2016年04月06日(水)

Sun 160313 4月第1週木曜日の孤立感 ラーツケラー(ドイツ・クリスマス紀行15)

テーマ:ブログ
 あんまり信じてくれる人はいない気がするが、思い切って告白してしまえば、ワタクシはおそらくこの世で一番内気な人間の一人であり、この世で一番消極的な人間の一人でもある。

 なかなか集団の中に溶け込めないので、せっかく苦労して入った学校でも職場でも、ウカウカしているとあっという間に孤立する。仲間たちが元気で明るくて、「トゲトゲしてる」と感じるほど積極性に溢れた集団だと、入り込んだその日、いやその瞬間から、すでに孤立の危機に直面している。

 何故いきなりこんな告白をするかというに、今日は新年度の4月6日、同じような危機に立たされている人が、読者の中に必ず存在するのを知っているからだ。

 まず、大学1年の4月がそうだった。「どうしても東京大学に入りたい」と考えて、駿台予備校で浪人の1年過ごした。ところが「4問完答」などという無理を狙いにいった数学で、張り切りすぎて1問も解けなかった。

 やむなく入った早稲田大学政治学科は、同じような大失敗をしてきた仲間たちばかり。「オレはここにくるはずじゃなかった」「ホントなら今ごろボクは東大にいるはずだった」という愚痴の渦だった。
市庁舎
(ライプツィヒの新市庁舎。この地階にランチに最適な「ラーツケラー」がある)

 そういうトゲトゲした愚痴の渦の中に思い切って飛び込めばいいものを、愚痴を聞いているうちにムカつきはじめ、あえてその集団を避けた。すると諸君、たちまちお馴染みの孤立の危機が訪れた。

 ワタクシはたいへんな意地っ張りでもあるから、いったん孤立してしまうと、こちらからアタマを下げて集団に受け入れてもらうようなマネはできない。孤立はすぐに深まって、話す相手も談笑する仲間たちもいないまま、ボンヤリ遠くを眺めて過ごすようになる。

 この場合、最もキツいのは、授業が始まる前と授業が終わった後の手持ち無沙汰な時間である。すぐに談笑のカタマリができて、仲間とそうでない者の分別が始まる。

 せめて「蕎麦屋で行こうぜ」「サテンに行こうぜ」と誰かが言いだせばコッチも付きあうのだが、教室やロビーや掲示板前で延々と雑談が続く。なお「サテン」とは喫茶店のことであって、20世紀の若者は喫茶店を短く「サテン」と呼んだ。今なら「スタバ行く?」みたいなものである。

 すると諸君、「ヤメちゃおうかな」「どうせここは来たい場所じゃなかったんだ」と、内気な男ほどいきなり激烈な行動形態を思い描くことになる。昔はこれを「5月病」と呼んだが、今井君の場合、4月の第1週の木曜日あたりで、すでにその病が顕在化するのである。

 21世紀なら「なりたい自分になれない」「こんなことをするために生まれてきたんじゃない」みたいなキレイなコトバをつかって、この状況を飾り立てることになっている。だからいっそう孤立や孤独が進行しやすいのである。
ラーツケラー
(ライプツィヒのラーツケラー。市庁舎の中だが、ビールでもワインでも遠慮なく飲める)

 大学の場合、「ヤメてしまったら、、もう後がない」と考えて最後まで耐えぬいたけれども、これが「就職」「会社」ということになると、ヤメてしまってもまだいくらでも可能性が残っている。

 4月第1週の木曜日、社内研修が始まったばかりの段階で、若き今井君はすでに「ヤメちゃおう」の決意が青膨れにブクブク膨れてくるのに気づいていた。さすがに会社だから、誰も甘やかしてくれない。「ヤメちまえ!!」という罵声だって飛ぶ。

 するとまさに「これ幸い」という思いであって、「ヤメちまえと言われたんだからヤメちまおう」「出て行けと言われたから出て行こう」みたいな、マコトに下らない稚拙な発想が胸に渦巻くことになる。

