2015年04月04日(土)

Mon 150311 混沌から秩序へ ナポリの銃声 ボローニャのバーチャン(イタリア冬紀行8)

テーマ:ブログ
 混沌の中では、人はどうしても縮こまる。もちろん心も縮こまるが、心が縮こまればカラダだって伸び伸びしてはいられないので、手も足も縮こまり、両手はポケットに、上着の衿に首をすくめ、前屈みになって早足で街をゆく。

 10年前のイタリアは、どこの街に行ってもそういうヒトビトが目についた。老若男女の分け隔てなく、何となく不機嫌で、何となく不安そう。「颯爽と闊歩する」タイプのヒトは少数派であった。

 新聞や雑誌によくある「底抜けに明るい南の国の人々」みたいな枕詞とは裏腹に、油断のない鋭い視線を周囲に投げながら、仲間どうしヒソヒソ会話を交わす。地元の人の様子がそんな感じだから、海外からやってきた観光客だって、当然のように猜疑心のカタマリになった。

 ガイドブックの記述も、その猜疑心に拍車をかけた。スリ、ひったくり、ボッタクリ、強盗。その手口のいろいろが、ガイドブックのページを埋め尽くすアリサマと言っていいほどだった。
ボローニャ1
(ボローニャ名物、トッリ・ペンデンティ。背の高い方がアシネッリ、低い方がアシネッリ)

 それはちょうど日本のオジーチャンやオバーチャンが、病院の待合室で自らの病気についてほとんど自慢話みたいに語り合う様子と似ていた。今井君だって10年に一度は病院に行くから、診察室前のベンチでバーチャンたちのそういう会話に耳を傾けることもあるのだ。

「ワタシなんか…なんですよ。そりゃもうたいへんで」
「ほほお、そうですか、でも私のほうがヒドいんですよ、だって…なんですから」
「おやおや、それはたいへんですね。でもね、ワタシはもっとたいへんでね…」
の類いである。

 ガイドブックに満載された海外での被害情報には、「首絞め強盗」とか、「ソースぶっかけ ☞ スリ」とか、まさに多種多彩。
「私なんか、こんなヒドい目にあいました」
「いや、私のほうがもっとヒドい目に遭いました」
と、まさにヒドい目合戦の様相を呈する。

 最近はATMがらみの手口が多いらしくて、「ATM使用中に話しかけられたら、直ちに犯罪だと思え」という勢い。その被害の様子を読んでみると、確かにマコトに巧妙なので、不自然な優しさを装って近づいてこられたら、迷わず犯罪のニオイを嗅ぎとるほうが賢明なのかもしれない。
ボローニャ2
(トッリ・ペンデンティ接近図。2つの塔がハス交いに恐ろしいほど傾いている)

 しかし2014年の段階で、イタリアでそういう雰囲気を感じることは少なくなった。「混沌から秩序へ」であり、日本人の大好きな「治安」がグググッと改善され、夕暮れの雑踏を歩いていても危険を感じることなんか滅多にない。

 2015年4月、今井君はナポリに滞在中。諸君、さすがにナポリはまだ恐ろしい。1週間前には、白昼のナポリ中央駅前で10数発の銃声が鳴り響いた。それどころか、200メートルほど先の雑居ビルの屋上で銃を乱射する姿を目撃。銃口から白い光が何度もひらめき、硝煙が上がるのもハッキリと見えた。

 まさか慣れっこになっているわけではないだろうが、悲鳴も恐怖の叫びも起こらない。人々はしばらくしてから立ち止まり、ビルの方を振り返ってポカンと眺めているだけだ。中には立ち止まりさえしないで、そのまませかせか駅に向かうヒトもいる。

 こういうふうで、2015年のナポリは相変わらずオッカナイ。それでも、ローマ ☞ ミラノ方面への高速鉄道フレッチャ・ロッサが20分間隔で規則正しく走り、イタリア名物の突然の運休や大幅な遅れも発生している様子はない。

 秩序と治安が、国の北の方から少しずつ浸透してきたのに違いない。ナポリだって、10年前の深く暗い混沌から抜け出して、人々は縮こまらずに颯爽と手を振って歩きはじめたようである。

 事はマコトに単純で、「フレッチャ革命」と言っていいほど。ロッサ・アルジェント・ビアンカ(白)の3種が軽快に走りまわり、これに豪華列車イタロも加わって、混沌からの脱出はそれほど難しいことではなかったようだ。
ツリー1
(ボローニャ、マッジョーレ広場のクリスマスツリー。恐ろしいバーチャンと出会ったのは、このツリーの足許であった)

