2015年04月21日(火)

Thu 150328 夜汽車でパリへ 夜のミラノ駅 あたりめ(2490回 またまたパリ2)

テーマ:ブログ
 「ブルートレイン」という呼び方すら、ついに日本では過去のものとなってしまった。しかし少年時代から今井君は「夜行列車」の世界の住人であって、ビックリするぐらい夜行列車の旅を繰り返してきた。

 小学校の音楽の時間には「夜汽車」という歌も習った。もともとはドイツ民謡であって、「勝承夫」という人が訳詞を書いている。
   いつもいつも通る夜汽車
   静かな響き聞けば
   遠い町を思い出す
 21世紀の日本で「夜汽車」と言った場合、これとは別の「夜汽車」が存在するらしいのだが、20世紀人間が「夜汽車」と言ったら、このドイツ民謡以外にはありえない。

 消滅しようとしているのは夜汽車ばかりではない。日本からは「汽車」という名詞も消えかかっている。いま走っているのは「電車」か「列車」であって、汽車ではない。もし「汽車」がなくなってしまったら、「汽」という漢字も消滅の危機に立たされそうで、マコトに心配である。

 その今井君が、これからヨーロッパの夜汽車の旅を敢行しようとしている。ヨーロッパの夜汽車はこれで2回目。前回はスペインのサンチャゴ・デ・コンポステラからマドリードのチャマルティン駅まで、8時間近く狭い座席につっぱらかって座っていった。

 今回の旅は、あの時とは問題にならないほど何しろオシャレであって、ミラノからパリまでの寝台列車、しかも個室である。イメージの点でのオシャレ度は、あんまり今井クマ蔵に似合わない。

 今までの人生で乗ってみた夜汽車は、東北の片田舎から東京に向かう、いわゆる「おのぼりサン列車」ばかりであった。秋田から東京に向かうには、今はなき急行「津軽」「天の川」など。青森からの上京者を満載した急行「八甲田」「十和田」とともに、その昔「出かせぎ列車」の名で呼ばれた列車であった。
夜汽車
(ミラノ発パリ行、夜行列車が入線した)

 21世紀、「出かせぎ」という言葉も死語になりかかっているようだが、昭和の日本では「どうしたら出かせぎが減らせるか」が社会的大問題になっていた。東北や北信越の農家の人が、冬の農閑期に首都圏など都市部に「出かせぎ」、建設現場などで働いた。

 「出かせぎのワルツ」などという歌まであった。むかし「歌謡曲」というものがあって、その代表的な「歌手」の中に「千昌夫」という人がいた。作詞・白鳥園枝、作曲・遠藤実の「星影のワルツ」が発売されたのが1966年。1968年まで、何と2年もヒットチャートを賑わせ続けた。

 「別れることはつらいけど 仕方がないんだ君のため 別れに星影のワルツを歌おう」。「出かせぎのワルツ」はその替え歌である。秋田の農家の皆さんが囲炉裏端で輪になって歌っているのを、朝のNHKローカルで放送した。「別れることはつらいけど 仕方がないんだ生きるため 別れに出かせぎのワルツを歌おう」。

 替え歌も何も、ほとんどモト歌と同じであるが、朝7時半、「さあこれから学校に行こう」と張り切っている小学生としては、余りにドンヨリ暗澹としていて、「これは一生忘れられないな」と思ったものだった。そして実際忘れずに、今こんな場を借りて書いている。
パリ行
(パリゆき夜行の出発は、23時05分である)

 考えてみれば、当時のいわゆる「出かせぎ列車」は毎晩たいへんな数が走っていたのである。「津軽」だけでも2本、「八甲田」「十和田」も数本、ちょっと豪華な寝台特急「ゆうづる」「はくつる」「あけぼの」も入れれば、合計10数本が東北から上野を目指した。

 そりゃ確かに「いつもいつも通る夜汽車」であって、郷愁とか都会への憧れを呼び覚ます以上に、今なら要するに「安眠妨害」「静かな夜を返せ」であって、夜汽車が汽笛とともに、約30分に1本の割りで走るんじゃ、惰眠も貪っていられない。

 12月26日、ミラノに到着した今井君が暗澹たる気持ちでそんなことを思っていたのは、ミラノ駅の状況がまさに暗澹たるものだったからである。21時、ミラノ・チェントラーレ駅に到着。パリゆき夜行の出発は23時05分。2時間をどう無事に過ごしたものか、途方に暮れていた。

 ミラノ駅構内のレストランもカフェも、もう営業時間の終わりが迫っている。ならば駅から出て、「駅前の飲食店で時間をつぶしたらどうか」であるが、ミラノはこの5~6年で景気でも悪くなったのか、駅前の雰囲気がググッと悪化した感じである。
深夜のミラノ駅
(ミラノ駅の夜が更けていく)

 仕方がないので、「駅のベンチに腰掛けて待つ」という行動を選択。22時を過ぎた駅では、店のシャッターが次々と閉まり、通勤客の姿も消えた。何しろクリスマスの翌日、いわゆるボクシング・デーであって、遅くまで仕事をしている人なんかいないのである。

