過度な冷房に頼らずに夏を快適に過ごす「クールビズ」がすっかり定着した日本の夏。2016年も5月から9月にかけ、国の主導で取り組まれている。

クールビズで環境省は「冷房時の室温28度」を推奨しているが、その温度に近い室内で熱中症になり、搬送される人が続出している。冷房の設定温度は28度で大丈夫なのか。

室温が28度台でも搬送される患者が多い

東京消防庁のデータによると、都内で2015年6~9月の間に熱中症で搬送された4702人のうち、43.1%にあたる2026人が家の中で倒れた。搬送者の事例を見ると、79歳女性は6月の日中、「気温28.8度、湿度47%」の状況で重度の熱中症になった。73歳男性は8月の朝、「29.5度、73%」で、また76歳女性は7月の夜、「28度、67%」で、それぞれ搬送された。28度台で倒れているのだ。

実際に28度で冷房を使用しているツイッターユーザーからは、「さすがに暑くないか?」「エアコン付けてても、暑い(28度)感じがする」「あちーあちー。エアコン28度設定でも、あちー」といった声が多い。中には、

「去年はエアコン設定が常に28度で、全然いけたのに今年は暑い!!さすが猛暑...しかし!設定温度は変えないぞ!」

と28度にこだわるユーザーもいる。

「適度に汗をかく」こともクールビズの狙い

ただ、そこまで無理に28度設定を守る必要はないようだ。クールビズを啓発する環境省運営のウェブサイト「クールチョイス」には、こう書かれている。

「『28度』を目安として、外気温や湿度などの建物の状況、また、熱中症等を引き起こさないよう実際に取り組まれる方の体調を考慮しながら、無理のない範囲で冷やしすぎない温度設定の実践を呼びかけています」

同サイトによると、そもそもクールビズは「地球温暖化対策の一環」として省エネを啓発する意味合いがある。健康面では「体を冷やしすぎないようにする」のに加え、「適度に汗をかくように」と勧奨している。外気温と室内温度の差が大きいと、自律神経やホルモンバランスが崩れやすくなり、食べ物の消化吸収も十分にできなくなる。また、汗をかかないと汗腺が退化し、体温調節機能が働かなくなり、、夏バテや夏風邪を起こしやすくなる。こうした点から、あくまで「目安」として28度設定を勧めている。快適に過ごせるよう、扇風機の併用や、吸湿・速乾性のあるポロシャツやスポーツウェアの着用も呼びかけている。

同じ室内でも場所により2~3度の違いが

家庭用エアコンで大きなシェアを占めるパナソニックにJ-CASTヘルスケアが取材すると、同社の担当者はこう説明した。

「わが社のエアコンは、室内機の吸い込み口にあるセンサーが感知した温度を基準に、設定温度をキープする仕組みになっています。センサー付近と、人がいる場所とでは温度が違うことがあり、同じ室内でも場所によっては設定温度より2~3度ほど高くなったり、低くなったりする場合があります」

つまり、設定温度と体周辺の温度に落差があるというのだ。やはり寒い・暑いと感じたら、28度にこだわらず、設定温度を随時上げ下げした方が良さそうだ。

また、東京消防庁のウェブサイトによると、「気温が高くなくても湿度が高いと、熱中症になることがあります」という。同サイトで公表している、熱中症による救急要請時の気温と湿度の関係を示したグラフを見ると、気温が26度でも湿度が60%を超えると、搬送者は大きく増えている。

パナソニックによると、同社のエアコンは室内の湿気を吸い込み、ホースを通して室外機に排出するため、湿度を下げる効果もある。すべてのエアコン機器が同じ構造とは限らないが、同じ室温でも冷房使用時と不使用時とでは、使用時の方が熱中症予防には有効かもしれない。