タイタンの妖女 | 個人的読書

タイタンの妖女

タイタンの妖女 (ハヤカワ文庫SF)/カート・ヴォネガット・ジュニア
¥798
Amazon.co.jp

「タイタンの妖女」
カート・ヴォネガット・著/浅倉久志・訳
早川書房・出版


『太田光の人生を変えた一冊』


 太田光さんが、ことあるごとに、激奨しているヴォネガットの「タイタンの妖女」です。
このたび、太田さんの解説と共に文庫で新しく出ました。
 私的には、ヴォネガット初読みなんですが、07年のヴォネガット死後「追憶のアルマゲドン」とか、
「ヴォネガット大いに語る」とか、出ていたので、読んでみました。


 本書、あらすじを書いてもあんまり意味がないかもしれません。
 それぐらい、太田さんが解説で書いているとおり話は飛ぶし、
筋運びの整合性はさほど重要性がないから、、。

 でも、、、。


 お話しは、未来。
 大富豪のマラカイ・コンスタントが、これまた、謎の富豪ラムフォードと知り合い、
太陽系を有為転変変遷漂泊放浪して、空間から時間、果ては、価値感まで超越し
色々見知り、経験するお話しです。
 
 ヴォネガットが書いていて一番楽しかった作品というとおり、話しはどこに転がって行くか、
全く予測不能。
 筆任せというか、タイプライターの指任せといった感じ。
 しかし、その構成と筋運びの整合性があまり無いはずなのに、
しっかりと一人の人間の体系の中できちっと描かれています、といった
ヴォネガット流世界観は構築されております。
 世界というものは、無秩序で混沌としていて、人生なんてどうなるか全く判らない。
元大富豪だったとはいえ、所詮ちっぽけな一人の人間シニカルに構えて、
笑っちゃうことしか出来ないんじゃないの?という価値感です。
間違って受け取っていたらゴメンナサイ。こんな風に私は、理解しました。
 マラカイ・コンスタントの奥さんや、マラカイ以上にぶっ飛んでいてシニカルな息子
(この息子とマラカイの不一致さもちょっと笑える)
の家族物語としての面白さにもちょっと惹かれました。
 後、定時点として、punctualと表現している箇所もおかしかったです。
(これは、訳者浅倉さんの語感の素晴らしさ)


 読んでいて人生が変わるほど衝撃を受けたわけではないけど、
なんとなく、ヴォネガットの価値感はわかりました。
 それより、太田さんがなぜこの作品が好きなのかが一番わかりました。
 兎に角、本当は、大問題であるはずの現実を社会をチョケて茶化し、
ぽんぽんボケを毎秒単位で連発する太田さん、

この作品でヴォネガットが打ち出した価値感がそれそのものでした。(褒めすぎか?)