ナチが愛した二重スパイ
テーマ:ノンフィクション- ナチが愛した二重スパイ/ベン マッキンタイアー
- ¥2,520
- Amazon.co.jp
「ナチが愛した二重スパイ」
ベン・マッキンタイアー・著/高儀進・訳
白水社・出版
『うそみたいな実録スパイ・ストーリー』
この本、めちゃめちゃ面白かったです。
スパイ小説ってあんまりおもしろくすると嘘っぽくなるっていうのが、
私の勝手な説なのですが、本書の場合、実話なんだから、嘘もなにもない。
ナチのスパイとして、英国にパラシュートで降下、
そして二重スパイになったエディ・チャップマンの話しです。
これ、スパイものとして波乱万丈な話なのですが、このエディ・チャップマン本人の
人生としてもめちゃめちゃ波乱万丈、多分小説化したら、
あまりにも作りすぎたプロットとして酷評されると思うぐらい。
最初エディ・チャップマンは、ゼリグナイトの爆薬で金庫を爆破し金を強奪する
当時流行りの銀行強盗でした。
その後、逮捕され重犯罪者として大戦中ドイツに占領された
唯一の英国領土チャネル諸島で服役。
そこを脱獄するのですが、丁度抵抗活動が起こり、(チャップマンは一切関わっていない)
ドイツに対するレジスタンスの容疑で脱走中にドイツ当局により再逮捕。
ここで、ドイツ当局により、スパイになるように感化させられ
服役中の友人の命を取引材料に
(この友情の話も、小説っぽいですが、ナチはそんなに甘くなく、口約束に過ぎない)
スパイになる教育を受けます。
そして、ナチスのスパイ、エディ・チャップマンが完成するわけです。
ここまででも、小説になるぐらいの面白さなんですが、
実録もののスパイストーリーとしては、ここからが、本編。
チャップマンのスパイになるための教育も興味が尽きないのですが、
(よくある冒険小説そのまま)
この話、というか、本書、ある意味、英国情報部のドイツとの
情報戦での圧勝いや、完勝のエピソードでもあるわけです。
英国の情報収集分析能力は、凄まじく、
無線傍受で訓練中のスパイがパラシュート降下訓練中に
負傷し歯を治療したことまで突き止めています。
これまさしく、チャップマンのことで、その後このこともきっちり確認されています。
つまり、もう本格的なスパイがやってくることを英国は知っていたのです。
そして、チャップマン英国に飛来後、英国側に寝返った後にも、
チャップマンは、モスキート爆撃機の工場を破壊する任務を帯びていたのですが、
ちゃんと工場が破壊されたように見えるように、
プロのイリュージョニスト(マジシャン)を雇い工場の破壊を偽装。
ドイツ側は、このデハビラント社の破壊は、半信半疑だったみたいですが、、、。
兎に角、英国情報部のアッパレさといいますか、徹底さが、本書の裏の主人公なのです。
英国側の情報部の活躍は目を惹くのですが、当のチャップマンの心理が読者には、
今一伝わらなかったように思います。
チャップマンは、内縁の妻と娘がいたために、
英国側に寝返ったみたいに書かれていますが、
一回目のパラシュート降下後、すぐに殆ど自首みたいな形で、英国側に捕まっています。
で、簡単に寝返ります。この辺、やっぱり英国人だからなのか、家族のためか、金銭のためか、
よく判りません。
又、本書、最初から、中盤にかけてはめちゃめちゃおもしろいのに、
後半からラストが、ちょっとぐだぐだになったのも、
チャップマンが二重スパイになったことで、
勿論英国側は情報流出とか、英国内の破壊活動は
免れたし、ドイツ側のスパイ・マスターの情報は得られたでしょうが
このチャップマンを取りこむことによって、所謂、
スパイ小説みたいに、なにか、歴史的事実を変えたか
というと、ちょっと疑問なわけです。この辺が、本書のネックかなぁ?
でも、実際の最前線の情報戦を描いた実録ものとしては、とても興味深く面白い一冊でした。
同じテーマの最新記事
- フルーツ・ハンター 10月31日
- 生きるのも死ぬのもイヤなきみへ 10月18日
- がんこなハマーシュタイン ヒトラーに屈… 07月11日















