2014年04月26日(土)

Wed 140402 ピサへ 浜島書店と畠山師 左曲がりのダンディ(ヨーロッパ40日の旅20)

テーマ:ブログ
 2月28日。苦手なフィレンツェを敬遠して、ピサの斜塔を眺めに行くことにした。ピサまでは、電車で行くことをお勧めする。フィレンツェ中央駅からごく普通の電車に乗って、約1時間の旅である。フィレンツェから乗合バスも出ているし、ツアーも山ほど揃っているだろうが、電車なら、斜塔との出会いの感激が1枚も2枚も違うのである。
 バスだと、いきなり斜塔の前に出てしまう。バスを降りていきなり目の前に、世界史の教科書やガイドブックで見た通りのピサの斜塔が姿を現すわけだ。
「あははは♡」
「なるほど、曲がってる♡」
「確かに、傾いてる♡」
と、せっかくの感激が軽い笑いと確認で終わってしまう。あとは、お決まりの「塔を支えるポーズ」で記念写真を何枚か撮って、30分もすれば傾いた塔が何だか情けなくなってくる。
 その典型的な写真が今日の1枚目。塔は余りにも露わに右方向に傾いているが、この写真を見て感激する人は少ないはずだ。「だってこんなの、何度も見たことあるもん♨」であって、いま手許にある「世界史史料集 浜島書店」の表紙にも、ほぼこれと全く同じ写真が掲載されている。
ピサ1
(模範的(浜島書店的)ピサの斜塔)

 今井君はマコトに物持ちがいいから、高校生の頃に使用した参考書もほとんど書棚の隅に残っている。矢野健太郎著「解法のテクニック」(科学新興社)だって、数Ⅰ・数ⅡB・数Ⅲの3冊とも、今もなお健在でチャンと顔をのぞかせている。
 諸君、高3生の今井君は医学部志望で奮闘していたから、物理も化学も一番難しい参考書でバリバリやっていた。苦手な数学は、呆れるほど分厚い「解法のテクニック」3冊を「丸暗記しちゃえば何とかなる!!」と、ほとんど自暴自棄な発想に終始して、それで大失敗した。
 大失敗の結果は悲惨なものであって、高3の10月末になって「文転」を決意。古文や漢文は得意だったからいいが、「世界史」と「日本史」を残った11月・12月・1月の3ヶ月で片付けなければならないピンチに陥った。いやはや、数学を暗記で乗り切ろうなんてのは、特にそれが難関医学部志望であるような場合は、絶対に落ちてはならないワナなのであるね。
ピサ駅
(イタリア国鉄、ピサ中央駅)

 浜島書店の世界史史料集は、高2の春に高校で配布されたもの。担当は畠山仁先生。今もお元気なら、80歳ぐらいになっていらっしゃると思う。あの頃の秋田高校では、「近現代史から始めて、そのあと古代中世に戻る」という方針。世界史の授業は「大航海時代」「ルネサンス」「宗教革命」から始まった。
 それもある意味で見識あるやり方であって、古代中世でノンビリ&タップリ余裕をこいて授業をしているうちに「近現代史に触れる間もなく卒業」というハメになるのはよくある話。古代中世にあてる時間を切り詰めてでも、近現代史をじっくりやるのは、悪いことではないだろう。
 でもやっぱり、ヨーロッパ中世もスコラ哲学もちっとも知らない16歳や17歳の高2生が、いきなり
「かつての大国ヴェネツィアがなぜ衰亡したか」
「フィレンツェになぜルネサンスの花が開いたか」
「サボナローラの神権政治は、本格的な宗教改革に至らなかったのはどうしてだろうか」
と問いつめられても、目を白黒させるしかない。
アルノ河
(北風の吹き荒れるピサのアルノ河)

