2005-02-05 01:42:27

がらくた帝国の出現 その3

テーマ:ブログ
アパートメントには風呂が無く僕は近くの銭湯に通っていた。

風呂のないことを口実に俺は1人の女の子の家に通う。

僕は風呂セットをひとしきり抱え通った。
期待と喜びを石鹸の匂いに忍ばせて。

彼女は全く違う世界に住んでいる女だった。

よく思い出せないのだが、確か電車の中で知り合った。

彼女は夜の女だった。
夜が好きだった。
僕らはいつも夜に会った。
風呂を借りるのだから当然かも知れない。

昼間の顔と夜の顔を持っていたが、
果たして僕に見せていた顔がどんなかおだったかは
今もわからない。

彼女は学生で、年も変わらなかった。
よくマクドナルドを食べていた。
彼女のマンションの隣に店があったのだ。

彼女には年上の彼氏がいた。
彼はデザイナーだった。
デザイナーと言っても、流行やファッションや
都会を彩るグラフィックを作る仕事ではなく
彼はパチンコ屋の看板を作っていた。
それが僕をなぜか苛立たせた。

彼女の部屋には、マルボロの吸い殻があった。
彼女はたばこを吸わなかった。
僕はその部屋に
ハイライトを残して帰るのだが
月曜日にはマルボロが吸い殻がちゃんと置いてあった。

彼女はよく踊っていた。

僕には理解できない音を身体で感じ
バーのカウンターの上でも踊っていた。

彼女は可愛らしい顔をしていたが
目の奥は冬のようだった。
彼女の目の奥にある
白い世界に憧れていた。

深夜、仕事を終えた彼女はタクシーに男と乗った。
同伴をしなければならなかったからだ。
男は検事だった。
彼はポケットから小瓶を取り出し彼女に飲ませたという。

彼女は泣いていた。
3年後、同じ話を別の女の子の口から再び聞くことになる。

僕は無力だった。



僕は

彼女と

寝られなかった。



彼女は春になって
僕の髪の毛を刈ったあと
ふいにどこかに行ってしまった。

今夜のBGM: baby blue
サニーデイ・サービス
2005-02-04 20:58:06

がらくた帝国の出現 その2

テーマ:ブログ
冬が近づいていた。
僕は静岡県の浜松市というところで育った。
浜松は比較的温暖だ。
古くから遠州の空っ風と呼ばれる季節風が吹き
砂丘に美しい風紋を作り上げる。
砂丘では5月に大凧を落とし合う勇壮な祭りもある。
風は強い。
体感温度は低いのだ。
しかしこの底冷えをする京都の冬は今になってもこたえる。
相変わらず今夜も冷える。

俺は部屋を引っ越して、帝国の整備を強化した。

僕はその冬に19歳になり、
初めて一人暮らしの冬を過ごそうとしていたのだった。

俺はバイトを探し、知らない奴と喋り、レコードを漁り、
コンパに行き、夜食を食い、映画を見て、ライブを見て、
ギターを買い、珈琲にこだわり、カーペットを敷き、
バイクをいじり、カフェを巡り、写真にはまり
朝まで遊び、歌い、踊り、眠り、酒をのみ
ソファーを買った。



僕は悲しくも童貞だった。



俺はさらなる帝国の強化を図った。
富国強兵だ。
俺は生産し、増産し、廃棄物を育んだ。

さらば 茶髪。

その凍りついた冬に、僕は長かった髪の毛を切り
なぜか丸坊主になってしまった。

これじゃまるで中学生じゃないか。
鏡を見ると田舎の野球部員になった俺がいた。

今夜のBGM
エリック・サティ: ひからびた胎児
2005-02-03 21:27:13

がらくた帝国の出現 その1

テーマ:ブログ
どうして学生時代なんてものは
そういう風にできているんだろう。

僕は特別な生活を目指した普通の学生になった。
エレキギターをかき鳴らし、僕にとって特別な音を探し、
たくさん酒を飲み、いっぱいため息をつき、
女の子のことを考え、映画をいっぱい見て、
空論を飛ばしあい、髪の毛を茶色くし、
ラーメンを食い、バイクに乗り、バイトをし、
そうして

学校には行かなくなった。

僕は僕であること得るために、街に出て知らない人になる。
似た人が多い学校に行くことは僕を窮屈に感じさせ、
孤独を与えてくれた。
ここにいても僕は特別になれないという妄想は
やがて全身を支配し、そうやって
僕は「がらくた」を集め始めるに至った。

ぼくはハタチになろうとしていた。
身体中が痛痒く、ヒリヒリと火傷をしているようだった。

この感覚。

全身が脈を打っている。

僕は生きている。

手始めに僕は近所の園芸店でアロエの鉢を購入した。
カサカサのアロエ。
それで十分だった。

南向きのアパートの出窓の右側にそっと飾ってみた。
インスタントコーヒーを飲みながら窓に目をやると
もう、日は暮れようとしていた。

今夜のBGM
Radiohead: Fake Plastic Trees
2005-02-02 15:42:42

がらくた帝国の出現

テーマ:ブログ
1996年10月
がらくた帝国はその都市計画の第一歩を歩み始めた。
わずかな服と家具、少し音の良いオーディオセット。
そして音楽。
それらは僕の部屋で帝国の城壁を築いていった。
レディオヘッドのHigh&Dryが心地よく響き、
秋の西日がその南向きの窓を貫いていた。
ダンボールたちは何かたくらんでいるかのように沈黙を守り、
白い壁達は僕の様子を伺っている。

呼吸し、目を閉じてみる。
予感がしている。
鳴らなかった音が聴こえはじめる。

ぼくはこの日から
転がり始める。
全てはここから始まった。
僕はこの部屋を出ていく。
あの日と同じように
深く呼吸をして
目を閉じてみる。

そして、僕はまだ転がっている。

今夜のBGM
Rolling Stones: Like a Rolling Stone
2005-02-01 22:17:29

-3℃、凍りついた水道管

テーマ:ブログ
FMからおそろしいニュースが伝わってくる。
すさまじい寒気団が頭上にいるようだ。
こんな日に限って僕は自転車だったりだったり手袋を忘れていたりする。
こんな日こそ早く家に帰って眠るに限る。
「去年のこんな日は家に帰ったら水道管が凍結していて風呂に入れなかったんですよ」
と僕は職場で去年の経験を語った。

帰宅。

凍結。

お湯はでない。
冷えたパスタ。
冷えたコーヒー。
部屋の中で吐く息は白く。

何もかも静まり返っていた。
音を失ったかのようにひっそりと。

今夜のBGMは、僕の鼓動だけだった。

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