薬剤師のためのEBMお悩み相談所-基礎から実践まで

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こんにちは、黒田です。


私の薬局で応需する処方せんには、デカリニウムトローチが入っていることがままあります。


トローチ自体はOTCにもなっている、一般の方にもなじみ深いものですが、この薬剤が実際にどの程度効果があるものか、調べたことがありませんでした。たいていの患者には「のどが気になるなら、そのときに舐めておけばいいですよ」くらいの説明をしているのですが、重要なアウトカムに大きな影響を与えるのだとしたら、指導の方法を改めた方がよいかもしれません。


そこで、デカリニウムの治療効果に関して調べてみることにしました。





 

見つかった文献など

文献1によれば、扁桃腺炎の小児44名をデカリニウムとコントロールに分けて二重盲検試験を行った結果、デカリニウム群で発熱・白血球数・ESRなどの症状または所見を改善する効果は認められなかった一方、咽頭痛・扁桃腺の発赤・浸出液などは改善したとのことです。Full textにアクセスできなかったので、これ以上詳細な情報は不明ですが、解釈に注意すべき点があると思います。


まず、抄録中に「double blind study」と記載があることから、二重盲検で試験されたことは分かります。しかし、むしろ重要なのはランダム化されているかどうかでしょう。今更いうまでもありませんが、各群に割り付けられた患者の特徴などが揃っていなければ、そもそも治療群と対照群が比較可能でないからです。この、ランダム化が行われているかが、抄録からは分かりません。多分、行われていないのではないかと思います。だとすれば、対照群はあまり機能していないことになるので、実質的には単群の試験に近いものと解釈した方がよいかもしれません。


なお、蛇足ながらこの文献の抄録には一か所「Dequalinium」が「Pequalinium」と誤植されているところがあります。その他の文献として、変わったところとしては、デカリニウムがPlasmodium原虫感染症の治療薬のシードになる可能性を示唆する報告 (2) などがありました。


しかしながら、日本でよく使用される咽頭炎・扁桃炎などの疾患に対する効果について検証した文献で見つかったのはこのくらいで、総じてあまり詳細に検証されていない印象です。まったく効果がないこともなさそうですが、臨床的な転帰に大きくかかわるほどでもない・・・くらいでしょうか。


一方で、「Dequalinium」というキーワードで検索を行ったときにちらほらと出てきたのが、膣感染症に対してデカリニウムを使う、というものです。その中に、デカリニウムについて詳しく書かれたレビューがありましたので、次章で要点を箇条書き形式にて抜粋します。






 

デカリニウムに関して (3)

  • グラム陽性および陰性菌・酵母・原生生物に対して広いスペクトルを有するビス第4級アンモニウム化合物である
  • 抗菌活性は、細胞膜通過性の亢進およびそれに続く微生物の酵素失活作用にもとづく
  • 細胞膜透過性に対する作用は、次のような機序にもとづく。すなわち、①微生物の細胞表面に吸着後、細胞内に取り込まれる、②細胞膜に結合、複合体を形成しタンパク質を沈殿させる、③細胞膜は濃度依存的に溶解され、浸透圧交換をもたらす
  • 微生物細胞内に吸収された後の、タンパク質や物質代謝に対する作用は、以下の機序にもとづく。①細胞代謝を阻害することでタンパク質を変性させる、②グルコース代謝の阻害およびミトコンドリアでのATP合成阻害による微生物のエネルギー産生の阻害、③リボソームにおけるタンパク合成そのものの阻害
  • さらに、微生物の核酸に対しても、以下のような作用を有する。①核酸に結合する細胞質中物質を沈殿させる、②DNAに直接結合する
  • タンパク質の変性や代謝に関する阻害作用は、臨床用量を超えるレベルでのみ観察されるものなので、これらの作用は抗菌活性には直接的には関与しないと考えられている
  • デカリニウムによる殺菌作用は、30-60分以内に起こると考えられている
  • デカリニウムは、嫌気性菌 (Gardnerella vaginalis, Bacteroides spp., Peptostreptococcus sppなど) や好気性菌 (ブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌など) 
  • 実験室レベルでは、デカリニウムに対する耐性微生物の発生は知られていない
  • 経口投与した際のデカリニウムの吸収率は、非常に低いと推定される
  • 動物実験では、他の第4級アンモニウム化合物は、臨床的な用量において胎児毒性は示されていない
  • 諸外国では、膣感染症の治療にデカリニウムを用いるケースが多いようである




