2014年08月27日(水)

Sun 140803 大活躍のジーチャンたち ハーリング 熱いスープ(おらんだサトン事件帖15)

テーマ:ブログ
 4月18日、オランダ・アルクマールのクマどんは何をやっているのか、見に行こうじゃないか。アルクマールは小さな運河で囲まれた可愛らしい町だが、金曜日ごとのチーズ市に世界中からたくさんの観光客が押し寄せる。
 ヨーロッパ中に「リトル・ヴェネツィア」があるのは、日本中に「小京都」があるのと同じこと。萩や角館や倉敷・美観地区を小京都と呼ぶように、アルクマールはぜひ旅してほしいリトルベニスのうちの一つである。
 町の規模は、「1時間もあれば一回り出来ますね」という程度であるが、「あれれ、たったこれだけ?」という呆気なさで終わったりはしない。チーズ市のない日だって、十分に丸一日かけて散策するだけの充実ぶりである。
 聖ローレンス教会は15世紀末に建てられた由緒あるプロテスタント教会。市庁舎は後期ゴシック様式の堂々たる建築だし、これからチーズ市が始まるチーズ計量所も、もともとは14世紀に建てられた礼拝堂だったりする。
 チーズ市の主役は、町のオジサマたち。ただし「オジサマ」というのはあくまで遠慮して言っているのであって、実際には「初老の男たち」のほうが正確。「オジーチャンになりたて」「今こそ人生のクライマックス」ぐらいの年齢の人々が多い。
市庁舎
(アルクマール市庁舎)

 このごろ今井君は、「男の人生は『2こぶラクダ』型なんじゃないか」と考えている。つまり「クライマックス」とか「男盛り」とか、そういう男のヤマ場が人生に2回やってくるように思うのだ。
 1回目は、40歳をちょっぴり過ぎたあたり。課長代理からホントの課長へ、課長から副部長へ、公の場でもいよいよ昇進が始まって、その肩にかかる責任も大きい。
 しかし「40歳ちょい」などという年齢は、体力的にも精神的にも20歳代後半と大差ない。いざ「体力勝負」などということになっても、組織の「百人隊長」「大隊長」として、部下たちを率いて率先垂範、いくらでも勇猛果敢に戦うことができる。
 戦えばその分だけ成果が得られるような、言わば「具体的な仕事」のトップに立てるのもこの頃である。営業成績の棒グラフみたいなものも、先輩諸氏をゴボウ抜きにして喝采を浴びる。もし選んだ職業が予備校講師だったりすれば、この時代こそ檜舞台。まさに人生のクライマックスと言っていい。
 第2のコブは、60歳をホンのちょっと過ぎて、最初のマゴが3歳か4歳ぐらいになったころ。息子も娘も最も生意気な30歳代、もう「尊敬する人物は、お父さん♡」とは言ってくれないけれども、公の場に出れば「役員待遇」やなんかだったりして、立派な個室や研究室に居座り、もともと大きな顔をますます大きくしていられる。
 仕事は、40歳代の頃の「最前線」ではないから、数字にハッキリ現れる成果で責めたてられることもない。「戦術の世界」を卒業して「戦略の世界の住人」になったわけであって、学生時代の友人と久しぶりに酒を酌み交わすにしても、小津安次郎の映画の味わい。みんな笠智衆みたいに優しいオジーチャンになりはじめている。
教会
(アルクマール、聖ローレンス教会の内部)

 初めてマゴが生まれたぐらいの年齢では、確かに容貌は若干「年とったな」という感じになりかけてはいるけれども、体力的には「まだまだ行ける!!」なのである。
 シャワーの前に鏡に映った姿を眺めて、「また白髪が増えた」「またシワが深くなった」とタメイキをつき、しかしニヤッと笑って力コブを作っては「まだパンパンだ」と安堵する。そういう朝の朝メシは、タマゴ3つにベーコン5~6枚。サラダもバリバリ平らげて、「オレは今こそ人生の絶頂なんだ」とホクソ笑む。
 今日のアルクマールの主役たちは、遠目には若いパパ世代に見えるけれども、重たいチーズを山と担いで次々と計量所に走り込んでくる顔を間近に眺めれば、明らかに初老の世代。オジーチャンになりたての人々である。
 きっと息子や娘に「そろそろヤメにしたら?」と諌められているだろう。最近トミに口うるさくなったバーチャンも、「年寄りの冷や水みたいなことはヤメにしてちょうだい」「恥をかくのは私なのよ」と、毎週のように口喧嘩を仕掛けてくる。
 しかし諸君、ジーチャンというものは、どこまでもイタズラっ子であり、「止められれば止められるほど止まらない」という困った生き物である。「何を言ってんだ、オレはまだ若い!!」「30歳だの40歳だの、そんなのはまだマトモに相手にするほどのもんじゃない!!」と、まさに「一笑に付す」の勢いである。
チーズ市
(赤組で大活躍の人々。他に、黄組・緑組・青組が存在する)

