2012年08月31日(金)

Fri 120807 イスタンブール総復習 「昔ながら」が消えていく(イスタンブール紀行28)

テーマ:ブログ
 5月29日、ヴァレンス水道橋の遺跡から、スレイマン・ジャーミーに向かう。ちょうど水道橋を右に見て、水道橋と平行に東に進むことになる。このあたりの街は名門・イスタンブール大学の学生街であって、試験でも近いのか、学生たちがコピー屋の前に列を作っている。
 20世紀日本の学生が出席を怠けた授業のノートを仲間同士で融通しあったのは、今井君としてもマコトに懐かしい思い出である。「出席を怠けた授業」も何も、若き日の今井君は学部の授業にほとんど出席しなかったから、仲間たちから回ってくる授業ノートがもしもなかったら、期末試験も学年末試験も、全くどうにも対処の方法がなかった。
 もっとも、「授業にあまり出なかった」などというのは当時の日本の学生には珍しいことではなくて、日常的に雀荘に入り浸ってマージャンの日々、試験はマジメな女子学生のノートを借りて乗り切る、そういう自堕落な生活のほうがずっとカッコよく見えた。
ジャーミー
(イスタンブール総復習は、まずスレイマン・ジャーミー)

 若き日のクマ蔵どんは、周囲の多くが夢中になっているマージャンというゲームに全く関心がなかった。素直に「マージャン」と呼ばずに「中国語の自主ゼミ」とか、まあ今考えればマコトに恥ずかしい呼び方をしたものだが、みんなで「雀荘にシケ込む」友人たちを見送った後、今井君は一人寂しく池袋や高田馬場の映画館に向かったものである。
 Kuso-majimeに授業に出ている優等生諸君のことを皮肉に冷笑して、「たいへんだなあ、立身出世主義の諸君は。ボクが求めてるのは、そういう人生じゃないんだ」と、ウソブいて見せる。これもまた昭和フォークソング世代の特技。単に怠惰なだけの日々を、せめて自分だけでもホンのちょっとカッコよく感じていたい。そういう世代であった。
ヴァレンス水道橋
(まぢかから眺めたヴァレンス水道橋)

 つい1ヶ月半前、当時の仲間たちが4名、大阪・梅田のしゃぶしゃぶ店に集まった。あれから数十年経過しても、いまだに当時のクセは抜けないものである。話は、自分がどれほど仕事を怠けているかの自慢話から始まり、怠惰の自慢合戦はやがて数十年前の学生時代に飛び火した。
 学生時代、自分がどれほど誰にも負けない怠け者だったか、それがどれほど決定的に人生をダメにしたか。そういう話になると、今でも力こぶが入り、ヒタイに青筋が立って、「オレはそこだけは誰にも負けない」という奇妙な意地の張り合いになるのは、ホントに滑稽きわまりない情景といっていい。
ボスフォラス海峡
(スレイマン・ジャーミーからボスフォラス海峡を望む)

 では、21世紀の学生たちも、いまだにあんなことをやっているんだろうか。クマ蔵はよく知らないが、「教授が板書する」「学生が懸命に板書を写し取る」という、5000年にも6000年にも及ぶ人類の文明の伝統は、21世紀になってすっかり廃れてしまったような気がする。
 周囲の様子をうかがってみると、どうもそういう現象が起こりつつあるらしい。板書はパワポにかわり、ノートはコピーの代わりにメールであっという間に行き渡り、素朴な学生同士の無邪気なコミュニケーションは消滅しつつあるようだ。
ガラタ橋
(ガラタ橋の下には、昔ながらの飲食店が並ぶ)

 ところが今イスタンブールに来てみると、学生たちは今もなおコピー屋の前で談笑し、おそらくお互いの怠惰を皮肉りながら、つつきあったり蹴飛ばしあったりしている。会話の中には、「オレはこんなに怠けたんだ」「何だ、その程度か。それならオレのほうがずっと…」という昔ながらの文句が、テンプレートみたいに散りばめられているはずだ。
 イスタンブール総復習の今日になって今井君がこんなことを言うのは、トルコの素晴らしさが「昔ながらを残しながら」から生まれていることを強く感じるからである。急速なデジタル化もきっとスンバラシイことなんだろうが、「昔ながらを排斥しながら」というのでは、おそらく街からも国からも文化からも、筋の1本通った深い魅力は消えてしまうのだ。
 自分の怠惰を自慢しあう青年たち。これもたいへん微笑ましい、豊かな文明の一要素である。古代メソポタミアやエジプトの文学にも、そういう学生たちの逸話がたくさん残っているし、デカメロンやカンタベリー物語みたいなルネサンス文学でだって、怠け者の学生や坊さんの人生讃歌は欠かせない重要な要素である。
スレイマンジャーミー
(スレイマン・ジャーミー)

 総復習の一環として訪れたスレイマン・ジャーミーは、平日の午後のせいか、何だか閑散としていた。祈りに訪れたヒトの姿はほとんど見当たらない。欧米人観光客が十数名、固まって写真を撮っているばかりである。
 今井君は、滞在初日の金曜日、どこのモスクでも真っ黒に渦巻いて祈りを捧げていた男たちの様子が大好きだった。トルコの中年男たちの集団は、とにかく何だか真っ黒いイメージ。顔も浅黒いが、髪の毛もヒゲも真っ黒だ。特に豊かなオヒゲの黒々としていることと言ったら、クマ蔵なんかが付けいるスキは全く見当たらない。
 ところ、あの祈りの渦の中には、どうも若い男子諸君の占める比率が低いように思えたのだ。別に統計をとってみたわけじゃないが、若い世代の宗教離れでも進んでいやしないか。
 板書を律儀に写し取って勉強したり、それを怠けてフザケあったり、そういう愉快な世代の消滅と同時進行して、若者の宗教離れが安易に加速するようでは、それもまた困った事態である。
蛇口
(ジャーミー脇に、無人の蛇口がズラリと並ぶ)

 スレイマン・ジャーミーの横には水道の蛇口がズラリと並び、祈りに訪れる男たちを待ち受けている。この水道で、足と首と手をキレイに洗ってから、初めてジャーミーでの祈りが許される。何しろ「清潔は敬虔の半分」というほど清潔好きな宗教である。しかし平日のこの日、蛇口の前で水を流している男は皆無。クマ蔵が「昔ながらを残しながら」の危機を如実に感じるのは、こういう光景なのである。

1E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER①
2E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER②
3E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER③
4E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER④
5E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER①
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