構造式と、上で述べられている薬効の模式図を以下に拝借します。なんだか、思ったよりずっと複雑な機序ですね・・・。











 

 

コメント

意外にも、といったら失礼なんでしょうが、広域なスペクトルを有すること、複数の作用機序にもとづく抗菌活性を持つことなど、なかなかに高尚な薬物であった印象です。細胞膜に対する直接的な障害作用だけでなく、タンパク合成阻害能もあるとのことなので、消毒薬と抗菌薬の性質を併せ持つ・・・といってもよいのかもしれません (もっとも、後者の作用は臨床用量では無視できる程度のようですが)。


耐性菌の出現のリスクや、副作用なども非常に少ないようなので、使用する場合の心理的なハードルは低いように思われます。患者心理的にも、トローチを舐めることで「治療している」感じが出るのであれば、結果的にはプラスに作用する可能性が高いと推定できます。それでも、劇的に効果があるか?と問われば微妙だと思いますが・・・。


膣感染症に使用できる製剤は、現在のところ日本にはありませんが、将来的に使用できるようになる可能性も否定できないので、トピックとして頭の片隅に置いておきたいと思います (問題は、製造販売することでメーカーにメリットがあるかどうかだと思います。トローチの薬価は非常に低いので、これベースで薬価付けがされるなら、開発試験費用が回収できない可能性が大です。実際には、クロマイ膣錠あたりを参照にした類似薬効比較方式になると思いますが・・・)。


以上を総合すれば、冒頭で述べた「のどが気になるなら、そのときに舐めておけばいいですよ」という指導法で、やはり大きな問題ないと考えられます。こだわって使うものではありませんが、かといって全否定されるようなものでもないでしょう。使うことで患者の満足度が高まるなら御の字、くらいに思っておけばよいのではないでしょうか。


ただし、添加剤に白糖やマンニトールなどの糖類を含む関係上、使い過ぎると下痢などの消化器症状を生じる可能性があります。添付文書上は1日6回使用になっていますが、これを目安に節度を守って使うことは必要でしょう (4)。



では、また次回に。





Reference

 

  1. Kramer W, [Treatment of tonsillitis with dequalinium chloride]. Fortschr Med. 1977 Apr 28;95(16):1108-10. PMID: 856702
  2. Rodrigues JR, et al. Plasmodium berghei: in vitro and in vivo activity of dequalinium. Exp Parasitol. 2007 Jan;115(1):19-24. Epub 2006 Jun 30. PMID: 16814285
  3. Mendling W, et al. Use of locally delivered dequalinium chloride in the treatment of vaginal infections: a review. Arch Gynecol Obstet. 2016 Mar;293(3):469-84. PMID: 26506926 
  4. SPトローチ0.25mg「明治」 添付文書 Meiji Seika ファルマ株式会社


 

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こんにちは、黒田です。


何の気なしに文献を検索していたら、たまたま目に留まったものがあったので、紹介します。要点をいえば、白内障治療薬のピレノキシンが、老眼にも有効かもしれない、という報告です。





 

老眼について

私の薬局には眼科に受診している人もよく来るので、白内障や老眼に接する機会も多いものです。このうち、白内障については「どうして生じるのか?」といった質問を受けることも多いのですが、老眼の方は本人が「まあ、年だからねえ」みたいにいうことが大半で、発症の機序などを聞かれることがほとんどありませんでした。


そのため、老眼についての基本的な知識がそもそも不足してると気づいたので、引用文献の「Introduction」を読んで、その内容を以下に整理しておくことにします。

