Isanan の駄文ブログ

… 自作小説(?)やら何やらの駄文を、気が向いたときにだらだらと書き連ねて行くブログです


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 数日後、よく晴れた陽射しの下、アシュウィンとレナはラーナティアの国境近くにいた。城の兵士数人も一緒だ。

「見送り、どうもありがとうございます。」

「あんたも少しは役に立ったから、当然かもね。」

「残念ですな。アシュウィン殿にはもっと留まって欲しかったのですが。」

兵士の一人が口を開いた。魔封洞での戦闘の後、アシュウィンは勝利に貢献したとして手厚い待遇を受けていたのだ。ラグオスは名誉の戦死とされた。攻略計画をたてた副王自身の死の真相に、疑問を抱く国民はいなかった。

「すみません。僕の旅はまだ続くので、そう長くも居られないのです。」

「あんたにも事情があるのだろうから、止めはしないわ。」

「しかし、いささか危険では?連中の正体も分からず終いでしたし。」

 作戦は完璧で、ラーナティア側には死者も出なかった。ただ敵を捕えることはできず、全員崩落の下敷きになったものと思われた。夜の闇に現れた怪異については、それが何か説明できる人物はいなかった。

「何とかなりますよ。では、そろそろ行きます。」

「本当に今まで世話になったわ。ありがとう。」

「別れは辛いですが、旅のご無事とご幸運を!くれぐれも無茶はなさるな。」

「そんな…、皆さんのことは忘れません。お元気で。」

「あたしがいなくても、しっかりやって行くのよ。父上をお願い。」

「陛下をお助けし、この地を護るのが我等の使命。いずれ戻られる日まで、ラーナティアはお任せあれ!」

「…話の流れがおかしく無いですか?」

「あら、あんたには言ってなかった?」

兵士達は一斉にアシュウィンの方を向き口を揃えた。

「姫君を、お頼み申し上げますぞ、アシュウィン殿。」

「ええーー!」

 ***

 王城の塔から、アシュウィン達がいるであろう方角をオグルは見つめていた。

「よろしいのですか、行かせてしまって?」

横にいた大臣が口を開いた。

「不穏の影に覆われているのは、このラーナティアだけではない。今や闇は世界に広がろうとしている。この先の時代が暗きに飲まれるか否か、その鍵を握るのがあの少年なのだ。」

「しかし…。」

「此度の戦では我等が勝ったが、勝利は一時のものでしか無い。この地が永遠に安全でないのなら、未来を担う若者を閉じ込めておく理由があるだろうか?例え危険と知っていても、進むべき道を決めるは彼等自身なのだ。自分達の運命と、向き合うための道をな。」

「そうは言っても、弟君を無くされて姫君まで手放されては、あまりに陛下が…。」

「…言うな。これも王として、父としての務めだ。」

「はい…。」

大臣は王の表情をそっと窺った。だがその顔は巌のようで何も読み取ることができなかった。

 ***

「アッシュ、何よ、浮かない顔して?元気出しなさいよ!」

「はあ、僕の背中のこの大量の荷物は、餞別では無さそうですね。」

「それあたしのよ。ピクニックでも無いのに、あまり軽装ではまずいでしょう?」

「そうですね。…スサク、どうしてこんなことになったのかな?」

 風が吹き抜けて、周りに並ぶ木立をざわめかせた。

「何?あたしが一緒で不満でもあるの?」

「いやー、少しも…。ところでレナさんの荷物の、この熊みたいな猫みたいな、つぎはぎだらけのものはなんですか?」

「え…、そ、それは夜一緒に寝るぬいぐるみよ。」

「…ピクニックと言うよりキャンプですかね。」

「…持ってちゃ悪い?」

「全然。ただ正直驚きました。そんなことを言うなんて、まるでレナさん女の子みたいだ。」

鈍い音を立てて、レナの回し蹴りがアシュウィンの側頭部を打ち抜いた。

「あたしは女の子よっ!口の利き方を知らないと、痛い目に会うことになるわよ。」

「…だから、蹴ってから言わないでください!」

「馬鹿ね、本気でやったら、この程度じゃ済まないんだから。手を抜いてあげて感謝して欲しいわ!」

「ス、スサクー…。」

 再び風が吹き抜けて、木々の梢を揺らした。木漏れ日が瞬き、緑の葉が擦れて軽く音を鳴らした。それは幾つもの小さな笑い声のように響いて、アシュウィンとレナの上に降り注いで行った。


