2015年06月11日(木)

Mon 150518 ドラゴンに飲み込まれる人 グレタガルボとストコフスキー(ナポリ滞在記33)

テーマ:ブログ
 こうしてとうとう諸君に、ラヴェッロのドゥオモ名物「ドラゴンに飲み込まれる人」をお見せする時がやってきた(スミマセン、昨日の続きです)。時は11世紀、麓のアマルフィが海洋都市として全盛期を迎え、海賊軍に対抗すべくたくさんの軍船を揃えた時代の作品である。

 まあ諸君、まずこのドラゴンの可愛いお目目をご覧いただきたい。楽しそうじゃないか、嬉しそうじゃないか。カラダを無意味に2回もくねらせて、全身で嬉しさと楽しさを表現してるじゃないか。

 そばを泳ぐお魚たちも素晴らしい表情で、1000年前のこの瞬間を永遠に定着させたのである。クマ助は特に下のお魚が好き。可愛く前に揃えたドラゴンの前足とともに、今から1000年後 ☞ 西暦3000年の人々までこの楽しさを伝えてほしいものである。

 飲み込まれるこのオジサマの表情がまたスンバラシイじゃないか。何となく、メガネを外した今井君に似ている。常に感情豊かなワタクシが無表情になることは滅多にないのだが、無表情のワタクシはだいたいこんな顔つきである。
ドラゴン1
(ラヴェッロ、ドラゴンに飲み込まれる人 1)

 今井君はたいへんエラいオジサマだから、最近は午前5時にはベッドから這い出してお風呂に入る。おお、諸君が今までに少なくとも10回は試みて失敗を繰り返したであろう「朝型生活」である。お風呂に入りしな、鏡に映った自分の顔を見るともなしに見てしまうと、まさにこのモザイクオジサマみたいな顔つきだ。

 考えれば分かるだろうが、朝のお風呂の入りしなに、濃厚濃密な感情に燃えていることは考えにくい。朝からカッカと燃え上がって「いくぞ!!」とか「くそぉ♨」とかやっていたんじゃ、あっという間に疲れ果てて、結局「2度寝」の悲劇に陥る。朝は、無表情で過ごすに越したことはない。

 ついでに、朝の鏡は「見るともなしに視線を向ける」であってほしい。朝からナルシス♡ナルちゃんになって、自分のお顔にホレボレと見入ったり、ついでに1人で濃厚な笑顔なんかを作ってホクソ笑んでいるとすれば、それ以上にキモいオジサマや孤独なシチュエーションは、まず考えられない。
ドラゴン2
(ラヴェッロ、ドラゴンに飲み込まれる人 2)

 次に諸君、飄々とドラゴンに飲み込まれていくこの人物の、あまりにも見事な諦観、往生際の美しさを学びたまえ。マコトに静かにこの世に別れを告げ、ドラゴンちゃんの胃袋に収まる運命を穏やかに受け入れる。

 やっぱり人間はこうでなくちゃいかんね。運命の前で絶叫したり、毛を逆立てて運命を呪ったり、「ドラゴンのヤツ、天国の警察にチクってやる」「天国の裁判所に訴えてやる」と、あの世で法廷闘争に訴えることを予告したり、そういう騒がしい最期は避けなければならない。

 もう1つのモザイクでは、無表情も何もない。いきなり頭から飲み込まれちゃって、2本のアンヨが口から出ているだけだ。しかしここでもまたそのアンヨをキチンと揃えて、素晴らしい諦観を表現する。

 ドラゴンの胃袋 ☞ 小腸&大腸経由でいよいよあの世に向かうのに、アンヨをくねくねダラしなく動かしては、1000年後や2000年後の未来人にとって悪い見本になるだろう。顔の表情は分からないが、アンヨの表情はマコトに見事なものである。

 それに比べて、6頭のライオンさんたちは可哀そうだ。ネコ族の背中というものは、永遠に柱を支えられるほど頑丈に出来てはいない。「猫背」と言ふ言葉を考慮すれば、ネコ族の背中はいたわってあげて然るべきである。
ライオン
(何となく可哀そうなライオンさんたち)

 以上、せっかく1000年前の文化遺産を目の前にしながら、クマ助のオフザケはとどまるところを知らないが、ここでちょっとだけマジメになれば、これらの作品が存在するラヴェッロのドゥオモは、1086年に建築が始まった。

 ローマ法王ウルバヌス2世の呼びかけで第1回の十字軍遠征が始まるのが、1096年。3年かけてエルサレム奪回を目指すのであるが、ラヴェッロのドゥオモはその10年前に建築が始まったことになる。

