2008-04-24 23:07:56

野村証券インサイダー事件

テーマ:IR

公認会計士のインサイダー事件に続き、またもや資本市場のメインプレイヤーによるインサイダー事件が白日の下にさらされました。


国内大手証券会社の筆頭格、野村証券の、それもM&Aを取り扱う企業情報部が舞台になっていたとのこと。


何と、まぁビックリマーク

あの野村証券でも!?


と、開いた口が塞がらないとは、このことです。


しかも、21銘柄の売買で4,000万円の利益を上げたといいますから、さすがにプロの証券マンがやると荒稼ぎ、というレベルに達しますね。

(会計士のインサイダーのときは損失も出ていましたものね)


しかも、大企業どうしの敵対的TOBとしては日本初のケースとなった王子製紙と北越製紙の案件も、材料として使っていたといいますから、意を決して野村が敵対的TOBのアドバイザー(王子製紙サイド)になったといって評判になったこの案件にもいらぬオチがついたことになりました。


この案件のときには、大手証券会社はTOBの防衛側にアドバイザーになることはあっても、買収側のアドバイザーにつくことは、多くの企業経営者に恐れを抱かせるため、それまでタブー視されてきたと言われたものです。


ある意味、この野村証券の行動が、日本でも敵対的TOBはタブーでも何でもないんだ、と多くの経営者の目を開かせたエポックメイキングな事件だったといえると思います。


それだけに、厳格に情報管理していたと思われますが、何のことはない、悪意を持った社員に対しては、情報管理も何ら防御足りえなかったわけです。



企業年金連合会も、株式や債券の運用に際して、野村証券に対する売買の発注を一時停止したそうです。


野村証券は企業年金連合会の売買シェアで6割を占める大口だということであり、再発防止策が出るまでは発注を停止する予定だとのことですから、これは野村証券の業績にも少なからず影響は出そうです。



しかも、野村グループのなかで、企業情報部を含む投資銀行部門は稼ぎ頭なのだそうです。

日経新聞の報道によれば、2008年3月期3Qの税引前利益のうちの13%、約225億円を稼ぎ出し、2007年のM&A助言シェアでは22%と国内トップ。

上場企業の約6割の主幹事・共同幹事を務め、株式IPOシェアでも2007年度は40%を確保するなど、とにかく、投資銀行部門は、花形といってよい職場なのでしょう。


それだけに、今回の事件が後々どのくらい尾を引くのか、心配されます。


これは、ひとり野村証券だけの問題ではなく、外国人投資家が積極的に日本株を売買する必要がない理由に、非効率・非公正な市場だから、という項目が追加されてしまっては、ますます日本株の低迷が長引いてしまいます。



余談ですが、ちょうどこの事件のちょっと前に、ウチの会社の決算発表後のワン・オン・ワンミーティングのアポ入れを野村証券に依頼していました。

そこに、この事件でしょ。

機関投資家さんから野村証券が出入り禁止でもくらって、アポが入らないかなぁ・・・と心配していたのですが、

4/22の朝一番に野村証券の企業金融部の方から電話がありました。


「誠にあいすみません、おさわがせいたしまして・・・あせる


さすがに証券マン、朝が早いです(笑)


私も、この手の電話、もう慣れました。

プロネクサスでしょ、新日本でしょ、そして、野村証券・・・と。

あと、登場してないのは、信託銀行くらいですね(失礼汗


これまで毎決算発表ごとに、主幹事だから野村証券に義理立てしてアポ入れをお願いしてきたんですが、ちっとも入らなかったんです。

社長の都合つけて、一日預けても、虫食いで午前1社、午後1社とか。

まぁ、野村証券の力というよりは、当社の魅力の問題という部分も半分以上はあるように思いますが・・・。


それが、今回は野村証券さん、頑張ってくれて、ほとんど埋めてくれました。

この事件の折、貴重な顧客と見てくれたものか、それとも、時期的に当社の話を聞いてみたいと考えた機関投資家さんが増えてきたと純粋に考えたものか・・・。


いずれにせよ、ありがたいことです音譜



話を戻すと・・・、野村証券でも教育研修はやっていたようですが、ことコンプライアンスなど精神的な面となると、人の心の内面の問題ですので、なかなか徹底が難しいのかなと思います。


