2015年04月25日(土)

Wed 150401 夜行列車の憂愁 ディジョンが分水嶺 パリ到着(2494回 またまたパリ3)

テーマ:ブログ
 夜行列車での移動というものはいつも同じなので、最初はウキウキするけれども、旅の途中から際限もなく空しくなり、いよいよ目的地が近づくと、涙がこぼれ落ちんばかりに悲しくなってくる。

 おそらく夜汽車の旅で一番楽しいのは、「よおし、今回は夜行列車の旅にしよう」思いついた瞬間である。あまりに嬉しくて、友人なり知人なりに「次回は夜行列車にしようと思ってね」などと、思わず電話をかけたりする。

 すると諸君、友人&知人というものはマコトに冷たい態度をとるので、「おお、そうかい」「へえ」と頷いてくれればまだしも、「何だ、オマエ=乗り鉄だったのか?」とヒトの生き方に疑問を呈したり、「ヤメとけヤメとけ、治安もよくないぞ」「そんなの何が楽しいんだ?」と真っ向から否定を試みたりする。

 疑問や否定に対して、何故か人間は夢中になって反撃に出るものなので、今井君は早速インターネットを駆使し、または「みどりの窓口」に突進するなりして、意地でもチケットを手に入れる。

 この10年のネットの進歩はマコトに夢のようであって、ヨーロッパや南北アメリカの夜行列車のチケットだって、窓口に並ぶ必要なんか全くなしに、ホンの10分で手に入る。JR東日本のホームページより、むしろ使い勝手がいいぐらいである。
ディジョン
(ヨーロッパ夜行の旅。ディジョン駅には雪が積もっていた)

 ついこの間、とうとう「北斗星」も「トワイライトエクスプレス」もなくなってしまったが、夜行列車を目指しての「みどりの窓口への突進」は、なかなかの迫力であったらしい。西宮神社・十日戎の「福男選び」よろしく、多くの男女が窓口に突進するらしい。

 ヨーロッパの夜行列車は、はるかに閑散としていて、「自分以外に誰か乗る人がいるんだろうか」と、更けていく夜のベンチで寒風に震えながら、焼酎チビチビ&あたりめモグモグをやらなきゃいけない。

 しかしそれでも諸君、チケットを手に入れてウキウキ、「いよいよ今夜だ」という思いにワクワク、旅の序盤の嬉しさは、まさにハチ切れんばかり。しかしいよいよ列車に乗り込めば、そういうウキウキ&ワクワクはたちまちのうちに崩れ去る。

 線路はもちろんどこまでも続くのだが、同じように「後悔は続くよどこまでも」であって、「個室」という甘いコトバに誘われて乗り込んだその「個室」なるものが、カプセルホテルのカプセルと大して変わらないことに茫然自失、「ウソだろ?」と立ち尽くすばかりである。
寝台
(今井君の「個室」とは、こういう世界であった)

 それでも今井君の場合は、「いいちこ」「チータラ」「あたりめ」など、強い味方がある。「スイス国境を通るから」という理由で車掌さんにパスポート預けなければならないのが精神的負担ではあるが、車掌さんの指摘通り「ヨッパライ」を続ければ、じきに旅はクライマックスを迎える。

 ミラノを出て1時間、早くも「いいちこ」はカラッポになり、ウィスキー「竹鶴」に手を出してますます「ヨッパライだね」の度を深めていくあたりで、列車はマッジョーレ湖畔のストレーザを通過した。

 スイス国境は間もなくで、静かに停車した列車の窓から眺めると、コワそうな警察官数名が列車に乗り込んできた。おお、パスポートコントロールである。

 2008年、滞在中のストレーザからジュネーブに日帰りの旅をしたが、あの時もここだった。「何で荷物がないんだ?」と問いつめられたが、フランス語で「アレ・ルトゥール」、またはイタリア語で「アンダータ・エ・リトルノ」と言えば、すぐに理解してくれる。「往復するんです」である。

 今夜は車掌さんがその辺を全部やってくれるから、「ヨッパライだね」をやりながら発車を待ち受ける。このあたりからアルプスの真っただ中、線路にはうっすら雪が積もりはじめた。
通路
(午前6時、まだ列車通路には誰もいない)

 もう車窓は真っ暗であって、目を凝らしても何も見えない。窓ガラスが鏡になって、見えるものは何ともクマっぽい自分の顔のみである。こういう時の顔はいかにも立派に見えるもので、「おお、オレもなかなかカッコいいじゃないか」と悦に入る。

