2014年08月15日(金)

Tue 140722 最後の空襲 試食チーズの小競り合い 球根だらけ(おらんだサトン事件帖6)

テーマ:ブログ
 8月14日は終戦記念日の前日である。暢気に19時のNHKニュースを眺めていたら、いきなり「日本最後の空襲 秋田市土崎」という字幕が出てきて、ひっくり返るほどビックリした。
 確かに、今井君の生まれ故郷=秋田市土崎は、8月14日深夜に太平洋戦争最後の空襲に見舞われた街である。すでにアメリカ軍にも「明日で終戦」という情報が伝わっていて、それでも最後の最後、ほとんど「総仕上げ」という感じでB29の大編隊が押し寄せた。
 同じ夜、埼玉県熊谷上空にもB29の一隊が現れた。昨日の記事で書いた熊谷と秋田市土崎は、「終戦が決まっていたのにアメリカ軍の爆弾と焼夷弾の餌食にされた」という、誠に哀れな歴史と記憶を共有するのである。
 まだホンの子供の頃から、その夜の恐怖の記憶を祖母から聞かされてきた。今井君の祖母は「加藤エス」というお名前。秋田市の田舎町で商店を営む旧家のムスメで、若い頃には「ばあや」とか「ねえや」とか、そういうヒトビトに「オンバヒガサ」で育てられた人である。
 「オンバヒガサ」を漢字で書けば、「乳母日傘」であって、まさに荒い雨にも風にも当てないように、大事に育てられた田舎のオジョーサマである。その元オジョーサマが、戦争で何もかも失ったあげく、終戦前夜の空襲でトドメを刺されたお話は、幼い今井君の胸を深くえぐる話であった。
 小学校に入学して最初の担任の先生が「成田トキ先生」。1年生から3年生までこの先生に習った。今井君のここまでの長い人生の中で、最も強い影響を受けた先生であるが、彼女もまた土崎空襲の語り部。ご存命中は、テレビで「土崎空襲の記憶」という話になると、必ず成田先生が取材されていたものである。
 秋田市土崎の日本海岸には大きな石油精製工場があって、アメリカ軍に狙われたのはその工場群とその周囲の港湾施設である。石油工場と港湾があれば、当然のように鉄道の拠点も置かれるので、米軍戦闘機の狙いはこの3点。小さな街はあっという間に火の海になった。
運河
(アムステルダム、運河の風景)

 そういう悲劇の日のブログに、オランダ旅行の記録なんかを書いていいものだろうか。迷いに迷った末のことであるが、あれから65年間、平和憲法のもと一度も戦争をせずにたゆまぬ努力を続けてきた国民として、平和だからこそ満喫できる外国の旅の話を書くのは、祖母も成田先生も大賛成してくれるものと確信したのである。
 しかも諸君、今井君が旅してきたのはオランダである。酪農と花畑とゴッホの国を旅した記録なら、バーチャンだって先生だって、眉を顰めはしないだろう。もちろんオランダにだって戦争の暗い影はつきまとうけれども、軍事力に依存して国力を拡張&維持してきた国ではない。
 空から見れば水浸しの国である。さすがに「天と地は神が作ったが、オランダはオランダ人が作った」と豪語する国である。1人の漁民が沖合の海中に泥を盛り上げてネグラをつくった。それがアムステルダムの始まり。そこから500年、ウシたちや球根を根気よく育て、世界を股にかけた交易でやっとここまできた。
 その「東インド会社」の展開に伴い、軍事力を表に立てたこともなかったとは言えないだろうが、他の欧米先進国と比較すれば、その歴史はいたって穏やかである。他国や他民族を力づくでなぎ倒した恥ずべき記憶は少ないし、国民はそのことに今も誇りを居抱いているようである。
チーズ屋
(オランダ・アムステルダムの有名チーズ店「CHEESE & MORE」。たっぷり試食させていただきました)

