2014年05月25日(日)

Thu 140501 パリのスーパー コインを飲み込む自販機のこと(ヨーロッパ40日の旅35)

テーマ:ブログ
 2014年の今井君はもう旅のベテランであり、アムステルダムでもサンパウロでもアテネでも、マコトに横柄にのし歩くようになった。ついこの間のフランクフルト空港でのウルトラ特別扱いも、「ダイアモンドメンバーなんだから、当たり前のことでござるね」と、感謝の気持ちも何となく薄れてしまった。
 しかし、代ゼミをヤメた直後のヨーロッパ擬似放浪のころは、初々しいというか、ナデシコなみのオッカナビックリというか、特にヨーロッパ入りした直後のベルリンやミュンヘンでは、「抜き足☞差し足☞忍び足」で常にビクビクしながら走り回っていた。
 ところがこうして終着点のパリにたどり着いてみると、今井君はもうすっかり気が緩んで、春のパリを暢気に徘徊するようになっていた。今思えば、雨のライプツィヒや、デモの真っただ中のドレスデンが懐かしい。気の緩んだ旅より、危機感に満ちた旅のほうが、心に強く残るものである。3月のパリは、上着もいらないほど気温が上がる毎日だった。
オルセー
(水上バス(バトービュス)から眺めたオルセー美術館。3月のパリは汗ばむほどの暖かさだった)

 パリでは、近所のスーパーにも連日のようにお世話になった。さすがパリであって、地方都市では当時なかなかお目にかかれなかったスーパーが、ホテルの近くに2軒も見つかった。
 そのうちの1軒は大型スーパー「Monoprix」。その後もどんどん店舗を増やし、今やパリのいたるところで看板を見かける。シャンゼリゼの真ん中、ウルトラ高級ホテルとブランド店が軒を並べているあたりにも、「Monoprix シャンゼリゼ店」が傲然と立っている。
 「モンパルナス店」にもだいぶお世話になった。モンパルナス店では、日本のスーパーとそっくりの、威勢のいいリズミカルなアナウンスまで聞こえてくる。日本なら「さあさあ、さあさあ、ご利用♨ご利用♨ご利用ぉー!!」と叫ぶところだが、パリではそれが
「アッタンシオン、アッタンシオン、アッタンシオーン!!」
となる。英語の「Attention」であるが、「さあさあさあ、聞いてください聞いてください、聞き逃さないでくださーい。タマネギ5個入りで○○ユーロ、ニンジン1ダース△△ユーロ…」ということである。
セーヌ川1
(3月のセーヌ河風景 1)

 もう1軒、Monoprixのお隣に「佳苗」という小さなスーパーがあった。佳苗と書いて、「かなえ」と読む。「お隣」というより、「Monoprixに付随するコンビニの一種」と言うほうが適切であるが、おそらく日系の女性が経営するお店。日本のカップ麺も味噌も醤油も、アサヒスーパードライもキリン一番搾りも、何でも手に入った。
 2013年12月、久しぶりにその界隈を歩いてみたが、マコトに残念なことに「佳苗」は地域再開発に伴って閉店。Monoprixは健在だったが、カナエちゃんはどこか別の場所に移転してしまったようである。
セーヌ川2
(3月のセーヌ河風景 2)

 自動販売機が壊れていて「オカネを入れても商品が出てこない」ということも、このころのヨーロッパではよくあった。幸いなことに今井君はそういう被害に遭うことはなかったが、目の前でドリンクの自動販売機に2ユーロ玉を入れたフランス人は、ウンともスンとも言わない自販機に困り果てていた。
 もちろん、今の日本みたいに自販機がホントに人間に向かってコトバを発したら、あの頃ならビックリしてコシをヌカしただろうが、昔はよく人間同士が口喧嘩をして「ウンとかスンとか言ってみろ!!」と無理な要求をしたものである。
 子供どうしのケンカでもしょっちゅうそんなセリフを絶叫するヤカラがいて、当然のことながら幼い今井君は「スン!!」と叫び、相手の怒りの火にアブラを注ぐことを無上の喜びにしていた。
 子供同士ならまだマシなほうで、担任の先生が腹を立てて「ウンとかスンとか言ってみなさい!!」と真っ赤になっているのに、小5のクマどんはホントに「スン!!」と言ってしまったことがある。いやはや、親が呼び出されて、たいへんなことになった。
 キッカケは、コグマどんが職員室の朝の掃除中、登校してきたセンセを呼び捨てにしたこと。その瞬間、ちょうど後ろに立っていた校長先生が聞きとがめたのである。
ポンヌフ
(パリ、ポンヌフあたりの風景 1)

