2014年09月05日(金)

Tue 140812 舟の上に生涯を浮かべる ヴェネツィア日帰りOK(おらんだサトン事件帖24)

テーマ:ブログ
 今井君は、船が大好きである。ホントは「船」じゃなくて、「舟」が好きなのだが、とにかくフネに乗れるなら、世界中どこにでも出かけていく。
 旅とは、要するに非日常への旅であって、果てしなく続く日常に疲れたクマどんは「どれ、非日常への憧れを満たそう」と思いながら日本を離れるのである。常食のドングリに疲れたツキノワグマが、「あーあ、北海道のヒグマさんたちみたいに豪快にシャケが食べてみたいな」と憧れるのと同じことである。
 1年に100回近くも国内出張に出かける今井君としては、列車の旅はすでに日常茶飯事である。むかしむかし、小学生や中学生の頃は列車の旅が大好きで、すぐ近くの駅に鳴り響く汽笛の響き、深夜に通過する夜汽車の轟きに、遥かな非日常への憧れを温め続けたものであった。
 しかし諸君、成長とはマコトに残酷なもので、少年のころの非日常は、やがてあまりに当たり前の日常に変わる。列車の旅は日常チャメシと化し、日常のお茶漬けや日常の炊き込み御飯とほとんど変わらない。「新幹線の旅はつまらない」などとホザくようになれば、成長も行き着く所まで行き着いてしまったという証拠である。
眼鏡橋
(アムステルダムの運河を舟でいく 1)

 「夜汽車」というものは狭い日本の国土からほぼ完全に消滅しつつある。これが昭和の時代なら、ごく普通の出張にも夜汽車を使えたのである。青森への出張に「ゆうづる」や「八甲田」、秋田への出張に「あけぼの」や「津軽」、博多や長崎への出張だって、いわゆるブルートレインがいくらでも走っていた。
 だから、もし時代が時代なら、今井君はたとえ大阪への出張だって夜行急行「銀河」を使いたいぐらいなのである。昭和中期まで、東京—大阪間には7時間だったか8時間だったかかけて東海道本線を駆け抜ける夜汽車があった。
 そういう列車の狭い寝台で、眠らずにジッと暗闇に目を向けたまま、列車の揺れに身を任せ、「人生の来し方&行く末を思う」などというのは、人間として1年に1回は必須の贅沢な経験。新幹線なんかでダラしなくビールや酒に酔って往復するだけじゃ、何だか人生にビシッとスジが通らないような気がする。
 4年前、スペインのサンチャゴ・デ・コンポステラからマドリードまで夜行列車の旅をした。大昔ドンキホーテが駈け回り、ホンの100年前でも山賊が跋扈したイベリアの深い山中を夜汽車で行く。赤ワイン1本をカラッポにしながら暗い窓を凝視する旅はマコトに素晴らしかった。しかし諸君、日本ではすでに、ああいう旅は夢のまた夢である。
運河1
(アムステルダムの運河を舟でいく 2)

 さて、こうして列車での出張が日常茶飯と化してしまえば、非日常を求める場合は「旅」に頼るしかない。この10年の今井君が1年に3回、1回につき約2週間 ☞合計6週間を旅に費やし、松尾芭蕉どん並みに「日々旅にして旅を住処とす」という日々を送ってきたのは、まさにそういう事情である。
 この場合、バセオ君は「舟の上に生涯を浮かべ、馬の口とらえて老いを迎ふる者」と自称しているのであるが、せっかく老いを迎えようと覚悟が出来たのに、「馬の口とらえて」というのは、どうも今井君のテイストに合わない。
 もちろんイヌもネコもお馬も大好きであって、身近な動物を愛することについては人後に落ちるつもりはない。ネコを3種に分け、どんな性格のネコでもそれぞれ付きあい方を心得ている(一昨日の記事参照)ほどであるから、もちろん馬とだってキチンと付き合える。
 しかしせっかく現代に生まれ、ヒコーキや新幹線でスイスイ快適かつ清潔に旅ができる時代に、何も無理して「馬の口とらえて」という必要はない。馬と付きあえば、馬の口臭や体臭を間近に感じることになる。糞だって尿だって片付けなきゃいけない。
 バセオ君でさえ「ノミ&シラミ、馬のシトする枕もと」と嘆きながら旅をした。シトとは尿のことであって、水道の蛇口から激しくほとばしるようなシトなんか、付きあわなくて済むなら、付きあわずに済ませるほうがいい。
 尿を「シト」と読んでいるうちはまだいいが、「バリ」と読ませる学者もいて、「馬のバリ」なんかと日々付きあう旅ということになると、せっかく非日常を求めて旅立ったはずの旅が、馬のバリのせいでありきたりの日常のほうに引き寄せられてしまう。
運河2
(アムステルダムの運河を舟でいく 3)

