2013年04月27日(土)

Wed 130403 トム・ハンクスと時間と空間と空気を共有する(アメリカ東海岸お花見旅6)

テーマ:ブログ
 ニューヨーク滞在2日目の朝、コロンビア大学に出かける前に、サトイモ君はホテル近くのBROADHURST THEATREに出かけて、芝居のチケットを手に入れた。「ホテル近くの」とはどのぐらい近いかというに、諸君、ホテルから徒歩30秒、「1ブロックあるかorないか」という恐るべき近さ。夢のような近さであって、ここまで近いとなると、その夢はもう悪夢に近い。
 実際、ホテルから徒歩2分の圏内で、「ライオンキング」も「ウィキッド」も「オペラの怪人」もやっている。タイムズスクエア至近のホテルを予約したんだから当然だが、そういう人気絶頂のミュージカル劇場を、ホテルの部屋の窓から全て見おろせるというシチュエーションは、こりゃやはりタダゴトではない。
 ではサトイモ里之丞は何のチケットを買ったかというに、諸君、「LUCKY GUY」である。「は?」「何でござる?」「ラッキーガイ?」。芝居に詳しくないカタガタは、キツネにつままれたような表情で固まってしまうか、「ラッキー貝」なり「ラッキー会」なりに取り違えて爆笑するか、ま、そんなところかもしれない。
ラッキーガイ1
(トム・ハンクス主演「ラッキーガイ」を見にいく)

 「ラッキー貝」。なかなかいいじゃないか。海岸で拾った幸運を呼ぶ小さなピンクの貝殻。または事故で死んじゃった叔父サンがくれた大きな巻貝の貝殻。どんなにつらい時もポケットの中で握りしめれば、優しい叔父サンのユーレイがニッコリ笑いながら助けにきてくれる。そういう芝居なら、マゴと一緒に見にいってもいいのぉ。
 「ラッキー会」ってのもいいね。35歳をすぎた独身男女だけが参加できる秘密の会。大都会の裏町の暗い一室で、木曜日の午後3時に集合。そんな中途半端な日の、中途半端な時刻に集合できるのは、あんまりマトモなオトナとは思えないが、どうしてどうして、集まってくるのは商社マン、高校教師、雑誌編集者など多彩な顔ぶれ。さて、そこでどんな会合が始まるかと言うと…
 うにゃにゃ、もちろんその先は教えてあげない。だって書いている今井君だって知らないのだ。朝7時に起きて、「さあて、今日もブログをアップしとかなきゃな」とノビをして、アクビをして、トイレに行って、いざ書きはじめたらテキトーに、あることないことブクブク湧き上がってくるんだから、仕方ないじゃないか。
チケット
(当日午前10時、チケットが奇跡的に手に入った)

 そこで、マジメにホンモノの芝居「ラッキーガイ」の話をすれば、主演トム・ハンクス、ナマでホンモノのトム・ハンクスが、目の前の舞台で躍動するのである。主人公は伝説の新聞記者マカラリー。ニューヨーク市警による性的暴行事件の取材でピューリツァー賞も受賞した実在の新聞記者だが、1998年に41歳で死去。クセのある人物である。
 そのマカラリーの半生を、新聞社内がタバコのケムリでむせかえるほどだった80年代から、すっかり喫煙者が減って空気のキレイになった90年代後半まで、ノスタルジックに描いていく。
 舞台に登場する電話も、黒電話からケータイへ。紙とペンの原稿は、重厚なパソコンからペラいラップトップへ。そういう小道具の変遷を巧みに使いつつ、マスコミの熱気が急速に冷めていった20世紀末、マカラリー世代が感じたどうしようもない寂しさを描いていくわけだ。
プラザホテル
(プラザ合意の「プラザホテル」は今日も健在だった)

 しかし諸君、観客は舞台で演じられる芝居の中身よりも、むしろ至近距離でトム・ハンクスを見られること、トム・ハンクスと同じ空気を呼吸し、同じ空間を共有し、同じ時間を過ごせることを楽しみにやってきたようである。
 アフリカ系やラテン系の観客は圧倒的に少なくて、客席は中高年の白人男女がほとんど。見渡せば、アジア系も今井君ぐらいのものである。なるほど、演じられる暴行事件では人種差別的な言辞が露骨に羅列されるから、脚本のせいとはいえ、若干の嫌悪感は覚悟しなければならない。
 56歳、すっかり落ち着いたオジサマになったトム・ハンクスであるが、舞台での存在感はさすが。もっとも、満員の客席の大半が「芝居じゃないて、トム・ハンクスを見に来た」という感じのヒトビトなんだから、存在感があるのも当然である。
スイセン
(プラザホテル前で。スイセンがキレイに咲いていた)