 アルプスおろしの寒風が吹きすさび、もちろん暖房もなく、照明も少し落とされて薄暗いベンチに座っていると、思わず子供の頃の記憶にこびりついた「出かせぎのワルツ」が口をついて出てくる。

 ベンチの並んだ一角に一緒にいるのは、① イタリア人のオジサマ1名、② 若干キョドイ行動のイタリア人少年1名、③ アフリカからの移民家族 ☞ 赤ちゃんを含めて10数名。①は、まあマトモそう。②は、やたら頻繁に席を移り歩いて、相当にキョドイ。③は、家財道具のほとんど全てを持ってきた様子であって、まさに「出かせぎのワルツ」である。

 掲示板を見るに、もう今日の列車はパリゆきの夜行しか残っていない。みんな同じ列車に乗るのだ。寒風に首をすくめながら、ひたすら列車を待ちつづける。こういう世界はマコトに久しぶりである。「治安はどうですか?」ということなら、これ以上オッカナイ状況はなかなか考えられない。

 そこでクマ助がポケットから取り出したのは、諸君、日本から持参した「あたりめ」である。固い固い「あたりめ」を開けて、1本1本はじっこから嘗めるようにして噛んでいれば、「寒風、何するものぞ」であり、「コワいのコワいの、飛んでいけー」であって、あたりめ君の助けさえあれば、こんなシチュエーションで緊張することもない。
雪が降り始めた
(うっすら雪が積もりはじめた。フランス国境付近で)

 そして諸君、あたりめの袋を今井君がカラッポにするのを合図に、駅構内の時計の針は23時を指した。さあいよいよ、夜行列車の発車時間が迫ってきた。オジサマ、ニーチャン、アフリカの大家族、みんな一斉にベンチを立って、夜汽車が入線したホームを目指したのである。

 何しろ、予約したのは個室寝台。諸君、「ミラノからパリへの個室寝台」を想像してみたまえ。さぞかしスンバラスイ魅惑の世界、名探偵ぐらい乗っていてもおかしくない豪華オリエント急行、ヨーロッパ中のお金持ち大集合、そういう世界を想像するはずだ。

 それがそもそも甘いのだよ、諸君。待ち受けていたのは、闖入した瞬間「大失敗!!」「ゲロ!!」「ウソじゃないよね、ホントにコレなんだよね」「これって昭和の出かせぎ急行?」と、思わず絶望の叫びとともに天にコブシを突き上げそうな、「個室」というより「監獄」な感じの、マコトに厳しいスペースなのであった。

 しかし諸君、こんなスペースでコブシなんか突き上げてみたまえ、コブシは壁を突き抜けて隣の個室との境界を破壊する。ここはあきらめて、この狭小スペースで明朝のパリを楽しみに息を殺しているしかない。

 こういう時の今井君は、マコトにあきらめが早い。あきらめなどというものは早ければ早いほどいいので、いつまでも「ウソだろ」「信じらんない」と呻いているのは愚の骨頂だ。

 早速カバンを掻き回して、さあ取り出だしましたるは、① チー鱈 ② 焼酎「いいちこ」 ③ ウィスキー「竹鶴」の小瓶、そしてもちろん ④ あたりめ。「そんなのあたりめえだろ♨」であって、こういうピンチを見越して全て日本で準備万端整えておいた。
旅の供
(夜行列車の旅のオトモ)

 そのときドアが開いて、若い車掌さんが現れた。「スイス国境を通過するときに必要だから、パスポートを預かります」と言うのである。万が一これがニセ車掌だったら、これでパスポート君ともお別れになるが、まあそこまで疑ってちゃ、外国旅行なんか出来るものではない。

 すると諸君、車掌さんは日本語で「ニホンにいたことがアリマス」とおっしゃる。「宮城教育大学でベンキョーしてました」と言うのである。まさか宮城教育大でベンキョーしてたほどの人が、ミラノでニセ車掌なんかやってないだろう。安心して、愛しいパスポート君を彼の手に預けた。

 すると彼は今井君のテーブルに一瞥を投げてヒトコト、「ああ、もうヨッパライね?」とニッコリした。さすが宮城教育大であって、一目で今井君を「ヨッパライね♡」と見抜いたのである。ただし今井君が酔っぱらうのはこの後であって、この段階ではまだちっともお酒なんか飲んでいなかった。

 まもなく夜汽車はミラノを発車。ストレーザあたりで汽車の右側に懐かしいマッジョーレ湖が広がったはずであるが、その段階で日付が変わり、「ヨッパライね?」「はい、ヨッパライです♨」な状況も、このあたりから次第に深まっていったのであった。

1E(Cd) Stan Getz & Joao Gilberto:GETZ/GILBERTO
2E(Cd) Keith Jarrett & Charlie Haden:JASMINE
3E(Cd) Richard Tee:THE BOTTOM LINE
4E(Cd) Isao Tomita:Shin Nihon Kikou
5E(Cd) Ralph Towner:ANA
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