 

 

  • 近くのものが見えにくくなる障害で、進行性である
  • 55歳以上の人にはほぼ普遍的に見られる
  • ある研究によると、2011年には全世界で12億7200万件の老眼が存在したとされる
  • 矯正されていない、または矯正が不十分である老眼による経済的損失は世界で年間253.67億ドルと推計され、これは世界のGDPの0.037%に上る
  • 老眼の矯正法には、眼鏡・コンタクトレンズ・屈折矯正手術などいろいろな方法がある
  • 老眼の調節障害は、水晶体の弾力性が低下することに起因する



なるほど、老眼と遠視は混同されがちですが、上を参照すれば老眼は水晶体の弾力性に、遠視は屈折率に、それぞれ異常が生じたものと区別できることがわかります。





 

ピレノキシンについて

同じ文献に、今回の主役であるピレノキシンについても紹介されています。いまさら、という気もしますが、これについても下にまとめておきます。

 

 

  • ピレノキシンはキサントマチンに類似したピリドフェノキサジン化合物である
  • 1958年に老人性白内障の進行抑制目的で、点眼薬として使用されるようになった
  • モルモットにベンゾキノン酢酸を腹腔内投与することで生じさせた白内障に対し、ピレノキシンを結膜下注入することで、その発症を抑制させることが報告されている
  • 老人性白内障患者72名にピレノキシンを使用することで、視力低下を抑制することが報告されている (観察期間は8カ月-2年)
  • 老人性白内障に対する薬の効果を十分に検証した二重盲検試験は行われていない
  • 基礎研究レベルでは、ピレノキシンの抗白内障活性は複数報告されている
  • 白内障発症に関与するものとして、酸化ストレス・亜セレン酸塩・カルシウムイオンが同定されている
  • ピレノキシンは最大6個の亜セレン酸イオンに結合する

 


さすがにというべきか、やはりというべきか、ピレノキシンの効果に関して検討した二重盲検試験はないようです。実は以前に、「ピレノキシンって本当に効くのかな?」と思っていろいろと調べたことがありましたが、はっきりしたデータが出てこず、頓挫したことがありました。あれは単純に私の調べようが悪かったわけではない、と分かり多少慰めになった気分です。





 

引用文献に関して-動物実験セクション

さて、本題の文献について見て行きます。この論文は大きく、動物実験のセクションと、臨床試験のセクションに分かれています。


まず下の図ですが、Aはタバコの煙に曝露させたラットの水晶体弾性が経時的にどう変化するか示したものです。見ると、5日時点ではベースラインからほとんど変化していないものの、12日後にはおよそ1.2倍にまで弾性が増大しています。要するに、タバコの煙によって老眼の動物モデルを作成できることを示しています。





これに対して、Bではタバコ曝露による水晶体の弾性変化に対して、PBSおよびピレノキシン点眼が与える影響を検証しています (12日間)。PBSとは「phosphate-buffered saline」の略だそうですから、リン酸で涙液と等張にした生理食塩水です。ここから、PBS群では効果がなく、ピレノキシン群ではベースラインからほとんど変化がない、つまりタバコによる水晶体への影響を軽減できていることがわかります。




 

引用文献に関して-臨床試験セクション

これを受けて、小規模ながら臨床試験が行われています。いつものように、PECOTをまとめます。

 

  • P: Healthy volunteers (健常ボランティア)
  • E: pirenoxine eye drops (ピレノキシン点眼)
  • C: artificial tears (人工涙液)
  • O:  The primary outcome was objective AA and the secondary outcomes were DCNVA and FVA (主要評価項目は、客観的な調節幅。副次評価項目は矯正近見視力、実用視力)
  • T: ランダム化比較試験



被験者情報は下表の通り。多分に探索的な検証なので、検出力の計算や込み入った情報の開示は行っていない様子。なお、対照群が使っている人工涙液は、参天製薬の「ソフトサンティア」らしいです。





結果については、下表群の通り。ちなみに、表中の「TG」は治療群、「CG」は対照群をそれぞれ意味しています。・・・・って、あれ?これは全然効いてなくないか?











