2006-01-26 17:42:09

さよなら 俺 03

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金木犀の香りがたちこめる季節に僕は出かけた。
全てを置いて小さな冒険を夢見て。
右から左へ流れていく目の前の景色は味のない料理のように思えた。


「僕」と「俺」


僕が俺を監視し、俺が僕を煽り立てる。

だいたいにおいてそういう不安定な時期が右へならえであるかのように
僕もある夜小さな事故にあった。

大した事故ではなかった。
壊れたバイクを引きずって片道30分の道を5時間かけて帰った。
家に着くなり僕は父親に電話をした。
そして大きく泣き崩れた。
情けなかった。
せかいでいちばんちいさないきものであるようにおもえた。

僕はそうして「俺」にさよならを告げた。
既に眩しい光が部屋に射し込んでいた。

いるかムービー
2005-07-21 22:20:13

さよなら 俺 02

テーマ:ブログ
何を焦っていたのか解らないこともないのだが
僕は『僕の不完全さ』を受け入れることがうまく出来なかった。
周りの全てが羨ましく、
少々極端だが、
世界中の僕以外の人間全てが
輝いているように見えた。

僕は居場所を求め、深夜の酒場やライブハウスやクラブだとか
1人CD50にまたがってあてもなく朝日が見えるまで徘徊した。
彷徨えばさまようほどに
世界は僕の手の届かないところにあるように思えた。

僕は『俺』を捨て去ることにした。

僕は『俺を形づくっている俺らしさ』を排除しようと考えた。
記憶のカスタマイズ。俺の再構築。

俺について整理してみる。

俺は平凡なサラリーマンの家庭の長男として
7歳までほぼ一人っ子同然に育てられた。
母は少々ヒステリックな傾向があり
一度火がつくと手の着けられない所があった。
小学2年生の俺を相手に喧嘩をして
家にしばらく戻ってこなかったこともある。
父は無口で感情を言葉にしない。
団塊特有の傾向なのかも知れないが
俺が何か問題を起こすと語らず
哀しそうな目をして俺を見るだけだった。
俺は絵が好きだった。
描くことがとても好きだった。
夢中になってずっと描いていた。
両親は動物園だとか遊園地だとかの写生大会に毎年連れていき
毎回何かしら受賞した。
俺はそれが嫌だった。
母親は進学に関しても彼女が諦めがつくまで
過剰な期待を俺に持った。
小学生のころは、苦手なスポーツ以外はまとまな成績をとるように努めた。
俺は物心ついた時から『俺はからっぽな人間だ』と証明して歩きたかった。
だから、期待をかけられれば必ず裏切るようにしたし
がっかりさせない程度に調整することにした。
期待されるのは嫌いだ。
俺は何も持ち合わせていない。
俺は俺の思うペースで俺の思うように生きたかった。
それでも、何故か教師は俺に期待をした。
母親は踊らされたようにそれを家庭に持ち込んだ。
仕方なった。
まだ俺は無力だった。
明るいニュースもあったし、
悪いこともあった。
それでも少年時代はそういうものだと
少年ながらに思っていた。
そういうごく小さな世界の中で
平凡に生まれ、ナイーブながらも育った。
俺は俺の中に手のつけられない程の『獣』を感じていた。
それは往々にして俺を悩まし
良くも悪くも俺を導いていた。
俺という器を脱ぎ捨てて、何もかも引き剥がしてしまったら
そんな哀しい『獣』がそこに居るのだった。

『獣』と心中をする覚悟で
俺は『俺』を抹殺しようと試みることにしたのだ。
2005-07-17 19:51:52

さよなら 俺 01

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夏が過ぎ去り秋になって冬が訪れる。
そういう当たり前のことを当たり前のように過ごしてきたのだが
一人暮らしを始めて知った季節もある。
僕はカメラを片手に腐るほど写真を撮り
寺社を巡り、街を歩き、風を飲み込み
すれ違うカップルを羨ましく思い
自転車を走らせ、バスに揺られ、目の前の景色を見る。
キンモクセイの香りがする。
季節と季節の間の
その季節。

新譜のレビューを書き、ポスターを貼り替える。
棚にCDを並べる。レジを打つ。
俺はここにいて世界は無関係に回っている。
映画を見る。
ビデオを見る。
ロックを聴く。
誰も僕の言葉や、世界から見たらほんのささやかな悩みや
つぶやきも、あくびも、ため息もサンプリングすることなく
毎日は平坦にループしている。

ネオンサインの中でスクロールロールしながら僕は再び生まれると
トム・ヨークは呟くように歌っている。
僕は再び生まれ変われるだろうか?
僕は一つ年を増やし、空白を知る。
1997年。

それは世界にたった一人の僕が
たった一人であるという事実を教えるには
十分過ぎるくらいの時間を僕に与えた。
2005-05-14 05:22:38

真夜中のドライブ

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富士山以来すっかりブヨブヨになった脳みそを携えた僕と猿は
「人生」というやみくもなテーマを居酒屋で追求することで
すっかり酔っぱらってしまっていた。
ビールを飲み続けたあげく、隣の席の女の子達に僕らは話しかけ続けた。
一人は大人しいOLといった雰囲気で、
もう一人の方は背が低く華奢な感じだが、なんというか力強かった。
ありきたりな話題と計画的な泥酔。
背が低い方の子はハルといって僕より5歳年上だった。
僕は学生で彼女は社会人で、僕は二十歳で彼女は二十五歳だった。
少しばかりうち解けた僕らは次の日ドライブをすることになった。

