる。初のダート戦となるこのGⅢを9馬身差で圧勝。その勝ち方は府中の長い直線が待ち構える中、最終コーナー手前で先頭に立ち、そのまま突き放すという圧巻の内容だった。タイムは1.33.3。これは自身が同距離のNHKマイルカップ(芝)で記録した1.33.0に僅かコンマ3秒及ばないだけのものだった。これほどのダート適性を披露されては、次走は当然ジャパンカップダート。そこでもクロフネは世界の強豪が集う国際GⅠでも武蔵野Sと同様の戦法で早めに先頭に立ち、後続を7馬身引き離してしまった。

ダービーまでももちろん強さを見せてはいたが、“ダービー開放元年に登場したマル外の大物”という話題性で注目を浴びることが多かったのも事実だ。しかし秋のクロフネは、自身の実力のみで多くのファンを魅了した。クロフネの真の“来襲”は、活躍の場を芝からダートへと移したときのことだろう。それこそ異国の馬が異次元の競馬を我々に見せつけているようであった。短い期間ではあったが、その名に恥じぬ成績は残せたと言えるだろう。

クロフネほど海外での走りを期待させる馬は、これまでにいなかったのではないだろうか。また、これ以後もそう簡単には現れないだろう。海外遠征の夢が潰(つい)えたことは何とも残念だ。しかしこれも受け止めなければならない現実である。私が最も願うのは、クロフネの競馬によってジャパンカップがより一層レベルアップすることである。ジャパンカップダートのクロフネの走りを目の当たりにした海外ホースマン達が、日本競馬のレベルアップを認め積極的に日本に遠征してくれるようになったら、それはクロフネによる功績の賜物だろう。
最悪の結末になってしまった。テイエムオペラオーはラストランとなる有馬記念で5着に敗れた。自らの引退に花を添えることが出来なかったばかりか、王手をかけていたGⅠ最多勝利記録の更新も果たせなかった。結局、2001年でオペラオーが獲得したGⅠのタイトルは春の天皇賞ただ1つのみに終わった。昨年GⅠ5連勝を達成したオペラオーの今年のGⅠ勝利数が僅か1つに終わることなど一体誰が予測できたであろうか。

去り行くものもあれば、未来へ向かって羽ばたこうとするものもある。これは世の常である。昨年以来丸2年間競馬界の中長距離路線を牽引してきた2頭、テイエムオペラオーとメイショウドトウの競馬を見ることは、もうない。来年は新たなサラブレッド達が競馬界を創り上げていく。

勝ったのは菊花賞馬、マンハッタンカフェ(父サンデーサイレンス、蛯名正義騎乗)。同一年度で菊花賞と有馬記念の両方を制覇したのは、1995年に逃げ切り勝ちを収めたマヤノトップガン以来のことだ。両馬は毛色こそ前者が青鹿毛、後者が栗毛と全く異なるが、春のクラシックには出走せずに夏に力をつけて菊花賞を勝つも、何処かフロック視されたまま有馬記念を迎えているあたり、状況がよく似ている。

しかし3歳馬は強い上に層が厚い。有馬記念のマンハッタンカフェを始め、日本が誇る国際GⅠジャパンカップは、ジャングルポケットとクロフネの両3歳馬が制した。更にはジャングルポケットを破っているエアエミネムもいる。牝馬ではテイエムオーシャン、レディパステル、ローズバドの3強が、既に古馬のエース格トゥザヴィクトリーと遜色ない競馬を見せている。来年はこれら強い3歳馬達に加え、すっかり影が薄くなってしまった4歳世代を急激に勢いづけている世界のアグネスデジタルとエイシンプレストン等が競馬を盛り上げてくれるだろう。オペラオー世代から生き残ったナリタトップロードは、もはや打倒オペラオーの目標は叶わぬが、去ったオペラオーとドトウの分まで完全燃焼して後輩達に胸を貸すぐらいの競馬を見せて欲しい。

