Isanan の駄文ブログ

… 自作小説(?)やら何やらの駄文を、気が向いたときにだらだらと書き連ねて行くブログです


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 城のほど近く巨木のそびえる丘。今、その根元にできた広い空洞にアシュウィンとレナはいた。

「…部屋みたいだ。ここは探しに来ないんですか?」

レナがランプに火を灯しながら答えた。

「この巨木には、ラーナティア建国の際に勇者が植えたものだと言う伝説があるの。国の象徴として大切に管理されていて周辺は立ち入り禁止。こんな空洞があること自体誰も知らないわ。」

「だから安心して隠れていられると。この後はどうします?」

「夜になれば闇にまぎれて簡単に抜け出せるわ。こっちにあまり人数を割ける状況でもないから。ただし…。」

「じゃあ、もう暗いし、僕はそろそろ行こうかな。…ただし何でしょう?」

レナは出口の前に立ち進路をふさいだ。

「ただしね、あんたをこのまま行かせるわけには行かないわ!」

「え、え、何の真似です?僕は何も悪いことは…。」

「とぼけないでっ!さっきのはいったい何?…思えばあんたと会ってからおかしなことばかり。ちゃんと説明するまで、ここからは出さないわ!」

気色ばんで詰め寄るレナに、アシュウィンは頭を掻いた。

「うーん。手品や偶然では、納得してくれませんか?」

「何なら、体に聞いてあげても良いのよ?」

レナは目が本気だった。

「わ、わかりました。言います。…あれは、手伝ってもらったんです。友達に。」

「友達?…え?」

アシュウィンは周囲を見回した。その目は何も無い空間を捉えていた。

「もう会ってはいますが、挨拶がまだでしたね。紹介しましょう。僕の友達、スサクです。」

その声とともに、空洞の中に突如として旋風が巻き起こった。外から吹き込んでくるのではなく、空気が自ずから流れ動いていた。風にあおられレナが驚愕の声をあげた。

「な、…!?…まさかこれって、…ジン?」

 ジンとは精霊や魔神とも呼ばれる、目には見えない意思ある存在のことである。人知を超えた力で様々な自然現象を起こし、崇拝の対象にもなった。だが魔神の別名の示す通り、一般的には畏怖すべきものとされていた。アシュウィンは小さくうなずいた。

 ***

 しばらく無言で立ち尽くしていたレナだが、風もやんでようやく口を開いた。

「…あなた、何者なの?」

「それは…、どう言えば良いかな。…ちょっとこの手を触ってみてもらえますか?」

差し出された右手にレナは触れた。それは冷たく、固い感触がした。

「僕は、中身が半分だけの人間なんです。」

アシュウィンは白くなった右の前髪をかきあげた。その右眼には光がなく暗い淵を覗き込むかの如くだった。

「この右の体には意識が通ってなくて、感じもしないし自由にも動きません。今ではだいぶ動かせるようにはなりましたが。それでもいろいろと不便が残っていて、この旅を続ける間もスサクには随分助けてもらっているんです。…ねっ?」

その言葉に風がランプを揺らして答えた。レナはさらに尋ねた。

「旅って、いったい何の…?」

一瞬アシュウィンは遠い目をした。

「探している、ものがあるんです。そのための旅です。」

「探しもの?」

「そうです。それは…。」

「それは?」

「それは…、忘れちゃいました。」

「な、何よそれっ!?」

レナの大声が空洞に反響した。

「すみません。僕は記憶の方も半分だけで、何を探しているのか自分でも覚えていないんです。だから何故こう言う体なのか、どうやってスサクと知り合ったのかもさーっぱり。ははははは。」

「…あなたって、本当にあきれた奴なのね。」

心底力が抜けたと言う表情でレナは呟いた。

「さてと、もう出発しても良い頃かな。でもその前に…。」

「その前に?」

「その前に、今度はレナさんが話す番ですよ。多分次の行く先も一緒でしょうし、教えてくれて良いんじゃないですか?あなたが何者で、何をするつもりなのかを。」

 レナは言葉に詰まったが、やがて決然と言い放った。

「私はレナ姫、ラーナティア王オグルの娘。そして今より魔封洞に赴いて、この国の平和を乱すあの一団を倒しに行くところよ!」

レナはマントを広げた。腰には王家の紋章の刻まれた短剣が差されていた。


(次回予告)
 再び魔封洞に赴いたアシュウィン達。遂に謎の集団の正体が明らかに。そこで進展する恐るべき野望を二人は食い止めることができるのか!?
…次回「闇との対決
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 アシュウィンは今度は城の地下へと連行され、地下牢に向かっているようだった。脇の男にアシュウィンが尋ねた。