 こうなると、どんなに口うるさいバーチャンだって、肩をすくめて苦笑するしかない。息子も「まいったな」と諦め顔。娘は「放っておくしかないわよ」と突き放す。しかし諸君、ジーチャンにはマコトに心強い味方がいるのであって、それが「マゴ」という存在である。
 3歳のマゴ、4歳のマゴ。そういう素直な彼ら彼女らにとって、チーズ市の日のジーチャンはまさにヒーローなのである。あんなに白いカッコいい服を着て、あんなに重いチーズをかつぎ、世界中から集まった人々の喝采を浴びる。中国とか日本とか、きっとお月さまよりも遠いところから、ウチのジーチャンの活躍を眺めにクマさんだって駆けつけるのだ。
 そして諸君、午前10時、いよいよチーズ市が始まった。お舟の形の板に大きなチーズを山のように積み上げ、ジーチャンが2人一組になって計量所に運び込む。計量所では大きな分銅と天秤を使って重さをはかり、その重さに応じて値段がつき、次々に買い手が決まっていく。
 ジーチャンたちはその時「重たい」という表情を決して見せてはならない。
「おお、軽いや」
「こんなに軽いんじゃ、もう10個ぐらい載っけてくれなきゃ」
「こんなに軽いんなら、このまま駈けっこだって出来るぜ」
と、観客に向かってさまざまにパフォーマンスを見せる。おそらくマゴたちがどこかで喝采をおくっているので、ジーチャンとしても何かもっと派手なパフォーマンスを思いつかなきゃいけない。
 そしてもちろんジーチャンたちも、明日の朝どんな結果が待っているかは熟知しているのである。筋肉痛、腰痛、「ほら見なさい」というバーチャンの渋い笑顔、「次は、ヤメにしたほうがいいよ」という息子と娘の冷静な忠告。毎週毎週、同じことの繰り返しだ。
 もちろん「何言ってんだ、こんなのすぐ治るぞ」と怒鳴るのだが、その支えになっているのは、「オジーチャン、カッコよかったね」というマゴの言葉と幼い笑顔である。そもそも、仲間たちを裏切れるかい? 小学校☞中学校の同窓生たち、高校のクラスメイト、今ではみんな町内会の重鎮なのだ。
大活躍
(黄組の大活躍)

 ま、そんなことを思いながら、今井君は午後11時ごろまでチーズ市に集中していた。しかし諸君、さすがに今日は寒すぎる。4月の雨も冷たいが、北海から直接吹きつけるオランダの北風は、秋田で生まれ&秋田で育ったクマの肉体でさえ、凍えるほどに冷たいのである。
 「このままでは、再び冬眠に入るしかなくなる」と危機を感じた秋田のツキノワグマは、「スープ!!」「スープ!!」「湯気のモウモウとあがる塩辛いスープ!!」とそればかりを念じはじめた。
 振り返るとチーズ市のすぐそばに、観光客目当ての屋台がたくさん並んでいる。「屋台でスープを売っていないか」「ホットワインでもOKなんだが」と思いながら一軒一軒丹念に見てみたが、マコトに残念なことに、「スープ」「ホットワイン」の文字は全く見当たらない。
 その時、目の前でオランダ名物「ハーリング」を貪っている中年夫婦を目撃。「ハーリング」とはニシンの酢漬けである。酸っぱいニシンのシッポをつまみ、顔を仰向け、ポタポタ滴ってくる酢の汁を口で受けながら、丸ごとワシワシ平らげていく。
 今井君は秋田の海辺で育ったから、お魚を食べるのは得意中の得意。サンマにイワシ、ニシンにタイ、カレイにヒラメ、どんなお魚でも「ネコが食べたのか」と人々がビックリするぐらいにキレイに平らげる。しかし「酢漬けのニシン」はイカンよ、キミ。「酢の汁がポタポタ」だなんて、身の毛もよだつ世界じゃないか。
スープ
(アルクマール、凍死寸前のクマどんが命を救われたオニオンスープ)

 ぞっとしたクマどんは、熱い熱いスープを求め、憤然とチーズ市の見物席を去った。「スープ!!」「スープ!!」「ひたすらスープ!!」。寒修行の僧侶のように一途に念じながら、オランダのリトルベニス♡アルクマールの町をさまよった。
 しかし諸君、まだ午前11時である。小さな町の飲食店はまだまだシャッターをおろしたまま。スープを求めるクマ坊主の前に、冷たく無表情なトビラが立ちはだかって、塩辛い湯気の香りはどこからも漂ってこない。
 ついに見つけたお店は、運河沿いの小さなカフェである。「仕方ない。コーヒーでもいいや」と、完全に投げ槍な気持ちになって、クマ坊主はそのドアを押した。まだ他には2組しか客がいなかったが、嬉しいじゃないか諸君、メニューにはチャンと「本日のスープ」があった。
 クマ坊主が「ビール」とツブやかなかったところをみると、どうやらこの坊主は凍えかけていたのだ。長年にわたって欧米を闊歩してきたが、飲食店に入って最初に「ビール」と叫ばなかったのは、きっとこの日が初めてである。
 何でもいいから、スープ。意地でもスープ。やがて寒さに耐えかねた欧米人たちもゾロゾロ入店してきて、小さなカフェはあっという間に満員になった。みんなクマどんと思いは同じだったらしい。融けたチーズがタップリのっかった熱いオニオングラタンスープが、次から次へと飛ぶように売れていたのである。

1E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 9/10
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