(終わり)
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 スサクとダウロンの戦いによって魔封洞には震動が轟き、内部が崩れ始めていた。その中でアシュウィンは影のような男、ゾアと対峙していた。ゾアは仮面の奥からアシュウィンを見つめて呟いた。

「半身の、ジン使いか…。まさかな…。」

「…!僕のことを知っているのか?」

ゾアはそれに答えず、隣の空洞の方を見た。ダウロンは徐々に風を押し戻していたが、その体からは溶け崩れるように肉片が滴り落ちていた。復活が充分では無かったのだ。ゾアは後ろに跳びアシュウィンと離れた。その輪郭がおぼろげになり影が薄れて行く。

「この地での、我等の計画は、潰(つい)えた。しかし、いずれまた…。」

「待て!」

アシュウィンは右腕を差し構えた。その手にレナがすがりついた。

「駄目っ!」

「な…?」

ふっ、とゾアの姿は消えた。アシュウィンはレナに尋ねた。

「何故止めたんです、レナさん?」

「え…、血が出て痛そうだったからつい…。」

アシュウィンは顔を上に向け、大きく一つ息を吐いた。

 ***

 ラグオスは額から血を流し、よろよろと地面から身を起こした。オグルが見下ろしていた。

「…ラグオス、何故だ?」

「ふ、何故だと思う?無能なあなたがただ先に生まれたと言うだけで、王位に着いたのを私が恨んでないと思ったか?いや、容姿も頭脳も私の方が優れているのに、何もかも手に入れる兄を疎ましく感じてないとでも思っていたのか!?」

「………。」

「ふふ、そうとも、そんな理由では無い。私はあなたが王になることに、何の異論も感じなかった。この世の全てがあなたのものになろうとも、何の不満も無いだろう。…だが、あの人の愛情だけは違う!生涯を連れ添う男性に義姉上があなたを選んだと知ったとき、私はあなたを許せなくなったのだ!!」

「…、すまん。」

「何故謝る?全てこちらが勝手に自爆したことだ。…さあ、とどめを刺してくれ。」

「俺に、実の弟を殺せと言うのか?」

「あなたの一番大切なラーナティアを、滅ぼそうとした張本人だ。ためらうことはない。」

オグルは剣を収めた。

「甘いな、兄さんは…。甘すぎるんだっ!」

ラグオスはいきなり跳びかかった。オグルは動かなかった。

 ラグオスの動きが突然止まり、オグルにもたれるように倒れかかった。背中にジザードの短剣が突き刺さっていた。

「…勇者の血を引く者に、死を!」

オグルは短剣を引き抜いてジザードに投げつけた。ジザードは一声うめいて絶命した。

「ラグオス、しっかりしろ!ラグオス!」

「…あなたの、その優しさに、…義姉さんも…。」

オグルの腕の中で、ラグオスは息を引き取った。

 ***

 アシュウィンとレナがオグルの元に駆け寄った。

「叔父様、…そんな。」

「王様、スサクの力ではもう、あれを押さえ切ることはできません。それにこのままだと洞窟が…。」

壁や天井が崩れ、魔封洞中に震動が轟き響いていた。洞窟全体の崩壊も時間の問題だった。

「うむ。今は何より、脱出が先決だ。行こう!」

オグルはラグオスの亡骸を横たえて、自分の着けていたマントを上からかぶせた。少しの間傍らで眼を瞑って跪き、立ち上がると出発を促した。三人は外へと駆け出した。

 ***

 魔封洞の城門を打ち壊して、中からダウロンが姿を現した。だが月明かりにさらされたその体は、もはや人の形をかろうじて維持できるかと言うほどに溶け崩れていた。全身に穴が穿たれ、そこからは眼と同じ赤い光が覗いた。閃光は力を失い、むしろ内側からその身を焼き焦がしているようだった。数歩歩いたところで、遂に完全崩壊が起こった。肉体が崩れ落ちると同時に、真赤な閃光が四方八方に放たれる。瘴気が噴煙のように立ち昇った。そのとき魔封洞のあった岩壁が、轟音とともに崩落を始めた。影の残骸も、その土砂の下へと埋め尽くされて行った。


続く
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 魔封洞内部は大混乱に陥って、司令室の騒ぎに駆けつける兵士もいなかった。レナが手枷と鎖に絡まれ身動きの取れないまま叫んだ。