 ただしそれは、平常のイタリアのこと。クリスマス直前の雑踏とお祭り騒ぎ、それも夕暮れから夜の時間帯になれば、過去の混沌の不気味な亡霊がヌッと顔を出す。2014年12月20日、夕暮れのボローニャを散策中のクマ助は、まさにその亡霊に遭遇したのである。

 最初は、ごく普通の物乞いのオバーチャンだろうと思っていた。治安の回復したイタリアにも、相変わらず物乞いで生活を支えているヒトを多く見かける。ナポリほどではないにせよ、先進的なはずのローマでもミラノでもボローニャでも、決して少ないとは言えない。

 最初にバーチャンと目が合ったのは、ドゥオモのあるマッジョーレ広場の一角。巨大なクリスマスツリーの足許にたくさんの市民が集まり、イタリア人独特の真剣な表情を寄せあって、何だか声高に語り合っているあたりであった。

 丸々と太ったバーチャンは、「歩くのさえ難儀」「足の具合も余りよくない」という様子。そこいら中のヒトに片手を差し出して、小銭を求めている様子である。しかし今井君と目が合ったとき、一瞬その目が怪しく油断なく光るのを、さすがにクマ助は見逃さなかった。
ツリー2
(フィレンツェ、サンタマリア・デル・フィオーレとクリスマスツリー)

 次にバーチャンと会ったのは、広場から数百メートル、ボローニャ名物のトッリ・ペンデンティ(傾いた塔)近くであった。2つの塔のうち、背の高い方が約100メートルの「アシネッリ」、低い方が約50メートルの「ガリゼンタ」。兄弟みたいな2つの塔が、ハスかいに大きく傾いている。

 7年ぶりの懐かしくも危うい光景を、口を開けて無防備な体勢で見上げていると、さっきのバーチャンが突然目の前にいた。足の具合が悪くて歩くのも容易でない様子は、先ほどと全く同じ。しかしその割には、あっという間に広場からの数百メートルを移動してきたらしいのである。

 その場を離れたクマ助は、ボローニャ大学の周辺をさらに散策。歩行距離は再び数百メートル。今井君は健脚であるから、歩行もすこぶるスピーディーであって、滅多なヒトが追いつける速度ではない。

 ところがここに、三たび例のバーチャンが出現。今度は露骨にカラダをぶつけてきて、夕闇の中でニッタラ&ニッタラ笑みを浮かべながら、オカネを要求する。その笑みの不気味さと言ったら背筋が凍るほどで、鋭い眼球を埋め込んだ眼窩の底からも、暗い哄笑が溢れ出てくるようである。
ツリー3
(フィレンツェのツリー、拡大図)

 三たびバーチャンから逃げ出して、ほとんど必死の思いで歩きはじめると、いよいよ相手はホンキを出したらしい。猛然とクマ助を追いかけはじめた。「足の具合が悪い」「歩くのも難儀」というポーズを振り捨てて、ニッタラ笑いはそのままに、足音も立てずに地面を滑るように追ってくる。

 「この辺りが限界だ」「潮時だ」と判断したクマ助は、ここでピタリと足を止めて振り返る。あとはクマ自慢の迫力あるのみ。腹の底から繰り出した「NO!!」の一声が、滑るように迫るバーチャンの突進を一発で止めた。

 軽い悲鳴とともにボローニャの闇の中へ、またまた足音もなく消えていくバーチャン。それでもその背中には、ニッタラ笑いと「ヒヒヒヒ」という哄笑の跡をとどめている。

 その軽い足取りは何なんだ? 地面をスルスル滑っていく姿は、まさに中世の自動人形のごとし。その後は「羅生門」よろしく「バーチャンの行方は誰も知らない」であって、冷や汗を拭った今井君も、「ではそろそろフィレンツェへ戻ろう」と決めたのであった。

1E(Cd) Sheila E. & The E-Train:HEAVEN
2E(Cd) Tower of Power:TOWER OF TOWER
3E(Cd) Tower of Power:URBAN RENEWAL
4E(Cd) Tuck & Patti:CHOCOLATE MOMENT
5E(Cd) 村田陽一 & Solid Brass:WHAT’S BOP
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