2013年05月02日(木)

Mon 130408 ブルックリン ピーター・ルーガーの劇場空間(アメリカ東海岸お花見旅11)

テーマ:ブログ
 4月18日、ルーズベルト島でのお花見を大成功のうちに完了したサトイモ君は、夢のように大きなステーキを夢みてブルックリンを目指した。目指すはブルックリンの名店「ピーター・ルーガー」である。
 21世紀のブルックリンは、旅行雑誌やガイドブックなどでその変貌ぶりを喧伝され、「ブルックリンはすっかり生まれ変わり、オシャレな文化の発信基地になった」ということになっている。ひと昔前のチェルシーや、MPDことミート・パッキング・ディストリクトと同じことである。
 ただし、「ということは、つい最近まではオシャレじゃなかったわけね」と気づく理解力は必要で、「オシャレな文化の発信基地に変貌」とは言っても、それは実はごく一部分のこと。昔ながらの危険なカホリも残っていて、「治安情報」みたいなことはチャンと知ってから訪ねたほうがいい。
 実際に「オシャレ」と言えるのは、ブルックリン・ブリッジの東の端のあたり、関西流に言えば「東詰」。「ウィリアムズバーグ」とか「ダンボ」と呼ばれて、ドラマや映画でもてはやされた地域のことである。
肉
(ピーター・ルーガーに巨大ステーキを食べにいく)

 ホンモノのニューヨーカーの意識がどうなのかはハッキリ分からないが、テレビドラマなんかを眺めていると、ブルックリンやクイーンズに対する差別意識にビックリさせられることが少なくない。
 「Sex and the City」だと、まずマンハッタンのタクシー運転手はブルックリンに行くこと自体を拒絶して、「オレはブルックリンやクイーンズには行かないよ」と言い放つ。ブルックリンに引っ越すことになっただけで、まるで人生が破綻したようなセリフで嘆いてみせるし、親友たちも彼女の行く末を心配してみんな泣き出さんばかりになる。
 それが「Gossip Girl」となると、「冗談でやってんのか」「こんな差別的な発言が頻発して、社会問題にならないのか?」と、コチラが心配になるほど。日本なら抗議の電話が殺到して、テレビ局が一局ぐらい潰れちゃうぐらいである。
 「ベストウェスタンホテルじゃないんだから」というセリフに対して、「安っぽいホテルじゃないんだから」と字幕が出るぐらいだから、ブルックリンへの差別発言だってもちろん冗談でやっているんだろうが、あれだけ露骨な発言が連発されるドラマを、当のブルックリンの人々はホントに黙って観ているのかねぇ? 日本のサトイモでさえ、マコトに心配でござるよ。
サクラの思ひ出
(ルーズベルト島のお花見の思ひ出)

 さて、目指す「ピーター・ルーガー」は、「オシャレな文化」なるものの発信基地であるウィリアムズバーグからは、大きく北に外れている。ブルックリン・ブリッジをわたる観光客の出発点になるハイ・ストリート付近ならすっかりお馴染み、治安に関する不安もほぼゼロだが、危険のカホリの残る地域をつっきらないと、今日のサラメシにはたどり着けない。
 ルーズベルト島からブルックリンへは、いったんイーストリバーを西にわたってマンハッタンに戻り、地下鉄でしばらく南下して、ダウンタウンからもう1度イーストリバーを東にわたる。下車駅はマーシー・アベニューである。
四姉妹
(ルーズベルト島のツボミ4姉妹)

 河をわたってブルックリンに入ると、地下鉄は高架の上を走る。大きなカーブを徐行しながら走ると、鉄と鉄がきしる甲高い金属音が街に響きわたる。まさに20世紀ド真ん中の雰囲気である。
 映画「12人の怒れる男」の中で、問題の殺人事件が起こるのが、高架を電車がきしりながら走るあたり。いわゆる「エルトレイン」の沿線という設定になっている。少年が飛び出しナイフで父親の胸を刺して殺害。その様子を高架電車の向こう側に住む中年女が、電車の窓越しに目撃。この女の証言が信頼できるものかどうかが、映画のクライマックスになっていく。
 この名作映画の中でも「この地域に住む人間はみんなクズ。暴力的で、犯罪性向が高くて…」以下、ここで文字にするのが憚られるようなセリフが連続する。サトイモ君が電車に揺られて暢気に闖入してきたのは、まさに「この地域」であって、確かに電車の窓から見おろす風景には、荒涼とした20世紀の面影が残っている。
マーシー・アベニュー1
(地下鉄マーシー・アベニュー駅からの荒涼とした風景)

 しかし諸君、その程度で怖がっていたら、外国旅行なんか1つも出来ない。旅行会社の準備したツアー旅行で、旗を掲げたガイドさん後ろから恐る恐る1列になって歩く、臆病な日本人団体の一員にしかなれない。みんなお揃いの斜め掛けバック、お胸には旅行会社のバッジ。そういう小旅行も悪くないんだろうが、還暦を迎えて社会の一線から退くまでは、もっとワシワシ、もっとノッシノッシ、世界中をのし歩くべきだ。
 マーシー・アベニューで電車を降りて、かつての荒廃の面影の中を歩いていくと、確かに「オシャレな文化の発信」みたいな軽薄な空気は一切なくて、「人生は甘くない」「世界は危険でいっぱい、日本みたいじゃないよ」「ボンヤリ口を開けて平和ボケしてちゃいけないよ」みたいな空気はある。
 名店ピーター・ルーガーまでは、徒歩5分もかからないが、自然にお腹に力が入って、その分キチンとお腹が空いてくる。「どうも食欲がない」などというのは、普段しっかりお腹に力を入れていない平和ボケのせいかもしれない。
マーシー・アベニュー2
(高架電車が頭上を走るマーシー・アベニュー)

