2016年06月04日(土)

Wed 160511 志望動機と自己PRのこと 中世の街サルラに向かう(ボルドー春紀行20)

テーマ:ブログ
 シューカツもいよいよ本番なら、推薦入試の開始も間近である。志望する側もたいへんだか、採用したり合否を決めたりする側の苦労も、やはり想像に余りある。

 人事部のヒト、大学のAO関係者、毎年毎年ホントにウンザリなんじゃないだろうか。代わり映えのしないマニュアル的な「志望動機」「自己PR」がワンサと積み上げられ、そのワンサを全て誠実に読んであげなきゃいけない。

 ネット社会になって、特に人事部のヒトビトのご苦労はたいへんなものだろう。30年前までなら、履歴書はみーんな手書きだったし、当然「コピー厳禁」ないし「コピーによる出願はご遠慮ください」だったから、同じ「ワンサ」でも、そのワンサぶりには限度があった。

 しかし今や、ワンサはほぼ無限大になりつつある。コピペあり、ワンクリックのコピペも氾濫し、シューカツ塾の模範解答みたいな志望動機と自己PRがチマタに溢れかえれば、人事担当者の大量のタメイキは地球温暖化を加速させかねない。

 炭水化物ダイエットが過度になると、「ケトン体」の影響で口臭がキツくなるんだそうな。人事部のヒトや大学のAO担当者が糖質カットマニアだったりすれば、タメイキもまたそれなりのカホリに染まる。いやはや、呪うべきは志望動機&自己PR欄の氾濫だ。

 というか、むしろ恨むべきは「点数より人間を見て採用」という風潮。「単なる受験テクニックより人間性をじっくり見て判断」。マスメディアの大好きなキレイゴトが、日本中の若者と人事担当者を重苦しく苦しめる。「単なる点数」のほうが、どれだけ楽か分からない。
カヌレ
(アキテーヌ名物「カヌレ」。食感はゴソゴソした田舎風カステラ。大学イモの味がする)

 そろそろ「予備校講師募集」の季節である。昔から6月上旬になると、日曜日の全国紙には「プリティ塾(仮名)」や「どうすんだい?(仮名)」「ぜみぎヨヨナール」の講師募集がデカデカと並んだものである。

 新卒で一流企業に就職しても、2ヶ月とか3ヶ月が経過すると、多くのヒトビトが「このままでいいのか、いけないのか。それが問題だ」みたいな疑問につきあたる。「こんなことをやるために生まれてきたんだろうか」「これから40年もこんな仕事を続けるの?」というわけである。

 その疑問はすこぶる全うなので、若者なら誰だって「他にやりたいことがチャンとあったはずだ」と、日曜の午後なんかにふと座り直して将来に思いを馳せる。ちょうどそこへ「どうすんだい?」と問いかけてくる求人広告があり、数年前の浪人時代の思い出が鮮やかによみがえる。

 座り直した彼または彼女は、すぐさまエントリーシートの作成に取りかかる。しかしそこで立ちふさがるのが「志望動機」「自己PR」。推薦入試の時もそうだったし、シューカツの時も同じだった。常に若者の前に立ちふさがる門番がこの両者なのだ。

 こんなの、いったいどう書いたらいいのか、サッパリ分からない。目立たないほうがいい、単に「変人じゃありません」という宣言でありさえすればいい、そういうふうにも思う。しかし応募した合計500人から1人しか選ばれないとすれば、ここでビシッと目立っておきたいのも確かである。
サルラへ
(4月7日は、中世の街サルラへの小旅行。サンテミリオンやベルジュラックを通り、サルラまでローカル線で3時間の旅である)

 正直に言って、「どうすんだい?」でも「プリティ塾」でもどっちだって構わないので、「ホントにやりたいこと」を実現するために、手っ取り早く生活費を稼ぎたいだけであることがほとんどなんじゃないか。

 そこで、まあみんな同じような「でっちあげ」をやり始める。製薬会社なら「子供の頃から御社のクスリに馴染んできました」。食品会社なら「ずっと御社の○○が大好物でした」。教育産業なら「高校時代に授業を受けて大ファンになりました」。まあまあ妥当なところなんじゃないか。

 ただし、シューカツ塾の模試でそういうのを書くと、たちまちボツにされる。
「そんなんじゃ『ずっとファンでいてください』『いつまでも買い続けてください』と言われるだけですっ!!」
「それは顧客としての消費の動機。社員になりたい動機とは違いますっ!!」
みたいに、軽くせせら笑われてオシマイだ。

 ならば、正直に書くか。
「オカネがほしいだけですっ!!」
「ホントにやりたいことが別にあって、ここで手っ取り早く生活費が稼ぎたいんですっ!!」
「気楽にやれそうですからっ!!」
そういう話であるが、それでは要するにそれは変人にすぎない。