「あのー、僕は状況がよく飲み込めてないんですけど。今、正面におられたのが国王陛下で、途中で来られた方は…?」

「副王殿下のことか?あの方はオグル王の弟君のラグオス様だ。大変な切れ者で、この国の内政も外交も一手に仕切っておられる人だ。」

「なるほど。それで攻略とか要求とか、いったい何の話なんですか?」

男はじっとアシュウィンを睨んだ。

「魔封洞の謎の一団のことは貴様も知っているな。それに対する攻略の準備を整えた。そう言うことだ。そして要求とは、連中が愚かにも突きつけてきたあれのことだ。攻撃されたくなければ、この国の姫君を差し出せなどと。そのようなこと応じられるはずも無い。何と言っても姫君は、亡き王妃の唯一の忘れ形見なのだからな。」

「そうだったんですか。すると、王様は独り身のままで?」

「オグル様は武勇に優れて実は賢明な名君なのだが、あの容姿のせいか新たなお相手が現れないのだ。まあ御自身も、亡くなられたお妃様を忘れられないのかもしれないがな。まことにお美しい方であらせられたから。ラグオス様の方は浮き名を流すばかりで、独身貴族を決め込んで身を固められる様子も無い。今までは別に構わなかったが、こういう事態になると少々困るな。」

「ふーん。それで、お姫様はどのような方なんでしょう?」

そのとき一行は牢に着いた。男の一人が鍵を開けた。

「さあ、無駄話はお終いだ。しばらくここでおとなしくしておくのだな。」

 ***

 錠を下ろすと男達は去って行った。アシュウィンは大きくため息をついて呟いた。

「やれやれ、今日は本当についてない日だよね。逃げたかと思えば捕まりまた逃げたかと思えば捕まって、一日に二度も牢屋に連れて来られるなんて!…ここも何とかならないものかな。」

アシュウィンは上を見上げた。明かり取りの窓があったが、垂直な石壁の最上部にありとても登れそうにない。

「それにしてもどう思う?魔封洞のあの様子、気になることばかりだ。一団の正体、怪音の謎、ダウロンとは…?姫君を要求したと言うけど、いったい活動の目的は何なのか。これはどうしても、もう一度探りに行く必要が…、おや?」

そのとき物音がして、窓の鉄格子がはずれ縄が下りてきた。アシュウィンは杖を片手にそれを器用に伝い上った。

「やあ、もうてっきり見捨てられたものかとばかり。まさか助けに来てくれるなんて。」

「ふん。さすがにあのまま放っておけないわよ。」

窓を抜けて地上に這い出ると、そこにはレナが待っていた。

 ***

 前を行くレナに従ってアシュウィンも城の中を進み出した。狭く細い物陰や隙間を隠れ通り、衛兵の目をかいくぐって二人は進んだ。裏庭に出たとき、城内が騒然とし始めた。

「…ばれましたかね?」

「そうみたい。急いで!」

 繁みを抜けて二人は城壁に近付いた。衛兵達の喧騒が徐々に大きさを増して聞こえる。レナは城壁の暗がりにとりつき、立てかけてあった板を除けた。

「ああっ!!」

「どうしたんですか?」

「抜け道がふさがれてる…!」

そこにはごく最近に穴が補修された跡があった。壁の高さはとても人間が越えられるようなものでは無い。足音と人声が迫っていた。

「もうー、あいつらーっ!…どうすれば良いの!?」

「…どうかな?ちょっと高くて二人だけど、これぐらいなら平気だよね。」

「何を言ってるのよ?あんたも逃げ道でも考えて!」

すぐそこまで追手が来ていた。アシュウィンはいきなりレナを抱き寄せた。

「な、何を!?」

「行きますよ、つかまって。さあ、スサクッ!」

そのとき一陣の突風が巻き起こり、風に乗って二人の体が高く舞い上がった。下の地上から驚きの叫び声が聞こえた。二人はそのまま城壁を飛び越えると、風に支えられて向こう側にふわりと着地した。