 だからクマどんは「馬の口とらえて」のほうには余り魅力を感じないのである。しかし、「舟の上に生涯を浮かべ」ということになると、俄然ヒザを乗り出してワクワクするのであって、「奥の細道」については、「舟の上に生涯を浮かべる」という発想1つだけで、「ボクチンの座右の書」と呼ぶことになる。
 新幹線は日常茶飯。ヒコーキも日常チャメシ。こういう時代に、非日常への乗り物として浮上するのがお舟。大型船は安定が行き過ぎて非日常の感覚が薄まってしまうから、ゆらゆら揺れる小舟が理想的である。
 50人かそこいらが乗ればもう満員、大波がくると大きく揺れて、下手をすると波しぶきを頭から浴びる、そういう小舟に乗って、2時間でも3時間でもゆらゆらすれば、疲れきった中年の人生観も、洗濯板でゴシゴシやったみたいにスッキリ新鮮に生き返る。
 だから、チャンスがあれば意地でも舟に乗る。ヴェネツィアやアムステルダムみたいな運河の街は言うに及ばず、ニューヨークなら意地でもスタテン島にわたるし、ロンドンならテムズ、パリならセーヌ、地下鉄やバスがどんなに便利でも、必ずお舟に乗ってユラユラ目的地を目指すのである。
 フランクフルトやマインツからなら、ライン河のお舟でコブレンツを目指す。ブエノスアイレスではちょっと困ったが、わざわざ茶色い泥色のラプラタ河に舟を浮かべて、3時間かけてウルグアイに上陸した。イスタンブールでは、連日ボスフォラス海峡を横断、小アジア側のウスキュダルやカドキョイに夕食に出かけた。
運河3
(アムステルダムの運河にて。橋の上をトラムが行く)

 こういうお舟好きは、シカゴやワシントンDCみたいなお舟と関係なさそうな都市でも発揮されるので、シカゴではミシガン湖までのリバークルーズ、ワシントンではダックツアー、そういうものに参加して、意地でも舟の上に生涯を浮かべる。
 ブダペストを旅してドナウ河に舟を浮かべなかったのは今でも心残りであるが、それは厳冬期のピークだったから。ドナウ河自体がほとんど氷に閉ざされていたんだから仕方がない。プラハのモルダウ河ではお舟の上で居眠りをしたけれども、あれほど退屈では居眠りも仕方がないし、舟の上に生涯を浮かべるなら、居眠りもまた悪くはないのである。
 こういうふうだから、やっぱりヴェネツィアは何度旅しても常に憧れである。いきなり強烈に行きたくなるので、アムステルダム滞在中だってヴェネツィアへの旅を1日挿入することは、非常識ではあっても不可能ではない。
 スキポール空港まで30分、そこから「KLMに乗ってビューン」をやれば、ヴェネツィアまで1時間ちょい。さすがに日帰りはキツいけれども、1泊2日で「旅の中の旅」を企画するのは困難でも何でもない。
 パリからでもマドリードからでも、「1時間ちょい」という条件は変わらない。週末のある朝、ふと思い立って航空会社のHPを15分もカタカタ&ポチポチやれば、ヴェネツィアのラグーンはすぐ目の前にある。
じさま
(運河クルーズ船で、20年後の今井君を思わせるジサマと遭遇)

 4月21日、アムステルダムの今井君は、さすがにそこまで非常識な非日常に潜り込む気分ではなくて、ごく普通にアムステルダムの運河に舟を浮かべることにした。
 運河クルーズ、所要時間2時間あまり。アムステルダムの街を同心円状に囲む何本もの運河を縦横に走り、やがて運河から海に出る。穏やかなライン河口の港を一巡りした後は、再び運河に戻っていく。どの橋の欄干も無数の自転車に占領され、運河にはたくさんのゴミが浮かんで、さすがにヴェネツィアとは雰囲気が違うが、まあこれはこれで悪くない。
 芭蕉は「千住というところにて」舟をあがり、前途三千里の思いに胸がふさがったのであるが、今井君は国立美術館付近で舟を上がり、「さて今日の晩メシは?」という迷いに胸がふさがった。もちろん、そんな浮き世の迷いはすぐに消え去るので、もちろんクマの晩メシは今日もまたアルゼンチンステーキ。そんなことは、胸なんかふさがらなくても、最初から決まっているのである。

1E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 7/10
2E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 8/10
3E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 9/10
4E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 10/10
5E(Cd) Carmina Quartet:HAYDN/THE SEVEN LAST WORDS OF OUR SAVIOUR ON THE CROSS
total m68 y1363 d14293
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