少しDiscussionの部分を見てみましょう。ここで引用されている文献によると、年代別に調節幅の変化を調査したところ、これが劇的に減少するのは35-39歳にかけてであり、50-60歳では減少の程度はかなり小さくなり、60代でプラトーに達した、とあります。


つまりが、調節幅の変化は年代によって大きな変化があり、ある程度若年のうちから進行予防薬を使用しないと、効果が薄いという可能性があるわけです。効果はどの年齢層でも一様ではない、ともいえます。なるほど、こうした知見にもとづけば、年齢での層別化解析が行われていることには非常に納得がいく・・・のですが、その線で行くと30歳そこそこのうちからピレノキシン点眼を使っていなければならず、調節幅がプラトーに達したころには、今度は白内障が見つかって、やっぱりピレノキシンは継続・・・となるパターンが非常に増えそうな気がするのですが・・・・。


こうなると、製薬企業的には嬉しいかもしれませんが、30歳から目薬を点しまくるのと、それを拒否する代わりに老眼のリスク増大を受け入れるのと、どちらがQOLが高いのか、ちょっと考えてしまう案件だと思います。副作用などのリスクは非常に小さい薬剤ではあるので、何も考えず、習慣のように使えるよ、という人には案外いいのかもしれませんが。


もっとも、この臨床試験は被験者数も非常に少ないパイロットスタディ的な位置づけですし、現時点で推定できる効果量自体もそこまで大きいものではないでしょう。少なくとも、ルーチンで使用することを推奨する根拠としては、まだまだ弱いと思います。今後とも、継続的にチェックしてみたいテーマとなりました。



では、また次回に。






Reference


Tsuneyoshi Y, et al. Suppression of presbyopia progression with pirenoxine eye drops: experiments on rats and non-blinded, randomized clinical trial of efficacy. Sci Rep. 2017 Jul 28;7(1):6819. PMID: 28754903 

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こんにちは、黒田です。


最近、ビラノア錠の処方を受けつける機会が少しずつ増えてきました。以前から存在は知っていたのですが、「また何か新しい抗ヒが出たんだな」くらいにしか思っておらず、きちんと調べたこともありませんでした。


気が付けば2月になっており、花粉症シーズンが近づいています。ということは、今後ますます処方される機会が増えると予想されます。「他の鼻水の薬とどう違うんですか?」などと患者に聞かれて焦ってはいけないので、この機会に文献に目を通ることにします。






 

抗ヒスタミン剤の脳内H1受容体占有率

鼻アレルギー診療ガイドライン2016によると、理想の抗ヒスタミン剤の条件は、以下の3つだそうです。
 

 

  1. 速効性があり、効果が持続する
  2. 副作用(眠気、作業効率の低下など)が少ない
  3. 長期投与ができる(安全性)、投与回数が1日1~2回でアドヒアランスが良いこと



ビラスチンは、このことを踏まえて、有効性と安全性のバランスに優れた、脳内以降のほとんどない非鎮静系の抗ヒスタミン剤として開発されたそうです (1)。


抗ヒスタミン剤の中枢神経系に対する副作用を評価する指標として、脳内H1受容体占有率がよく用いられます。文献2より代表的なものをまとめた図を以下に拝借します。





このあと紹介する文献4では、フェキソフェナジンとビラスチンの副作用の差異に関する検討も行われています。フェキソフェナジンは非鎮静系の代表格なので、これと大きな差がつけばかなりのアピールポイントになるとは思うのですが、果たしてどうでしょうか。







 

文献3について

Summary

 

  • ヒスタミン静注で強制的に膨疹を生じさせた健常ボランティアに、ビラタジン・デスロラタジン・ルパタジンをそれぞれ投与すると、プラセボと比較して膨疹や紅斑、掻痒が改善するか検討した、クロスオーバーの二重盲検RCT
  • 本文が参照できないので、抄録のみの確認
  • 評価項目は他のプラセボ・実薬と比較してビラタジンで有意に優れていた
  • デスロラタジン・ルパタジンはプラセボよりは効果が高かったが、薬剤間で大きな差はなかった





