2011-03-29 15:47:38

なぜ産学連携をやるのか?産学連携・TLO実務者が日常的に投げかけられる問い

テーマ:TLO業界・実務
 大学など研究機関での特許の見方はさまざまだ。
 研究者からは否定的な見方を投げかけることもあるだろう。
 例えば、(1)技術を公知にしてしまったほうがよいのではないか、(2)産学連携はよいけど、その周辺で儲けようとする人間がいるのはけしからんという清貧的思想、などがある。


 産学連携の現場に立つ人は、なぜ産学連携をやるのかについて、自分なりに見解を考えておく必要がある。
 人によっては、研究資金の由来が国に偏るよりは、産学連携によるライセンス収入等で多様化したほうがよい、というかもしれない。しかし、後で見ていくように、この資金面に着目した論拠は少し現状に合っていない。アメリカでも最大の資金供給元はずっと連邦政府だからだ。

 まず産学連携が先行しているアメリカの現状をみていくと、産学連携をやる意義が見えてくるかもしれない。

 アメリカの産学連携は、80年のバイドール法成立が契機となったと言われているが、それ以前から産と学とは近づいていた。かつての米国の大学の資金供給源はミリタリー関係であったが、ベトナム戦争等の影響で徐々に先細りしていくことが大学側に予想された。大学が資金源を多様化するために企業との関係を見なおした、というわけである。

 下の図は、アメリカにおける科学研究費の供出元の割合を示している(出展:「アカデミックキャピタリズムを超えて」著・上山隆大)。

(クリックで拡大します)
産学連携・TLOブログ-アカデミックキャピタリズムを超えて


 70年代から徐々に連邦予算のシェアが低下しているが、それでも50%超のシェアを占めており、連邦政府がアメリカの科学研究に果たしている役割は大きい。企業からの供出も増えているとはいえ、10%にも満たない。大学自身の収入(ライセンス収入を含む)は増えている。米国の大学はアントレプレナー大学と言われ、もともと商業的な行為には寛容的であった。例えば大学内にショッピングモールを設置する、などである。現在の米国の大学は、大学の資産を運用するために、外部の運用会社に委託し、大学は、予算配分の決定に専念している。

 とはいえ、大学自身の収入では、研究予算の全てをカバーすることはできない。米国バイオ産業の発展を支えたのは、NIHからの豊富な資金であったと言われている。
 つまり、依然として、研究資金の供出元・イノベーションの推進役としての政府の役割は大きいのである。


 では、産学連携の意義は、どのように考えればよいのだろうか?



産学連携・TLOブログ-書籍「アカデミック・キャピタリズムを超えて」
アカデミック・キャピタリズムを超えて アメリカの大学と科学研究の現在


 上山隆大は、このように主張する。産業界が大学とかかわることは、ともすれば大学の中に埋もれてしまう「知」から、市場原理を通じて有用性を見出すことである、と。



産学連携・TLOブログ-書籍「アメリカの産学連携」宮田 由紀夫
アメリカの産学連携―日本は何を学ぶべきか


 また、宮田由紀夫は、大学への研究資金により創出された雇用に注目し、連邦政府が投下した資金により研究が行われ、その結果、産業が生まれたことにより、投下した資金の約2倍の経済効果があったと述べる。
これは公的な資金を研究機関に供給する有力な根拠となる。


 産学連携のきっかけは、資金源の多様化であったかもしれない。しかし、米国の例にも見られるように、研究費をライセンス収入により補おうという考え方は無理がある。むしろ、上山や宮田の言うように、大学の「知」をイノベーションと結合させることに産学連携の意義があると言える。

 日本の産学連携も、運営費交付金を毎年1%漸減させるという政策的な手法を採ることにより、大学に競争的研究資金獲得能力を蓄積させ、ライセンス等による産学連携を促している。
 米国の一部の大学は数千万ドルのライセンス収入を得ており、日本の大学のライセンス収入(数千万円)と2桁、3桁違うのであるが、上述の米国の大学の例を見れば、研究費をライセンス収入で補おうというよりは、いかに産業創出につながるか、という視点が重要となると考えるほうがしっくりくる。

 このような視点に立つと、まず日本の産学連携は何を目指すべきか。それは、まずライセンス収入で特許出願費用をペイできるかどうかの水準を目指すことになる。費用対効果の観点から、ある程度のマイナスはともかくとして、全くペイしないものはやるべきでない、という批判を退けるためである。

 優れた研究成果は偶然生まれることが多いため、大ヒット特許が出るかどうかは運も左右する。大ヒット特許が出るまでは、なんとか特許出願費用が過度に大きくならないよう持ちこたえなければならない。そのため、大学には、これからも不要な特許出願を避けるよう、技術の目利き能力が求められていくことになる。
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