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2005-05-27 19:26:18

見えないもの

テーマ:世界(小説)
 彼が出て行ってしまうと、家の中は突然、しん、となった。しんと鳴った、のかもしれない。静けさには音がある。寂しさにも。
 閉められたドアをしばらくぼんやりと眺める。けれど、そうしていたところで世界が好転したりはしないことは分かる。わたしは重い腰を上げ、猫を家に入れるために窓の傍へ行った。
 窓の外の空は、うっすらと赤くなり始めていた。
 赤い空の下で、猫がぽつんと佇んでいた。じっと空を見上げていた。何を見ているのだろう、わたしも空を見上げたけれど、何も見えなかった。わたしには見えない何かが、猫には見えているのかもしれない。
 わたしには見えないもの。
 見えないものがたくさんあるということを、大人になって、知った。
 「おいで」
 そう猫に声をかけたら、猫は小さく「にゃあ」と鳴いた。
 泣いた、のかもしれない。
 赤い空はどこまでも続き、何もかもを飲み込んだ。
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2005-05-27 13:08:30

運命の男の見分け方

テーマ:お知らせなど。

 今発売中のanan1464号(井川遥さんが表紙)にて、

 

 「あなたの運命の男の見分け方」

 

 というコーナーで語っております。

 

 書店やコンビニなどで見かけましたら、ぜひ。

 

 


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2005-05-25 08:03:13

喜び。

テーマ:日々の泡々

 5月某日

 

 友人が、仕事でとても大きな賞を受賞し、その受賞パーティへ行く。

 

 わたしなどよりも、頭も良くしっかりしている人なのに、

 

 壇上の彼女を見ていると、

 

 ひどくどきどきして胸があつくなった。

 

 人の喜び、 

 

 を、

 

 きちんと喜べるとき、 

 

 ああわたしは健康だ、と思う。


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2005-05-24 16:02:26

二度目惚れ

テーマ:日々の泡々

 5月某日

 

 世田谷パブリックセンターに、

 

 「まちがいの狂言」を観に行く。

 

 野村萬斎さんを生で見るのはまだ二度目だが、

 

 たたずまいのあまりの美しさに、ついつい恋しそうになる。

 

 

 



 

 

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2005-05-22 07:04:02

新しい使い方

テーマ:日々の泡々

 5月某日

 

 深夜のファミリーレストランで仕事をしていた。

 

 尿意を催し、お手洗いに行く。

 

 そのファミレスのトイレには、手を拭くペーパーはなく、

 

 風の出る「濡れ手乾かし機」(本当の名前はなんと言うのだ?)

 

 が設置されていた。

 

 えらく長いこと手を乾かしている女の人がいるなあ、

 

 と思いながら隣で手を洗う。

 

 なにやら散乱している、ティッシュペーパーとマニキュア。

 

 彼女はなんと、マニキュアを乾かしているのであった。

 

 驚いた。

 

 そういう使い方があるなんて、考えたこともなかった。

 

 (考え付いていたとしても、実行はしなかったと思うけど)

 

 

 

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2005-05-21 02:27:54

「悪女入門」

テーマ:お知らせなど。

 今発売中の、


 PHPカラット7月号の特集「新・悪女入門」


 で、短いエッセイを書いています。


 本屋さんで手にとってみてくださいね。

 

 



 

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2005-05-20 22:20:30

不在と存在

テーマ:世界(小説)
 僕が翼をはためかせはじめると、猫は、どこか寂しそうに僕を見た。
 猫は僕の不在を寂しいと思ってくれているのかな、そう思ったら、少し嬉しかった。
 だけど、僕は飛んでいく。僕に家はない。自由に空を飛ばない僕に存在意義があるとは思えない。
 空を見上げる。果てしなく遠くきりがなく、気が遠くなる。止まり木のない大空。
 本当は、いつも寂しいんだ。誰かとさよならすること。猫とも。この景色とも。もう動かない花とも。
 僕はくちばしで花に土をかけた。
 猫も真似して土をかけた。しょんぼりとした花は、あっという間に土に埋もれ、見えなくなった。
 「ここ、花のお墓だね」
 「うん」
 猫は自分の手についた土を不機嫌そうにはらった。けれど雨にぬれた土は簡単には取れず、猫の眉間には深い皺がよった。
 僕はもういちど翼をはためかせた。
 「ずっとここにいるんだろ? だったら、いつでも会いに来られるね」
 そう言ったら、猫は少し恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑った。
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2005-05-17 04:31:06

陸亀日記

テーマ:日々の泡々

 5月某日

 

 

 

 

 亀の鼻息は荒い。

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2005-05-13 20:02:00

でも、だけど

テーマ:世界(小説)
 ひとしきり泣いた鳥は、ミミズをついばんでお腹を膨らませると、
 「じゃあ、そろそろ僕は行くよ」
 と、言った。
 「行くってどこへ?」
 「どこへなんて決めてないけど。このあたりは寒いから、南にでも行こうかな。君は?」
 そう聞かれて、あたしは驚く。鳥は何を言ってるの?
 「あたしはどこにも行かないわ。家猫だもの」
 「ふうん、いいね。雨に濡れない場所と御飯がいつでも手に入るんだね」
 そうよ、とあたしは胸を張って答える。けれど、鳥がちっともあたしを羨ましがってないってことは、分かっていた。でも、だけど。
 あたしは不幸なんかじゃないって、言いたかった。
 ご主人がいて、御飯とお気に入りの毛布とときどきのミルク。あたしが不幸なはずなんかない。
 でも、だけど。
 じゃあね、そう言って、鳥は翼を広げた。空はゆっくりと夕焼けに染まりはじめていた。
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2005-05-12 23:47:00

不幸な女。

テーマ:日々の泡々

 5月某日


 渋谷シアターコクーンに、

 

 蜷川幸雄演出の「メディア」を観に行く。

 

 自分の子供を殺す母のお話。

 

 おもうに、

 

 「不幸な女」

 

 とは、

 

 「不幸になる」 のではなく、

 

 「不幸にする」女、

 

 なのではないかしら、

 

 などと思う。

 


  


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