それでも、倫理教育はやり続けていると、少しずつでも成果は上がるのではないでしょうか。


私も会計士協会の継続研修単位(年間40単位)を履修しなければならないので、協会から送付される職業倫理に関する研修用CD-ROMを視聴していますが、延々、もう10何回目になるんでしょうか、毎回、八田先生(内部統制で有名な青山学院大学大学院教授)の


「おはようございます、倫理」

「いただきます、倫理」

「おやすみなさい、倫理」


のギャグとともに、職業倫理、倫理リンリ、リンリ、リンリンリンリン・・・・


の声が耳に残っているくらい聞かされてきました。

まさに、口を酸っぱくして言ってもらって、ようやく身につくものなのかなぁと思います。


それでもなお、インサイダー取引に手を染める会計士を防止しきれなかったわけですから、資格を失うかもといった抑止力のない証券会社社員の世界で、何を歯止めに考えたらよいのでしょう。


やっぱり、最後は、自分が資本市場に関わっている、というプライドだとか、M&Aに携わる者としての使命感だとか、そういった精神面に頼らざるを得ないのでしょうか。


もちろん、上司の承認がないと、端末からM&A案件の情報を見ることができないといった、ITを駆使したハードウェアの整備も必要でしょうが、最終的には、人の心、ソフトウェアの面をしっかり作っていくことが大切ではないかと考えさせられました。



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コメント

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1 ■やっちゃいましたね...

同じIR担当者として、いつも興味深く拝見しています。

このような記事が出たら、必ずIR資料収集?のために、お詫びのプレスなどを探しに行きます。
自社に何かあったときから探していたのでは、いざというとき間に合わないからです。
かなりの数をコレクションしていますが、結構参考になります。いくつか利用させていただいた悲しい経験もあります。

今回、野村さんのHPを拝見したんですが、その関係のプレスを発見できませんでした。

悪い情報こそ、隠さずにすぐ開示!
マスコミ対応は、正直に!

これは、主幹事証券さんや、証券取引所さんから耳にタコが出来るほどお聞きした内容なんですが...

2 ■そうなんですよ

しださん、コメントありがとうございます。
そうなんですよ、私も野村グループ全体とか、野村証券のみとか、HPを見てみたり、東証の適時開示をさかのぼって検索したのですが、な~んにもリリースが出ていませんね。
あまりの衝撃と、各メディアの攻勢に、野村のIR担当者さんも忘れてしまっているのでしょうか?
今回、逮捕者も出てますから、リリースの書き方は難しいでしょうけど・・・。
しださんのコレクション、すごそうですね。
適時開示には出すけど、会社のHPには出さないという会社もあり、ダウンロードしておかないと手許に残らないことが多いですよね。
会社HPにも出すか出さないか、どのへんで引っ込めるのか、会社の姿勢が垣間見えて、興味深いものがありますよね。

3 ■もう一つの側面

 インサイダーは倫理面ばかり強調されますが、純粋に株式取引としてはどうなのでしょうか?という面が強調されないのは気がかりです。インサイダー情報とはいえ必ずしも利益に結びつかないはずです。会計士もそうですが、証券アナリストの方々なら知っていて当然だと思います。

 この人たいのそのあたりの知識すらも疑ってしまうのですが、どうでしょうか?

4 ■??

toolisugariさん、コメントありがとうございます。
ん~・・・、すみません、おっしゃりたいことの意味がよくわかりません。
文面から察すると、利益が出ないインサイダー取引は罪が軽い(orない)というようにも読めてしまいますが・・・。もちろん、そういうことを言いたいわけではないと思うのですけれど。
もう少し、言葉を補っていただけると助かります。