 畠山先生は、確か北海道大学のご出身。誠実な人柄が授業にも滲み出て、固有名詞の読み方にもこだわりがあった。教科書や史料集には「サボナローラ」「ホーエンツォレルン家」と出ていても、
「正確にはサヴォーナローラですね」
「正しくはホーエンツツォルレルン家と、『ル』の1字を加えなきゃいけませんね」
とおっしゃり、「サヴォーナローラは」「サヴォーナローラは」と深いタメイキを何度もつきながら授業を進めた。
 理系の高校生にとって、まあそれは「面倒クセグネ?」であり「どーでもいいんジャネ?」の類いであるが、若き今井君は畠山ファン。世界史のセンセは何でも英語風にするのが当時の流行で、言語道断なことにエカテリーナはキャサリンになり、ティツィアーノなんか「チチアン」にされてしまう時代だった。
 だって諸君、ホントに活字で「チチアン」と印刷されているのである。キケロは「シセロ」、ドナウ河は「ダニューヴ河」、神聖ローマ帝国のカール5世も「チャールズ」。今井君はそんなの絶対にイヤだったから、サヴォーナローラを連呼する畠山センセは、秘かなお気に入りなのであった。
 そして諸君、あれから幾星霜、今井君はかつてサヴォーナローラの活躍したフィレンツェを訪れ、そのフィレンツェが自国の領土に包み込もうと何度も軍事行動の対象とした(流行中のコトバで言えば「力による現状変更の企て」であるね)ピサを訪れ、史料集の表紙になっていたあの斜塔を見上げているのである。
ピサ2
(左曲がりのダンディ)

 さて、さすがにそろそろ本題に戻ろう。「ピサにはなぜ電車で行ったほうがいいか」を説明しようとしている真っ最中、一気に話題がズレてしまった。いつものことながら、ホントに申し訳ありませんね。
 中央駅を降りて斜塔までは、ピサの街を突っ切っていかなければならない。途中、はるばるフィレンツェから流れてきたアルノ河をわたる。雪をかぶった山々からは、肌を刺すような乾燥した強風が吹きつけて、橋の上で息が一瞬止まるような気がするほどである。
 斜塔は、まだ現れない。「道を間違えたかな?」と思い、ガイドブックを開いてみるが、残念なことにピサの地図なんかマトモに載せている本は少ない。
 地図もない手探り状態で、中央駅からイタリア通りを北上。アルノ河にかかるメッツォ橋をわたって、カルドゥッチ通りに入る。「大丈夫かね?」とますます不安になりながら、しばらく進んで道が左に大きくカーブすると…
 まさにその時だ。斜塔が突如として眼前に姿を現す。それが「左に傾いた斜塔」。「浜島書店」で長年見慣れた「右に傾いた斜塔」とは、傾きが正反対である。常識はずれというか何というか、共産党員なのに右翼というか、ガチガチの大阪弁なのにジャイアンツファンというか、バリバリの秋田人なのにウルトラ正調な標準語というか。
ピサ3
(ついに発見。「うぉお、崩れてくるよぉ♨」な瞬間)

 「標準語」のことを、驚くなかれ昔は「共通語」と呼んだものだが、世界の共通認識=「ピサの斜塔は右曲がり」の常識を覆す「左曲がりの斜塔」が、まさに街に向かって崩れ落ちんとする瞬間を、諸君は目撃することになるのである。
 今井君はむかし「週刊モーニング」の大ファン。もう30年も昔のことだから「What’s Michael」や、わたせせいぞう「ハートカクテル」の全盛期であるが、ヘソ曲がりな今井君は「大正野郎」に「ドドウの笹口組」「右曲がりのダンディ」が好きだった。そしていま目の前に現れたのは「左曲がりの斜塔」である。人生、まさに不可思議であるね。
 この左曲がり君、右曲がり君に比較して「触れなば落ちん」の危機感が圧倒的に強烈。「触れなば落ちん野郎」「たったヒト吹き息を吹きかければ、直ちにドトゥのように街に崩れ落ちてくるなんじゃないか」と、思わず冷や汗の数滴ぐらいはヒタイを転がり落ちるほどである。
 この激しい焦慮の瞬間を、読者諸君にも感じてほしいのだ。これこそ深く激しい感激と言えるのであって、「ここままじゃダメだ♨」「このままじゃ壊れてしまう♡」「何とかしなきゃ♨」という要素なしには、ホントの感動はありえない。すっかり見慣れた絵はがきやガイドブック、浜島書店やツアーバスじゃ、「ああやっぱり」という単なる確認の笑いしか味わえないのである。

1E(Cd) Billy Wooten:THE WOODEN GLASS Recorded live
2E(Cd) Michael Davis:MIDNIGHT CROSSING
3E(Cd) Santana:EVOLUTION
4E(Cd) 村治佳織・山下一史&新日本フィル:アランフェス交響曲
5E(Cd) Kirk Whalum:IN THIS LIFE
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