2015年04月06日(月)

Wed 150313 サンマルコ ピサへ 傾いたものへの憧れ 覆いかぶさる(イタリア冬紀行10)

テーマ:ブログ
 「フィレンツェのダビデ像が地震で倒壊の恐れ」というニュースを聞いたのは、この直後のことである(スミマセン、昨日の続きです)。そういえば、クマ助のフィレンツェ滞在初日は、午前11時過ぎ、パラティーノ美術館で経験した震度3から始まった。

 どんな天才が制作した作品あっても、未来永劫&永遠不滅のものではない。それはアカデミアのすぐ近く、サンマルコ修道院内のフレスコ画でも同じことである。

 サンマルコには、フラ・アンジェリコの「受胎告知」があり、サボナローラの居室もここにある。サボナローラとは、子供たちを大量動員した過激な宗教改革 ☞「虚飾の焼却」で有名なコワいオジサマのことである。

 地震の脅威は、この修道院にももちろん例外ではない。もともとボロボロになりやすいフレスコ画は、ちょっと大きめの地震がきたらヒトたまりもないだろう。フラ・アンジェリコに危機が迫っている。もう一度、出来るだけ早めに眺めにいっておきたい。

 ところがこの日、サンマルコはお休み。おやおや、お休みというのではやむを得ない。次のフィレンツェ訪問がいつになるか、今のところ予定はないが、次回まで無事でいてくれることを祈るしかない。

 ならば午後から、久しぶりにピサの斜塔を見に行こうじゃないか。「地震の脅威」ということなら他の何にも負けない斜塔だから、チャンスがあればいつでも見に行く。人生はどこまでも積極的に、旅はいつでもAggressiveに。行動に躊躇があってはならないのだ。
サンマルコ
(フラ・アンジェリコ「受胎告知」のあるサンマルコ修道院。残念ながら、この日はお休みだった)

 こういうふうで、今日もまたフィレンツェSMN駅で、昼からビールをグビグビやることになった。だって仕方がないじゃないか。ピサゆきの各駅停車が出発するまで40分。こんな中途半端な時間を、他にいったいどうやって使ったらいいんだい?

 ピサまでは、鉄道で1時間弱の旅、かつては「4大海洋都市」の一つに数えられたピサであるが、ルネッサンス期以降は、フィレンツェ支配圏から出たり入ったりを繰り返す。こんなに近いんじゃ、それも致し方ない。

 4大海洋都市は、ピサの他にジェノバ・ヴェネツィア・アマルフィ。アマルフィを除外してサレルノを入れるヒトもいるが、アマルフィとサレルノは余りにも近い。船に乗れば、アマルフィから小さな岬を一つ回ればサレルノだし、陸路を行くとしても、サレルノから険しい峠一つ超えればアマルフィ。この2都市は「2つで1つ」の関係である。

 ジェノバを除けば、他の3都市は近世以降一気に衰えた。海洋交易都市から、テーマパークみたいな観光都市へ。近世近代がどれほど大陸国家の時代であったか。広大な面積を背景とした力の時代がどれほど長く続いたか。3つのうちどの街を訪れても、それを痛感して茫然とするほどである。
ピサ行き
(フィレンツェSMN発、ピサゆき各駅停車)

 クマ助が訪れた日は、ピサ・マラソン開催中。たくさんの市民ランナーが、マコトによく晴れたクリスマスの町を制限時間ギリギリで駆け抜け、温かい喝采を受けていた。

 今井君は、傾いたものや曲がったものが大好きである。そりゃ、本来は傾いていてはいけないので、真っ直ぐシャキッと立っていなければならない。

「曲がったことはするな」
「真っ直ぐに前を向いて進め」
とは、人類の文明が始まって以来、父が息子に来る日も来る日も諄々と説き聞かせ続けた決まり文句である。

 「曲がっている」なんてのは言語道断であって、「姿勢を正せ!!」という教師の絶叫は、「背中の曲がった生徒の学力は伸びない」という経験則から来ている。

 4月の最初の授業で、「姿勢の正しい子は、必ず成績が伸びます」とニコヤカに話す予備校講師もいらっしゃる。カッコいい先生が得意の雑談に入るところで、何故か「姿勢を正して♡」などと優しく微笑みかけると、女子を始めとしてクラス全体がウットリしてしまったりする。
ピサ
(美しい快晴のピサ市内)

 そのぐらい、「真っ直ぐに」「シャキッと」「いちずに♡」「脇目もふらずに」というのは、あらゆる人間の理想となっている。「傾いた」「曲がった」「脇見ばかりして」などというのは、まあ言語道断に近いのだ。