5 ■すみません

 確かに説明不十分ですね。詳しく説明いたします。例えば、あるA社が実は利益が出ていないにもかかわらず財務諸表上でよく見せていた場合、その辺の事情に気づいた他の第三者もしくは、同じようなインサイダー情報の持ち主がすでに株式を売ってしまっている可能性があることです。そのため実際に空売りとかしても十分なリターンが得られない可能性もあったということです。実際、インサイダー取引をしていた株主たちの中にも損をしている人も多いそうです。また、バブル期前後の日本企業は何か悪いことがあったときは大抵兆候が見らたそうですので他の株主たち(特に機関投資家)にばれてしまっていたことも多かったようです。

 常に証券市場に接している野村証券の方々ならその辺の事情を知っていて当然と私は思っています。実際に、その辺の事情について書かれた本もあります。「金融情報ウォーズ」という本です。ですので、その辺の事情も分からずに仕事をしていることが倫理面も併せてプロとしてどうなのかということです。私は疑問に感じます。

 同じことは、インサイダー取引をした新日本監査法人の会計士に対しても言えます。彼はたまたま12%のリターンが得られましたが、12%程度のリターンならば、スイスのプライベートバンクに年間運用利子率10%で1000万の資金を保守・運用してもらえば十分に2年間でインサイダー分以上のリターンが得られるのです。その程度の知識も知らなかったのはプロとしてどうなのだろうか?と首をかしげざるを得ないということです。

 長文になってしまってすみませんですが、そういうことです。知識面で、これらの人たちはプロとして資格があったのだろうかということを指摘したかっただけでした。

6 ■報道の仕方に疑問

長年IRの方にお世話になった身としていつも興味深くブログ拝見させていただいています。今回の事件は野村のマネジメントの方がおっしゃっていたように悪意をもった人間が社内にいた場合には抑止できない類の出来事なんでしょう。でもNHKとかいろいろな報道を見ていると(野村のリリースの仕方にも大きな偏見があるのでしょうが)、中国人がやったものというところが強調されすぎているきがしました。日本の本社の企業情報部の人間は悪くないって言い訳がましく聞こえたのはわたしだけでしょうか。いずれにせよ、これを契機にゆるゆるのコンプラが多少は厳しくなることを望みます。

7 ■知識か倫理か、それとも欲か

toolisugariさん、丁寧なご説明ありがとうございました。「金融情報ウォーズ」面白そうですね。今度読んでみたいと思います。
toolisugariさんのおっしゃりたいことは、金融のプロだったらその専門知識ゆえに、インサイダー取引による利益ごとき、正当な手段によって稼げるはずなのだから、間尺にあわない犯罪行為などしないはずではないか、ということですよね。そんな判断もできないような知識しか持ち合わせていないのであれば、金融のプロ足り得ない、と。
ん・・・、彼らにしてみれば、他の誰もしらないであろう(まさにインサイダー)ゆえに、絶対勝てる!という自信があったのでしょうね。そういう意味では、金融の知識も職業倫理も、欲の前にかき消されてしまったということではないでしょうか。
私は、やっぱり最後は倫理派かな・・・。欲をセーブするのも、知識ゆえに勝てるか勝てないか、他にいい方法があるかないか、踏みとどまって考えさせる最後の歯止めは、自身の良心に帰着するんじゃないかと思います。

8 ■日本人贔屓

大和魂さん、コメントありがとうございます。
確かに、中国人がやったというようにスケープゴートにしないと、野村証券全体に対する信頼性が大きく損なわれてしまうという考えがまったくなかったかと言われれば、そうは言えないのだろうと思います。
それでも、情報管理という意味では、どの大手証券会社も最近は甘くなってきたんじゃないかと思われるような気がしていました。
例えば、ホールセールとリテールが分かれた証券会社がありましたが、分かれた当初は事法の方とリテールの方が来社したときに、わざわざ情報共有に関する同意書を書かされたものです。しかし、最近はそんな同意書を求められるケースは皆無ですし、他社に至っては、最初からそんなことは一切言いません。
私も、おそらく情報は筒抜けなんだろうなって思って、IRしたり、事法の方に対して発言するようにしてますが・・・。
ワン・オン・ワンのときに、証券会社の方の同席お断り、という運用会社の真意を、どちらにとったらいいか改めて悩みますね。証券会社に気兼ねせずに本音でやりとりしたいのか、マネジメントのポロリを自分だけで独り占めしたいのか・・・。

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