2012年12月13日(木)

Mon 121119 リューデスハイムのスープ ここでもまた肉と格闘(ンラゼマ地球一周記29)

テーマ:ブログ
 9月11日、フランクフルトは軽い雨模様であるが、クマ蔵としては思い切ってリューデスハイムに出かけ、街をちょっと散策した後で、ライン河下りのお船に乗ってこようと思う。フランクフルト発午前10時半の電車に乗って、リューデスハイムにはお昼直前に到着した。
 「おお、なつかしい」というのが、サトイモ閣下の口をついて出た最初のコトバだった。2009年5月以来だから、もう3年半もご無沙汰しているのである。「なつかしい」「おひさしぶり」もいいところじゃないか。
 もっとも、リューデスハイムは完全な観光地。ニューヨークやパリやロンドンみたいにビジネスマンがビジネスで頻繁に訪れる街ではない。下手をすれば「一生に1回来るか来ないか」の田舎町であって、たった3年では「ご無沙汰!!」も何もあったものではない。「また来たのか?」と呆れられるほうが普通なのである。
ライン河
(曇天のライン河、リューデスハイム付近)

 3年前には、駅から5分ほどのカフェで、ドイツのオバーチャンがいかにも旨そうにスープを口に運んでいたのが印象的だった。冬が戻ってきたかのような冷たい風の日、それでもバーチャンは外のテーブルを1つ占領し、
「ふふふふ、こんなあったかくておいしいものを飲んでいるのは、この世の中でアタシだけだよ」
と、マコトに自慢げな表情であたりを睥睨していたのである。
 スープからはもうもうと湯気が上がり、バーチャンはその湯気の中にパンをちぎって投げ入れ、湯気でヒタイと鼻を温めてほんのり赤く染めながら、「だれにも、絶対、あげないよ」と全身で表現していたものである。
つぐみ横町入口
(つぐみ横丁への入り口。スープの店はこの辺りだった)

 あの日から、「いつか必ずリューデスハイムに戻ってきて、あのスープをバーチャンに負けないほど旨そうに食ってやる」というのがクマ蔵の人生の1つの目標になった。今日こそは、リベンジに千載一遇のチャンスと言っていい。電車を降りて街に向かったサトイモ閣下は、まず何としてもあの店を見つけようとひたすら目を凝らした。
 ちょうどいい。雨が降ったり止んだりで、あの日と同じように肌寒い。さすがに9月中旬では「手がかじかむほど」「耳がちぎれそうなほど」という寒さは期待できないが、熱いスープを「この世で一番旨い」と実感できるぐらいの肌寒さではあったのである。
つぐみ横町1
(リューデスハイム、つぐみ横丁)

 ところが諸君、マコトに残念なことに、「あの店」が開いていない。お休みなのか、閉店しちゃったのか、やる気がないのか、その辺は判断がつかないが、リューデスハイムの有名な「つぐみ横丁」の入り口に、店構えもそのまま、テーブルも椅子もそのまま残っている。しかし店主も店員も見当たらず、客の姿も皆無なのである。
 こりゃ、いかにも拍子抜けだ。「何としてもリベンジを」と心をメラメラ燃やし、あえて昼飯どきにクマのお腹をペコペコに減らしてきたというのに、ボクチンはいったいどうすればいいんだ? 熱いスープの湯気の中に冷えた鼻先を突っ込んで、ヤケドすれすれのスリルを味わおうという、素晴らしい意気込みをどうやって忘れろと言うんだ?
つぐみ横町2
(つぐみ横丁。このガラガラぶりがいい 1)

 失望のあまりの大きさに、サトイモ男爵は人生をほとんどここで全て投げ出してしまいたくなった。今すぐここにうずくまって、「もうどうでもいい、ここであの熱いスープに冷えた鼻先を突っ込めないなら、人生を今ここでヤメてもいい」、そう叫びだしたいぐらいだった。
 そのクマどんの心の叫びに対して、「何を大袈裟な」と冷笑だか失笑だか嘲笑だかするようなヤカラは、スープの本当の旨さも、人生の本質も、サッパリお分かりになっていらっしゃらないのだ。
 人生の喜びとは、スープなのである。旨いスープには、人生の本質が残らず溶け込んでいるのである。シワクチャのバーチャンがニタニタ頬笑みつつ、とろーりトロトロ鍋のスープをかき混ぜている姿を想像してみたまえ。そのスープの中に、人生のすべてが溶け込んでいるからこそ、バーチャンは耳まで避けそうな口をして笑っているのだ。
つぐみ横町3
(つぐみ横丁。このガラガラぶりがいい 2)

