2012年09月02日(日)

Sun 120809 万年筆に関わる思い出 日記魔 話はミュンヘンへ(ミュンヘン滞在記1)

テーマ:ブログ
 今井君がまだ小学生か中学生の頃の話だから、日本はまだ鎖国のさなか、ペリーどんがやってきて「たった4ハイで夜も寝られず」になるまで、まだ相当の間がある時代である。家にあった雑誌をめくっていたら(おそらく「アサヒグラフ」、しかもおそらく「ミュンヘン・オリンピック特集」)、万年筆の広告が目に留まった。
 まだ今井君はコドモだから、自分の万年筆なんか持っていない。旺文社の雑誌「中1時代」か学研「中1コース」を年間予約すれば、付録で「プラチナ万年筆を1本もらえます」という特典がついてくる時代だったが、何しろ今井君の両親は控えめなヒトたちなので
「読みもしない学習雑誌なんかを1年分も予約するなんて、贅沢すぎる」
「付録の万年筆がほしくて、そんな贅沢をするなんて、ますます贅沢。というより、本末転倒だ」
と叱られ、「ボク専用の万年筆ゲット」の夢はあえなく散っていった。
ミュンヘンクマ1
(吠えるクマ君。ミュンヘンの博物館にて)

 しかも、厳しく叱られたのがたいへん心外である。だって、最初からボクチンは「年間予約したい」などとは一言も言わなかったのだ。第一、当時いくら流行していたといっても「中1時代」だの「中1コース」だの、雑誌の名前があまりに恥ずかしいじゃないか。
 コドモ時代にして、すでに今井君は生意気盛り。姉だったか先生だったか、とにかく幼い今井君にイヤな情報を吹き込む人たちが周囲にいて、「旺文社か。あれは駄目なんだ。秋田高校の先輩で、旺文社模試で全国1番になったのに、東大に落ちたヒトがいるぞ」とか、そういう話がすっかり頭の中を支配していたのである。
 だからコドモ時代の今井君には、「旺文社の雑誌を年間予約」≒「東大不合格」という、マコトにおかしな公式が定着してしまっていた。ついでにコグマ君には「東大が全て」と考える、これまた困った習慣があった。
ミュンヘンクマ2
(クマ君。何だか、短足だ)

 以上の事情から、「旺文社の雑誌を年間予約して、付録の万年筆で満足して、東大に合格できない道を一直線に歩み始めるなんて、愚の骨頂だ」と、ホントにコドモらしくない結論を導きだしていた。だから、ホントにホントにウソではなくて、そんな雑誌は絶対にイヤだったのである。
 しかし、家族の食卓では世間話が盛り上がる。
「あそこんちでも、あれを年間予約したそうだ」
「どこの子も、中学校に入れば年間予約するもんだそうだ」
「オマエも予約したいのか? 万年筆もらえるそうだぞ」
「そんな付録につられて、バカな人たちだ」
「まさかオマエもそんな愚かなヤツなのか?」
「贅沢はダメだ。愚の骨頂だ」
当時の今井家では「愚の骨頂」が流行語になっていたのである。
 慎重に態度を保留したまま、ダラしなくニヤニヤ&ニタニタしていたのが悪かった。父親としては、「ここが息子をたしなめるチャンスだ」「ここで叱責しないのは愚の骨頂だ」と判断したのだろう。「そんな贅沢は愚の骨頂だ!!」「みんなのマネをするのは愚の骨頂だ!!」と、息子が何も言わずにいるうちに勝手に激怒して、「ボクの万年筆」は夢の彼方へ消えた。
ミュンヘンクマ3
(クマ君。スゴく、短足だ)

 そういう日々のことである。「アサヒグラフ」をめくっていて、モンブランだったかパーカーだったか、お小遣いをどんなに貯めても絶対に手に入らない高級万年筆の写真が大きく出ている広告に目が止まったのは、致し方のないことである。
 広告コピーには、こうあった。
「この万年筆で記録していくに相応しい日々を送ることを、君に約束したい」
うにゃ、何だこりゃ? 私の記憶が確かならば、広告のストーリーは以下の通りである。
 長く付きあった友人から、1本の万年筆を贈られる。大学時代の友人なのだが、何かの事情があって、今後長いあいだ顔を合わせない運命にある。贈られた万年筆で、彼は早速その夜のうちに友人に礼状をしたためる。
 その手紙の締めくくりの文句が、この「君に約束したい」なのである。うにゃにゃ、な、な、何とカッコいい。コグマ君はこの一言にすっかり参ってしまい、意地でも万年筆を手に入れることを心に誓って、アサヒグラフを固く握りしめたものだった。
ミュンヘンクマ4
(かわいいクマ君)

