2012年08月24日(金)

Tue 120731 映画を制作しませんか カドキョイ、運命の店(イスタンブール紀行22)

テーマ:ブログ
 5月26日夕暮れ、オスマン軍楽にすっかり勇気づけられたクマ蔵は、イスタンブールのアジア側・カドキョイの街に攻撃を開始した。エミノミュ港にはすでに日没の気配が迫り、金色に輝くマルマラ海の向こうの丘に、巨大なハギアソフィアが黒々とそそり立っていた。
 550年前、コンスタンティノープル陥落は5月29日。今日が26日だから、陥落は3日後である。西暦330年にローマ帝国首都と定められて1100年。その歴史がついに崩壊しようとする街の城壁の向こう側から、クマ蔵がたった今聴いてきたばかりのオスマン軍楽が、長く高く、不吉に響き渡っていたことだろう。
 僧侶も兵士も、役人も商人も、女と子供たちも、最後の砦になるはずのハギアソフィアに立てこもって、絶望的な祈りを捧げる。身分や貧富の差を超えて捧げる祈りは、ハギアソフィアの暗闇のドームと壁に、何度も何度も反響しつづけたことだろう。諸君、今こそYouTubeの出番だ。「東方教会聖歌」「晩禱」「徹夜禱」などをクリックしてみたまえ。
 その重々しい響きに、トルコ軍楽「ジェッディン・デデン」「エストラゴン城」を低い音量で重ねあわせてみれば、1453年5月26日のコンスタンティノープルを再現できるかもしれない。
夕暮れ1
(マルマラ海の夕陽)

 26日から29日に至る劇的な3日間を描く映画がないことが、クマ君は不思議でならない。たった3日でなくていい。5月19日からの10日間なら、なお一層ドラマティックだ。若い人々の奮闘を期待する。
 何も欧米の映画会社に任せて、指をくわえている必要はないじゃないか。日本の若い諸君が、企画も脚本も撮影もみんな陣頭指揮をとって、壮大な歴史映画を制作したら、今井君なんかはホントにスンバラシイと思うのだ。
 赤くライトアップされた地下宮殿の光景だって、映画にするなら十分効果があるはずだ。トルコ軍楽が響き渡り、城壁に向かって延々と放たれる大砲の重い響きも、地下宮殿を大きく揺るがしつづける。もう昼か夜か分からない。立てこもった人々の硬直した祈りの声だけがいつまでも反響する。ハリウッド映画お得意のシーンである。
夕暮れ2
(夕暮れのイスタンブール 1)

 一方のハギアソフィアでも、熱い祈りが続く。多くの人々がトルコ側に逃走したあとも、この街を守りたい一心でここに立てこもった熱狂的な信者たちである。彼ら彼女らの頭上から、灯明に照らされたキリストとマリアと大天使たちの瞳が光り、その表情はいっそう悲しげに変わっていく。
 この映画なら、ハリウッド的なヒーローやヒロインは必要ないんじゃないか。もちろん、スルタンに強いられてやむなく戦うトルコ兵と、何よりもFreedomを優先し、自由な選択を経て死地に突き進むコンスタンティノープルの人々を対照させてもいい。主人公にFreedomを讃える演説でもさせれば、「アレクサンダー」「ブレイブハート」に匹敵するアメリカ人の大好きな映画に仕上がっていく。
夕暮れ3
(夕暮れのイスタンブール 2)

 コンスタンティノープルをエルサレムに代えれば、7~8年前の「キングダム・オブ・ヘブン」とほぼ同じストーリー構成になる。追いつめられたエルサレム市民に向かって主演・オーランド・ブルームが大演説するシーンは、コンスタンティノープルを死守しようとするヒーロー的僧侶を創作すれば、そのままの台本で使えるほどだ。
 もちろん、エルサレム攻略を目指すイスラムの英雄サラディンに該当する人物を、オスマン軍の中にも1名設定しなければならない。マコトに残念なことに、実際のオスマン軍の中には、欧米人に大人気のサラディン並みの大英雄は存在しなかったようである。そのことが、攻略後の大殺戮につながってしまった。
トルコ語のみ
(カドキョイ。トルコ語のみの世界がここから始まる)

 そういう妄想をしながら、エミノミュからカドキョイまで20分、夕陽が金色に輝く海をずっと眺めていた。カドキョイへはこれで2回目。ウスキュダルを合わせると、アジア側への小旅行はもう3回目になる。日本人旅行者としては、もう十分に中級者の域に達している。
 カドキョイ埠頭前の大きな交差点をわたり、イスタンブール独特の雑踏を踏みわけ、あの店この店の誘惑を踏みこえ、ついに今井君は運命の店BALIKCIMにたどり着いた。「ネヴィザーデより、だいぶ歴史が浅いな」と感じさせる、清潔な居酒屋通りの一角である。
店の雰囲気
(こんな店に入った)