「降伏すらなら、被害も小さい今のうちよっ!」

「降伏だと?我等の力を見てから言うのだな!」

ジザードが祭壇に駆け寄る。オグルと死闘中の首領が叫んだ。

「やめろっ、まだ無理だ!」

「もう今しか無いわ!ここで失敗すれば、貴様の野望も終わりなのだぞ。それっ!」

ジザードは祭壇めがけて水晶球を投げつけた。祭壇は崩れ、目には見えない何かが切り裂かれる感覚がした。

「勇者の封印は解かれ、目覚めるべき時が来た。その闇の体を顕し、その暗黒の力を示せ、…”飢えたる赤き眼”、悪鬼ダウロンの復活だ!!」

繭が激しく蠢き、表面が破れ裂けた。噴煙のように瘴気が立ち昇って、空洞を覆い視界を塞いだ。そして、中からそれが姿を現した。

 ***

 それは人の形をしていたが遥かに大きく、頭部からは二本の角が生えていた。濃密な闇が固化したような漆黒の体は瘴気を纏い、輪郭は揺らめき定まらなかった。風の唸りのような咆哮をあげると二つの明かりが顔に燈った。禍々しい光を放つ真赤な眼だ。それは長い手を伸ばすと、足元を逃げ惑う兵士達を鷲づかみにした。眼の下に裂け目が開いて、兵士達を飲み込んで行った。

「良いぞ。さあ、敗れても滅びることのなかった、おまえの力を解き放つのだ!」

空洞の壁面には巨大な石の扉が設けられていた。殺到する仲間を無視して外から閉じられようとしている。兵士達を貪っていたダウロンは、そちらへ向きを変えた。扉は今にも閂がかけられるところだ。ダウロンの眼が輝きを増す。突如として閃光が走り、魔封洞中に爆風と破壊音が轟いた。扉は周りの人もろとも跡形も無く消し飛んでいた。ダウロンはゆっくりと歩き出した。その体からはぼたぼたと肉片が溶け落ちて行った。

「行け!今こそ出でて、真の主の姿を知らしめよ。そして愚かな人間どもに、破滅を!」

「スサク、そいつを外に出すな!」

 突風が空洞内に吹き起こり、風の壁となってダウロンの行く手をふさいだ。ダウロンの眼から閃光がほとばしる。それは空を切り裂き洞窟の内部を打ち砕いた。

「起きたらこんな事に…。レナさん、大丈夫ですか?」

「アシュウィン、後ろっ!」

ようやく意識を取り戻したアシュウィンの背後から、ジザードが短剣を持って飛びかかった。杖で払ってアシュウィンは寸前で攻撃をかわす。

「小僧、ジンを操るのか!何故、邪魔をする?ジン使いならば我等の仲間では無いのか!?」

「何?どういう…。」

質問が終わる前にジザードは再び襲いかかった。その敏捷な動きにアシュウィンは避けながらも体勢を崩して倒れた。

「逆らう奴は皆敵だ!この刃には毒が塗ってあってな、その体でいつまで逃げ切れるかな?」

次の攻撃に移ろうとジザードが身構える。アシュウィンは右手を差し伸ばした。一見、許しを請う姿勢にも見えた。ジザードが地面を蹴った。

 ***

 一瞬後、ジザードは倒れ崩れた。アシュウィンの手から血が流れ出ている。皮膚を裂いて矢尻が発射され、ジザードを貫いたのだ。アシュウィンはジザードの元に駆け寄った。仮面がはずれ、爬虫類のような顔が露わになっている。まだ息があった。

「…まさか、己が身の内部に武器を仕込むとは…。」

「余計なことは良い。僕について話してくれ。」

「…おまえのことなぞ知るか!」

「何故ジン使いを仲間だと言う?教えるんだ!」

「…我等が主(あるじ)、四大魔王の一人、魔神王様は、ジンを使役なさるのだ。おまえもそれだけの力を持っていたら、いずれ人の世では暮らせまいぞ。…それならば、我等の元に…。」

突如目の前を影が遮り、アシュウィンは飛び退いた。さらに詰め寄る影を、右手から突き出た刃で斬り払う。影はふわりと距離を取った。黒衣に白い仮面、その影はゾアだった。

 一方その頃、オグルと首領の対決も決着がついていた。首領は兜を砕かれ地面に倒れた。オグルが呟いた。

「やはり…、おまえだったか。」

首領の正体は、ラーナティアの副王ラグオスだった。


続く
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 このまま落ちれば全員即死だろう。そのとき女兵士の背中から、コウモリに似た黒い翼が伸び広がった。激しく羽ばたき三人の落下が止まる。