Study design

  • P: Twenty-four healthy volunteers aged 18-40 years (18-40歳の献上ボランティア24名)
  • E: single doses of bilastine 20mg, desloratadine 5mg, rupatadine 10mg (ビラスチン20mg、デスロラタジン5mg、ルパタジン10mgのいずれかを単回投与)
  • C: プラセボ
  • O: The primary outcome measure was the percentage reduction in W&F areas after each active treatment compared with corresponding basal values. (主要評価項目はベースラインからの膨疹反応および掻痒の減少%)
  • T: crossover, randomized, double-blind, placebo-controlled clinical study (クロスオーバーの二重盲検RCT)



膨疹反応などは、ヒスタミン5μgを静注することで強制的に誘発する。評価項目の測定は0.5、1、2、4、6、9、12、24時間後に行う。膨疹の評価は、創部等の面積をデジタル測定できる「Visitrak System」というのを使って行なっているようだ。掻痒の評価はVASによって行う。


各薬剤のdoseはいずれも日本国内での標準的なそれと一致している。強制誘発の症状に対する効果の検証であり、多分に実験的な側面を持っているため、実臨床での有用性との間には多少の乖離が生じると思われるが、参考程度に見ておくことにする。


アクセス権限の関係で、抄録しか参照できないため、これ以上詳しいデザインは不明




Result
 

抄録から読み取れた結果を箇条書きにすると、

  • 1-12時間の範囲において、ビラスチンはデスロラタジン・ルパタジンと比較して有意に高い膨疹抑制効果を示した
  • ルパタジンとデスロラタジンはそれぞれプラセボと比較して有意に効果が高かったが、実薬間の有意さはなかった
  • 各薬剤の最大効果は6時間で観察された
  • 薬効発現にかかった時間は、ビラスチンで1時間、デスロラタジンとルパタジンで4時間であった
  • 紅斑の抑制効果に関しても、ビラスチンは他の2薬剤と比較して1-24時間の範囲で有意に優れていた。また薬効は30分で発現した
  • 掻痒抑制効果に関しても、ビラスチンは他の2薬剤と比較して有意に優れていた
  • デスロラタジンとルパタジンの掻痒抑制効果は、プラセボと有意差がなかった








 

文献4について

Summary

 

  • ヒスタミン静注で強制的に膨疹を生じさせた健常ボランティアに、ビラタジン・デスロラタジン・ルパタジンをそれぞれ投与すると、プラセボと比較して膨疹や紅斑、掻痒が改善するか検討した、クロスオーバーの二重盲検RCT
  • 本文が参照できないので、抄録のみの確認
  • 評価項目は他のプラセボ・実薬と比較してビラタジンで有意に優れていた
  • デスロラタジン・ルパタジンはプラセボよりは効果が高かったが、薬剤間で大きな差はなかった





Study design

  • P: patients with PAR (通年性アレルギー性鼻炎患者)
  • E: bilastine (20 mg once daily), fexofenadine (60 mg twice daily) (ビラスチン20mg1日1回またはフェキソフェナジン60mg1日2回)
  • C: プラセボ
  • O: The primary endpoint was the mean change in total nasal symptom scores (TNSS) from baseline to Week 2 (Days 10-13) (主要評価項目は2週時点におけるベースラインからのTNSSの変化)
  • T: randomized, double-blind, placebo-controlled, parallel-group, phase III study (第3層の二重盲検RCT)

 

  • ランダム化:この手の試験にしては珍しく、割り付け表が示されていない。結果の表からは、ベースラインにおける各種TNSSに群間で大きな差はないことが読み取れるが、それ以上は不明。ランダム化比較試験であると明言されている以上、変な偏りはないと信じたいが・・・。
  • ITT解析:行なわれていない。被検薬投与期間中に脱落した症例は解析から除外されている。しかし、その割合は各群2-4%程度なので、結果に深刻な影響を与えるものではないと思われる。

