2014年04月16日(水) 21時53分48秒

「IQ25」の被告、見つからぬ社会の“居場所”…刑罰か福祉か、どちらも不十分の現状

テーマ:マスコミ報道

「IQ25」の被告、見つからぬ社会の“居場所”…刑罰か福祉か、どちらも不十分の現状(産経)


http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/140415/waf14041507000001-n1.htm


常習累犯窃盗罪で起訴された知的障害のある男(36)の弁護人、西田祐馬弁護士(京都弁護士会)は、京都地裁が無罪とした平成25年の自動車盗事件でも弁護を担当していた。


 当初は「車を運転したのはだめだよ」と言うと、男は「ぶっとばすぞ」とすごんでくることもあった。徐々に意思疎通ができるようになり、法廷でも「ごめんなさい」と謝罪した。


 ただ、どこまで罪の意識を持って謝るのか、いまだに分からない。


許してもらえることを学習し、条件反射で謝っているようにも見える。怒られると分かっていながら、自動車盗を繰り返している節もある。


 だからこそ、男に刑事責任能力がないと確信して弁護を引き受けているが、これまで福祉関係者の苦労や地域社会の不安とつぶさに接してきただけに、苦悩は深い。西田弁護士は言う。


 「彼のように再犯を繰り返す障害者を社会の中でどう位置づけ、どう処遇すべきかは、非常に難しい」



知能指数は25


 男は京都地裁での精神鑑定によって知能指数25と判定された。


厚生労働省の基準では、4段階のうち2番目に重い「重度」の知的障害者だ。


 法務省矯正統計によると、24年の新規受刑者2万4780人のうち、知的障害の疑いがあるとされる知能指数70未満の人は5214人。全体の21%だ。


 一方、厚生労働省の23年度の推計では、全国の知的障害者数は74万1千人。


先の法務省統計と照らせば、犯罪者は0・7%にすぎない。知的障害者が犯罪をする傾向にあるわけでは、決してないのだ。



社会にいるという認識はあるのか


 「累犯障害者」への刑罰をめぐっては、専門家の間でも意見が分かれている。


元最高検検事の土本武司・筑波大名誉教授(刑事法)は「再犯の可能性が高ければ、安易に社会に戻すことこそ無責任。障害のみを理由に犯罪を見過ごしてはならない」と指摘する。


 石塚伸一・龍谷大法科大学院教授(刑事法)は「善悪の区別がつかなければ刑法の範囲外。後見人をつけるなど福祉による監督強化と、本人の努力が必要だ」とした上で「刑務所に閉じ込めるという発想ではなく社会が寛容に受け入れることが望ましい」と語る。


 「累犯障害者」(新潮文庫)の著者で元衆院議員の山本譲司氏は、男の犯罪をこう分析した。


 「必ずしも知的障害が原因でなく、生育歴や彼自身のこだわりが誘発している可能性が高い。彼には社会からの疎外感があるか、そもそも社会にいるという認識さえないのではないか」


 山本氏は、民間企業が運営に参加するPFI刑務所で、知的障害や精神障害のある受刑者向けに怒りのコントロールやコミュニケーション能力を高める教育に取り組む。


刑罰と福祉のはざまで、社会への順応を後押しする可能性を模索する試みだ。


 出所後も福祉による保護を十分に受けないまま再犯を重ねる累犯障害者。


悪循環を断ち切る手がかりはあるのか。山本氏は言う。


 「少なくとも、刑罰と福祉の両方を改善することが事件の教訓ではないか」




 【用語解説】累犯障害者


 再犯を重ねる障害者のこと。刑務所を出所した後で犯罪に手を染め、刑務所に戻ることを繰り返す知的障害者を指す場合が多い。平成18年度の厚生労働省研究班による調査では、服役中の知的障害者の約7割が再犯者とされている。

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