2016年09月03日(土)

Wed 160810 想像上の料理人/おいしゅーございました/ビアリッツヘ(ボルドー春紀行28)

テーマ:ブログ
 「食品としてどうなんだろう?」という色彩が存在するんじゃなかろうか。今日1枚目の写真は、フランス南西部のレストランならどこでも供される「野菜のスープ」であるが、うーん、見た感じ、どうもいただけない。

 これはバイヨンヌの名店「システラ」の野菜スープ。もちろんワタクシはこの味が大好きなので、「この味がいいねとワテが言うたから、4月9日はスープ記念日や」なほどではある。しかし諸君、この色だけは、どうも。ま、カンタンに言えば … みたいじゃないか。

 この色のスープ、バイヨンヌばかりではない。カルカソンヌでもサルラでも、ボルドー近郊のアルカションでも経験した。とにかく前菜として「野菜のスープ!!」と注文すれば、例外なしにこの一皿に直面することになる。

 味の面だけではなく、栄養の面でも、おそらくコイツはマコトに優秀なヤツなのだ。タマネギたっぷり、ホーレンソウもタップリ、何だか分からないがとにかく野菜タップリ、ミキサーにかけたか、それとも執念深く包丁で超コマギレにしたか、全てはそこから始まっている。
スープ
(フランス南西部、独特の野菜スープ)

 あとは、繊維がみんな溶けるほど、徹底的に煮込んだに違いない。あんまり煮込むとビタミンが破壊されて元も子もなくなるから、「ちくしょー、オレはもっと煮込みたいのに」と、悔しさに熱い涙をこらえつつ火を止める。その様子が見えるようである。

 すると謎の料理人は、「100%カンペキに煮込めなかった」「栄養なんか、どーでもエイヨー。もっと煮込みたいよう♡」という内心の叫びに、もう耐えることができない。

「もっとおいしくしたいよー」
「意地でももっとおいしくしたいよー」
「何かもうヒト手間、加えられないかなー」
「人が『何なんだ?こりゃ♡』と唸るほどのヒトサラに仕上げたいよー」

 ベテラン講師♡今井君は、そういう料理人の気持ちが痛いほどよく分かる。だってそうじゃないか、平凡な料理、平凡な授業、そういうのが一番いいに決まっているけれども、何か最後にヒト手間加えて、客が味わったことのない世界、生徒が体験したことのない感動、そういうものを提供したい。
ステーキ
(バイヨンヌ「システラ」のフィレステーキ。おいしゅーございました)

 授業の場合、実際にはそのヒト手間は要するに「蛇足」であって、感動を与えようと披露した英語トリビアが、返って生徒諸君の負担になりかねない。

 むしろ全体の説明を薄口にしたほうが、簡潔&明快、実力のつく良質な授業になる。「ボクだけが知っている」みたいな蛇足は、フィアスコに終わる可能性大である。

 フィアスコとは、英語のスペルならfiasco。「野心的な企てだったのに、滑稽な結果に終わってしまった大失敗」の意味である。

 大学のゼミなんかで、ちょっとユニークな発表を企てる。意気揚々と発表を進めるうちに、教授のヒトコトで、発表の滑稽な矛盾が露わになってくる。ヒタイにアブラ汗を滲ませて発表を続けるが、「フィアスコだ♡」「フィアスコだ♡」というササヤキがゼミ室に溢れる瞬間である。

 若い講師諸君、だから授業は控えめに。濃厚すぎる授業、英語トリビアの塩をドバドバ入れちゃって取り返しのつかなくなった講義、そういうことを続けていると、生徒の負担がどんどん大きくなって、多くの場合フィアスコ状況に陥る。「薄口すぎるかな?」ぐらいがちょうどいいのだ。
ワイン
(バイヨンヌ「システラ」で、もちろん赤ワインも1本)

 さてと、問題の野菜スープであるが、「途中で火をとめた」「オレは最後までやり切れなかった」という不満から、料理人は「どうしても何かしてみたい」と、蛇足への誘惑に耐えきれない。ホーレンソウをもうひとつかみ、ミキサーにかけてペースト状に。それをドボドボ入れちゃったりする。

 だってポパイのチカラコブが夢のようにムックリ膨らむのは、ホーレンソウの缶詰を1缶グビグビやった直後なのだ、「ホーレンソウのペースト、素晴らしいアイディアじゃないか」。そんなふうに考えるのはムリもない。あの色は、そんなふうにしてついちゃったのかもしれない。