「受験勉強なんか、要するに丸暗記だ」。世界史や日本史のセンセが大教室で絶叫する姿を想像してみたまえ。真実に近いとしても、実もフタも、夢も希望も、何にもないじゃないか。
古城
(ドルトーニュ渓谷には、中世の古城が点在する。ライン川下りの情趣に勝るとも劣らない)

 というわけで、志望動機&自己PRの欄を前に、日本中の若者が行き詰まる。「もうヤメようじゃないか、こんなことは」であって、行き詰まったあげく日本中の若者たちが平気でウソをつき始める。と言うか、ますますマニュアル化は進み、テクニックを伝授するヒトビトの天下になる。

「昨年秋のある日、新宿の飲食店で友人たちとランチしておりました」。これで「私は友人関係も良好です」をPR。「すると熱心に仕事について語り合う御社若手社員4人の姿が。そのまま30分、お話に聞き入ってしまい、あの熱心で愉快な先輩たちの仲間入りしたいと存じました」

 ま、こんな具合である。
「おお、キミキミ、それはどんな話だったね?」
「はい、新興国関連の新プロジェクトとおっしゃっておりました」
「そうかそうか、ウチでやってみたいかね? 具体的には?」
「はい。もちろんどんなお仕事でも実績を積み上げていきたいと存じますが、例えば...」

 もちろんそんなにうまく進むはずはない。ワタクシはあくまでエントリーシートの段階での「志望動機」「自己PR」のことを考えているのである。若干のフィクションを交えても、まあいいじゃないか。フィクションなしの志望動機もだって、要するにわざとらしいことは同じなのだ。

 少なくとも、志望する会社内部のヒトに、その会社がどう優れているかとか、他社より優れている点は何かとか、そんな分かりきったことをお説教するような志望動機より、ずっと素直でいいんじゃないかね。
サンテエミリオン
(サンテミリオン付近の車窓風景。どこまでもどこまでもブドウ畑が続く)

 例えば今ボルドーにいる今井君が、「キミは何故ボルドーを選んだのかね?」といきなり面接を受けることになったとする。誰でも思いつくのは、
「普段からボルドーのワインを愛飲しておりまして」
「ボルドーがどれほどブルゴーニュより優れているか」

 しかしそれじゃ諸君、「釈迦に説法」もいいところ。その話なら、面接官が一番よく知っている。「ほおそうかね。ではこれからもずっとファンでいてください」と、ニヤニヤ笑いながら追い返されるのが関の山だ。

 今井君なら、以下2つのエピソードを語りたい。
① 3年前、パリの裏町の立ち飲みバーで、バーテンダーに「赤ワイン、グラスで」とお願いした。オジサマはニコリともせずに「ブルゴーニュ? ボルドー?」と尋ねた。「ボルドー」。とっさにそう答えてから、「なぜオレは無意識にボルドーを選んだんだろう?」と自問自答した。

② 昨年、マルセイユからリヨンに向かうTGVの中で、フランス人青年に声をかけられた。「日本の上智大に留学してました。出身はディジョン。ブルゴーニュワインの生産地です」とおっしゃる。その時もふと大好きなボルドーのことが頭をよぎった。ボルドーのヒトだったらよかったのに。
ボンバルディア製
(ローカル線の車両は、みんなボンバルディア社製だ)

 あとは諸君、自分で続きを考えてくれたまえ。とにかくそんなこんなで今井君は、頭の中というよりむしろ肉体の奥底から、「ボルドー♡」「ボルドー♡」「ボルドー♡」と、どうしてもボルドーを訪れたい欲望&欲求が湧き上がってくるのを感じていたのである。

 そうしてついに、ボルドーにやってきた。高熱とハキケを伴うヒドい風邪も、一晩の荒療治でほぼ完治。6日目の小旅行は、中世の街サルラを目指す。ドルトーニュ川に沿って、ボルドーからひたすら東の山奥に分け入り、ローカル列車で3時間の道のりだ。

 途中には有名なワインシャトーが点在するサンテミリオンの町もある。4月上旬、どこまでも続くブドウ畑はまだ芽が出たばかりであって、たわわに旨そうな実の揺れる光景は想像するしかないが、ボンバルディア社製の気動車は、全身を激しくふるわせながら、ドルトーニュ渓谷を溯っていくのであった。

1E(Cd) Wand:BRUCKNER/SYMPHONY No.8①
2E(Cd) Wand:BRUCKNER/SYMPHONY No.8②
3E(Cd) Brian McKnight:BACK AT ONE
4E(Cd) Wand:BRUCKNER/SYMPHONY No.8①
5E(Cd) Wand:BRUCKNER/SYMPHONY No.8②
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