 

 

 




Result

主要評価項目は下表の通り。いずれの実薬もプラセボと比較して有意にTNSSを改善しているが、薬剤間にはほとんど差がないようだ。




時系列的にTNSSの変化を示したのが下図。ビラスチンはフェキソフェナジンと比較して変化を生じるのが早いように読み取れるが、day3くらいからほとんど差がなくなっている。





患者申告の治療に対する満足度調査の結果が下図。実薬間でほとんど変わらない、というかプラセボともあまり変わらないような・・・。





副作用に関する評価の結果が下表。ビラスチンは中枢移行性が極めて低いのがウリの一つであるようだが、めまいなど中枢神経系の副作用発現頻度はフェキソフェナジンとほとんど変わらないように見える。もっとも、このサンプルサイズでは正確な評価は難しいと思うが・・・。









 

コメント

さしあたり、ということで皮膚科と耳鼻科領域でのビラスチンの効果に関する文献を参照しました。うち皮膚科の方は実験的なシチュエーションなので、即座に実臨床に結果を外挿することはできないと思いますが、参考くらいにはなるでしょう。


湿疹や皮膚掻痒に対しては、ビラスチンは他の新規抗ヒスタミン剤と比較して成績は良さそうです。また、詳しく読んではいませんが、他に検索で出てきた文献にも軽く目を通したところ、慢性蕁麻疹に対してもそこそこのデータを出しているようです (5)。この文献でも、即効性を有することが強調されています。


他方、鼻炎に対する検討では作用発現こそフェキソフェナジンと比較して早い傾向が見られたものの、症状スコアは3-4日程度でほぼ同じとなり、副作用のプロファイルにも著しい差異はありませんでした。こうした点を加味すれば、ビラスチンは「他の抗ヒスタミン剤よりちょっと早く効く」くらいに思っておくのが、現時点では妥当と思います。


とはいえ、アレルギー性鼻炎の症状はかなりつらいのが普通ですから、例え数日でも早く効く薬があれば患者としては嬉しいでしょう。そういう意味では、こうした作用発現までの期間の差異は患者にとって重要といえるかもしれません。また、副作用について明確な薬剤間の差を検出するには、さらに大きなサンプルサイズが必要ですから、より大規模な検証を行えば何らかの違いが見えてくる可能性はあります。といっても、このことを踏まえても中枢系の副作用という観点で、過度な期待をかけるのは不適切と思われます。


抗ヒスタミン剤の効果にはかなりの個人差があるのが普通ですから、製品が増えることで選択肢も増加することは素直に歓迎してよいと思います (ついこの間も同じようなことを書きましたか・・・)。結論としては、常識的な抗ヒスタミン剤を使うときの服薬指導を行えばよいと思います。



では、また次回に。




Reference

 

  1. ビラノア錠20mg インタビューフォーム MeijiSeikaファルマ株式会社
  2. 黒野祐一 鼻アレルギー診療ガイドライン-通年性鼻炎と花粉症-2016年版 (改定第8版) -抗ヒスタミン薬使用のポイント-
  3. Antonijoan R, et al. Comparative efficacy of bilastine, desloratadine and rupatadine in the suppression of wheal and flare response induced by intradermal histamine in healthy volunteers. Curr Med Res Opin. 2017 Jan;33(1):129-136. Epub 2016 Oct 21. PMID: 27659218
  4. Okubo K, et al. Efficacy and safety of bilastine in Japanese patients with perennial allergic rhinitis: A multicenter, randomized, double-blind, placebo-controlled, parallel-group phase III study. Allergol Int. 2017 Jan;66(1):97-105. PMID: 27421817
  5. Hide M, et al. Efficacy and safety of bilastine in Japanese patients with chronic spontaneous urticaria: A multicenter, randomized, double-blind, placebo-controlled, parallel-group phase II/III study. Allergol Int. 2017 Apr;66(2):317-325. PMID: 27599913
 
 
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