「新天地でいよいよキックオフ」ということになっても、キックオフは容易だが、後悔せずにゲームセットまで気持ちよく走り抜くことはマコトに困難である。

「こんなはずじゃなかった」「こんな場所で働くつもりはなかった」「なりたい自分は他にある」というササヤキは、たちまちザワメキなり絶叫なり怒濤なりになって、孤独な胸の中で激しく反響するのである。
ワイン
(こんなワインを飲んでみた。あんまりこだわらなくても、旨い時には旨いものである)

 そういう状況に陥った場合、諸君、誰でもいい、手近にいてヒマそうにしているヤツに「メシでもどうだい?」と声をかけてみるのが一番いい。読書はサイアク。スマホもダメ。ギュッと内側にこもってしまえるヨロイは、事態を悪化させるだけである。

 オトナの世界なら「酒に誘う」という手もあるが、酒は断られる可能性が高い。孤立と孤独を強烈に感じている状況で、たった1度でも「断られる」という経験は、ギュッと内側に引きこもる誘惑を加速させることになる。

「メシ」、特に「昼メシ」「ランチ」なら、まず断られることはない。とにかくサッサと済ませたいわけだから、相手なんかとりあえず誰でもいいのである。「お、いいね」「行きますか」「蕎麦? ラーメン? 回転寿司?」と気軽に応じてもらえるだろう。

 孤立を放置すれば、4月第2週 ☞ 第3週とどんどん事態は悪化するだけである。悪いことは言わないから諸君、第1週の木曜か金曜のうちに「メシでもいかねーか?」を早めにやってしまうこと。いったん解けてしまえば、後は一気呵成ということになりやすい。
オニオンスープ
(ラーツケラーのオニオンスープ。おいしゅーございました)

 そういうランチにうってつけな気楽な店が、ドイツの街ならどこにでもあって、それが市庁舎の「ラーツケラー」である。市庁舎の1階か地階に、日本の学食をグッと高級にしたような店があって、これをラーツケラーと呼ぶ。

 ミュンヘンのラーツケラーが一番有名だが、ミュンヘンに限らず、ブレーメンでもライプツィヒでもハンブルグでもケルンでも、大きめの街の市庁舎なら、たいていの場合ラーツケラーが見つかる。

「市庁舎の中」という安心感があるのか、いつでも学食並みの混雑だ。混雑しているが、それでも「座れない」ということは滅多にない。空いているテーブルが、隅のほうに3つか4つ必ず見つかって、「まあこのテーブルでいいか?」と苦笑しながら腰をおろす。
ステーキ
(ラーツケラーのフィレステーキ。たいへんおいしゅーございました)

 学食でもそうだが、この種の「苦笑」こそが孤立感をグッと和らげてくれる。「何だ、みんなおんなじなんだな」であって、新天地での緊張を耐えがたいほど重苦しいものに感じているのは、実は自分だけではなかったのである。

 12月22日、ライプツィヒの今井君は、まだドイツの旅の3日目。旅にも孤立感はつきものであって、外のクリスマス市が楽しそうであればあるほど、ラーツケラーの温かな苦笑の渦に浸りたくなるのだった。

 注文したのは、① オニオンスープ ② フィレステーキ ③ 赤ワイン・ボトル1本。市庁舎の中なのに、ラーツケラーは一種の酒蔵にもなっていて、ランチから一気に「飲みますか」「昼間から1杯行っちゃいますかね」という流れになっている集団も多いのである。

1E(Cd) Stan Getz & Joao Gilberto:GETZ/GILBERTO
2E(Cd) Keith Jarrett & Charlie Haden:JASMINE
3E(Cd) Ann Burton:BLUE BURTON
4E(Cd) Isao Tomita:Shin Nihon Kikou
5E(Cd) Ralph Towner:ANA
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