2017年05月07日(日)

Fri 170414 空気が硬い/前回と同じクスクス/ワインを楽しむ(モロッコ探険記39)

テーマ:ブログ
 ちょっとしたことで、町の雰囲気が一変することがある。ホンの小さな口ゲンカでも、その衝撃波は一瞬で町全体に拡散していく。本人たちは気づかない。

 些細で、たわいなくて、後で考えればマコトにくだらない意見の相違が原因なのだが、その衝撃波は波紋のように何重にも拡散していく。例えば時間が突然1秒だけ元に戻ったとか、逆に時計の秒針が中途で2秒だけ省略して先に進んじゃったとか、そういう感覚である。

 オジサンの激しいクシャミの音でさえ、そういうことが起こりうる。昼過ぎの静かな町で野良犬が一声高く吠えただけでも、ちょっとしたつむじ風が吹き抜けても、上空はるか高いところで乾いた拍子木が1つ高らかに打ち鳴らされたような、敏感な人間は強い衝撃を感じるのである。

 毎年5月7日の午後は、その種の軽い衝撃が町に広がりやすい1日である。9日連続した大型連休の華やかさは、すでにない。パパはみんな不機嫌である。うるさい息子たちの存在に辟易していたママは、気が抜けたようにホッとして座り込んでいる。

 町の様子を一瞬で変えてしまうような、小さな衝撃波が拡散しやすいのは、そういう午後である。普段はおとなしいネコが、高く天を仰いでヒゲをふるわせながら、一声高らかに鳴き声をあげる。その瞬間、人々の生活の次元が変わる。

「あれれ、1秒進んだかな」「2秒省略されちゃったかな」と、ワタクシがおかしな感覚を覚えるのはそういう瞬間である。よくわからない。連休ボケにすぎないのかもしれない。
お店からの眺め
(モロッコなのに酒を飲める店、3階のテラスからの風景。この日の午後は町の空気が硬かった)

 ましてやあの日のエッサウィラの場合、おそらく小学生とはいえ100人単位の大ゲンカである。バスの中からそんな激烈なケンカも目撃、ボコボコにされかかっていた男子もみんな町の隅に走り去ったが、さすがにその衝撃波は一気にエッサウィラの町に拡散した。

 だからバスを降りてみても、何だか町の雰囲気が前回よりも硬質である。吸い込む空気が硬いし、吐き出す空気も硬い。緊張感が数段違っていて、お日さまの光も硬い。太陽が丸い銅板のように見えている。

 街を歩いても、1週間前はあんなにしつこかった客引きたちの声が、やっぱり冷たく硬く変質している。というか、声自体がかからない。土産物屋もジュータン屋も、メシ屋もナッツ屋も香油の店も、通り過ぎていくワタクシにほとんど関心を示さない。
音楽隊
(エッサウィラの音楽隊。酒の飲める店のテラスより)

 最初は「こりゃ嫌われたかな?」と考えた。何しろ1週間前、どんな誘いの声も無視しながらエッサウィラを闊歩したのだ。1辺250メートルの菱形の中に収まりきるほどの狭い街だから、「あの東洋人に声をかけてもムダ」ぐらいのウワサは簡単に拡散するだろう。

 何しろ今井君の外見は「覚えやすい」ないし「覚えられやすい」。1度しか訪問したことのない店でも、店の人がワタクシをハッキリ記憶していることは少なくない。好意をもたれることのほうがずっと多いが、無視して通り過ぎれば「イヤなヤツだ」という印象だって強烈かもしれない。

 声をかけてくれたのは、床屋さんだけである。「どうだ、ヒゲを整えていかないか」「ヒゲが長すぎるとカッコ悪いぞ」というのであるが、それ以外はホントに誰も通過するサトイモ法師に声をかけてこないのである。
テラス
(イスラム圏だけれども、探せばお酒の飲める店も見つかる)

 あんまり寂しいから、とりあえず昼メシということに決めた。寂しい時は、積極的に新しい店を開発するよりも、馴染みの店にダラしなくなだれ込んだ方がいい。新しい店で冷たくされたりすると、寂しさが倍加してどうしようもなくなる危険性が高い。

 へたりこんだのは「ADWAK」。1週間前、強烈な口内炎の真っただ中で熱いクスクスを貪り、口中を再び傷だらけ&血まみれにしながらも、久しぶりに固形物の咀嚼と嚥下を満喫した店である。帰りに帽子を忘れて、夕暮れに受け取りに走った思ひ出も懐かしい。