 かくいうサトイモ君は、何のアテもなしにニューヨークにきて、何のアテもなしに午前10時の劇場窓口を訪ねたら、思いもかけず「前から6列目」という驚くべき席が手に入った。
 800人ほどの劇場はカンペキに満員だったのだから、当日でもチケットが手に入ったのはまさに奇跡的。ラッキー貝でも握りしめていたか、もしくは今井君こそ「ラッキー会」の主宰者であるか、そのどちらかであるとしか考えられない。
 確かに6列目とは言っても席は一番左の端っこ。トム・ハンクスの右側半分しか見えなかったが、諸君、彼から半径20メートルの円の内側で2時間半を過ごせたというだけで、ミーハーなサトイモとしてはもう十分に感激である。
ラッキーガイ2
(開演20分前。まもなく超満員になった)

 翌々日の夜10時、芝居が終わった後のBROADHURST THEATRE前を、偶然サトイモ君が通りかかってみると(なぜ「通りかかった」のかはいずれ説明します)、ちょうどトム・ハンクスの出待ちのヒトビトが、黒山の人だかりを作っているところだった。
 劇場の警備員ばかりかNY市警の警察官まで道路に出て、物々しい規制を行なっている。うにゃにゃ、トム・ハンクスもたいへんだ。今後この芝居がロングランを続けることになれば、2年でも3年でもこういう出待ちの人だかりをかきわけて帰らなきゃいけない。
 やがてトム・ハンクスが姿を現すと、ヒトビトから一斉に「トウミー!! トウミー!! トウミー!!」の歓声が上がる。もちろんTomの愛称Tommyであるが、さすが欧米人集団、一瞬でみんなが声を合わせるのである。いかにもナイスガイな笑顔と態度で歓声に応えながら、トミーは横づけされた黒いワゴンに乗り込んで去っていった。
 いやはや、人気者もたいへんだ、ホントに2年でも3年でも同じことが続くのだ。劇場への出勤も同じ。芝居の中身も同じ、帰りの出待ちの風景も同じ。観客の雰囲気も若干変化するだろうし、いくらかアドリブも入れられるだろうけれども、本質的には数年間毎日毎晩同じことを繰り返さなきゃいけない。
出待ち
(出待ちのヒトビトの列の中、トミーが帰っていく。トミーの代わりに、お隣のオペラ座の怪人が写真に写ってくれた)

 もちろんそれはブロードウェイ俳優全員の宿命だ。「オペラ座の怪人」でも「ライオンキング」でも、いったん出演しはじめたら、3年、4年、5年でも10年でも、同じことを繰りかえなきゃいけない。「今日はイヤだ」とか「同じことの繰り返しで、もう吐きそうだ」とか、弱音を吐くことはできない。
「今日はライオンじゃなくてクマでいくかね」
「今夜は優しいサトイモっぽい怪人をやってみよっと」
というわけにはいかないのだ。
<br />タクシー
(今日も街はイエローキャブでいっぱいだ)

 ここでふと思い出すのが、代ゼミの冬期直前講習である。ボクチンは超人気講師♡のうちの1人だったから、同じ講座を1月の1ヶ月だけで18回繰り返したことがある。授業そのものならまだいいが、同じジョークを18回、同じ雑談を18回、同じボケを18回繰り返すと、10回目を過ぎたあたりから「もうイヤ」「もう吐きそう」と唸りたくなる。
 同じことは、他の講師の先生がたも感じていたようだ。講師室から授業に出かけるエレベーターの中は、その類いの愚痴で溢れた。
「オレなんかもう26回目ですよ。ホントもう吐きますよ、いい加減に。ははははははは」
「いいかー、オレはなー、もう20回もやってんだぁ、ぉー。つらいぜぇー、マジでぇー。ぉー、ふざけんな、ぉー♨」
「がははは、オレも15回目。がほほほ、たいへんだな、オレたち、ホント。がはは、がはははぁ」
 楽屋のトム・ハンクスが、エレベーターの今井君たちと同じでないことを祈るばかりである。今ごろオペラ座の怪人が楽屋で鏡を見ながら「おれ、もう吐きそう☂ 」と叫んでいたら、ブロードウェイに夢も希望もないじゃないか。

1E(Cd) Preston:BACH/ORGAN WORKS①
2E(Cd) Preston:BACH/ORGAN WORKS②
3E(Cd) Preston:BACH/ORGAN WORKS③
4E(Cd) Preston:BACH/ORGAN WORKS④
5E(Cd) Anne-Sophie Mutter:VIVALDI/DIE VIER JAHRESZEITEN
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