テイエムオペラオーは敗れた。それも、天皇賞(秋)やジャパンカップのように強い競馬をして不運にも負けたのではなく、完全に敗れた。早めに抜け出して勝ち馬の末脚に屈した前2走の反省からか、手綱を取った和田騎手は中団からレースを進めた。勝負所での手応えが悪いのは、ある意味ではいつも通りだ。しかし、直線に入ってから昨年のような豪脚を見ることはなかった。自身より後方に控え、更に外を回ってきた勝ち馬にあっさりかわされ、前で粘るトゥザヴィクトリー、明らかに格下のアメリカンボスをとらえる余力は残されていなかった。現役最後のレースを終えたとき、これまでしのぎを削ってきたメイショウドトウが自身の少し前にいたことなど既に問題ではなくなっていた。

それにしても何とも後味の悪いレースである。勝ち馬は素直に称えられるべきだ。実際、強い競馬を見せた。フロックと片付けるものは少ないだろう。だが、主役たる2頭が共にベストの競馬をしたようには見えなかった。しかしそれは、ただそう見えなかっただけで、もはや2頭には、昨年のような2頭のみの競馬を生み出すだけのエネルギーが残されていなかったのかもしれない。テイエムオペラオーの場合、これが仮に今年1年間海外で戦ってきた末の凱旋レースとしての5着敗退なら、今程には残念に思わなかっただろう。2001年にテイエムオペラオーが国内で走った最大のメリットは獲得賞金だ。名馬の名誉を少なからず傷つける代わりに多額の賞金を獲得した。ただ、オペラオーが国内に留まったことで日本の競馬がもぬけの殻にならずに済んだこともまた事実である。

名馬に罪はない。テイエムオペラオーを語るとき、5歳時に日本競馬の核として君臨していたことを決して忘れてはならないだろう。
昨年一年間で積み重ねてきた名声が、今音をたてて崩れ落ちそうなところまで来ている。昨年、どんなに苦しいレースになろうとも必ず勝利を我がものにしてきたテイエムオペラオーが、今年は天皇賞(春)と京都大章典(1着馬降着による繰上りでの勝利)の僅か2勝という成績でくすぶっている。敗れたG1レースで全て2着に入っているように、能力が大幅に低下したとは考えにくい。並の馬ならG1で1勝2着3回という成績は悪いものではない。しかし、その馬がテイエムオペラオーとなれば話は別だ。昨年の古馬中長距離路線を完全制覇した馬のこととなればこの成績では“物足りない”という印象は拭えない。昨年一杯で引退していれば完璧なまま終われたはずなのだが、5歳のシーズンである2001年も現役を続行したがための代償は決して小さなものではなかった。

昨年、国内のG1レースを完全制覇したテイエムオペラオーに対してファンが望んだのは“来年(2001年)は海外へ”というものだった。国内でやれることを全てやり尽くしたのだから、これは当然のことであった。しかし、オペラオー陣営の出した結論は“現役を続行するが海外には行かない”という多くのファンの期待に反するものだった。その理由の1つが、“ファンが馬券を買えないところでは走らせない”という一見ファンに配慮したようにも見えるが実はファンの思いを度外視したものだった。

海外に行かなかった理由は恐らくもっと現実的な問題だろうと思う。1頭の馬を所有し、それを維持するには莫大な費用がかかる。馬を持たない私のような一競馬ファンはついつい忘れてしまいがちだが、競馬もビジネスである。ビジネスである以上、“利潤追求のための最善策”を模索することに対して誰も責めることは出来ない。このように考えると、昨年一杯で引退しなかったのは、故障しにくいテイエムオペラオーなら翌年1年間現役を続行すれば幾らかの儲けをもたらしてくれるだろうと目ろんだ為ともとれる。そして現役を続行する場所を国内に限定したのも、より稼げるからだろう。

一つ断っておくが、私とて陣営の下した結論に失望した一人である。国内の古馬王道ロードを完全制覇出来る者など、もしかしたら今後現れないかもしれない。テイエムオペラオーの2000年の戦績は正に空前絶後のものだと思う。全てに勝つことは、あらゆる面において強くなければ不可能だ。絶対能力に優れていても故障がちだったり、輸送に弱かったり、馬場状態に注文のつくような馬は、自らに好都合の条件が揃わなければ能力を出し切れない。このような馬が国内の何倍ものリスクを背負って海外へ遠征し、満足できる結果を残すことは運を味方につけでもしないと難しいだろう。だからこそオペラオーだった。どんなレースにも対応でき、正に海外遠征向きの馬だった。