 音楽担当の原田先生が、コグマどんは大キライ。小5男子にとって、「みんなで歌を歌いましょう」という時間が苦手なのは当たり前だ。それを強制する原田センセを、仇敵のように嫌っていた。
 その原田センセが、眠そうな顔でアクビをしながら登校してきたのである。「あ、原田だ」「原田がアクビしたぜ」と笑いながら仲間たちに叫んだちょうどその時、運の悪いことに校長の相沢先生がコグマどんの真後ろに立っていたのだった。
 今井君の担任K先生は、きっと校長先生の厳しい叱責にあったのだろう。
「あなたは日頃からどんな指導をしてるんですか」
「仮にも職員室で、教師を呼び捨てにするなんて、アナタ自身が普段からそういう態度なんじゃないですか?」
 おそらくそんなコトバで、長時間の叱責を受けたにちがいない。いや、場合によっては、緊急の職員会議が招集され、あわれ我が担任Kセンセは、先生方全員の前で「恥をかかされた」「吊るし上げを食った」という悲劇を体験したのかもしれない。
 その怒りを、そのままの形で教室に持ち込み、朝から昼まで今井君にキツい叱責を浴びせ続けた。「クラス全員で、このことについてどう考えるか作文を書きましょう」ということにまで発展した。
 「ウンとかスンとか言ってみなさい」が炸裂し、ホントにダメな少年だった今井君がニヤニヤ「スン」と返してしまったのは、まさにその時である。親が呼び出されても当然だし、通信簿の通信欄にもしっかり「このごろ今井君には言動にサッパリ落ち着きが見られなくなりました」と記されていた。
セーヌ川3
(パリ、ポンヌフあたりの風景 2)

 パリの地下鉄駅で、コインを入れたのにウンともスンとも言わない自販機を前に、パリの彼氏も猛り狂っていた。万が一「スン」とでも応答しようものなら、彼の怒りはきっと「怒髪、天を突く」というレベルに達しただろうが、幸いなことに自販機どんは自らの分をわきまえ、あくまでカタクナに沈黙を守る方針のようだった。
 困り果てたパリ男は、まず大きなポーズで肩をすくめ、それから一発アンヨで自販機を蹴り上げてみた。もちろん「スン」の音もない。カタクナに、じっと耐えるだけである。
 もちろんその沈黙によって、ダマされたパリ男を嘲笑しているように見えないことはない。しかし何しろ2ユーロのコインたった1枚の話だ。パリ男は大袈裟にもう1度肩をすくめて、あとは無言で去っていった。
 確かに、「何か問題がありましたら、以下の番号に電話をかけてください」という貼り紙は存在する。しかしその電話番号に実際に電話してみても、どうせ誰も出ないのである。ヒトビトは「自販機なんかにオカネを入れるヤツが悪いんだ」と、周囲でニタニタするばかりであった。
 ただしこのごろは、欧米の自販機もだいぶ状況が改善されて、こんなカタクナな沈黙で人間をあざ笑うことは少なくなったようだ。日本みたいに、交通系カード1枚で何でも買えるような天国orオトギの国にはまだ見かけないが、状況は一歩一歩よくなっているようである。

1E(Cd) Bernstein:HAYDN/PAUKENMESSE
2E(Cd) Holliger:BACH/3 OBOENKONZERTE
3E(Cd) Holliger:BACH/3 OBOENKONZERTE
13G(α) 塩野七生:最後の努力(上):新潮文庫
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