 7世紀から10世紀にかけての300年間、ヨーロッパ世界は一方的にアラブ世界に押しまくられ、イベリア半島もシチリアもイスラム側の領土となり、南イタリアから南フランスまで、海岸の町という町、村という村が海賊のエジキとなって、膨大な数の人々が拉致されて奴隷の身に落ちた。

 当時のアラブ世界では拉致してきた奴隷の収容所を「バーニ」の名で呼んだ。バーニはイタリア語のバーニョであって、トイレを意味する単語である。収容所の衛生状態がどんなものだったか、使用されたその単語からだけでも、なんとなく推測がつく。

 それが諸君、300年も続いたのである。コルシカもサルデーニャも海賊の巣窟になって300年。たとえば日本なら、徳川吉宗の「享保の改革」の時代から現代まで、気も遠くなるような長い混乱と不幸の歴史が続いた。
カフェ
(ラヴェッロ、ドゥオモ前のカフェ。まだ閑散としていた)

 11世紀は、ヨーロッパ世界が一転して反転攻勢に出た時代であり、北アフリカのバーニから救出された奴隷たちが次々とイタリアの故郷に帰還する。ラヴェッロのドラゴンは、そういう時代にデザインされたモザイクである。

 このドラゴンは、伝説では「邪悪なものを退治してくれる」のだそうだけれども、モザイクをみても、無表情なこのオジサマが「邪悪なもの」である要素はちっとも見つからない。では、もう一方の「アンヨ」が邪悪なのかい? いやはや、考えても考えても、まったくヒントさえ思い浮かばないクマ助であった。

 ということは、今日はこれで大人しくナポリに帰ることにするけれども、これからも何度もラヴェッロを訪れてこのドラゴンを眺め、ドラゴンが2頭もここに存在しなければならなかった理由を、頭をギューギューひねって考え続けなければならないだろう。

 もちろん、それは言い訳である。13時のランチから16時半まで、夢のような絶景の集落を歩き回って、要するにラヴェッロが大好きになってしまっただけのこと。やっぱり、もし出来るなら長期滞在を企てたい。

 そもそも「また明日来る」というなら、何でわざわざナポリまで帰るんだ? これからアマルフィまで30分、サレルノまで船で30分、サレルノから電車で40分。ナポリに着いても、地下鉄で20分、そこから徒歩で25分。待ち合わせ時間を入れれば、優に片道3時間の長旅になる。

 ということは、往復6時間。交通費を積み上げれば、今夜ラヴェッロに宿泊するぐらいの費用に達してしまう。「宿泊すべし、宿泊すべし」と、クマ助のポンポンの中で邪悪な心が囁いた。しかし諸君、目の前には2頭のドラゴンちゃん。邪悪な心はドラゴンの計4個のお目目に吸い込まれていきましたとさ。
アマルフィ
(アマルフィ港、4月初旬の夕暮れの風景)

 後で調べてみたら、ラヴェッロの細道の奥、断崖の真上の「ヴィラ・チンブローネ」は5つ星のウルトラ高級ホテルなんだそうだ。かつてグレタ・ガルボと言ふ美しい名女優が、これもまたウルトラ名指揮者ストコフスキーと、このヴィラ・チンブローネに長期滞在したんだそうな。

 20世紀前半を象徴するような男女2人の滞在は、1938年のこと。アメリカの作家ヴィダルによれば「ヴィラ・チンブローネのテラスから見る眺めは、世界中で一番美しい」とのこと。有名作家にしてはずいぶん普通のコメントに終わっているが、まあ「大作家さえ沈黙させてしまうほどの美しさ」と考えてくれたまえ。

 帰り道、ふと思いついた。ならばこの日本のクマも、負けずにヴィラ・チンブローネへの長期滞在を考えようじゃないか。来年の4月? 再来年の5月? チャンスはたくさんありそうだから慌てることはないが、オカネを貯めておかなくちゃならん。いやはや厄介なことに、「世界で一番美しい」というからには、オカネもタップリかかりそうである。

1E(Cd) Wand & Berliner:SCHUBERT/SYMPHONY No.8 & No.9 1/2
2E(Cd) Wand & Berliner:SCHUBERT/SYMPHONY No.8 & No.9 2/2
3E(Cd) Alban Berg:SCHUBERT/STRING QUARTETS 12 & 15
4E(Cd) Richter & Borodin Quartet:SCHUBERT/”TROUT” “WANDERER”
5E(Cd) Menuhin:SCHUBERT/SYMPHONY No.1 & No.4
total m91 y906 d16228
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