 レナは呆然とアシュウィンを見つめた。周囲はもう夕闇に包まれ出していた。アシュウィンは微笑み返して言った。

「今度は何処へ行くんですか、レナさん?」


続く
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(今までの話)
魔封洞に囚われたアシュウィンとレナは、内部が要塞と化しているのを知る。生け贄にされるのを何とか脱出した二人だったが、レナを追う一団にアシュウィンだけ捕まってしまう。…



 アシュウィンを連れた男達は、ラーナティアの中心部へ向けて進み始めた。やがて森や畑を抜けて素朴な石造りの建物の並ぶ町へと入った。そして町中を歩き巨木のそびえる丘をまわると、白壁の城が見えてきた。

「あのー、ここは?」

「ラーナティアの王城だ。黙って歩け!」

城門に着くと衛兵が門を開けた。一行はそのまま城の中へと入り進んで行った。

 ***

 アシュウィンは両脇を屈強な男達にかためられたまま、広い部屋へと通された。正面の一段高くなった場所に椅子が置かれ、男が一人座っていた。

「国王陛下、魔封洞周辺にて怪しい奴を捕えて参りました。」

「うむ。」

王と呼ばれた男は厚い瞼の奥からアシュウィンを見下ろした。頬髭を伸ばした、鍾馗のような厳つい外見の大男だった。襟や袖から覗く手首や首筋には筋肉が盛り上がり、突き出た腹も脂肪で無いことが見て取れた。王よりはむしろ武人、さらには赤鬼か大型類人猿と言った印象があった。威圧感は高かったが、禿げ上がった額に小さな王冠を載せ玉座に巨躯を縮めた姿には何やら滑稽さも感じられた。

「で、あれの方は?」

「は、それが残念ながら逃げられまして…。こやつも妨害に関わった疑いがございます。」

王は傍らの口髭の老人に尋ねた。

「大臣、どう思う。」

「そうですな。まあ、確かに怪しくはありますな。」

「いえいえ、決して怪しい者ではありません。無害な旅行者で、ただ土地の事情に疎いだけにございます。」

アシュウィンが口を挟んだ。王はしばし沈黙した。

「うーむ。…手打ちにでもするか。」

そう言うと腰の刀に手をかけた。

「陛下、そのような者に、伝家の宝刀を抜かれることもありませんぞ!」

 そのとき部屋の中へ入り進む人があった。長身を立派な服装に包み、端正な顔立ちに年齢が知性と気品を重ねていた。

「おお、ラグオス。戻ったか。」

「魔封洞攻略の準備、万端に整いました。あとは陛下さえご決断くだされば、いつでも決行するのみに。」

「うむ。で、奴等の正体は?」

ラグオスと呼ばれた人物は笑みを浮かべて答えた。

「おおかた盗賊の類いが集まって、伝説の威を借りんと悪巧みしただけの輩と見ましたな。小国とは言えこのラーナティアが、まともに相手にすべき連中でもありますまい。…まさか陛下は、奴等の要求を飲もうなどと思っているわけでは…?」

「む…、無論それはない。」

「さようでしょう!可愛い姫君を、あのような者達に差し与えられるはずもない。となれば、攻め戦うしか選択肢はありませんぞ。」

「確かにそうだが…。」

「まあ、全ては陛下のお決めになることです。では他の仕事が残っておりますので、これにて御免!」

 ラグオスは踵(きびす)を返して部屋から去った。王は深くため息をついた。

「うーむ、どうしたものか…。」

「陛下、この者の措置は?」

「おお、そうだったな。」

思い起こしたように王はアシュウィンを見た。

「罪無き無力であわれな旅人にございます。慈悲深き王の、寛大なるお裁きを…。」

「絞首刑に処する。それまで、牢に放り込んでおけ。」

「そ、そんなー。むごすぎですよー。」

アシュウィンは両脇を抱えた男達に引きずられて、部屋を後にして行った。


続く
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 その音を聞くと、女兵士も大男も一様に暗く押し黙った。肩をすくめてぞっとしない風情だった。

「ほら、ついたぞ。おい、鍵を取って来てくれ。」

大男は引き綱を女兵士にわたすとその場を離れた。女兵士も牢の方を向いて二人から注意が逸れている。レナが一瞬、駆け出す姿勢を見せた。アシュウィンがそこにぴたりと体を寄せる。制止したようだった。

