2013年02月03日(日)

Thu 130110 ベルギーの植民地支配とルワンダ 判然としない気分(ベルギー冬物語12)

テーマ:ブログ
 ベルギーを旅しながら、ふとこの国の評判の悪さを思い出す。豊かさへの嫉妬なのか、ほとんど罵詈雑言と言っていいほどの悪口を耳にすることも稀ではない。
 確かに、どの街へ行ってもインフラがしっかり整備され、中央駅も地下鉄も、「何でこんな小さな街に?」と驚くほど設備が整っている。ブリュッセル:人口110万。第2の都市アントワープ:人口50万。人口50万の都市の地下を頻繁に電車が走り、重厚なオペラ座もあり、中央駅前にはダイアモンド専門店が軒を並べている。
チョコレート店
(ブリュッセル繁華街のチョコレート屋さん)

 地図を開けばすぐに分かることだが、第1次世界大戦でも第2次世界大戦でも、この国の国土はまさに主戦場。まずドイツ軍が蹂躙し、後半からは連合国軍が駆け回った。17世紀から19世紀にかけ、フランスとドイツが戦争を始めるたびに、ベルギーはアルザス・ロレーヌとともに「とったりとられたり」の対象になった。
 スペインの圧政もあり、オランダからの圧力も続いた。大国に挟まれ、列強の苛政に苦しんだ。それなのに、英語帝国主義の21世紀にも他言語国家として生き残り、EU本部とNATO本部を擁する「ヨーロッパの首都」にのし上がった。嫉妬というより、むしろ尊敬の対象であって然るべきだとサトイモ君は愚考する。
本日のムール
(昨日1月15日夜は、再び「シェ・レオン」でムール貝。到着以来、対ムール4連勝。全勝街道を驀進中だ)

 ところが、ベルギーの評判はやっぱりあまり芳しくない。原因はどうも、かつてのアフリカでの植民地経営の失敗であるらしい。確かに、ベルギーがアフリカでやったことを1つ1つキチンと読んでいくと、「こりゃ、悪評がなかなか消えないのも仕方ないな」と感じる部分が少なくない。
 ベルギーの支配を受けたのは、コンゴとブルンジとルワンダである。今井君がまだ駿台で講師をしていた1994年、ルワンダ内戦が勃発した。多数派のフツ族が、もと支配階級の少数派ツチ族を大量虐殺した凄まじい内戦。100万人近くが虐殺されている。
ディアマンテ
(ダイアモンド専門店の並ぶアントワープ中央駅の地下鉄駅は、その名もDIAMANTである)

 その経過は、ドン・チードル主演の映画「ホテル・ルワンダ」にも描かれている。舞台になる「ホテル・ミル・コリン」は、サベナ・ベルギー航空が経営。ドン・チードルが演じるのは、このホテルのルセサバギナ支配人。絶体絶命のピンチに陥った彼が、決死の覚悟で救いの手を求める電話の相手が、ジャン・レノ演じるベルギーのテレンス社長である。
アントワープ駅
(1月16日、アントワープへ日帰りで旅行する)

 ルワンダ内戦の原因や経過を論じる能力は今井君にはない。しかし、ルワンダ全人口の10%以上が惨殺された内戦の原因を、駿台予備校のある世界史講師が、お昼休みの短い雑談の合間に、簡潔に要約してみせてくれたのを今でも記憶している。
 ベルギーは「遅れてやってきた帝国主義列強」である。自身の独立を獲得したのさえ、19世紀に入ってから。周囲はまさに列強だらけであって、その植民地戦争とアフリカ分割に加わるのが、欧米独立国の使命であるかのように錯覚してしまう。
 アフリカはすでに列強の間でパイの分割がほぼ完結。遅れてきた小国ベルギーに入り込む余地があるのは、コンゴ川上流の未開地域のみ。ここに探検家スタンレーを送り込んだレオポルド2世は、原住民を過酷な労働に駆り立て、ダイヤモンド・天然ゴム・銅・カカオなど、この地域の豊富な資源を根こそぎ搾取しようとする。
トラム
(アントワープのトラム。このトラムがそのまま地下鉄になって地下を走る。)

 遅れた焦りが、過酷さと苛烈さを呼び、原住民の虐殺は数百万人に及ぶ。ノルマを達成できなかった奴隷労働者は、その場で手首を切断された。こうして、未熟で拙劣で残酷な植民地経営によって、近現代のベルギーを支える資本を一気に蓄積。アントワープのダイヤモンド産業やチョコレート産業も、この激しい搾取の果ての繁栄にすぎない。
 ところが、自らの体力さえ不十分なベルギーは、第2次世界大戦が終結するや、アフリカからの撤退を開始する。元宗主国は元植民地の統治の安定にキチンと影響力を行使しなければならないが、他の欧米列強に比して、ベルギーとポルトガルの2国は自国の政治経済に安定と充実を欠いたせいで、元植民地にまで手が回らない。
 元ポルトガル植民地では、アンゴラ内戦。元ベルギー植民地は、コンゴ内戦、ブルンジ内戦、そして今度のルワンダでの大虐殺と、たくさんの悲惨な結果につながっている。自国の体力が不十分な国が植民地経営にのりだしたケースが、独立後の悲惨な状況を生み出しやすい。
駅舎
(アントワープ中央駅、その豪華さは、人口50万の地方都市とは思えない)

