金木犀の香りがたちこめる季節に僕は出かけた。
全てを置いて小さな冒険を夢見て。
右から左へ流れていく目の前の景色は味のない料理のように思えた。
「僕」と「俺」
僕が俺を監視し、俺が僕を煽り立てる。
だいたいにおいてそういう不安定な時期が右へならえであるかのように
僕もある夜小さな事故にあった。
大した事故ではなかった。
壊れたバイクを引きずって片道30分の道を5時間かけて帰った。
家に着くなり僕は父親に電話をした。
そして大きく泣き崩れた。
情けなかった。
せかいでいちばんちいさないきものであるようにおもえた。
僕はそうして「俺」にさよならを告げた。
既に眩しい光が部屋に射し込んでいた。
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