 だから街を歩けば、目立つのはチーズと自転車の群れとチューリップの球根。マコトに平和な国である。もちろん駅至近の「飾り窓」とか「コーヒーショップ」は、本来許されてはならない問題だけれども、男性の平均身長190cmに迫るこの長身の国民は、頻繁に降り注ぐ冷たい雨にメゲもせず、多くがいつもニコヤカに微笑んでいる。
 4月15日、アムステルダムに到着したばかりでまだホテルにチェックインも済ませていなかったが、今井クマ蔵は颯爽とアムステルダムを闊歩。地元のマーケットでチキンを貪り食い、トラムに乗り込んで中央駅を見学。その後は「銀座」に該当する繁華街に出て、チェックイン前の観光をさらに続けたのである。
 まず入って見たのがチーズの店「CHEESE & MORE」。ま、世界的な有名店であるから、「そんな店、別にアムステルダムじゃなくても」と文句をつけるメンドーな人はいるだろうが、やっぱり「チーズの店はアムステルダムじゃなくちゃ」である。
チーズ
(CHEESE & MOREで、こんなチーズを購入。ホテルに帰ってさっそく試食した。チーズの下の日本語は日経新聞。何しろホテルオークラだから、毎朝の新聞は日経だった)

 モワッと息が詰まるほどチーズ臭い店内は、世界中から集まったミーハーでいっぱいだ。誰がミーハーかと言って、やっぱりパパたちが一番タチが悪い。パパたちって、どうしてこんなにいつまでも精神年齢が低いんだ? 「試食OK」ということになれば、みんな勢い込んで試食に励みまくる。
 パパたちを諌めているのは、まず何と言ってもママたちだ。
「アナタ、みっともないからもうヤメてちょうだい」
「何よ、みっともない。まるでアタシが何も食べさせていないみたいじゃないの」
「やっぱり一緒に来るんじゃなかった。ああ、恥ずかしい」
ということなのであるが、諸君、パパというものは、止めれば止めるほど止まらなくなる困ったシロモノであることが多い。
球根
(店先は球根だらけ。こんな店がどこまでも並んでいる)

 その暴走機関車ぶりは、小5男子も中2男子も、高1男子も5歳園児も敵わない。店内の至る所に、1cm角に切って小皿に盛られた試食用サンプルが置かれているが、どのお皿の前にも世界中から集まったイタズラパパたちがタムロしている。
 アメリカパパはイギリスパパと争い、フランスパパはイタリアパパと競い合い、さらにそこにブラジルパパとかスペインパパとか、いろんなパパが参戦するから、小皿の中身はあっという間にカラッポになる。まあいいじゃないか、小皿の角切りチーズを争うぐらいなら、誰にも大きな迷惑はかからない。
 ただし、家族内の厳しい戦いはきっとこの店を出てからだろう。息子は知らんぷりで遠巻きに眺めている。ママは娘と目配せして「最低よね」とツブヤキ、娘は「何であんなパパを選んだの?」とママに冷たく視線を返す。いやはや、チーズの試食1つをめぐって、世界中のパパが苦境に陥るんじゃなかろうか。
球根通り
(運河のずっと先まで、同じような球根屋が軒を並べている)

 そして諸君、チーズとともに「オランダと言えばチューリップ」を忘れてはならない。アレクサンドル・デュマ「黒いチューリップ」を読んでみたまえ。と言っても、21世紀の日本では滅多なことじゃこの小説は手に入らないだろうが、図書館か神田神保町の古本屋で、「デュマの『黒いチューリップ』が読みたいんですが」と尋ねてみたまえ。
 黒いチューリップの球根3個をめぐり、どんなに激しい争いが政界と財界と司法の世界を駆け巡るか。21世紀日本文学では、「何気ない日常」を描くことが何よりも持て囃されているが、今井君なんかはチューリップやチーズをめぐっての夢のような狂想曲が好き。どうしてもクマどんのお手手は欧米文学の書棚のほうに伸びてしまう。
 4月15日夕暮れ、運河に沿って、チューリップの球根を大量に並べた店が並ぶ一角を歩いた。見渡すかぎり、球根だらけ。アマリリスのゴツい球根も混じっている。
 冷たい時雨にビックリしながら運河を走って渡ったかと思えば、いきなり真夏のような陽光に包まれて、ノドから手が伸びるほどにビールが欲しくなる。この小さな国の激しく変化する気候は「ダッチ・ウェザー」と呼ばれ、地元のオジサマたちもすっかりあきらめて苦笑するしかないようだ。
 「とりあえずチェックインすっかね?」と思いながらホテルに向かったのがすでに午後4時。途中、ハイネケン・ミュージアムで生ビールをガブガブやりたくなったけれども、これからの2週間、そういうベイシックな欲望を抑え気味にしながら、この穏やかな国を満喫しようと考えて、ひとまず自重することにした。

1E(Cd) Bobby Coldwell:AUGUST MOON
2E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/SYMPOHONY No.2
3E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/SYMPOHONY No.1
4E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/SYMPOHONY No.2
5E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/SYMPOHONY No.1
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