大阪弁天町の漢方薬局「廣田漢方堂薬局」のブログ

大阪弁天町の漢方薬局「廣田漢方堂薬局」です。


【廣田漢方堂からのお知らせ】
剥脱性口唇炎


当店では、これまで数十例の剥脱性口唇炎の治療実績から、当店独自の漢方理論を構築し、より効率よく剥脱性口唇炎の治療することができます。

剥脱性口唇炎



テーマ:

40代の女性

 

2人目の子供が欲しくて妊活中の彼女。

 

体外受精をする時間はないため、HMGで卵胞を成長させ、HCGをうってタイミングを取る方法でチャレンジしている。

 

この女性は、平素から冷えを感じることは少なく、いつも手足は温かいという。

 

胃腸症状・睡眠・二便・精神状況等には何も問題なく、特に不都合はないとのこと。

 

月経に関しても、月経痛・血塊・月経前症状などはなく、加齢に伴い月経量が減っているだけという。

 

ここ最近、HMGに対して、卵巣の反応率が低下し、注射の単位を増やしたり、回数を増やさないと卵胞が成長しなくなっているとのこと。

 

また高温期にルトラールを飲んでも一向に体温が上がらない。

 

さてさて、これを中医学的にどのように診立てるか・・・

 

最初は、仕事上、緊張することが避けられない職場のため、肝鬱気滞が起こり、全身の血流が悪いために、ホルモン剤が卵巣や子宮に届かないのかと考えて、疏肝理気剤・活血剤を使用したものの、いまいち効果がない。。。

 

とするならば、どこに重点を置けばよいか?

 

と色々と悩んだが、体調不安・不快症状は何もないため、手がかりを掴めない。

 

そこで初心に帰って、詳細に問診を取りなおすと・・・

 

① 手足はいつも温かい

② 冷えは感じないが、低温期は体温が35度台前半

(口を開けて測っていたり、早朝に測っていたりする事実はない)

③ HMG、ルトラールに対しての反応率が悪い

④ 口渇・咽乾がある

⑤ 夜寝るときに布団から手足を出したくなることがある

(五心煩熱)

⑥ 紅舌で裂紋あり

 

という所見が確認できた。

ここでポイントになるのが、手足はいつも温かく、冷えは感じないが、体温が35度台という事実。高温期を作るルトラールを服用しても、高温期が安定しないことである。

 

これが肝鬱気滞による気の昇降出入異常でないとするならば、残るは「陰虚」しかない。

 

つまり・・・

 

〇 手足がいつも温かい⇒陰虚火旺による虚熱による手足温

〇 しかし体温は35度台⇒体温を作るための材料(陰)の不足

〇 ルトラールに反応しない⇒高温期を作るための材料(陰)の不足

〇 口渇・陰乾燥、五心煩熱⇒陰不足

 

という考え方だ。陰虚の場合、このように自覚的な温冷感覚と実際の体温に有意な差が出ることがある。陰虚火旺による手足からの熱の放出と陰虚による体温の不達不足による低体温というような具合だ。

 

これらのことから、この女性の妊活をフォローするためには、まず材料となる陰を補い、余計な熱を清する必要がある。

 

そうすることによって手足の余計な火照りがなくなり、口渇・咽乾が軽くなり、使用するホルモン剤に正しく反応できるようになって基礎体温が安定し、その結果、月経が今よりも格段に安定するようになる。

 

一見すると見逃しそうな、その所見の奥に、弁証のヒントになる材料が転がっている。今回の場合は、「自覚的な温冷感覚と体温の解離」が陰虚につながっていると判断できた。

 

今回の症例は典型的な「陰虚」であると考えられるので、ぜひ覚えておきたい。

いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

テーマ:

29歳で独立するまでは、僕も調剤薬局で薬剤師として働いていた。

 

そのころのことを思い出すと、今でも何とやりがいのない仕事なんだろうと感じる。

 

その感覚はどうやら間違っていないようで、それから10年たった現在、調剤報酬などを決める中医協では、門前薬局を中心とした調剤薬局の在り方が議論されている。

 

国民の皆さんは、どれくらい調剤薬局の存在意義について理解してくれているのだろうか?

 

そして何よりも、我々薬剤師は国民から必要とされているのだろうか?

 

現在、僕自身は、漢方という特殊な世界に身を置き、日々、西洋医学でよくならない方々の相談に乗る毎日を過ごしている。

 

それでもやっぱり大半の薬剤師が身を置く、保険調剤の動向は気になる。

 

調剤薬局の話題がヤフーニュースなどに掲載されると、コメント欄は、薬剤師に身体の話をして何になる?、すでに医者に話している。時間がないのに薬局でも待たされて二度手間だ。自己負担金が院内に比べて高くなる。など否定的な意見が多数を占め、処方ミスを未然に防いでもらって薬局に助けられたなどの肯定的な意見は少ないような気がする。

 

僕たちは、本当に薬を出すだけしか能がないのか?