 1週間前と同じ日本人が、同じ時刻に同じクスクスを貪りに現れる。ダンナもオバサマも驚いた様子。そりゃそうだ、モロッコに2週間も滞在する日本人は珍しい。

 しかも小さなエッサウィラの町だ。「まだいたのか?」もいいところであって、「まだ口内炎か?」「まだ口の中は傷だらけか?」と、クスクス笑われるのも当然である。

 15分待って出てきたクスクスも、1週間前と寸分ちがわない。今日も今日とて、言語道断なほどに旨い。熱い湯気がもうもうと立ち上るクスクスを口に運んで、その熱さに目をシロクロ。ホゴホゴ&ホムホム、おかしな唸り声をあげながら飲み込んでいく。
クスクス
(大好きなADWAKのクスクス)

 ただし、やっぱり口は痛いのである。上の写真をよく見てくれたまえ、この店のクスクスはナッツ類の多用が特徴。アーモンドは上にワンサと乗っかっているばかりではなくて、クスクス内部にも伏兵としてたくさん潜んでいる。香ばしいゴマの諸君もタップリ参加して、クスクスの味わいを盛り上げている。

 旨さと痛み。余りにアンバランスな2つの感覚を、お口の中で調和させなければならない。難しいことを言っているようだが、ごく簡単に言えば、要するに「旨いけど、痛い」のである。せっかく完治しかけた口内炎が再発しそうな恐怖。それに耐えつつ、今井君は食事を終えた。

「また来ます」とは言うものの、次はいつ来るのか見当もつかない。1週間で2度も来ておいて、次に来るのはおそらく3年も4年も先なのである。

 何しろ「エッサウィラ」だ、有名な観光地とは違う。マラケシュからバスで3時間、カサブランカからも遠い。ADWAKのクスクスを味わうためだけに東京からわざわざ来るなんてのは、なかなか考えられない表六玉じゃないか。

 寂しくなったワタクシは、「どこか酒を飲める店はないか」と、静かな午後の街を巡り歩いた。相変わらず空気は硬い。客引きの声もうつろに響き、まだ一応は賑やかな市場も「今日の商売はもう終わり」という諦めの雰囲気に満たされていた。

 イスラム圏で昼間から酒を飲むのは、もちろん外国人観光客以外は御法度である。それでもお店は発見できて、大きなカフェの陰に隠れた暗い階段の脇に、「Bar」という看板があり、ビールどころかワインもボトルで注文できる。
夕暮れ
(エッサウィラの夕暮れ)

 モロッコの田舎町で午後3時、大西洋の風に吹かれながら、白ワインのボトルを1本。マコトにおかしな気分である。3階のテラスにはアフリカの陽光が降り注いでいるが、太陽が翳ると一気に寒さがつのる。何しろここはアフリカと言っても北緯30度、1月の海風は冷たいのである。

 今ごろ、ケンカに参加しちゃった小学生たちは、それぞれのオウチでママに叱られている頃だ。「おとうさんが帰ってきたら、どうなるか分かってるんでしょうね!!」であって、これが昭和日本の男子なら、オヤジのゲンコの痛さを思ってションボリうなだれているに違いない。

 それを思うと、可哀そうでならない。確かにおおぜいでケンカするのは悪いけれども、ママに叱られ、パパにも叱られ、そのうえ明日になれば先生にも叱られて、これから少なくとも5日は天下の極悪人みたいに言われて過ごすのである。

 それに比べて、今井君は相変わらず暢気なものである。ワインは氷水に入れて冷やしてもらったが、1時間もしないうちにカラッポ。午後4時の砂浜を散歩し、「前回みたいな大っきなヤドカリと遭遇しないものかな」と思ったが、残念ながら貝殻1つ見つからなかった。

 マラケシュに帰るバスは、エッサウィラを午後5時に出発。途中の「Sidi Mokhtar」は相変わらず混沌とした大盛況、肉を焼く屋台にジュラバの男たちが集まって、しかし肉を貪ることもなく、延々と雑談にふけっている様子なのだった。

1E(Cd) Philip Cave:PHILIPPE ROGIER/MAGNIFICAT
2E(Cd) Savall:ALFONS V EL MAGNÀNIM/EL CANCIONERO DE MONTECASSINO 1/2
3E(Cd) Savall:ALFONS V EL MAGNÀNIM/EL CANCIONERO DE MONTECASSINO 2/2
4E(Cd) RUSSIAN MEDIEVAL CHANT
5E(Cd) Philip Cave:CONONATION OF THE FIRST ELIZABETH
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