「お、重い!ゲオルグ、引き上げてくれっ!」

「ほいよ。」

毛の密生した手がアシュウィンとレナをつかみ、軽々と窓の中に引き入れた。昼の大男だった。

「ひー、危なかった。」

「平気か、姐御?」

中へ戻ってきた女兵士の頭には、先の尖った長い耳が見えた。覆面をはずした大男の顔は山犬そのものだ。二人とも人間の姿では無かった。

「えーと、助けてもらって、ありがとうございます。」

「本当に、感謝の言葉も無いくらい。」

アシュウィンとレナは口々に礼を言った。

「全く、気を付けてくれよ。」

「はい、以後決してこんなことは。では先を急ぎますので…。」

「おお、じゃあな。」

立ち去る二人を見送る女兵士に大男が尋ねた。

「…行かせて良いのか?」

「え?あっ、待てー!!」

アシュウィンとレナは脱兎の如く駆け出した。

 ***

 逃げ回るなか目にする魔封洞の兵士達は、角や牙、毛や鱗を生やし全員異形の姿をしていた。数の増える追手を撒いて何処をどう駆け巡ったか、アシュウィンとレナは司令室に飛び込んだ。

「あっ、お前らは!!」

「ラーナティアを脅かす影め、覚悟!」

ジザードが声を上げレナが剣を抜く。だがそのわずかな隙に首領が距離を詰めていた。

「スサクッ、…ぐぅ。」

アシュウィンの鳩尾を突きレナの腕を捻り上げ剣を奪う。瞬く間も無い早業だった。アシュウィンは気を失い倒れた。

「これはレナ姫、先ほどは気付かずご無礼をば。今度こそ丁重にもてなしましょうぞ。…そこの鎖につないでくだされ!」

祭壇の横に手枷の付いた鎖が吊るされて、その先は仕切りの向こうに伸びていた。首領は無言でレナに手枷をはめた。

「ちょっと、要求に従って来てやったのに、この対応は何!?」

「何が従ってだ!じゃが貴様には特別に拝ませてやろう。魔封洞の深部に眠り続けた、偉大な闇の力の結晶…、悪鬼ダウロンの姿を!!」

音を立てて仕切りが下がり、その向こうに広い空洞が現れた。そこには繭に似た巨大な黒い球体があった。中に透ける影の姿は人の形にも見えた。

 ***

 球体の周りには作業する大勢の人影が動き、それと比較しても闇の繭の巨大さが見て取れた。

「今や復活の刻は間近。かつて闇の勢力を率いて戦った強大な存在が、我等の求めに応じ再びこの地に君臨されるのじゃ!」

「馬鹿じゃないの?そんな邪悪なものを甦らせてどうする気よ!?」

「愚かなのは貴様らの方だ!強き者が世を統べるのが自然の習い。それを狡猾にも掠め盗って、まるで自分の物にした気でおる貴様ら人間どもこそな!だがもうそれも終わり、この世が真の所有者の元に返る日が来たのだ!」

「…あなた達、人間じゃ無いのね!?」

「そうとも!我等こそは本来の土地を奪われ追われた、闇の勢力の末裔だ!そして長い潜伏を経て再結集し、遂に立ち上がったのだ、…世界を我が手に取り戻す戦いに!!その手始めがこのラーナティアよ!」

 そのとき息せき切って兵士が駆け込んで来た。

「た、大変です!」

「何だ?賊ならもう捕えたぞ。」

「違います!…ラーナティアの軍勢が攻め込んできました!!」

首領が兵士達の指示へ走る。その背中へ向けてジザードは叫んだ。

「何故だ、話が違うではないか!?…かくなる上は予定が狂ったが、まずおまえを始末してやる!勇者の血筋なら生け贄には打って付けじゃわいっ!」

ジザードが留め金をはずすと、レナをつないだ鎖が空洞の方へ引張られ始めた。それに呼応して繭が不気味に蠢き出す。

「な…、誰か、止めてー!…って、あんたはいつまで寝てるのよ!?アシュウィーン、アーッシュ!!」

しかしアシュウィンは気絶したままだ。そのとき部屋の中へ巨大な人影が飛び込んできた。

「伝家の宝刀!!」

レナの鎖を一撃で断ち切る。首領が駆け戻り、二人は激しく剣を交え出した。ジザードとレナが同時に声をあげた。

「貴様は…!?」

「お父様っ!!」

人影はラーナティア王オグルだった。


続く
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