 

保険調剤を通じて、他の医療従事者とは違う、薬剤師としての独自性を発揮することはできないのか?

 

漢方薬局を経営しながらも、そんなことを考えてしまう。

 

薬剤師という職業は、昔は町中にあるもっとも身近な科学者、相談者であり、何か体に変調が起こったときに、気軽に相談できる場所だったように思う。

 

そしてそれぞれの店舗では、病気にならないように、薬に頼らないようにするための食事方法や運動方法などを丁寧に説明し、人々の健康を守ってきた歴史があるように思う。

 

それがいつの間にか、院外処方箋が増え、調剤することが仕事になってしまい、健康的な生活を過ごすための方法論を勉強する時間が無くなって、調剤マシーンになってしまったのではないだろうか?

 

我々は、もう一度、原点に戻り、医者よりも身近な医療従事者として、医師とは違った側面から、国民の健康を守り、医療費を削減するための活動を行うべきだと思う。

 

そのためには、健康的な生活を送るために必要な知識を蓄え、それらを丁寧に人々に伝えていく環境を作っていかなければならない。

 

もう誰もが薬を飲み続けたところで、健康になれないことは知っているのだから、これからの時代はいかにして飲まなければならない薬の量を減らしていくか、そしてそのためにはどうすればよいのかを真剣に考えていく時代だと思う。

 

様々な工夫を凝らし、処方箋という紙1枚でつながりを保つ薬局ではなく、その人を丸ごと理解し、良き相談者として仕事ができる薬局にすれば、患者・スタッフ・経営者すべてにとって素晴らしい店づくりができるようになる。

 

そういう店づくりができるように、僕は頑張りたい。

いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

テーマ:

いつも軟便でお腹を下し気味の40代の女性。

 

これまでに白朮・茯苓含有の利水薬や乾姜含有の温補薬を使っても症状に明らかな変化なく、どうすれば軟便から快適な便になるのかという悩みを持っていた。

 

当店でも、あ~だこ~だといろいろな側面から検討した結果、下半身の冷えや浮腫みなど顕著な腎虚症状はなかったものの、これまでの経緯から、この軟便下痢は、下焦にある大腸の陽気不足から津を吸収する機能が低下し、腸管内で水分が停滞するために生じている陽虚水氾証と考えた。

 

この女性の舌は、淡白舌で胖嫩であり、これらの所見もそれと一致する。

 

僕は、理中湯などの乾姜含有製剤は、中焦の脾胃・小腸を温煦する働きがあり、真武湯などの附子含有製剤は下焦の腎・大腸を温煦する働きがあると考えている。

 

今回の症例では、中焦由来の症状(胃もたれ、げっぷ、消化不良感、食欲不振、ムカつきなど)がなかったことから、問題点は中焦ではなく、下焦にあると考え、陽虚水氾の出所は、「腎陽虚」にある!と考え、牛車腎気丸を処方した。

 

その結果、これまで漢方を使用してきても、なかなか改善しなかった軟便下痢がピタッと治まった。

 

見事に軟便が治まったことから、これでよかったよかったと思っていたのもつかの間、しばらくしてから相談者から「不快なほどではないけれど、最近ちょっと微熱感を感じるとことがある。」という話が。。。

 

そこで舌を診たところ、明らかに舌色が紅色になっていた!!

 

『こりゃ~、牛車腎気丸で温補し過ぎて、陰証が陽証に変化しとるがな!!』と感じた。

 

便通は今まで通り、気持ちの良い便が出ているとのことで、大腸自体は温補し過ぎて「燥」を生じている状況ではなかったが、明らかに温めすぎのために牛車腎気丸を一旦中止せざるを得なかった。

 

それから2週間。

 

再度、状況を確認すると・・・

 

なんてこったい・・・

 

また軟便下痢が再開。。。。

 

舌はまた淡白舌で胖嫩に逆戻り。

 

あらら・・・

 

やっぱり牛車腎気丸を使わないと、本来の体質である陽虚水氾証に戻っちゃうのね・・・

 

この経験から、その人が持つ器(太極陰陽)が小さければ、牛車腎気丸程度の温補剤を使用する・使用しないで陰陽が揺れ動き、容易に転化するということが理解できた。

 

そこから症状が好転しているからと言って、漠然と同じ温補剤を使っていると、とんだしっぺ返しを食らうこともあるので、やはり定期的にきちんと観察する必要があることを教えてもらった。

 

器の大きさは、その人によって異なるが、一見、十分な大きさがあるような人でも、実は小さく、漢方を服用することにより、容易に陰陽が転化することがあるので注意が必要だ。

 

ちなみにこの女性は、附子の含有量が少ない附子理中湯に変更することで、陽証に転化することなく、気持ちよい便が出るようになっている。

 

たま~に、こういうことがあると、漢方も安易に出すのではなく、きちんと話を聞きながら、その時々の状況に合わせて出さないとアカン!と思うのであった。。。

 

いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)