世界の金融不安が解消に向かい、経済や市場の動きが正常化に向かうことを期待しつつ、日本と世界の経済を考えてみましょう。
日本経済はすでにリハビリ期を終え、企業による借金・雇用・設備という「3つの過剰」が解消し、積極的な内需刺激政策を取れば、成長軌道にもどる準備が出来ていると思います。海外の景気(=外需)が急激に悪化した今こそ、過去15年間に慣れ親しんでしまった“闘病生活”から気持ちを切り替え、将来を見据えて前向きに攻めるメンタル(精神力)を取り戻す必要があります。そして世界の新しい経済環境での新たな長期的な成功=ナンバーワン経済の金メダルに向かって大きな一歩を踏み出す時です。


しかし少子高齢化が…?


日本経済の将来を語るときに繰り返される言葉があります。「少子高齢化」「高齢社会」…果たして、高齢化はそれほどまでに経済成長の足を引っ張っているののでしょうか?

下表は、一人当たりGDP上位25カ国のうち、65歳以上の高齢者の人口比率が先進国平均を超える国です。

(表は 省略)

「一人当たりのGDPが大きい」=「平均収入が高い」と考えられますが、ランク断トツ1位のルクセンブルグも2位ノルウェーも、先進国平均に比べて特に高齢者比率が低いわけではありません。
実際、一人当たりGDPの世界ランキング25位までをみると、産油国とシンガポールを除いた20カ国は既に高齢社会に入った先進国であり、高齢者比率は決して低くありません。ということは、少なくとも数年程度の経済サイクルについて、高齢者比率が高いこととGDPの伸び率や水準には、無視できるぐらい小さな影響しかない、ということです。


それに…「おかしいと思いませんか?」

メディアや経済評論家では「高齢社会で問題になるのは若年労働者の減少による生産性の低下だ。」「経済が活性化しなくなる」つまり、働く人が足りなくなるから大変だと言っています。
常識的に考えると、働く人が足りなくなったら、お金を出しても人が集まらない状況になり、待遇を改善して職場に定着してもらおうということになるはずですが、日本の現状は正反対です。賃金は増えず、20-30代などの派遣社員や契約社員などの待遇や雇用の安定が問題になっています。
つまり、「少子高齢化」や「高齢社会」は日本の社会経済にとって長期的な課題ではありますが、目先の経済低迷には(心理的な要因以外は)関係がないといえます。そして、既にバブルの後遺症を解消した日本経済では、適切な積極財政政策と適切な成長産業の育成政策によって景気を活性化すれば、(少子高齢化があっても)GDP成長は可能なのです。



世界のバブルに乗れなかったおかげで

世界を覆った金融危機の出発点は、米国の不動産バブル崩壊でした。土地の値上がりを期待して無理なローンにより購入された住宅や投機的な不動産の価格が下がり、ローンは担保不足のため不良債権化して、それがサブプライム・ローンの証券化で国境を越えて広がったものです。地価の下落と金融機関の破綻で消費者心理が急速に冷え込んで景気も急ブレーキ。企業収益や失業などの問題にまで広がってきました。
バブルで上がりすぎた地価は下がるしかありませんが、金融危機を乗り切れば、金融機関も、一般企業も正常な経済活動に戻ります。


ここまでのところ、各国の経済政策の当事者は日本のバブル当事やその後の経験をよくも悪くも手本にし、適切な手を次々と打ち出しているように思えます。選挙をにらんだ政治面での波乱や雑音はあっても、大きな流れは正しい方向に向かっているように思えます。


そして、日本の金融機関にとっては「災い転じて福となす」となるかもしれません。90年代のバブル崩壊の後遺症で、日本の金融機関は海外事業を縮小してきたため、今回の米国をはじめとする先進国の土地バブル景気を眺めるだけで、そのメリットを得られませんでした。そのおかげで、現在進行中の米国の不動産バブル崩壊にも、かすり傷程度ですんでいます。



国内金融機関の本格的なグローバル化も?


欧米の大手金融機関は、株価が数年前の数分の一になり、生き残りを模索する中で傷の少ない日本の金融機関に救済を求めて来ました。日本のバブル後に、歴史のある金融機関が外資系に買収されたり吸収されたりしたあの苦しかった立場が逆転したわけです。各国政府も救済策を打ち出し、中東産油国の政府系ファンドや富豪たちも救済に乗り出していますが、過去の痛手から経験豊富な(!)日本系の活躍の場も多く残されているように思えます。


これまで米国、欧州の金融機関の後塵を拝することの多かった日本の金融機関が、本格的にグローバル化するきっかけとなるのではないかと期待を持っています。

そして、10月半ばの現在、日本の株価も大きく値を下げました。先進国の不景気の影響を受ける輸出企業は苦しい展開があるかもしれませんが、私の期待するような景気対策が打ち出されれば、日本の景気は思いがけないほどの急回復も期待できると思います。またその結果、内需と適切な産業政策による新たな成長産業に支えられた景気の伸びは、息が長いものになると予想しております。


我々の投資について考えてみると、各種の指標をみても、日本株は世界の株式の中でも割安な投資対象だと思います。しかし、世界的な金融市場の神経質な展開と景気不振の影響は残ります。このような時こそリスクの分散が重要です。その方法としてはたとえば、財務基盤の強い企業や大型株へ、インデックスのように幅広く分散する、または時間をおいて少しずつ積み上げを始める好機かもしれません。


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以上前編

記 2008年10月27日