 そして実際、わずかなお小遣いを貯め込んだ貯金をはたいて、街の文房具屋で1500円のプラチナ万年筆を手に入れた。忘れもしないが、秋田市立土崎小学校前にあった文房具屋「柴英」である。
 それを握りしめて中学校に行ってみると、友人たちもみんな同じのを持っていて、「何だ、オマエも年間予約組か?」と盛んに冷やかされた。しかし、違うのだ、ボクは「この万年筆で記録していくに相応しい日々を送ることを、君に約束したい」と考え、そのために無理してお小遣いをはたいたのだ。
 あの時以来、今井君は断続的ではあるが、強烈な日記魔である。あれからもう数百年の日々が流れたが、こうして延々とブログを書いている姿を目撃すれば、だれでも「おお、アイツは間違いなく日記魔だ」と納得してくれることと思う。
 その根幹が広告コピー「この万年筆で記録していくに相応しい日々を送ることを、君に約束したい」だというのだから恐れ入るが、子供時代の一言というのは、恐るべき影響を人間に与えるものなのだ。
なまず
(博物館入り口のナマズ君)

 しかし「記録していくに相応しい日々を送ることを君に約束」したとしても、実際の生活でそれを継続していくのはきわめて困難。何と言っても困難なのは、「君」に該当する人物の確保である。
 ヒトの多くは、成長するにしたがって限りなく弛緩していくものであって、こちらが「記録するに相応しい生活」みたいなものを継続しようとシャカリキになっても、当初「君」に設定した人物の生活は、マコトにだらしないテイタラクになっていく。
 「君」=「自分」という設定で万年筆を使い始めた場合が最も始末におえないので、自分の弛緩の日々を自ら確認する情けない作業に、あっという間に幻滅して「書くことがない」の一言とともに、万年筆は引き出しの奥に姿を消す。
 手紙のやりとりをする場合、相手方が弛緩すれば、当然こちらも弛緩する。ほとんどそれは弛緩合戦とも言うべきものであって、「こっちはこんなに堕落したぞ」「負けるもんか、こっちなんか、こんなに夢も希望もないぞ」「がははは、小次郎敗れたり。オレの弛緩にかなうものはあるまい。がはははは」という具合になる。
ミュンヘンホテル
(ミュンヘンで8泊した5つ星ホテル)

 こんなに長大なブログを4年半継続して、これがホントに間違いなく「記録するに相応しい日々」と言えるのかどうか、マコトに心もとない。特に予備校講師みたいな生活をしていると、やむを得ず「毎年同じ繰り返し」になって、1日生きることが1日進歩することになりにくいのが実際である。
 15年前の大学の同窓会で「今井の業界は、景気よくていいよな」「楽だろ、毎年同じ繰り返しなんだから」「しかし、むしろツラくないか? 毎年毎年、同じこと繰り返すんだろ?」と、ずいぶん冷やかされたことがある。今は全く違うけれども、当時としては「ん、まさにその通り」の感があった。
ツークスピッシェ
(ドイツ最高峰「ツークスピッシェ」に登頂)

 こうしてクマ蔵は、頻繁に旅行を繰り返すようになった。2005年から2012年まで、1年平均50日を欧米で過ごす。予備校関係に講演会で国内を飛び歩くのも平均で年間80日ほど。年間130日が旅なら、まさに「日々旅にして旅を住処とす」。自然にブログも旅の記録が増えて、曲がりなりにも「記録していくに相応しい日々を送ること」は達成できているかもしれない。
 こういうわけで、今日からしばらくの間は2011年5月下旬の「ミュンヘン滞在記」にお付き合いいただくことになる。
 5月18日から26日にかけて、10日足らずの短い旅ではあったが、ミュンヘンからザルツブルグやインスブルックに日帰り旅行したり、ドイツ最高峰ツークシュピッシェに登頂したり(ホントに「登頂」したのだ)、ハンガリー国境の街パッサウや、アルプスの街ガルミッシュ・パルテンキルヒェンを訪ねたり、マコトに充実した日々であった。

1E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER②
2E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER③
3E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER①
4E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER②
5E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER③
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