2015年01月15日(木)

Mon 141222 マルセイユ危機2ハツ ネリーとアイリーン メロン(夏マルセイユ滞在記20)

テーマ:ブログ
 ヴェネツィアからのヒコーキは、マルセイユの滑走路直前で横風に激しくあおられた。危機一髪の判断で着陸を中止、もう車輪が地面にくっつくぐらいの位置から、ググッと鋭角的に機首を上げて、真っ青なお空に急上昇した。機内を驚きの声が満たした。恐怖の叫びも混じっていた。

 激しい上昇を続けたヒコーキは、しばらくそのまま西進してから、大きく左に旋回。「着陸のやりなおし」である。右の窓から、再びマルセイユの海と街を眺めつつ、さすがの今井君も腰のあたりが落ち着かない。

 今から20年ほど昔、福岡空港で全く同じ経験をした。あの時は嵐の夜だった。福岡空港に近づいているのに、分厚い雨雲に遮られて街の灯はギリギリまで全く見えず、空港ビルの明かりが突然すぐ真横に見えた。「お、空港だ」と思った瞬間、ヒコーキは着陸を諦めて急上昇、再び雲の闇の中に入り込んだ。

 当時は駿台の福岡校に1週間に1度ずつ出講していて、同じヒコーキに数学の有名講師も搭乗していた。夜の闇の中を30分も飛んで、ようやく再着陸に成功したときは、機内から思わず拍手が起こった。

 今回のマルセイユでは、再着陸もヒヤヒヤ。よほど横風が強烈だったのか、着陸直後に大きく機体が左右に揺れ、「翼が地面に触れるんじゃないか」とコワくなるほどだった。乗客どうし「こんな経験は初めてですね」と、ちょっと引きつった顔を見合わせて苦笑した。「やれやれ」とバスに乗り込んで、マルセイユには15時ごろ到着。波瀾万丈の旅である。
レストラン
(ネリー&アイリーンと出会ったル・プティ・ペルノー)

 9月5日、20時すぎに夕飯を食べに入ったLe Petit Pernod(ル・プティ・ペルノー)は、マルセイユ旧港に面するごく普通のカフェレストランである。

 滞在中のHotel Dieuから坂道と石段を降りて港に出ると、港を囲む道をすぐに左に折れる。同じようなカフェが並び、ある店はまだ夏の繁盛の真っただ中、またある店は9月上旬でもう営業を諦め、来年のシーズンに備えてシャッターを固く閉ざしてしまっている。

 「ペルノー」を選んだのには、別に何の理由もない。日本のガイドブックでは必ず大きく扱われている高級店「ミラマール」から、2軒か3軒離れた小さなカフェレストラン。ほぼ満席ではあるが、ウェイターに無理を言えば隅っこのテーブルを何とか1つ空けてもらえる。そういう店であった。

 案内されたのは、店の外にズラリと並べたテーブルの一番奥のほう。ウェイターたちが料理の皿やドリンクを捧げて忙しく出入りする、あまり条件のよくないテーブルであったが、それでもアフリカ系の優しいウェイトレスに感謝。かなり無理を言って、ようやく押し込んでもらえた。
ブイヤベース
(ル・プティ・ペルノーのブイヤベース)

 今井君のテーブル担当は、テキパキと仕事をこなしているこのウェイトレスと、「今夜はもう早く仕事を切り上げたい」という雰囲気を態度にも表情にも露骨に示している中国系のウェイター。マルセイユは、パリやニューヨーク以上に強烈な人種のルツボなのである。

 注文したのは、マルセイユ名物のブイヤベースと赤ワイン1本。マルセイユ到着からもう7日が経過したが、名物ブイヤベースをまだ味わっていなかった。この辺で義理を立てておかないと、何となく気持ちが落ち着かない。

 ただし、ブイヤベースの旗色はあんまりよくないようである。お節介なヒトやガイドブックの著者たちが、口を揃えてブイヤベースの悪口を言っている。
「日本人の口には合わない。フィッシュスープだけにしておくのが無難」
「もともと、どうしようもない雑魚の煮汁に過ぎない」
「ホンモノのブイヤベースには、なかなかお目にかかれない」
みたいに、かなりヒドいことを言うヒトもいる。

 10年前の寒風吹きすさぶマルセイユの深夜、温かいブイヤベースにホッと救われた気持ちになった記憶があるから、「大したことないよ」「無理して食べるほどのものではないよ」と盛んにケナすヒトたちがクマ助はキライである。茶色く濁ったドロドロの魚の汁だって、実際にすすってみればなかなか旨いものである。
ホテル
(ようやく帰り着いた夜のHotel Dieu)

