2014年09月11日(木)

Mon 140818 Sも好きだがDEFも好き エグモルトからの脱出(おらんだサトン事件帖30)

テーマ:ブログ
 学校の先生はたいへんだ。生徒たちに「成績」というものをつけなければならなくて、5段階評価なら1・2・3・4・5、昔の大学なら優・良・可・不可、21世紀の大学ならA・B・C・D・E・F、ふだん面と向かって接している生徒諸君なのに、ある日突如として、高級フルーツよろしく無慈悲な等級分けの対象としなければならなくなる。
 そこへいくと、予備校講師なんてのはマコトに気楽な商売であって、そういう等級分けは模試と機械が勝手にやってくれる。AとかBなら「おそらく合格」「たいへん優秀」で万々歳。EとかFなら、
「きっと不合格」「間違いなく不合格」
「おそらくダメ」「志望校変更したほうがいいっすよ」
「この成績で○○大志望だなんて、何寝ぼけたこと言ってんだ? 顔でも洗って出直してこい」
その他、限りなく無慈悲なヒトコトを、コンピュータ君がぶっきらぼうに印字してくれることになっている。
 講師たちもマコトに無邪気に、AランクやBランクの生徒たちを教えたがる。一方D・E・Fランクのクラスを担当させられると、まるで彼の人生を否定されたように屈辱的な気分になるらしく、不平タラタラ&不満ダーラダラの顔をする講師が多い。
 超優秀な生徒ばかり集まったクラスに出かけていく時のホクホクぶりは、ハタで見ていても無邪気そのものである。AランクどころかS、それもスタンダードのSじゃなくて、SUPER・SUPERIOR・SUPREMEのS、1週間に1度か2度であるが、まさに晴れ舞台に立つようなウキウキぶりで、彼は勇んで教室に向かっていく。
ステーキ1
(アムステルダム「VACA」の350グラムステーキ。切り口が旨そうだ)

 確かに、こういうクラスの授業は楽しい。何が楽しいと言って、どれほど授業が脱線しても、生徒たちはそれをニコニコあたたかい微笑で受け入れるフトコロの深さを持っている。「講師の真骨頂は、脱線の中にこそある」と生徒1人1人がみんなよく理解しているのである。
 古文の講師が、シェイクスピアについて語りだした。数学の講師が嬉しそうにバッハを語りはじめた、英語の講師のクセに、何故か皇帝ハドリアヌスの東地中海紀行について話しだした。「おそらくその時こそ授業のクライマックスだ」と、思い切りヒザを乗り出すべきなのである。
 こうして生徒たちがググッと前のめりになってくると、講師のホンキ度もまた急上昇のカーブを描く。1980年代の駿台予備校の英語科に奥井潔という伝説の講師が存在したことについては、何度もこの場で触れたけれども、奥井師の「奥井節」、鈴木長十師の「長十節」が始まるのがまさにこの瞬間である。
 当時は200人教室に250人は生徒がいたし、300人教室なら「500人はいるだろう」という騒ぎ。押すな押すなの大盛況の中、奥井師がテキストを置いて、「さてヘーゲルは…」「だからカントは,,,」と語りはじめると、教室内には「はじまった」「はじまった」という囁きが盛れ、日本全国各地から集まった「S」の諸君が、大きな波をうって感動に震えた。
 だから今井君が予備校講師を始めた頃、何よりも憧れたのがこの「はじまった」「さあはじまった」の囁きである。「テキストの解説なんか、別にどうでもいい。講師としてその真骨頂を聞かせてほしい」。そういうS君たちの「はじまった!!」の絶叫を初めて聞いたのは、講師を始めて2年目の春のことだった。
スープ
(アムステルダム「VACA」、このスープがまた絶品である)

 しかし諸君、今井君は今や大ベテラン。D・E・Fランクの諸君もまた大好きなのである。冷酷なコンピュータ君に「まあムリですね」「あなた、崖っぷちですよ」「どうやら『もう1年』が現実味を帯びてきましたね」と言いたい放題言われていても、彼ら彼女らの可能性は大きい。
 模試で最低のランキングしかとったことのない生徒が、悠々と第1志望に合格していったのを何度も目撃してきた。12月の模試まで延々と「志望校かえませんか?」「どうせ無理。記念受験にもなりませんよ」と無慈悲な罵詈雑言を浴びながら、笑顔で最難関に合格していく生徒は珍しくないのである。
 むしろDEFの生徒諸君にこそ、S君に負けず劣らず「はじまった」「さあはじまった」と脱線に夢中になってくれるヒトビトが多い。「周囲のビックリぶりを尻目に、悠々と笑顔で合格」という生徒が続出するのも、この層がいちばん多い。
 むしろ心配なのは、この2つの層にサンドウィッチにされた中間の諸君である。その特徴は、あまりにガンコなマジメさ。有名な参考書は揃えている。授業もサボったことはない。予習復習もほとんど欠かさない。模範的な受験生なのに、なぜか成績が今一歩。「クラスで5番から10番」あたりから抜け出すことが出来ない。
ステーキ2
(コイツを連日オカワリする。その大胆さがいいじゃないか)

