Isanan の駄文ブログ

… 自作小説(?)やら何やらの駄文を、気が向いたときにだらだらと書き連ねて行くブログです

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 あなたは少女の方を見つめた。闇と霧で、ほんのわずかな距離に、触れ合っているほど近くにいるにも関わらず、あなたには少女の顔の表情すらも見て取ることができなかった。あなたは何も言わず、静寂と時間だけが森の中に流れて行った。やがてあなたを押さえていた少女の手が緩み、力が抜けたように息を吐くのが聞こえた。笑ったようだった。

「ふっ、分かってはいたが、やっぱりおまえは馬鹿な奴だ。好きにするのだな。」

 あなたは松明に火をつけた。明かりに浮かんだ少女の姿からは、今までと違った様子は見受けられなかった。二人は歩き出し、森の中へと足を進めた。

「こんな話を、聞いたことはあるか?」

 少女は歩きながら話し始めた。森は霧に閉ざされてその姿を隠し、あなたの前には霞のかかった闇が進むのに合わせて現われ出た。少女の言葉は続いた。

「森の秘宝にまつわる、古い言い伝えだ。秘宝を求めた姉妹の身に起こった、それは哀しい伝説…。」


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 あなたは一瞬、前に立つ少女を押しのけようとした。しかしそうはしなかった。何かが近付いてくる気配を感じたからだ。あなたは松明の尽きかけの炎を地面に押し付けて完全に消し、少女のうながすままに岩陰の空間へと二人で身を隠した。

 それは岩ではなく、もしかすると遺跡の中の小部屋なのかもしれない。何にしてもその空間の中であなたと少女はじっと息をひそめた。すると遠くの方から息遣いの音が聞こえてきた。やはり魔物が近付いて来ていたのだ。狭く闇に閉ざされた空間の中で、二人は身を寄せ合って魔物が行き過ぎるのを待った。静寂の中に、呼吸音だけが徐々に大きさを増して響いて来た。そしていよいよ魔物は二人のいる岩の横にまで迫った。魔物はそこで止まった。あなたは心臓が張り裂けんばかりに拍動して、その場から逃げ出したいという強い衝動にかられた。

 そのとき少女が体を押し付けてきた。あなたの気持ちを察して制止する意図があったのかは分からない。だがあなたは我に返り、心を落ち付け始めた。そのうち魔物は再び動き出し、また何処かへと去って行ったようだった。だが魔物の気配が消え再び周囲が静寂に満たされても、まだあなたの胸の鼓動はしばらく収まることがなかった。

 もう魔物が戻ってくる様子も無かったので、あなたは空間の外へ出ようと立ち上がった。だが少女がそれを押しとどめて制した。あなたと少女は暗闇の中で向かい合った。少女は言った。

「何故だ?何故そこまでして…。このままならおまえの命も危ないのだぞ。もう良いだろう、もう充分だ。もう…、やめてくれ。」


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 黒髪の少女はあなたの元へと歩き寄ってきた。あなたは窪地の外へと出た。霧の森の中で二人は再会した。少女は口を開いた。

「…これではまだ足りそうに無いな。おまえはそんなに怪我をするのが好きなのか?」

少女はあなたの体を見回しながら呆れたような口調でそう言った。手には薬草であろう、何か植物が握られている。あなたの負傷箇所は別れた時よりもだいぶ数が増えていた。あなたは少女から薬草を受け取った。きりが無さそうなので傷の治療はしなかったが、薬草の発する香りを吸うだけでも体が軽くなるのを感じた。あなたは森の中を歩き出した。

「やれやれ、いったい何度同じことを繰り返せば気が済むのだ?素直に私の言う通りに…、やめた。おまえの頭には、こんなこと言うだけ無駄だったな。」

少女はあなたの後についてきて話を続けた。進んで行くと時に霧の中に木の根に覆われ苔むした石積みや石柱が現れ出た。それは長い年月を経て森と同化し、今やその一部となっていた。

「それにしてもまさか生きているとは。おまえはよほど悪運が強いようだな。まあ、その様子を見る限り、全く無事だったわけでも無いだろうが。森の中を這いずり回り魔物に追いかけられて、何回命を落としそうになったのだ?それでもまだ…、本当に御苦労なことだ。」

 あなたは松明を見た。火の勢いが弱まり明るさも落ちてきていたが、残りの数を考えるとなるべく長くもたせたかった。もっとも深い霧のせいで見通しが効かず、明かりがあっても手探りで進んでもあまり変わらない状況かもしれない。

「…なあ、もう良いのではないか?これがおそらく最後の機会だぞ。こんなことを何時までも続けられるとは、自分でも思っていないだろう。…秘宝を探すのをやめても、もう良いのではないか?」

 あなたは答えず、そのまま歩き続けた。そのときだ。少女があなたの前に出て、行く手に立ちふさがった。


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 霧の中に動く影が見えた。闇と視界の悪さが手伝って、それがどれくらいの距離にいてどれほどの大きさなのかも最初は判然としなかった。だがやがてそれが人影だとあなたにも認識できるようになった。人影はあなたの方へ近付いてきた。向こうもあなたに気が付いたようだ。徐々に影の姿がはっきりしてきて、聞き覚えのある声が響いた。

「おまえだったのか。もう死んだとばかり思っていたぞ。」

 闇と霧に閉ざされた森の中から現れたのは、それは黒髪の少女だった。


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 あなたは少女の方を見つめた。霧と闇で、手を伸ばせば触れるほどの近さに、実際触れ合っているほど近くにいるにも関わらず、少女の顔の表情すらも見て取ることができなかった。あなたは何も言わず、静寂と時間だけが森の中に流れた。やがてつかんだ少女の手が緩んで、力が抜けたように息を吐くのが聞こえた。笑ったようだった。

「ごめんなさい。言ってみただけですよ。答えはわかってましたから。」

 少女は言った。あなたは松明に火をつけた。明かりに浮かんだ少女の姿に、今までと変わったところは見受けられなかった。あなたと少女は二人で森の中に歩き出した。

「聞いてもらいたい、話があるんです。」

 少女は歩きながら話し始めた。森は霧に閉ざされてその姿を隠し、あなたの前には霞のかかった闇が進むのに合わせて現われ出た。少女の言葉は続いた。

「私の聞いた、森の秘宝にまつわる古い言い伝えです。秘宝を求めた姉妹の身に起きた、それは哀しい伝説…。」


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