しかしテイエムオペラオーは1度極めた国内の古馬王道ロードを再び極める道を選んだ。既に極めているオペラオーにとって、王者たるものの常として、2001年は得るものより失うものの方が多いことも陣営は覚悟の上だったはずだ。1年間勝ち続けることだけでも驚異的なのに、2年続けてチャンピオンロードを勝ち続けることなどほとんど不可能に近い。負けるたびに王者の威信が崩れ去っていくことを理解した上での国内戦限定の現役続行だったはずだ。

春の天皇賞連覇を達成し、シンボリルドルフの持つ最多G1勝利の記録に肩を並べた。記録更新はほぼ間違いなさそうに見えた。しかしそれからG1を3戦消化したものの、オペラオーは未だ記録を更新出来ずにいる。そして、いつの間にか残されたチャンスはラストランとなる有馬記念のみになってしまった。陣営も新記録達成を願っている。しかしオペラオーの敗北に驚かなくなってしまった今、記録を更新したところで最強馬の地位までルドルフからは奪えない。競馬史上の“記録”には偉大な記録として残るだろうが、その記録に見合うほど人々の“記憶”には最強馬として残らないだろう。現役を続行した代償として、真にルドルフを超える資格を失ってしまった。

だが、2001年を走ったおかげで得たものもある。
産経大阪杯でのまさかの4着、宝塚記念における不利を被った後の王者の末脚、京都大章典における直線の攻防、天皇賞(秋)、ジャパンカップにおける敗北劇。敗れはしたものの、そのほとんどが存在感のあるレースをした。

現在のテイエムオペラオーが昨年よりも人々の記憶に残るような馬になっているとしたら、それは今年敗れたレースの賜物ではないだろうか。例えその記憶が最強馬としてのものではなくとも、2001年に国内で走った意味をそこに見いだしたい。ラストランとなる有馬記念、テイエムオペラオーはこの2001年をどのように締めくくってくれるのだろうか。
1着ジャングルポケット、2着テイエムオペラオー、3着ナリタトップロード、4着ステイゴールド、5着メイショウドトウ。今年のジャパンカップは史上初めて日本馬が掲示板を独占した。しかも一発屋としてここに名を連ねている者はおらず、皆十分な実績を誇る日本のトップホース達である。「日本の強い馬が自分の競馬をしたら外国馬はついてこれなかった」と解釈するのは、タイキシャトルやエルコンドルパサーの活躍を経た現在となっても未だ時期尚早なのだろうか。

地の利。ここ数年のジャパンカップで頻繁に耳にするフレーズである。1992年に岡部幸雄騎乗のトウカイテイオーが勝利を収めて以後、今年を含めて日本馬は10年連続して連対しているが、その周囲には“地の利”がつきまとっていた。

ジャパンカップ草創期、日本は世界とのレベルの格差に呆然となった。それは、それ以後の日本馬の好走を“地の利”の一言で片付けてしまえる程大きなものだった。しかし時代は変わった。1998年、タイキシャトルがジャックルマロワ賞を制覇。1999年にはエルコンドルパサーが凱旋門賞で2着と健闘した。そして今年のドバイワールドカップではトゥザヴィクトリーが2着と、今や日本競馬は世界の主要GⅠレースで勝負できるまでになった。

素直に日本競馬のレベルアップを喜んでもよさそうなものだが、諸外国のように国外に遠征することがまだ常でない日本では海外とのレベルの差を測る事例が少な過ぎるので、“地の利”ではないかとの疑念の生じる余地が多いのだろう。

思えば凱旋門賞でエルコンドルパサーを差し切ったのはフランス代表のモンジューだった。これを、「ホスト国であるフランスの馬が勝ったのだから、エルコンドルパサーは“地の利”に負けた」と解釈してもよいのだろうか。いや、世界の競馬はそんなにちっぽけなものではないはずだ。もちろん日本でもそのような批評は皆無に等しかったと思う。ところが日本は、ジャパンカップや安田記念等の自国の国際レースに限り自らをへりくだるかのごとくに“地の利”を用いる傾向が強い。

ジャングルポケットは伝統ある英国のクラシックホース、ゴーランに末脚の違いを見せつけた。クロフネは米国ダート界の実力馬リドパレスを問題にしない驚異的な競馬を披露した。彼らの勝利を、その強さを“地の利”によるものと決めつけてしまうのか。我々日本人はもっとジャパンカップを、そして日本の競馬を誇りに思うべきではないだろうか。