2017年05月03日(水)

Mon 170410 フェズ探険/マクロの目とモノグラフ/神学校を探訪(モロッコ探険記35)

テーマ:ブログ
 たとえ「ガイドブック推奨コース」に過ぎなかったとはいえ、「一度迷い込んだら脱出するのは困難」とまで形容されるフェズの迷宮を、わずか一時間半で踏破したサトイモ入道。その迷宮脱出術は称賛に値するはずだ。

 フェズ滞在は「たった一日」。到着が1月16日の16時、帰りの列車が17日の14時40分だから、正確には22時間半。「たった1日じゃ何にも見られませんよ」と地元のモロッコ人も表情を歪めるほど広大なフェズを1時間半で踏破、直ちに2周目に突入したのである。

 受験の巨大な迷宮にはまり込んで、大型連休の只中にとっくに5月病に悩まされている諸君、人生の大ベテラン・サトイモ入道が「迷宮脱出法」を伝授して差し上げよう。

 フェズでもマラケシュでも大学受験でもみんな同じことであるが、まず迷宮の何たるかを知りたまえ。深い迷宮とは一般に、極端な専門化のなせるわざなのである。

 興味をもって覗き込む1軒1軒のお店が、フェズではみんな非常識なほど専門化している。「ロウソクなら何でもあります」と、ありとあらゆるロウソクを高さ10メートルの天井まで積み上げたロウソク店。こんなのをマジメに覗き込んでいたら、あっという間に目が回る。

「水道の蛇口専門店」なんてのもあれば、お肉屋さんの中には「動物のアタマ専門」という恐ろしい店もある。ズラリと並んだヒツジのアタマ。ヒツジに混じって牛のアタマやニワトリさんのアタマもあり、みんなタマシイの抜けた濁ったお目目をサトイモ法師に向けて、彼ら彼女らの短い命を反芻しつづけている。

 そんなのにいちいち感動ないし感激しながら、「さすがフェズの迷宮は深い」「深すぎる」「迷い込みそうだ」と天を仰いでいれば、それはほとんど自己陶酔であり、自分から積極的に迷宮の催眠術にかかっていくようなものである。
フェズ1
(神学校ブー・イナニア・マドラサ。深い静謐に感激する)

 もちろん、それもまた旅の楽しみではある。「迷宮に出かけていって迷宮に迷わない」というのは、「酒を飲んで酒に酔わない」「ラーメンをすすってちっとも満腹しない」というのと同じことであって、楽しみを求めて出かけたのに「楽しくない」と愚痴を言うのは、要するに反則である。

 だから、迷宮にハマりに出かけたなら、本来はどこまでも深みにハマるべきなのだ。ハマれ、ハマれ、どこまでもハマれ。いいじゃないか、ハマる価値のあることなら、どこまでもハマった方がいいに決まっている。

 心理学にハマるもよし、社会学にハマるもよし。数学にハマる、天文学にハマる。ギリシャ悲劇にハマる、ドストエフスキーにハマる。いいじゃないか、若者諸君。ハマりにハマって旅や人生を謳歌する。ハマって&迷って、出口のない深い強烈な酔いを楽しみたまえ。

 しかし今日のサトイモ法師が書いているのは、ハマらずに脱出する方法である。そんなことを考えるのはツラく情けないことだが、① ハマる余裕がないほど時間が限られている場合と、② ハマった対象がハマるに値しない場合には、やっぱり考慮しておくべきなのである。

 例えば、隣のクラスの田中君や高橋君にハマっちゃった。アイドルのモエカちゃんやユリカちゃんにハマっちゃった。うーん、それもまた素晴らしいことだが、客観的にみて「別のことにハマった方がいいんじゃないの?」ということも多い。
フェズ2
(イスラム教徒以外の立ち入りを禁止する寺院が多い)

 ワタクシのフェズの場合、極端に専門化した小型店舗、その1つ1つにギュッとハマってしまえば、あっという間に街の暗闇に迷い込んでしまうことは明白だったのである。

 間口3メートル、奥行き3メートル、高さ10メートル。容積にして約90㎥の小型店舗に展開されるミクロコスモスの魅力は、そのマコトに不安定な直方体に詰め込まれた高い専門性のなせるわざである。

 ありとあらゆるナッツ類。考えられるかぎりのキャンディ。人間ワザとは思えないほど鋭角的に積み上げた赤や黄色の香辛料の数々。そういうものに引き込まれることなく、マクロの視点を常に維持しながら迷宮を進まなければならない。

 いきなり予備校の世界の話になるが、もう15年も前、当時は日本最大の生徒数を誇った「佐々木ゼミナール」という予備校の夏期講習に「5日間『as』だけを徹底して攻略しましょう」という講座があった。

 何でもかんでもやっていると夏はあっという間に終わっちゃう。だから、ひたすらasをやる。何が何でもasをやる。夏にasを徹底攻略すれば、勝利は必ずキミのもの。「奇跡の神授業でキミはやがて伝説になる」。まあその類いのありがちなキャッチコピーがくっついていた。
フェズ3
(アッタリーン・マドラサ。ここも祈りの時間は見学禁止だ)