 以上が、1994年か1995年のある日のお昼休みに、駿台の世界史講師が話して聞かせてくれたルワンダ内戦への長い歴史である。諸君、予備校の講師室で暮らしていると、それだけでいろんな勉強になる。講師室での今井君は、黙って大人しく他の先生がたの話に耳を澄ませ、大学学部時代の不勉強の埋め合わせをしているのだ。
 あれからもう15年以上(というか20年近く)経過して、サトイモ男爵は今でもチャンとあの話を記憶している。だから、ベルギーの街を散歩していても、突然ふと暗澹たる気持ちにならざるを得ない。
アントワープ1
(中心街でも特に豪華な建物は、百貨店「INNO」である)

 チョコレート・ファウンテンから、ドロドロに融けたチョコレートが吹き上がっている光景。中世のオウチをデザインしたキレイな缶の中に並んだチョコレート。いかにも繊細なベルギー人らしく、マコトに丹念に織り上げられたレース飾り。これらの多くが、アフリカ奥地の人々を酷使した苛烈な支配の結果として蓄積されたものだとすれば、その前で暢気に自分撮り写真なんか撮ってはいられないじゃないか。
大聖堂
(アントワープ大聖堂)

 そして何と言っても、アントワープ中央駅前にズラリと並んだダイアモンド専門店。中央駅の真下にある地下鉄駅の駅名は、何と「DIAMANT」。東京なら大手町に該当する駅名が、「ダイアモンド」なのである。
 ダイアモンドの研磨と売買については、当然のようにユダヤの人々の逸話がたくさん登場してくる。シェイクスピア劇の中にさえ、いくらでも登場するユダヤの人々への罵詈雑言。20世紀半ばの言語を絶する惨劇からは、まだ約70年しか経過していない。
アントワープ2
(アントワープの名の由来は、アント「手」を、ワープ「投げる」。人間の勇者が巨人の手を切って投げた神話から。巨人のお手々のモニュメントがあった)

 こういうふうで、「今日はアントワープに日帰り旅行」と決めてはいたが、楽しいのか楽しくないのか、何だか判然としない気分である。「フランダースの犬」の街であるけれども、ネロとパトラッシュのお話だって、結末は余りに悲惨。スカッと楽しく、パシャパシャ自分撮りしてハシャぐ雰囲気のものではない。
 強烈な寒さにたじろいだこともあるが、この判然としない気分もまた、出発が遅れた原因である。結局ホテル・アミーゴ344号室を出たのは11時半過ぎ。すっかり仲良くなったハウス・キーピングのオバサマに、またまた「Thank you for the tips」と大きな声でお礼を言われ、苦笑しながら近くの地下鉄駅に急いだ。
お手々
(巨人のお手々と、今井君のお手々)

 「地下鉄」と言っても、実は3両編成のトラムが地下を走っているだけである。証券市場前の「Beurs」の駅から乗って3駅、5分もかからずにブリュッセル南駅に到着する。チケットの自動販売機はあるけれども、台数が非常に少ないし、普通のクレジットカードは使えないから、チャンと有人窓口で買ったほうが早い。
 イタリアやスペインの窓口と違って、ベルギー国鉄の係員は、旅行者のたどたどしい発音でも何とか聞き取ってあげようと、キチンと努力してくれる。言うべきことはカンタン、「アントワーペン、アレ・ルトゥール、スコンド・クラス」。つまり「アントワープ行き、往復、2等車で」である。
チケット
(ベルギー国鉄のキップ、ブリュッセル-アントワープ往復)

 昔はこれに「ノン・フュメール」つまり「禁煙席で」も言わなきゃいけなかったが、すでに全面禁煙がヨーロッパでも常識になった。ベルギー国鉄では、さらに「声高なおしゃべりも禁止」にしつつある。車内には口に大きなバンソーコーを貼ったポスターが掲示され、「車内が静かなら、そのほうが快適です」とある。
 荒涼とした雪景色の中を1時間弱、アントワープまで来ると、もうオランダ国境も近い。広大な港湾都市、ダイアモンドの街、ネロとパトラッシュと大聖堂の街。中央駅の豪華さにも、この街の豊かさが滲む。幸いなことに、眩しいほどの晴天である。すでに時刻は13時。16時半には暗くなってしまうから、チョイと急いで観光に回らなければならない。

1E(Cd) Kempe & Müncher:BEETHOVEN/SYMPHONY No.6
2E(Cd) Perlea & Bamberg:RIMSKY-KORSAKOV/SCHEHERAZADE
3E(Cd) Perlea & Bamberg:RIMSKY-KORSAKOV/SCHEHERAZADE
4E(Cd) Barenboim:MENDELSSOHN/LIEDER OHNE WORTE①
5E(Cd) Barenboim:MENDELSSOHN/LIEDER OHNE WORTE①
total m51 y51 d10246
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