2014年05月17日(土)

Wed 140423 フランス全土の大規模デモ 列車が占拠された(ヨーロッパ40日の旅31)

テーマ:ブログ
 3月8日、朝からアヴィニョンを訪れたクマ蔵は、「どうも不穏な空気が漂っている」と感じていた。
 まず朝のマルセイユ駅で、アビニョン行きの電車が定刻になっても動き出さない。「おかしいな」と思っていると、鉄道員とも何とも身分を明かさないオジサマが現れ、「この電車は動かないぞ。諦めたほうがいい」と告げて立ち去った。
 確かに、その電車は動き出す気配すらなかったので、今井君はトマスクックの時刻表を取り出し、時刻表と首っ引きで別の電車を探し出した。何とかアビニョンにたどり着いて、法王庁やサン・ベネゼ橋をチャンとこの目で眺めてくることはできた。
 しかし、途中で途切れたまま放置されているサン・ベネゼ橋の眺めを堪能していると、いきなり背後から若い女性の激しい悲鳴が轟いた。クマ蔵は臆病な生き物であるから、背筋が一瞬で凍結するほどビックリしたが、これがただのイタズラ。クルマの中から、高校生か大学1~2年と思われる女の子がニタニタ笑ってこちらを見ていた。明らかに彼女の仕業である。
城塞1
(マルセイユ港を守る城塞 1)

 この下品なイタズラにプリプリしながら、アビニョン駅の方角に戻って、ちょっとヨサゲな「サロン・ド・テ」に入った。すでに昼を過ぎて、普段の今井君なら確実にビアを注文する時間帯であるが、何しろ「サロン・ド・テ」だ。「テ」じゃなきゃ、きっと叱られる。
 仕方なく「テ」をジュルジュルすすって我慢。濃い紅茶の渋みに顔を歪めながら、駅に向かった。ところが諸君、駅の電光掲示板を見上げると、「Retard」の表示がたくさん出ている。Retardとは、「遅れ」であって、今井君が乗るつもりのマルセイユ行きには「Retard 50min」の表示が出ている。
 列車がちょっとでも遅れると、耳にタコができるほど繰り返し「マコトに申し訳ございません」のアナウンスが入るのは、あれは日本だけの慣習である。欧米だとどんな先進国でも、列車が遅れようが運休しようが、だれも謝罪なんかしないし、理由を説明するアナウンスなんか一切流れない。
 「遅れも運休も、駅には責任ありません」というわけであって、乗客たちも3回ぐらい肩をすくめて絶望のポーズをとったら、あとはサッサと諦める。「激昂して駅員を問いつめる」という、日本でよくある光景は滅多に見られない。
 ついこの間、2013年12月28日のオルレアン駅で、突然の運休に激昂した男性客を2~3人目撃したが、フランスでもドイツでも、激昂したらその瞬間から「激昂したほうが悪い」とみなされる。運休だろうが遅れだろうが、本来なら謝罪しなければならない側がグッと居丈高になり、激昂サイドの激昂ぶりを責めはじめる。
城塞2
(マルセイユ港を守る城塞 2)

 今のところ、これが国際ルール。道理がどちらにあろうと、キレたり騒いだりしたほうが負けになる。例えば、Vという国で暴動が起こって、C国から進出していた工場や店舗を破壊する。海底油田の掘削をめぐって、C国の船がV国の船に体当たりを繰り返したことへの反発である。
 ところが、ハッキリした画像の証拠もあり、多くの国がC国の攻撃的行動を批判し懸念を表明しているにもかかわらず、いったんV国で暴動が起こってしまえば、C国報道官は勝ち誇ったように「我々は被害者だ」「補償を要求する」「国際ルールに従って行動しているのに、無法な国の民衆の無法な攻撃と略奪を受けた」と主張する。
 このC国では、ホンの3年前にJという国に対して暴動があった。Jから進出した企業の工場や店舗を暴徒が破壊☞略奪したのである。この時は「愛国無罪」ということになって、C国政府はそれをほとんど黙認した歴史がある。
 しかしそういう歴史は、「カンケーねえ」と知らん顔をすればいい。V国に対しては「愛国無罪はありえない、補償だ」と言い、「キレて暴れたほうが悪いんだ」「自国の領土領海で何を建設しようが問題はない」と言い放つ。
 「固有の領土で何をしようと、他国から文句を言われる筋合いはない」「内政干渉だ」とムキ出しのホンネを吐かれると、今井君なんかは
「自宅の庭に何を作ろうが、文句を言われたくない」
「猛犬たくさん飼育しても、そんなの自由じゃん」
「庭でBBQやって何が悪い?」
「BBQの炭を家の裏に捨てて何が悪い?」
「火事になったって、仕方ないじゃん」
という恐るべき幼児性しか感じないのであるが、そういう国が半世紀以上も常任理事国をやっている巨大平和組織も、この世の中には存在する。
穏やかな海
(港は相変わらず穏やかだ)