 参考書の世界にも、そんな極端な専門化が存在する。「医学部志望なのに数学の成績が思わしくない」という致命的な悩みをかかえていたかつての今井君は、科学新興社の「モノグラフ」シリーズにのめり込んだ。1つ1つの分野を徹底解説した参考書シリーズである。

 いま考えても、あの専門化は強烈であった。「写像」で1冊、「指数&対数」で1冊。「軌跡と領域」「数学史」「数列」「漸化式」「図形と方程式」でもそれぞれ1冊。高校数学を何と全26冊で徹底解説。「幾何学 発見的研究法」なんてのもあった。

 これで迷宮の深みにハマりこまないヤツなんか、存在するだろうか。古文でも英語でも似たようなシリーズあって、「これでホントに受験参考書?」とビックリするほど専門性が高いのである。

 英語で「受動態」だけの1冊とか、「仮定法」だけの1冊とか、「時制」だけの1冊なんてのも存在する。そりゃ時制はものすごく深いから、関心をもてばナンボでもハマり込めるけれども、だからと言って大学受験生が「時制」だけの神♡参考書に1ヶ月も2ヶ月もハマり込んで大丈夫なの?

 古文の参考書コーナーで、「好色五人女」を見た時は、さすがのクマ蔵もひっくり返った。「増鏡」もあれば「今鏡」もあり、「日本永代蔵」もあれば「世間胸算用」もある。ありゃりゃ、古文の迷宮、こんな魅力タップリの森の中に受験生がひっかかったら、それこそ2度と出てこられない。
フェズ4
(モスクも神学校も修道院も、外の世界とは別次元の静寂に包まれている)

 そういう話であって、迷宮にのめりこむのはミクロの目を抑制する能力に欠けているから。夢のように美しい鍾乳洞に迷い込み、美の迷宮で一生を終える覚悟がまだ出来ていないなら、やっぱりまずマクロの目で全体を見通す努力をしたまえ。

「高校数学の基礎」「よくわかる古文」「英文法入門」みたいな本を2〜3週間でスカッと読み上げる時期なのに、「asの専門家になろう」「本居宣長を全部読もう」なんてことを夢みるから、魔の鍾乳洞から抜けられなくなる。

 フェズ1周目を終え、マクロの目でフェズの全体像を把握したサトイモ法師は、2周目でいよいよフェズの街に深く侵入する。今日の写真の1枚目「ブー・イナニア・マドラサ」は、14世紀マリーン朝の神学校。庭園の中央の水盤で、授業前やお祈りの前の学生たちが身を清めたのだという。

 諸君、見習いたまえ。授業の前に身を清める習慣が、予備校にもあるといいですな。顔を洗い、手を洗い、心を清めてから授業に集中する。そういう習慣があれば、きっと学力もぐんぐん向上するんじゃないか。サトイモ入道はそんなことを考えた。

「サヴィア・ムーレイ・イドリス廟」は、修道院。この修道院に逃げ込んできた人は、例え重罪を犯した人間でも保護された。マコトにありがたい駆け込み寺であって、「異教徒は入場できない」という厳しいオキテがある。

 今日の写真3枚目「アッタリーン・マドラサ」も神学校。中庭には大理石の水盤があって、ここも同じように授業前の学生たちが身を清めた。諸君、本当だ。「授業前に身を清める」は、学ぶ者すべてに必須。せめて手ぐらい洗ってからサトイモ入道の授業に出席したまえ。
フェズ5
(マコトに爽やかな青年教授に遭遇する)

「カラウィン・モスク」も、異教徒の入場を許さない。9世紀、チュニジアから移住したオカネモチの娘♡ファティマ・フェヘリーヤさまによって建てられた。神学の他に、天文学・医学・化学・数学・歴史学・言語学など、多彩な学問の中心地となった。キリスト教世界からも多数の学者が訪れたという。

 うにゃにゃ、フェズはやっぱりスンゲーのである。30歳代後半の男子教授が、マコトに爽やかな笑顔で神学校に駆け込んでいく姿も目撃した。

 この街は、極端に専門化した商店がどこまでも軒を連ねる奥深い迷宮であるばかりではない。1000年単位で気の遠くなるほど深化したさまざまな学問が、地中深くで複雑に根っこを絡ませあう知の迷宮でもあるのだ。

 それこそ、「迷宮へようこそ♡」なのである。商人の迷宮の奥に、知の迷宮が隠れている。マクロの目で広大な迷宮を把握したら、諸君も豊かで奥深い迷宮探険を早く開始したまえ。大学もマラケシュもフェズも図書館も、みんなニヤニヤ笑いながら諸君の侵入を待ち受けている(と思う)。

1E(Cd) AZERBAIJAN Traditional Music
2E(Cd) Ibn Baya:MUSICA ANDALUSI
3E(Cd) T.Beecham:BERLIOZ/LES TROYENS 1/3
4E(Cd) T.Beecham:BERLIOZ/LES TROYENS 2/3
5E(Cd) T.Beecham:BERLIOZ/LES TROYENS 3/3
total m50 y592 d20550
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