Isanan の駄文ブログ

… 自作小説(?)やら何やらの駄文を、気が向いたときにだらだらと書き連ねて行くブログです


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 決死の覚悟で手を放したあなただったが、落下は一瞬で済んで地面に着いた。斜面はもう終わりのようだった。拍子抜けしたが休む暇は無い。落石はまだ続いており、魔物の動向を確認することもできなかった。周りは完全に闇につつまれている。あなたは暗闇の中を手探りで進んでその場を離れた。

 ほどなくあなたは自分の進んでいる場所が地表では無いことに気が付いた。どうやら斜面からそのまま地面に開いた穴に落ち込んでしまったようだった。だがそこは普通の洞窟でも無かった。壁や床の感触は、一面に木の根がはびこって確かには分からなかったが、石積みや石畳のものに似ていた。

 やがて上から微かに光の射し込むのが見えた。それは月明かりが地上の裂け目から洩れ覗いたものだった。崩落の音はもう聞こえず、魔物の気配も感じられなかった。あなたは松明を取り出すと火をつけた。裂け目の向こうに、夜空と森の木々をわずかに見ることができた。そしてそこからは無数の木の根が垂れ下がっている。あなたの前に、その木の根に覆われた石積みや石柱、石畳が現れた。松明の明かりに照らし出されたのは、地下に埋もれた古代の遺跡の姿だった。


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 洞窟は這い進むうちに徐々にまた広さを増していた。幸いにして行き止まりでは無さそうだ。落盤の震動も、もうほとんど感じられないほどにまで収まっている。洞窟の天井も高くなり、あなたも立って歩けるようになっていた。やがてあなたは洞窟を抜け出た。

あなたはその場で止まって辺りの様子をしばらく窺った。わずかに月と星の明かりが差し込んでいたが、樹幹の形作る森の影が随分上の方に見えていた。どうやら地面よりも一段低い場所に出たようだった。落盤も魔物も、その気配は無い。あなたは松明を取り出すと火をつけた。

 明かりに周囲の風景が浮かびあがった。思った通りそこは半地下とでも言うべき空間だった。地面はずっと高い位置にあり、そこに開いた穴から夜空と森の木々が覗いている。地表からは無数の木の根が垂れ下がっていた。そして地中には、その根に覆われて石積みや石柱が立ち並ぶのが見えた。あなたの足元には石畳が敷き詰められている。目の前に広がっていたのは、地下に埋もれた古代の遺跡の姿だった。


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 あなたは少女を追いかけようとした。だがそれだけの体力が今のあなたには無かった。あなたは倒れるように座り込んだ。あまりにも多くのことに森に入ってから出会って来ていた。命がけで逃れた危険の数々、想像もできないような怪異、そして様々な不思議な経験…。だがあなたはまだ目的を達していない。秘宝を見つけ出すという決意には依然として変わりがなかった。そしてそのためには、これからもなお森を進み続ける必要があった。そこに待ち受けるものが何かは分からなくてもだ。しかし今は休むべき時だった。

 少女の使った薬草からは奇妙な香りがした。だがその香りを吸うと、不思議と体が軽くなるのをあなたは感じた。痛みも消え出血も止まったようだった。月明かりの射し込む静かな森の中に一人たたずみ、しばし時だけが流れて行った。だが何処へ行ったのか分からないが、少女が戻ってくる様子は今のところ無かった。あなたは体力も回復したので、少女の言葉に逆らうことになるが待たずに出発しようと決めた。立ち上がって松明に火をつけると、取りあえず少女の向かった方へと足を進めた。

 そのとき微かな音が響いてきた。それはあなたの進もうとする方向から聞こえていた。耳を澄ますと、それは規則正しく鳴る息遣いの音だと分かった。前方の闇の中に連なって輝く光が動くのが見えた。


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 あなたは少女を降ろした。周りを囲む森は相変わらず深い闇につつまれていたが、二人のいる場所は射し込む月明かりに照らし出されていた。少女は自分の体に付いた土埃を手で払うと、あなたを睨み付けて言い放った。

「何故助けた?本当に馬鹿な奴だな。」

そして鋭い視線を向けたまま、あなたの髪へと手をやってかき上げた。それは口調よりもずっと穏やかな、まるでいたわるような手付きだった。

「怪我をしているぞ、愚か者め。」

 落石が当たったのか、あなたの額から血が流れ出していた。少女は懐から薬草のような物を取り出すと、それを揉み潰して傷口に貼り付けた。さらに包帯も取り出してその上から巻き付けた。

「ふん。よくもこれだけこしらえたものだ。」

少女はそう言ってあなたの他の負傷箇所も治療し始めた。それらは今回の崩落だけで負ったのではなかった。この危険な森を進む上で必然的に生じたものであり、そして今後も増えて行くであろうものでもあった。その一つ一つを少女はいちいち悪態を吐きながら手当てして行った。

「全くきりがない。どうやったらここまで傷だらけになれるのだ?おまえのせいで薬草が無くなってしまったではないか!素直に言うことを聞いておけばこうはならないものを…。」

 少女はあなたに向かって声を荒げた。そして今度は黙り込み、腕を組んで何か考えている様子だった。

「新しく薬草を摘んでくる。おまえはそこで待っていろ。」

そう言うと少女は森の中へと一人で走り去って行った。


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 巨大な岩の破片はまるでおじぎでもするかのようにあなたと少女の二人へ倒れ掛かってきた。地面に伏せた状態のあなたに避ける術は無い。あなたは少女の上に被さったまま、そのときを覚悟した。

 だが一瞬経ってもあなたの予想に反して巨石に押し潰されることは無かった。その代わりに上から何かが引き千切られるような音が聞こえてきた。見上げると、岩は木の根が絡まってあなたの上に張り出すような形でその動きを止めていた。しかし木の根は重みに耐え兼ねて徐々に切れ、岩は今にも落下を再開しようとしている。あなたは立ち上がって少女を抱えあげると元来た方へと走り出した。直後に背後から轟音と震動が響いた。

 あなたは少女を抱きかかえたまま残りの坂道を駆け下った。それはもはや道とは呼べなくなっていた。ある所は崩れ落ちある所はふさがり、そして今も上から石や岩が降り注いで来ていた。それでもあなたは飛び越え乗り越え、そして落石を避けながら進んだ。松明はもう無く、月明かりだけが頼りだった。時には足元が崩れたり落石が体を掠めたりもした。だがあなたは足を止めることはなかった。

 遂にあなたは道を下り切った。しかしまだ落石が続いていたのでさらにそこから離れる必要があった。あなたは森の中へ飛び込んだ。ある程度行ってやや拓けた場所に出て、ようやくあなたは立ち止まった。どうやら安全な所までたどり着いたようだった。崩落の音もしばらくは響いていたが、やがて聞こえなくなった。森には再び静寂が戻ってきた。

「おい。」

 腕の中から少女が声をかけてきた。

「おい、そろそろ降ろせ。」


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