 しかし、「やむを得ないものはやむを得ない」である。スープへの欲望を否定された今井君は、絶望の中で仕方なくリューデスハイム「つぐみ横丁」をさまよい歩いた。
「あの店はダメだ。だって3年前、白ワインがすべて常温だった」
「あの店もダメだ。だって3年前、従業員のバーチャンが3人とも、恐ろしくなるほど無愛想だった」
「あの店もダメだ。だって3年前、お客が他に誰もいなくてヒョーロクダマ。しかもヒョーロクダマのボクチンに向かって、電子オルガンのボリュームをフルにして歌いまくったヤツがいた」
こうして、スープを否定されたクマどんは、逆に目に入るすべてを否定するのだった。いやはや、人生とはマコトに難しいものである。
つぐみ横町4
(生ジュース屋)

 ところが、ダメな人間になりかけた今井君の前に、救いの神が現れた。「リンゴ生ジュース、1杯0.7ユーロ」という貼り紙をした店である。「1杯」と言ってもごく小さなプラスチックのコップであるが、まあ試してみるのも悪くない。
 今井君がこういう観光地で酒でないものを飲むなんて、ホントに珍しいことであるが、これをグイッと1杯やってみると、不思議や不思議、今日の曇天のように暗く重苦しく曇った今井君の気分が、あっという間に明るく晴れ上がったのである。
サンドイッチ1
(ステーキ・サンドイッチ 1)

 ならば、この店で昼飯といこうじゃないか。確かに、旨いスープの出るような店ではない。立ち食いのファストフード屋。それもテーブルなし、椅子なし、カウンターのみである。
 しかし諸君、「ここは『富士そば』の一種なんだ」と自らに言い聞かせてみたまえ。「テーブルも椅子もない」などという些細なことへの不満なんか、ひとひらの春の雪のように儚く消えていくのである。
 リンゴ生ジュースを売っていたオニーサンにお願いして、ステーキ・サンドイッチを作ってもらうことにした。もちろん、それにビアも注文したが、目の前にある冷蔵庫から勝手に取り出して、勝手に栓を抜いて、ラッパ飲みにするのである。ラッパ飲みのビアは旨くないから、さっきリンゴジュースを飲んだプラスチックのコップに注いで飲むことにした。
サンドイッチ2
(ステーキ・サンドイッチ 2)

 3分待って姿を現したステーキ・サンドイッチは、丸パンを2つに輪切りにした真ん中に、ホンモノのステーキを1枚はさんだだけの豪快なシロモノ。ステーキにはナイフも何も入っていないから、本来ナイフとフォークで小さく切って食べるべきステーキを、歯とアゴの力で食いちぎって食べるという荒々しい趣向である。
 うにゃにゃ、この硬さは別世界だ。アゴの筋力でパンは噛み切れても、3cm厚の分厚いステーキが歯だけで噛み切れるわけがない。最初の一口でクマ蔵は目を白黒させることになった。
 日本独特の脂だらけの肉、「噛まなくても、口の中でトロッと融けちゃうね」「脂があまーいですね♡」「何だ、こりゃ?」の類いのヤワな肉なら噛み切れるだろうが、さすがにドイツ人が食べるドイツの肉は、根性も筋金入り。滅多なことじゃ噛み切れない。
サンドイッチ3
(ビアとステーキ・サンドイッチ)

 パンが噛み切れて、肉が噛み切れない。そういうサンドイッチを道具なし&口だけで食べようとすれば、その結果がどうなるか、諸君にもぜひ論理的に思考していただきたい。はい、その通り、パンの間から、お肉が1枚まんま、スポッと抜けてお出でになるのだ。
 スポッと抜けてきた肉を、落とさないように必死で口にくわえ、手に残ったパンで慌ててはさみ込み、外見だけは再びサンドイッチに見えるように戻す。それをまたガブッとくわえて、今度は横に、斜めに、下に、上に、考えられるあらゆる方向に力いっぱい引っ張って、何とか引きちぎろうと努力する。
サンドグマ
(サンドグマ)

 「引きちぎる」とはつまり、パンの間の肉本隊と、歯の間に捉えられた別動隊との間の緊密な連絡を絶つことである。悪戦苦闘と七転八倒の末、今井君は約15分かかってこのステーキ・サンドイッチ殲滅作戦に成功し、全てはクマの胃に収まった。おお、マコトにおめでたい。こういう熱い戦いを繰り広げるうちに、「勝手にとったビア」もカンタンにカラッポになっていた。
 さて、それではライン河下りのお船に向かうことにしよう。このお船も3年半ぶり。ライン河自体も3年半ぶり。秋の初めのライン河を、これから約3時間にわたって満喫してこようと思う。

1E(Cd) Barenboim & Berlin:LISZT/ダンテ交響曲
2E(Cd) Barenboim & Berlin:LISZT/ダンテ交響曲
37E(Cd) Barenboim & Berlin:LISZT/ダンテ交響曲
4E(Cd) Gradys Knight:JUST FOR YOU
5E(Cd) Gradys Knight:JUST FOR YOU
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