 もしもこのワタクシが料理人なら、「青汁の粉末を入れちゃおう」という思いつきに、思わず膝をポンと打つんじゃないか。ビタミンも食物繊維もタップリの「緑効青汁」なら、熱を加えてダメになった野菜のビタミンも補えるはずだ。

「これはもう手放せません」
「ただし1家族あたり3箱までとさせていただきます」
「オペレーターを2倍に増員して対応いたします」
「まずはお電話を♡」
であって、ここで躊躇していたらオトコとは言えない。

 そこでまだ熱い鍋の中に、例えば「青汁三昧」の粉末を5袋。おー、よしよし、マズそうだ。しかし栄養はタップリ、ケールにゴーヤ、ビタミン不足とは言わせない。トーロトロ、トーロトロ、「さあ召し上がれ」というわけだ。
ビアリッツ1
(バイヨンヌのお隣、超高級リゾート「ビアリッツ」風景。今日はカメラの「アートモード」で)

 最近、南イタリアの某所で「何でもナッツ」という料理人に遭遇した。イワシのツミレにもナッツ、パスタにもナッツ、クスクスにもナッツ。あんなに何でもナッツ&ナッツのナッツ攻撃は生まれて初めてだったが、もしも彼なら、きっと野菜スープの仕上げにもナッツを投入するに違いない。

 すり鉢でナッツを細かめにすりおろし、「ひひひ」と微笑む。油断なく周囲を見回して、今の行動を誰にも見とがめられなかったことを確認する。やおらナッツ投入。お客はみんな驚いて「何なんだ? この新鮮な食感は」と囁きあう。

 やがて雑誌が取材に訪れ、有名シェフとして評判に。テレビ取材が殺到、お空にはミシュラン星もピカピカ&ピッカリコ、彼の将来は大きく開けて、こんな店の片隅でナッツなんかすりおろした暗い過去は、忘却のかなたに消えるだろう。

 むかし日本の家庭料理の定番に「呉汁」というのがあった。「ごじる」と発音する。「呉」とは、大豆をすりつぶしたペースト状のもの。これを味噌汁に入れれば「呉汁」である。枝豆のペーストを使用する地域もあって、その場合は「青呉汁」と呼ぶ。

 呉汁の具は、根菜全般・タマネギに豆腐、油揚げに長ネギ、シイタケにコンニャク。鶏肉を入れる地方もあるらしい。しかし諸君、かの想像上の料理人のナッツスープ、実は数百年も前の日本人が、「ごじる」というゴジゴジした名称で先に発明していたのである。

 もちろん、今井君がバイヨンヌやカルカソンヌやアルカションで続けざまにいただいた野菜スープは、例外なくすべて「たいへんおいしゅーございました」だったのであって、以上描いてきた謎の料理人の姿は、すべて想像上の話である。
ビアリッツ2
(荒れ模様のビアリッツ海岸。これも「アートモード」で)

 ただし、やっぱり色については「どうなんだろう?」。ホーレンソウのグリーンペーストどばどば、青汁粉末どばどば、この色彩からはどうしてもそんな想像が止めどなく溢れてきてしまう。

 しかしそもそも「今井君が野菜スープを連日いただく」ということ自体、異常な事態なのだ。かつてコドモの頃に「牛じゃあるまいし、草なんか食べないよ」と暴言を吐いたこともある。それなのに、連日連夜の野菜スープ満喫。どれほど「おいしゅーございました」だったのか、推して知るべしである。

 他にバイヨンヌ「システラ」で注文したのは、フォアグラの乗っかったフィレステーキ、メニューの中で一番値段の高かったワイン。「メニューにないもので、もっとオススメのワインはありませんか?」みたいな高級な世界は、ワタクシとは無縁なのである。

 4日前は、強い吐き気に悩まされていた今井君を、トイレにできるだけ近いテーブルに案内してくれた。今回は健康そのもの、ジーサマたちの陽気な歌声(昨日の記事参照)に送られて、店の真ん中の一番いい席に通してもらえた。感謝&感謝、ホントに全て、たいへんおいしゅーございました。

 さてこれからワタクシは、ビアリッツに出かけようと思う。ビアリッツは、バイヨンヌの隣町、ガスコーニュ湾に面した超高級リゾート地である。「王侯貴族の定番」というからには、雨模様でもぜひ一度目撃しておかなきゃならない。

1E(Cd) Kiri Te Kanawa, Solti & London:MOZART/LE NOZZE DI FIGARO 1/3
2E(Cd) Kiri Te Kanawa, Solti & London:MOZART/LE NOZZE DI FIGARO 2/3
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