 お隣のテーブルのオバサマ2人が、穏やかに笑いながらオズオズ声をかけてきたのは、クマ助がブイヤベースを2口ほどすすった時であった。「あなた、食べ方が違うわよ」とおっしゃる。2人とも60歳+αぐらいか。かなり年季がはいっているが、まだ「オバーチャン」とするには早すぎる2人であった。

 「その小皿にのっている酸っぱいソースをパンに塗って、それからパンをスープに浸して食べるのよ」とおっしゃるのであるが、諸君、クマ助は「酸っぱい」の一言がこの上なく苦手。「酸っぱいのはダメなんです」と苦笑すると、「そりゃ仕方ないわね」と、通りかかったウェイトレスまで一緒になって、周囲が笑いに包まれた。

 2人は、フランス人の姉妹なのである。1人はニース、もう1人はリヨンで生活していて、夏休みにはいつもニースとリヨンの中間点にあたるマルセイユで合流し、姉妹いっしょに夏休みを過ごすのだという。リヨンのほうが妹のネリー、ニースの美術館に勤めているほうが姉のアイリーンと、詳しく自己紹介された。

 Ireneを「アイリーン」と発音するのは英米語式であって、フランス人なら「イレーヌ」、イタリア語やドイツ語なら「イレーネ」である。アイリーンが自分をアイリーンと紹介したのは、「かつてカリフォルニアで生活していた」と言うから、アメリカでそう呼ばれていたのが習慣になったのだと思う。

 内気なクマ君としては珍しく話が弾んで、とうとう「カシスワインを1本ご馳走するわよ」ということになった。妹のネリーはフランス語しか話さない。昔ながらのフランス人そのまま、次から次へとタバコを吸うのが玉にキズである。
メロン1
(外国旅行中のサイドテーブル。サプリメント、お茶、ハチミツ、カップスープ、ムヒ、あたりめ、紅茶用ウィスキーなどが今井君の定番。これに地元スーパーで買ったメロンが加わる)

 まもなく例のウェイトレスが、ニコニコ笑いながらロゼワインを1本運んできた。イレーヌないしアイリーンによると、カシスワインなら圧倒的にロゼであって、「白なんか飲むのはシロートね」とのこと。確かに、よく冷えたロゼはマコトに美味であった。

 「ブイヤベースのおいしい店が1軒あるわよ」と、さらに話は進んだ。マルセイユ旧港から20分ほどバスに乗ると、海岸沿いに小さな入り江=「バロン・デ・ゾフ」があり、そこに「フォンフォン」という名の高級店がある。「ぜひ言ってご覧なさい」と、オバサマ姉妹は嬉しそうに笑った。

 確かに「フォンフォン」のことならどこかで読んで知っている。「ああ、フォンフォンですか」と相づちを打つと、ネリーも、アイリーンことイレーヌも大いに喜んで、「そのすぐ近くにピザのおいしい店があってね」と、話はますます進んでいく。

 「シェ・ジャノーと言うんだけど、ご存じ? 明日私たちはそこに行って、おいしいピザをムシャムシャやって、それで今年の夏休みは終わり。リヨンとニースに帰ります」
そうアイリーンが笑った頃には、ロゼの瓶もカラッポ、オバサマ2人はもうホテルに帰らなければならない時刻になっていた。
メロン2
(外国でのプチ祝勝会には、メロンを切ることにしている)

 クマ助もHotel Dieuの部屋に戻り、楽しかった今夜の思い出に、メロンを1個切って貪ることにした。アラブ人街の屋台で1個2ユーロのメロンを2つ買ったのは、もう3日も前のこと。ヴェネツィアに行っているうちにすっかり熟れて、部屋の中はメロンの甘いカホリで満たされていた。

 外国旅行中のクマ助は、プチなお祝いにいつでも安いメロンを準備しておく。1年半前のサンパウロでは、2020年のオリンピック開催地が東京に決まった瞬間のため、3日も前にスーパーでメロンを購入し、次第に熟れていくメロンをワクワク見守りながら、朗報を待ち受けたものだった。

 今夜のメロンは、「よおし、マルセイユ滞在の残り7日のうちに、必ず『フォンフォン』にも『シェ・ジャノー』にも行ってみるぞ」という、楽しい決意の表明だったのである。

1E(Cd) Solti & Chicago:HÆNDEL/MESSIAH①
2E(Cd) Solti & Chicago:HÆNDEL/MESSIAH②
3E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES 6/6
4E(Cd) Kempe & Münchener:BEETHOVEN/SYNPHONIE Nr.6
5E(Cd) Karajan & Wiener:BEETHOVEN/MISSA SOLEMNIS 1/2
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