「ところで松明が焚いてありますけど、中の空気が悪くなったりはしないんですか?」

「窓や空気取りの穴は結構開いているのさ。巧妙に隠してあるけどな。」

「なるほど。あのー、そろそろ杖を返してもらえると嬉しいのですが…。」

「ん、ほらよ。」

そのとき戻ってきた大男が叫んだ。

「そいつら、縄が切れてるぞ!」

女兵士が振り向くと、自由になった二人が逃げ出すところだった。

「こらっ、待て!…う、うわ!?」

追いかけようとした女兵士は足に縄が絡まって転倒した。大男はそれを踏みそうになり慌てて足を止める。

「ねえっ、これからどうする気!?」

「僕について来てください。」

アシュウィンとレナは速度を上げて洞窟の中を走った。何個目かの角を曲がったときだ。

「行き止まりじゃない!」

「良いからっ。」

後ろからは猛然と大男が追って来ていた。岩壁でふさがれているとしか見えない通路を二人は駆け進んだ。今にも追いつかれそうな瞬間、

「伏せてっ!」

アシュウィンとレナは地面に伏せた。そのとき岩壁が窓のようにいきなり開き、突風が吹き込んできた。大男はたまらず後退った。

「行きましょう。」

二人は窓から外へ飛び出して、そこに面した細い谷道に着地した。そのまま逃走する。後ろからは女兵士と大男の声が響いた。

「何やってんだ、早く追えっ!おまえも外へ出るんだよ!」

「おお、押すなって。この窓じゃ小さ過ぎて、俺は通れないって。」

「急げー!逃げられちゃうだろ!!」

「だから押すなってば!姐御が先に行けば良いんだって…。」

アシュウィンとレナは走り下ってその場を離れた。やがて声も遠のいて聞こえなくなり、二人はようやく足を止めた。そのまま周囲の様子を窺う。追手の気配は無い。どうやら逃走に成功したようだった。

 ***

「何とか、逃げ延びられたのかしら。」

「そうみたいですね。良かった、良かった。」

 息を弾ませつつレナが言い、アシュウィンも呼吸を整えながら答えた。その顔をレナがじっと見た。

「ねえ、さっきはいったいどうやって…。」

「でもまだ安心できないから、先を急ぎましょう。さあ、早く。」

「ちょっと待ちなさいよ!…あら、どうしたの?血が出てるじゃない。」

「え、いや、これは…。」

アシュウィンの右手からは血が流れ出ていた。よく見ればその腕はあちこちに包帯が巻かれ傷痕が残っていた。

「大丈夫?結構酷いんじゃないの?見せてみて。」

「いいえ、全然平気です。気になさらずに。」

「何言ってるのよ!怪我してるのに放っておけないわ。見せなさいっ!」

「わわっ!?やめて、暴力反対!…待ってください。あの音は?」

 二人の来たのと反対方向から足音が聞こえた。多人数の話し声も近付いてきていた。

「追手ですかね?」

「いや、あれは…違うわ!お願い、何とか追い払っておいて!」

そう言うとレナは近くの岩陰に慌てて隠れた。

「はい?」

そのとき足音の主達が姿を現した。最初にレナを包囲していた一団だった。

「ああっ、貴様は!」

「やあ、これはどうも。またお会いしましたね。」

一団はアシュウィンを取り囲んだ。

「おい、一緒に逃げたのはどうした?」

「えーと、あの人ならすぐそこ…、すぐ速攻で別れたの知りません、はい。」

「それで、貴様はここで何をしているんだ?」

「いやー、…特に何も。」

男達は顔を見合わせた。

「怪しい奴だな。貴様を連行する!おとなしくついて来いっ!」

「え、え?えーと、こういう場合はどうすれば良いんですかー?」

返事は無かった。

「何を言っておるんだ?話は後で聞く。逆らうのなら容赦せんぞ!」

男達に囲まれて、アシュウィンは強引に連れ去られて行ってしまった。


(次回予告)
アシュウィンの連れて行かれた先とは?そこでアシュウィンはこの国の直面した問題を知る。
…次回「ラーナティアの王城
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(今までの話)
 ラーナティアを訪れたアシュウィンはレナと言う少女を助ける。一緒に魔封洞に向かった二人だったが、そこを占拠した謎の一団に捕まってしまう。…