夜。

夜は何か魔力を持っている。
朝が来るとやっぱりそういう力は消え失せてしまう気がするから
夜をいつまでも引きのばしていたいと僕は思う。
現実に戻りたくないと思うからなのか
ただ単に夜が好きなのか。
夜は年を重ねてもスイートな秘密を口いっぱい含んでいて
魅力的であり続ける。

ドライブ。

僕には自動車の免許がない。
免許に興味がなければ僕は車にすら興味がない。
男のくせにと思ったりするが仕方がない。
まるで興味が沸かないのだ。
それでもドライブは素敵だ。
それも年上の女性が運転する車でドライブ。

19:00

親には今夜は友達の家に泊まると言って、
待ち合わせをした場所に向かった。
ホンダに乗った小さな彼女はさらに大人に見えた。
スピードを上げカーブを曲がり1号線を西へ。
海を脇に長い橋を越える。
話を途絶えさせないよう僕は喋る。
知っていることから知らないことまで。
途中激しい雨が降った。
雨の中、大人の女と子供な俺。
なんだか夢を見ているようだった。

20:30

彼女はFMにあわせてヒット曲を口ずさんでいる。
僕は口笛を吹いている。もちろん甘い期待を胸に秘めて。
甘い妄想とどしゃぶりの現実の中
彼女の提案で僕らは彼女の「お気に入りのお好み焼き屋」に向かった。
お好み焼き。
甘い妄想とお好み焼き。
ソースに満ちた甘い夜。

21:00

満員。
彼女の「激しくお気に入りのお好み焼き屋」は
週末だったため非常に混んでいた。
仕方なく別の店を探すため車を東へ走らせた。

23:00

パスタ屋へ移動。

女の子はパスタをよく食べる。
なんでそうなのかわからないが「スパゲッティ」と言おうとしない。

トマトのパスタとサラダを食べた。
フォークにスパゲッティがうまく絡まない。
フォークに絡まったスパゲッティは巻けば巻くだけ大きくなる。

上手くパスタが食べられない。
ピアノが上手く弾けない。
ダンスがうまく踊れない。

ドライブが加速しない。

なんだか、そうやって味気ないサラダのように
その夜は更けていった。

24:00

彼女はまるで小さい子供を見送るように
家の前までご丁寧に送ってくれた。

夏を置き去りにして
彼女は去っていった。
僕は車のライトが見えなくなるまで見ていた。
次の日からまたCDを売らなければいけない。
新幹線に乗って京都に帰るんだ。
2005-04-25 23:59:52

大きな脂肪と小さな富士山

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早朝の新宿西口。
排気ガスとアンモニアの匂いが暑さのなかで行き場を失ってたちこめていた。
コインロッカーが並び、道が交差しどこが地上か見失ってしまう。
地下を交差し、何人もの人とすれ違う。
早朝にも関わらず果てしなく
暑い。

東京。

暑さは
人を
おかしくさせる。

照り返す日射しに頭の脂肪はすっかり融解し
思考は完全に機能を失いつつある。
コンクリートの中で肉のかたまりがうごめいている、
そんな気分だった。

東京に慣れていない人間だからか、幾分張りつめた気持ちでいる。
幾つか階段をのぼり、地下道を歩き、
段ボールを幾つか横切った。
僕は空が見えてからほっとした。

西口のカメラ屋の前には観光バスが並んでいて
僕らはその1台に乗り込む。
生まれて初めての野外フェスティバルを体験しに行くために
僕らは集まり
その夜にミラクルとエクスペリエンスを求め、
機能を失ったブヨブヨをなんとか働かせ
それらのバスで首都高から目的地『富士山』へむかったのだった。

会場に着いた僕らはビールを飲み、タイだとかインドネシアだとかの
それっぽいスープやらカレーとかを食べ歩き
そういう国々のアクセサリーを物色したり、お香にむせたり
テントを渡り歩いたり、踊ったり、観察したりしながら
スペシャルなミッドナイトを待った。

しかし、ガイドブックの一冊ももたないままの
Tシャツ姿の我々を待ち受けていたのは
ジミヘンの火遊びや、おっぱい丸出しのギャルたちや
ヘラクレスの武勇伝や、ラブ アンド ピースや
ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイヤモンズや
ウッドストックのような泥んこ遊びの代わりに

なんと、空から女の子が振ってきた!

なんてことはなく
大きな富士山にあったものといえば、
しょぼくれた遊園地と、それを覆う白い霧と
底知れぬ
真夏の冷気だった。

霧に包まれた我々は全ての荷物を確認した。
僕らはそれぞれTシャツを2枚、タオルを1枚、フェイスタオルを1枚
靴下を1枚、あとはデイパックだけを持っていた。
僕らはTシャツを2枚重ね着し、
ありったけの段ボールを身にまとったのだった。

野望は野望であり続けた。

段ボールの外では細野晴臣にあわせて揺れる人々がいて
悲しくも僕らはそれぞれ段ボールの中でその音に吐き気がするほど
酔いしれることになった。

もちろん下山したらこの武勇伝を下界の人々に伝えるのだ。
そう決めていた。

僕らは何番めかのタフガキになれてただろうか?

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