 6年前のニューヨーク訪問以来、今井君は33丁目の「ウォルフガング」のステーキが好き。ウォルフガングはもともとピーター・ルーガーで働いていたウェイター長が独立したお店であって、言わば「暖簾分け」である。
 「暖簾分け」で、ふと思い出すのは「駿台」と「駿友」の関係。「駿台で事務長を長年務めてきました」というヒトが、1970年代後半、いきなり独立して池袋だったか大塚だったかに「駿友予備校」を立ち上げた。ビックリした駿台では「ウチと『駿友』とは一切関係ございません」と広告を出すほどだった。
 「関係ございません」と言われた駿友としては、「オマエなんか友達じゃないよ!!」と絶叫された腹いせに、「友」の字を「優」の字に変えて「駿優予備校」とした。Mac君でさえ「すんゆう」と入力しただけで直ちに「駿優」と変換するんだから、このお友達もすっかり世の中に定着して、水戸と郡山で今もなお頑張っていらっしゃる。
ピータールーガー1
(頑固一徹な本家:ピーター・ルーガー)

 ニューヨークのステーキ界では、今ではウォルフガングの方が優勢。ランチメニューの豊富さもあって、54丁目と42丁目に支店を開き、33丁目のディナーなんか、ホテルのコンシェルジュにお願いしても予約がとれないほどの勢いである。今やハワイのワイキキにもあるんだそうな。
 一方の本家=ピーター・ルーガーは、ちょっと意地になったようなガンコな姿勢が目立つ。ブルックリンのマーシー・アベニューにジックリ腰を据えて、意地でも動こうとしない。支店なんか、絶対に作らない(んじゃないかな)。
 経営面を考えれば、映画やドラマであることないこと言われ放題のブルックリンより、マンハッタンに進出した方がいいに決まっている。しかし、そんなケーハクな経営行動は、本家の意地が許さない。「それなら、同じブルックリンでも『オシャレ』なはずのウィリアムズバーグは?」という選択肢もあるだろうが、その提案もケーハクということで一蹴される(んじゃないかな)。
 「クレジットカード不可」というのも、21世紀の飲食店としては驚嘆に値する。特にここはアメリカだ。地下鉄カードに10ドルチャージするのもクレジットカード。焼き鳥屋もラーメン屋もカード、キオスクでキャンディや水を買ってもカード。「現金決済しかしません」なんてのは、それだけで見物人が詰めかけそうな時代錯誤と見なされる。
ピータールーガー2
(ビアもブルックリン製。ただしワインはアルゼンチン)

 「メニューを工夫して豊富に」「店をもっとオシャレに」という努力もしない。おそらくそれも軽薄として退けられるのだ。あくまで創業当時のまま、赤身の肉をじっくり長期熟成させてカリカリに焼き、傲慢な態度のウェイターが大きなお皿に載っけて無愛想に運んでくる。
 お客はそれを見て、「こりゃデカイね」「食べきれるかな?」「こりゃムリだ」「うわ、スゴいジュースだ!!」とオドロキの歓声と叫びをあげることになっている。ジュースとは日本で言う「肉汁」のことだが、そこまでが台本として決まっているので、もし歓声が上がらなければ、ウェイターはいっそう不機嫌になってみせる。
 ホントはジョーク好きの楽しいウェイターぞろいなのだが、何しろ「不機嫌そうに」というのが店のポリシーなのだから、ニコニコやニヤニヤは厳禁。まかり間違えば「無愛想に」とマニュアルに書かれているので、上機嫌な顔を見せるのは、客の歓声の直後だけである。
 いやはや、こうなると、客の方でもマニュアル通りの叫びと歓声を上げなければならない。店全体を「ステーキ劇場」と考えてもよくて、巨大な肉が主役、ウェイターと客は肉を盛り上げる脇役。台本を書き換えようという努力は、この劇場を台無しにする企てに他ならない。
ピータールーガー3
(ピーター・ルーガーの劇場空間)

 以上、マコトにガンコな経営のせいで、ランチでさえもお店は観光客だらけ。地元のヒトはほとんど見当たらず、目立つのは日本人と中国人の団体ばかりである。ツアー会社の大型バスで訪れたらしい。
 しかし、うーん、サトイモ君は、マーシー・アベニューの危険のカホリを嗅ぎ、レールと車輪がきしる金属音に耳を塞ぐことも、この店の頑固な台本に入っているような気がしてならない。ならば、バスでやってきた団体客は、せっかくのステーキ劇場の楽しみの半分しか味わえないんじゃないか。
 そんなツマラン心配をコネ回しながら、今井君も不機嫌なウェイターに睨みつけられつつ、さっそく巨大ステーキにかぶりつくことにした。もちろん、ポケットには100ドル札3枚が入っている。おお、何から何まで、たいへん危険なステーキ劇場なのである。

1E(Cd) The Doobie Brothers:MINUTE BY MINUTE
2E(Cd) Grover Washington Jr.:WINELIGHT
3E(Cd) Kenny Wheeler:GNU HIGH
4E(Cd) Jan Garbarek:IN PRAISE OF DREAMS
5E(Cd) Joe Sample:RAINBOW SEEKER
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