 しかし、傾いているものや曲がっているものには、カタクナに真っ直ぐ、ガンコに正面だけを見ているオカタには、なかなか納得できない強烈な魅力があるのだ。とりあえず諸君、太宰治「斜陽」というタイトルから、斜めでなければありえない魅力を知るべきである。

 歌舞伎などというのも、もともとは「かぶく」であって、これに漢字をあてれば「傾く」である。一国一城を傾けるほどの魅力をもった女性を総称して「傾城」を呼び、もちろん唐の楊貴妃がその代表格であるが、その系統の末端は江戸の遊女たちにまでつながっている。

 今井君はと言えば、生まれつきマジメ一方の人間である。このブログを見てみたまえ。2008年から6年半にわたり、恐るべき真っ直ぐな刻苦勉励の歴史を感じないか。

 2012年6月27日からは1日たりとも休まない依怙地な連続更新が続いて、間もなく「1000日連続更新」の偉業を打ち立てようとしている。曲がったこと&傾いたことへの生まれつきの嫌悪を、このクマのひたむきな足跡に感じるはずである。
斜塔1
(歴史教科書的、模範的な斜塔の図)

 しかしだからこそ、傾いたものや曲がったものへの憧れが強い。お酒が好きなのもその証拠の1つ。本来マジメな人間はお酒なんか敬して遠ざけるはずであるが、「遊びがないとロクな仕事はできません」と言い訳して、夢中でサカズキを傾ける。

 旅にしてもそうだ。こんなに頻繁に外国を旅するのも、もともとは「傾いたこと」への強烈な憧れの証左。「KUSOマジメに仕事バッカリしてる人間じゃありませんよ」と自らに言い聞かせたいがために旅を繰り返しているフシもある。

 しかし「1年50日の旅」を10年継続するうちに、旅自体がずいぶん依怙地に、ずいぶんマジメになってしまった。「これでもか?」と旅を続け、脇目もふらず真っ直ぐ前を向いて刻苦勉励するタイプの旅になっちゃったとすれば、それもまた今井君の「マジメ一方」を如実に示すものである。

 ひたむきに前だけを向いて、シャキッと姿勢を正したまま、KUSOがつくほどマジメに刻苦勉励を貫くのは、もちろんマコトにカッコいい。しかしその結果完成するのは、新宿に立ち並ぶ高層ビルみたいなもんばっかなんじゃないか。
斜塔2
(裏町に覆いかぶさる斜塔)

 そういう作品には、ピサの斜塔みたいな痺れるような魅力はありえないのである。ピサの場合、「建てた後で、あれれ、だんだん傾いてきちゃったよ♨」という真面目さすら存在しないのだ。

 途中まで建てたら、地盤が悪かったらしくて、「おや、傾いちゃった」。そこで、傾いた基盤の上にどんなふうに建てたら倒壊を防げる塔になるか、キチンと計算しながら完成させた。つまり「基盤が傾いている」ということを関係者がみんな熟知しながら、完成品も大きく傾いていることを承知の上で積み上げていったのである。

 そのフシギな心理の美しい傾きは、マジメ一方のクマ助なんかにはとても理解できるものではないが、とにかく快晴の12月21日、ピサの駅から徒歩20分ほど、やがて裏町の向こうに、激しく傾いた斜塔が見えてきた。

 「裏町の向こうに」という表現には実は誤りがあって、正確には「裏町に覆いかぶさるように」である。軽い地震でもあれば、寂れた暗い裏町に、あの塔が一気にくずおれてくるかもしれない。

 この塔の類い稀な美しさは、その危うい均衡にあるのである。ツアーバスで正面から訪れ、ドゥオモから左に向かって傾いた教科書的な斜塔をみるのでは、その美しさの本質は理解し得ない。

 4大海洋都市の繁栄の面影も消え果てた裏町に、危険なほどの角度で覆いかぶさっている斜塔。裏ぶれたマラソン大会の歓声。観光シーズンのすっかり終わった真冬のピサ。そういうシチュエーションで斜塔を眺めた後ならば、「斜陽」の味わいもいっそう深くなるんじゃなかろうか。

1E(Cd) Wigglesworth & Netherland radio:SHOSTAKOVICH/SYMPHONY No.4
2E(Cd) Ashkenazy(p) Müller & Berlin:SCRIABIN SYMPHONIES 1/3
3E(Cd) Ashkenazy(p) Müller & Berlin:SCRIABIN SYMPHONIES 2/3
4E(Cd) Ashkenazy(p) Müller & Berlin:SCRIABIN SYMPHONIES 3/3
5E(Cd) Cluytens & Société des Concerts du Conservatoire:RAVEL/DAPHNIS ET CHLOÉ
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