 断っておくが、たとえ今井君が「運命の店」と言ったって、「絶品の料理が目白押し」「隠れた名店を発見」「イスタンブールの新しいmust」などということは一切あり得ない。
 HPもあるみたいだから、ググってみてもOK。ただし、諸君の口から「何だこりゃ?」「もっといい店に行けばいいじゃん」「何で、こんな店を『運命の店』だなんて言うの?」「おかしくない?」という、罵声に近い驚きの声が上がることは必定。だって、実際にその程度の店なのだ。
 しかし諸君、「その程度の店」を→「運命の店」と感じることは、人間に与えられた最も貴重な基本的権利の1つである。「店」を「男」や「女」に言い換えれば、「運命の男」「運命の女」とは、他人の目から見れば「何でその程度の男が『運命の男』なの?」であることが驚くほど多い。
店のお手拭き
(カドキョイ「BALIKCIM」のお手拭き)

 彼女の友人たちの女子会で「何であのコはあんな男と?」と罵声を浴びる男こそ、ホントにホントにマギレもなく、彼女の運命の男。どんなに短足あるいは胴長であろうと、どんなに遠大でstupidな夢ばかり語るフヤケタ青年であっても、彼女にとって運命の男であることを変えるのは不可能である。
 男女を入れ替えても話は全く同じであって、「何であんな女と?」と、どれほど友人たちが憤っても、本人が夢中なら友人たちにはどうすることも出来ない。それでも「どうにか別れさせようと努力するのが親友だ」という面倒な御仁は、要するに傲慢であるに過ぎない。
いわし料理
(注文したイワシ料理)

 再び話を「男女の出会い」から「店と客の出会い」に戻せば、今井君にとってあの日のBALIKCIMは、「何であんなヤツと?」的な運命の店なのであった。
 メニューを手渡され、半信半疑でテーブルについた時、まだ店内はガラガラ。だって、まだ午後5時だ。トルコでも南ヨーロッパでも、マトモな人のディナータイムは午後8時から。5時なんていうのは、まだランチタイムが完全に終わるか終わらないかの瀬戸際に過ぎない。
 こんな時間に入店してきて「ビアと、ワインと、イワシ料理」などというのは、日本人の表六玉か、日本グマ・イマテクぐらいのものである。「あと、スゴく辛いエズメもください」「エズメ、とりあえず2皿ください」、そういうバカげた注文にキチンキチンと応えてくれるのも、表六玉しか入店しないヒマな時間帯だからこそのことだったかもしれない。
エズメ
(きょうもまた辛い辛いエズメ)

 諸君、すぐにやってきたイワシ料理は、小さなアンチョビを30匹ぐらい、鍋の熱いアブラの中にヒトツカミ放り込んで、1分ほどジュワジュワ揚げただけのシロモノ。しかもこのアンチョビ、ガラタ橋の上で一般の釣り人が釣っていたヤツと全く同じだ。要するに、きっとこのあたりの海で従業員の誰かが釣ってきたアンチョビを揚げただけなのだ。
 トルコまで飛行機代を払って飛んできて、日本人はおろか東アジアの人の人影が全く絶え、欧米人旅行者すらほとんど見当たらない街まではるばる船でやってきて、こんなアンチョビの揚げ物を食べて満足する。ホントにバカなクマである。しかしあの日の今井君は「これこそ運命だ」と絶叫するほどに嬉しかったのである。
ワイン
(カドキョイで飲んだ白ワイン)

 ワインは、今井君に注文されてから始めて、店中の人々が事態に気づいて大慌てし始める。「いま注文を受けた『ワイン』というのは、いったい何のことなんだ?」というぐらいの慌て方である。
 まず、店の中を探して「そんなものは、存在しない」と気づく。まず、注文を受けた若者が叱られる。「何故『ナイヨ』と言わなかったんだ?」ということである。しかし、いったん注文を受けてしまったものを、今さら「ナイヨ」なんて言えないじゃないか。
 すると、「酒屋で買ってこい!!」という指令が飛ぶ。一番若いウェイターが走って、早速1本の白ワインをぶら下げて帰ってくる。しかしそれをそのまま出したんじゃ店のプライドに関わるから、隣だか、隣の隣の店だかに「同じ銘柄で、冷えてるのはないか?」と掛けあってみる。
ワイン拡大図
(ついに出てきた白ワイン、拡大図)

 こうして、ついに今井君のテーブルに「しっかり冷えた白ワイン」が登場。ウェイターがもったいぶった手つきでシュポンと開けてみせ、ティッシュで飾りの栓をつくってボトルに差し込んでくれる。「どうだ、これで満足だろう?」「旨いか?」「旨いだろう?」というワケである。
 どうだい、これでもこの店を「運命の店」と見定める眼力がないヒトは、まだまだ若すぎるのだ。または、自分を過大評価する幼稚な傲慢から、まだ抜け出していないんじゃないか。

1E(Cd) SPANISH MUSIC FROM THE 16th CENTURY
2E(Cd) The Scholars baroque Ensemble:PURCELL/THE FAIRY QUEEN 1/2
3E(Cd) The Scholars baroque Ensemble:PURCELL/THE FAIRY QUEEN 2/2
4E(Cd) Corboz & Lausanne:MONTEVERDI/ORFEO 1/2
5E(Cd) Corboz & Lausanne:MONTEVERDI/ORFEO 2/2
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