 あんまり悦に入って眺め放題に自分の顔を眺めているうちに、酔いがすっかり回ってきた。諸君、顔を見つめすぎると、ヒトは酔っぱらう。顔、特に視線には、酒以上に酩酊効果があるようだ。

 あんまり強烈なカメラ目線の授業をすると、見ている生徒が酔っぱらってキモチ悪くなる。だからクマ助は、適度に視線を外すように心がけている。若い講師諸君、もし映像授業を担当するチャンスに恵まれたら、大切なことは「カメラを見すぎない」である。

 ルックスに自信があればあるほど、人はカメラ目線になる。カメラ目線は人を酔わせるから、生徒が酔っぱらうほど見つめたんじゃ、授業効果が上がらない。例えスタジオ収録であっても、時にはアサッテのほうに視線を送って、広い教室内を見回しているような自己演出を試みたまえ。
夜明け
(夜明けが近づいた。外は雨である)

 ガラスに移ったカッコいい自分に酔っぱらったクマ助は、このあたりから熟睡に入った。熟睡は、おそらく午前1時ごろからであったろう。気がつくと、それこそ川端康成ふうに「夜の底が白くなった」ことに気づいた。

 「たいへんだ、大雪だ」と思って外を見ると、列車はちょうどディジョンの駅に停車。ホームのオレンジ色の灯りに照らされて、積雪20cmぐらいか。雪国出身の今井君にとっては大したことではないが、もし東京でこのぐらい降ったら、「交通機関がマヒ」という事態になる。

 しかしクマ助の心配をよそに、夜行列車は静かに滑り出し、駅を離れて順調にスピードを上げた。さすがに毎晩アルプスを越えて往復している列車であって、このぐらいの雪にツベコベ難しいことは言わないのである。

 ディジョンを出た段階で、時刻は午前6時すぎ。冬至直後のヨーロッパの日の出は午前8時であるから、まだまだ夜は続く。しかし諸君、夜行列車の旅が深い憂愁に包まれるのは、いつもこのあたりからである。

 「夜明けはまだ」とは言うものの、さすがに午前6時となれば、東の空を青い光が満たし、朝が迫っていること、この旅がもうすぐ終わることを暗示する。この日、窓の外はディジョンの雪から次第に雨模様に変わり、雨はいかにも冷たい音で窓ガラスをたたいた。

 7時過ぎ、進行方向左側の車窓にキレイな川が現れた。川は列車につかず離れず、どこまでも左の窓に寄り添ってくる。川に沿って道があり、列車は時おりトラックやクルマとすれ違う。川沿いには点々と町があり、眠そうな町に明かりが灯って、朝はどんどん近づいてくる。
リヨン駅
(午前9時30分、冷たい雨の降るパリ・リヨン駅に到着)

 泣きたくなるのはこういう時間帯である。「朝がくる」とは「旅は終わる」であって、あんなに楽しみにしていた夜行の旅は、あと2時間しか残っていない。

 さっきのディジョンが、実は分水嶺だったのである。ディジョンまで、川は南の地中海に向かって流れている。ソーヌ川はリヨンでローヌ河に合流し、アヴィニョンやマルセイユに向かっていく。

 ところがディジョンを過ぎれば、水は北に流れはじめる。列車と並行して流れるのはヨンヌ川。まもなくモントローの町でセーヌに合流し、セーヌ河はパリをS字に貫いてルーアンに至り、ルアーブルでイギリス海峡に流れ込む。

 そういうことを考えてますます悲しさが増してくるのであるが、このころには夜はすっかり明けて、列車がゆっくりと通過するのは、すでにパリ郊外の駅。駅には通勤客がズラリと立ち並んで通勤電車を待っている。昔の夜行急行「津軽」や「天の川」の車窓から眺めた関東平野の風景と同じことである。

 パリ・リヨン駅に到着。午前9時30分。冷たい雨の降りしきるパリにこんな時間に着いて、ホテルにチェックインももちろん無理。困り果てるばかりであるが、とにかく短かった夜の旅に別れを告げる。

 同じ列車で夜のアルプスを縦断した人々も、「疲れきった」というより「悲しくてならない」という風情。しかし諸君、一生に1回か2回、こんな形でパリに入るのも、間違いなく素晴らしい経験として心に刻まれるはずである。

1E(Cd) Jan Garbarek:IN PRAISE OF DREAMS
2E(Cd) Bill Evans & Jim Hall:INTERMODULATION
3E(Cd) John Dankworth:MOVIES ’N’ ME
13G(δ) 家永三郎:日本文化史:岩波書店
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