 その部屋は床も壁も天井も岩でできていた。いや、むしろ岩をくりぬいて造ったと言う方が正確か。ここは魔封洞内部。地図の広げられた大きな長卓が置かれ、どうも作戦室、司令室のようだ。覆面を着けた人々があわただしく行き来している。部屋の一辺には祭壇が組まれ、そこに髑髏の仮面の下からひげを伸ばした黒ローブの老人が立っていた。祭壇の向こうは仕切りで隠されていたが、さらに空洞につながっている様子だ。そのときその空洞の方から、不気味な音が響き聞こえてきた。洞窟中に鳴り響くその音は、風の唸りにも生き物の息遣いにも似ていた。部屋にいた人々は怯えと不安を露わにその方から目をそらしたが、黒衣の老人だけは満足そうな忍び嗤いをもらした。

 そのとき祭壇の傍らに置かれた水晶球が明滅し始めた。老人は駆け寄ると、それへ向けて話し出した。

「…ははー、はい、計画は着々と進んでおります。成功はもはや時間の問題。ラーナティアの連中など、恐れるにも値しますまい。無論、あれの方も順調に…。」

老人は水晶球に対して敬うように礼をしながら会話を続けた。

「は、何と?ゾア様みずから視察に訪れられると!もったいなきこと。その期待に応えられますよう、さらに念入りかつ速度を上げて準備に取り組ませていただきます。そして、必ずやこの地で我等の悲願達成を…!」

水晶球の光は消えた。老人はそのまま何度も深くお辞儀を繰り返した。そこに新たに数人が部屋へ入って来た。

「ジザード様、怪しい奴等を捕まえてきました。」

アシュウィンとレナが、後ろ手に縛られて連行されて来たのだった。

 ***

「なんじゃ、こやつらは?」

「外からここの様子を窺っておりました。どうしましょうか?」

「ふむ…。」

 ジザードと呼ばれた老人は近付くと、まずアシュウィンを睨(ね)めまわして見た。

「妙ちくりんな小僧だな。ふん、力仕事の役には立ちそうも無い。奴隷にする価値すら無さそうじゃわい!」

アシュウィンは笑顔を作って応えた。

「いやー、驚いちゃいました。まさか魔封洞の中が、こんなに広くて整備されているなんて。とても良いお住まいですね。」

「まあ、それを知ったからには、生きてここを出すわけにはいかんのじゃがな、ひっひっひ…。」

次にジザードはレナの方を向いた。

「こっちは小娘か!しかもまた色気の無い。…じゃが良く見れば、素材はまあまあじゃな。何なら悪くしない手もあるのじゃぞ。わしだって年はとったとは言えまだまだ…。ん、おまえは…。」

「じろじろ見るなヒヒ爺いっ!!」

レナの強烈な蹴りが炸裂して、ジザードは部屋の隅まで吹き飛ばされた。

「だ、大丈夫ですか、ジザード様!?」

「げ、げふっ。…おのれー、クソ餓鬼どもがっ。こいつらは、ダウロン復活のための捧げものに供する!それまで、牢屋に閉じ込めておけ!!」

 ***

 アシュウィンとレナは前後を女兵士と大男に挟まれて連行された。洞窟の廊下は所々に松明が燈してあったが薄暗かった。アシュウィンは女兵士に話しかけた。

「魔封洞って、てっきり天然の洞窟なのかと思っていました。中はすごいですね。でも、いつ誰がこんなのを造ったんでしょう?」

「すごいだろ!外から見ても分からないけど、ここは要塞になってるのさ。しかも建造は遥か昔、それこそ勇者と闇の勢力の戦いの時代までさかのぼろうかって言う代物だぜ。まあ、どうやって造ったのかは、今となっては知りようも無いけどな。」

女兵士はすっぽりと頭巾をかぶっていたが顔は出ていて、赤毛の髪と鋭い目元が見えた。大男の方は完全に覆面をしていて、面頬でも付けているのかその下が奇妙に突き出していた。

「へー、そんな年代物にはとても見えませんね。…ところでさっきの人、ダウロンって言ってましたけど、それっていったい何のことなんですか?」

「ん?…ああ、あれか。あれはな…。」

「姐御、そこまでは…。」

大男に促されて女兵士は答えるのを躊躇した。そのとき洞窟の中に、また息遣いに似た怪音が響き渡った。


続く
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