 要するにマジメすぎるんだと思うが、講師の脱線に批判的なのもこの層なんじゃないか。世界史の講師が数学を語り始めた、英語の先生が太宰と三島と安部公房の話を始めた、その時「はじまった」「ほらはじまった」とヒザを乗り出す余裕がないのである。
 彼ら彼女らは「カンケーねえ」「無駄話が多すぎる」「時間のムダだ」とツブヤキ、あっという間に授業への関心を失って、あろうことか他の教材の予習などを始めてしまう。「カンケーねえ」と独り決めする自らの頑迷さを疑ってみることもない。
 超ベテラン♡今井君は、どうしても彼ら彼女らが可哀そうでならない。誰かが、キチンと教えてあげればいいのだ。
「キミたちには、いわゆる『S』や『A』の生徒に肩を並べる才能は十分に備わっている」
「必要なのは、講師の真骨頂を見抜いて『はじまった』『さあはじまった』と喜びに震える能力だけなのだ」
と、周囲の立派なオトナたちが教えてあげさえすればいいのだが、マコトに残念なことに、そういうオトナが少なくなってしまったあたりに、どうも21世紀の特徴があるようだ。
ワイン
(アルゼンチンのワインが旨い)

 さて4月23日、アムステルダム滞在中の今井君は、初めて入ってみたステーキ店「VACA」に夢中になってしまった。ここのステーキはまさにB級。S級でもなければ、A級とも言いがたい。
 もちろんSだのAだの超高級なヤツも今井君は大好きなのだ。ブエノスアイレス最高級店「ミラマール」のブラックペッパーステーキなら、それだけを味わいに東京から26時間かけてアルゼンチンに旅してもいいぐらいの「S」だし、アムステルダム「カフェ・ルーチェ」の焦がし醤油ステーキは「A」。うにゃにゃ、まさに「旨いこと限りなし」の世界である。
 しかし、SやAを食べ続けていれば、遅かれ早かれ飽きがやってくる。「もうちょっと気楽なのありませんか?」であるが、その時ジャストミートするのがBランク。ブエノスアイレスの「エスタンシア」がそうであり、アムステルダムの「VACA」もまさにそれであった。
 ついでに言っておくと、クマどんは「Fランク」みたいなナンチャッテ・ステーキも舌なめずりするほど好き。つい昨日のこと、南フランスの「エグ・モルト」というウルトラ田舎町で「水牛ステーキ」をムシャムシャやってみたが、これがまさにFランク。おお、こりゃ最高に楽しかった。
 だって諸君、まず町そのものが凄まじい。マルセイユから電車で1時間半、ニームという名の小都会があるのだが、そこからさらに1日5~6本しか走っていないバスで1時間半。鉄道もあるが、線路は雑草の生え放題、バスを待つ人も電車を待つ人も、ほぼ皆無の町である。
 エグ・モルトとは「死んだ水」の意。諸君、町の名前が「死んだ水」って、そりゃあんまりヒドすぎないか。13世紀に十字軍の兵士が行き来する港として繁栄。やがてアラブ海賊との戦いに疲弊し、ローヌ河の泥と砂に埋もれて港は消え、水は澱み、腐敗し、ついには「死んだ水」になってしまった。
キルメス
(アルゼンチンのビール「キルメス」も飲める)

 そういう町でワシワシやったのが、「F」感タップリの水牛ステーキ。「マコトにおいしゅーございました」ではあるが、
「マコトにガンコに硬い肉でございました」
「あんまり硬くて咀嚼できず、そのせいで予定のバスに乗り遅れました」
「危うくエグ・モルトを脱出できなくなるところでした」
であって、ここまで徹底してFランクなら、我が人生最大のエンタテインメントと呼んで構わないのである。
 さて、アムステルダムの「VACA」であるが、そのBランク350gステーキに対する解説と評価は、また後日ということにしたい。読者諸君は、まあ写真だけでどんな肉かを想像してくれたまえ。
 だって、今日はもう長く書きすぎた。エグ・モルトから息も絶え絶えでマルセイユのホテルに帰還した今井君は、こんなに長い記事を書くだけで、ますます息も絶え絶えである。
 しかも諸君、この「VACA」のBランク350 gステーキが余りに気に入ってしまったクマどんは、この後ほぼ連日のように店を訪れ、ウェイターにもウェイトレスにも思い切り記憶されながら、訪れるたびに「もう1枚焼いてください」とオカワリを繰り返した。
 連日350×2=700グラムを完食しつづければ、記憶されないほうがオカシイかもしれないが、ま、いいじゃないか。今井君のバイタリティは、そういうBランクステーキをワシワシ&ガシガシやるところから生まれているのだ。

1E(Cd) Joe Sample:SWING SWEET CAFE
2E(Cd) Joe Sample & Lalah Hathaway:THE SONG LIVES ON
3E(Cd) Lee Ritenour:WES BOUND
4E(Cd) Marc Antoine:MADRID
5E(Cd) Billy Wooten:THE WOODEN GLASS Recorded live
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