 というわけで、列車が1時間遅れようが、その理由なんか説明してくれる人は誰もいない。問いつめたって、「私も知りません」と肩をすくめられるだけで終わり。下手をすれば、きわめて不快な舌打ちが返ってくるだけだ。
 諦めて、再び電光掲示板を見上げると、実際にはもっとたいへんなことになっている。「Retard 50min」などというのはまだ幸せなほうで、ほとんどの列車が「運休」になっている。その時、別の日本人が通りかかり、「ストライキらしいですよ」とクマどんに告げて立ち去った。
 1970年から80年にかけて、日本の国鉄でも激しいストライキが続き、日本中の列車がすべて5日もストップしたことがあった。だからこの時も、「こりゃたいへんなことになった」とすぐに状況を理解。これからマルセイユに戻るには、タクシーで300ユーロぐらいは覚悟しなきゃいけない。
 と、その時ふともう一度掲示板を見上げた今井君は、別のルートを通ってマルセイユに向かう電車の存在に気づいた。最短距離ではなくて、途中の山を大きく西に迂回して走る各駅停車だが、50分も遅れて運休の可能性もある急行を待つより、ここは確実性を重視したほうがいい。
 各駅停車は、ガラガラにすいていた。おそらく多くのフランス国民はこの事態を最初から知っていて、不要不急の外出を避けていたのである。ましてや今井君の乗るのは1等車。他の客は2~3人である。ベルリン以来すでに27日、1ヶ月有効の1等車用ユーレイルパスは、まだ3日ほど有効期間が残っていた。
渡し船
(港の右岸と左岸を、渡し船が頻繁に往復する。乗ってみると、マコトに呆気なく向こう岸に着いてしまう)

 各駅停車は奇跡のように定刻でアビニョンを出発。のどかな春の田園風景の中、ノロノロ運転ではあるが、着実にマルセイユに向かって走りはじめた。マルセイユまで1時間あまり、誰でもトロトロ居眠りを始めるような、マコトに暢気な出発であった。
 状況が一変したのは、その約10分後である。停車した駅には、驚くべき数の若者が待ち構えていた。手にはプラカード、横断幕、笛に太鼓。多くの者がハチマキをして、大波のように車内に乱入してきた。その数、500人は下らない。
 何しろ、全部で3両程度しかつないでいないローカル列車だ。2等車はあっという間に満員になった。すると当然「1等車だってかまわない」という流れになる。若者たちは無遠慮に1等車にも乱入。4人掛けのボックス席に6人でも8人でも入り込んで、ギュー詰めの状態でようやく発車した。
 これからマルセイユで行われる大規模デモに参加する一隊である。おそらくどこかの高校の生徒全員か、地元大学のほとんど全員が、この電車に乗ってデモに向かうのだ。考えてみれば、国鉄がこの電車だけを定時運行させたのも、デモ隊を運ぶためだったのかもしれない。
 電車を占拠した若者たちは、あたりかまわぬ跳梁を開始する。笛を吹き鳴らす。太鼓を乱打する。乱打される太鼓に合わせて、満員の車内でダンスを始める。
市街
(大規模デモの前日、ホテル付近から市街を望む。この一帯もデモ隊に占拠されることになった)

 アビニョンから乗っていた他の乗客も、こうなれば多勢に無勢で、この騒乱状態を黙って認めてやるしかない。本来なら、2等車のキップで1等車に乗り込めば高額の罰金を支払わされるが、今日は国鉄側も暗黙のうちに了解しているらしい。
 諸君、この状況にクマ蔵は1時間も耐えたのである。のろのろ暢気に田園地帯を走りつつ、太鼓乱打、乱舞、高歌放吟、まるで遠足に出かけるウルトラ不良高校生みたいなやり放題だが、こちらも暢気に疑似放浪中の外国人として、まさか「君たち、礼儀をわきまえなさい」と一喝するわけにもいかないじゃないか。
 マルセイユ到着、14時半。電車の中の若者たちも、「さて、いよいよ行くぞ」という雰囲気で駅の外にバラバラ駆け出していった。すでにマルセイユの町は大規模デモ隊に占拠され、乱暴に叫び、走り回る若者たちの群れでどの通りもいっぱいだ。ほとんど暴動と言ってもいい状況になっている。
 これがいったい何に抗議するデモであり、何を求めて走り回っていたのか、今井君はずっと後になって知ることになるのだが、それについてはまた明日の記事を読んでくれたまえ。思えば、アビニョンで悲鳴のイタズラをした彼女も、このデモに参加しにマルセイユに出かける所だったのかもしれない。

1E(Cd) Michael McDonald:SWEET FREEDOM
2E(Cd) Bernstein:HAYDN/PAUKENMESSE
3E(Cd) Holliger:BACH/3 OBOENKONZERTE
4E(Cd) Brendel:BACH/ITALIENISCHES KONZERT
5E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 1/18
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