2015年02月02日(月)

Fri 150109 エグ・モルトとは「死んだ水」だ あえてその街へ(夏マルセイユ滞在記31)

テーマ:ブログ
 9月10日、マルセイユ滞在も残り3日となった今井君の今日の予定は、「エグ・モルト」である。「は? 何ですって? エグ・モルトなんて、誰も知りませんよ」であろうけれども、まあ諸君、聞いてくれたまえ。

 プロヴァンスに2週間も滞在して、「さぞかしスミズミまで見て回っただろう」と思うのが普通だが、何しろ古代ローマから延々と地中海文明を育んできた地域だ。訪ねなければならない街が、長い海岸線に沿っていくらでも散らばっている。

 エクスにもニームにも、レ・ボーにもアヴィニョンにも行った。カシスもラ・シオタも訪ね、ポン・デュ・ガールも見た。ヴェネツィアとバロン・デ・ゾフは例外として、これでも個人観光客として獅子奮迅の戦いを続けてきたつもりである。

 しかし「残り3日」となった段階で、「これはいくつかの街を『見残し』にするしかないな」と、諦めなければならない状況になってきた。まず、オランジュ。タラスコン。サントマリー・ド・ラ・メール。いやはや、欲を言えばキリがないが、やっぱりプロヴァンスにたった2週間では、日程がキツすぎるのである。
朝焼け
(赤く染まった朝のマルセイユ旧港)

 他にも、サン・トロペやアンティーブやサン・ラファエルがあるけれども、この3つはプロヴァンスというより、もっと東寄りのコートダジュールに属する。ウルトラ高級リゾートだから、今井君のテイストに合わない。

 サン・トロペだけは近い将来ムリをしても滞在してみたいが、その場合は「サン・トロペのみで2週間」みたいなハイパー贅沢プランが望ましい。しかも諸君、サン・トロペ、調べてみるとどのホテルも目玉がビューンと飛び出して、坂道をコロコロ転がって行きそうだ。

 何でこんなに高いんざんす? これじゃ、ウルトラスーパー高級リゾートとして知らぬ者もないサルデーニャ島「エメラルド海岸」(☞ イタリア語ならコスタ・ズメラルダ)に勝るとも劣らないと言うか、劣るとも勝らないというか、何だかイヤな感じでござる。
列車
(エグ・モルトへはこの列車で向かう)

 その「イヤな感じだな♨」という反感こそ、残り3日となったこの日を「エグ・モルト」という無名っぽい街探訪にあてるキッカケであった。高くて、ハイソで、「世界のセレブがお忍びで」で、一般人が出かけて行っても鼻にもかけない感じの街なんか、わざわざ行ってみなくてもだいたいの想像はつくじゃないか。

 それに対して諸君、「エグ・モルト」とは、何とフランス語で「死んだ水」と言ふ恐ろしい意味である。「死んだ水」を平気で街の名前にして、住民も周辺の人も、知らんぷりで平気の平左。ツンツンしている「エメラルド海岸」なんかより、ずっと好感が持てるじゃないか。

 ただし、やっぱりエグ・モルトは遠い。9月10日、クマ助は朝早くホテルを出た。旧港周辺の白い建物が、朝日に赤やピンクやオレンジに染まっている。うひゃ、美しい。うひゃ、クマ助は勤勉である。勤勉な自分に酔いながら、サントシャルル駅からニーム方面の列車に乗り込んだ。諸君、列車のドアには「ボルドー行き」とある。
IC
(ボルドーゆきのインターシティである)

 地中海岸からフランスの南西の角を横切って、はるかなビスケー湾までひた走る。到着する頃には夕陽もすっかり大西洋に傾いて、駅舎には美味しいフルボディの赤ワインの香りが満ちているだろう。それを思っただけで、ワクワクするじゃないか。

 それなのに、よりにもよって今井君が選んだのは「死んだ水」。エグが「水」、モルトが「死んだ」であるが、日本なら「廃市」と福永武彦に呼ばれた福岡県柳川、ローデンバック「死都ブリュージュ」に描かれたベルギーのブリュージュと、おそらく街の雰囲気も似ているだろう。

 どうやらクマ助は、死んだ水の街に引き寄せられる性質があるようだ(ブリュージュについては、当ブログ、《Tue 130122 福永武彦「廃市」とローデンバック「死都ブリュージュ」》を参照」。どういうわけか分からないが、トロトロ眠ったような夕暮れの水の風景は、クマ助のふるさと ☞ 秋田市土崎の秋田港にも共通なのである。
エグモルト
(エグ・モルト駅)

 ボルドーまで行く長距離列車をニームで降り、すぐお隣のホームで待っているエグ・モルト行きに乗り換える。おお、こりゃ懐かしい。カンペキなローカル列車である。エグ・モルトはこの線路のドンヅマリ。終点だ。

 いわゆる「盲腸線」であって、幹線からごく短くヒコバエみたいにはみだして、「にょろっ」というか「ぷにゅっ」というか「ピコッ」というか、とにかくごく短く、南の地中海に向かって遠慮がちにゴトゴト揺れてゆく。

 秋田なら男鹿線。青森なら津軽鉄道。こういう路線にはマコトに深く寂しい味わいがある。エグ・モルトの場合、進んでいく左側はローヌ河口の大湿地帯。いわゆる「カマルグ」であるが、夏の湿地帯の風景は、ハッキリ言ってパッとしない。要するにススキ系やガマ系の背の高い植物が生い茂っているだけである。
終着駅
(終着駅の風景。夏草が線路を埋めていた)

 車内は、ごく穏やかな話し声がモヤモヤ響いている。ガイドブックによくある「底抜けに明るい南欧の人」なんか、ちっとも見かけない。手を打って歌いだす人々もいないし、パリ地下鉄みたいに楽器やアンプを持ち込んで自信タップリに演奏を始める自称ミュージシャンもいない。

 こうして諸君、死んだ水に溺れかけた小さな街に向かい、盲腸線のローカル電車はトロリトロリ深い眠気を誘いながら進む。やがて話し声もトロリトロリ、夏草の間に時おり軟らかく光る水もトロリトロリ。その夏草たちさえトロトロ融けていくかと思う頃、緩やかなブレーキの音とともに電車が停止すると、そこがエグ・モルトの駅である。

 いやはや、イヤに深い居眠りだった。1日に数本しか電車の来ない駅は、雑草が生え放題。錆びた線路も雑草に覆われ、廃線寸前の寂寥感に満たされている。無人駅なのかどうかさえ判断のつかない、フシギな静けさであった。

1E(Cd) Solti & Chicago:MAHLER/SYMPHONY No.8 1/2
2E(Cd) Solti & Chicago:MAHLER/SYMPHONY No.8 2/2
3E(Cd) Barbirolli & Berliner:MAHLER/SYMPHONY No.9
4E(Cd) Rattle & Bournmouth:MAHLER/SYMPHONY No.10
5E(Cd) Goldberg & Lupu:SCHUBERT/MUSIC FOR VIOLIN & PIANO 1/2
total m53 y53 d15379
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