2012年06月07日(木)

Mon 120514 ウィンダミアへ ヒースの群生 パッとしない(スコットランド周遊記10)

テーマ:ブログ
 8月31日朝、リバプールを出発して、鉄道で湖水地方ウィンダミアを目指す。たった一晩お世話になっただけのHOPE STREET HOTELを9時にチェックアウト。フロントにマネジャーが出てきて会計を見せ、「カピーシ?」と笑顔で尋ねてくれた。イタリア語の2人称で「わかった?」「OK?」である。うーん、なかなかいいホテルだった。
 「ええっ、リバプールはたった1日なの?」「マンチェスターとかバーミンガムは?」という読者の驚きは当然であるし、正直言ってクマ蔵自身も少なからず残念なのであるが、そこはそれ、「また来ればいい」「そのうち『ウェールズ2週間』でも企画して、その時ついでに立ち寄る手もある」である。
 タクシーでライムストリート駅へ。ここがリバプールの中央駅であって、まずマンチェスターに向かい、マンチェスターで乗り換えてイングランドを北上。さらにオクセンホルムで支線に乗り換えて、ウィンダミアまで3時間ほどかかる。
ライムストリート
(リバプール ライムストリート駅)

 電車は意外なほど混雑している。マンチェスターまではそれほどでもなかったが、マンチェスターで乗り換えてから1時間ほどは、座る席が見つからないどころか、立っている場所も確保できない。大きな荷物をかかえて、こりゃなかなかたいへんだ。
 乗客の行き先は、みんな同じ湖水地方である。今日で8月は終わるが、まだバカンスは続く。ただしバカンスと言っても「明日から9月」の声を聞けば、さすがにバカンスも小規模にならざるを得ない。「今からサルデーニャ」「今からシチリア1ヶ月」「これからたっぷりカプリ島」というワクワク感はない。
 憧れのコモ湖でも、情熱のマジョルカ島でも、9月になれば「そろそろ店じまい」の雰囲気になる。実際、貸別荘の並ぶマッジョーレ湖畔のストレーザなんかでは、9月10日を過ぎると人の姿がメッキリ減って、「そろそろ仕事に戻ったら?」とせき立てられているようなムードに変わる。
オックスフォードロード
(マンチェスター オックスフォードロード駅)

 朝晩の風がヒンヤリして上着が必要なぐらいになると、さすがにもう「イタリアのバカンスを満喫」な気分は消えて、パブやレストランでくつろぐ中年男性の顔も「あーあ、今年の夏は終わりか」「さてと、そろそろ仕事かね」という、つらい悲嘆の表情が支配的になっていく。
 この段階になれば、「残り少ないバカンスの名残を近場で楽しむ」という未練タップリな選択肢しか残っていない。ロンドンから近場を探せば、ごく自然に湖水地方という結論になるわけだ。
 重く曇った空から常に霧雨が降り注ぎ、レインコートや防寒具が手放せない。何ともさえない近場バカンスだが、過ぎ行く夏の名残を惜しむということなら、やむを得ないものはやむを得ない。
 9月の軽井沢で冷たい雨に濡れ、寒さに震えながら温泉が恋しくてたまらず、「そろそろ冬眠前のクマがエサを求めて里に降りてくるんじゃないか?」と冗談で励ましあいながらながら、ホカホカ焼き芋とかポクポク焼き栗で暖まる。そういう悲しく短いバカンスとソックリである。
電車
(北へ向かう電車)

 だから、ウィンダミアに向かう満員電車の中も寂しいムードに支配されている。「こんなことなら、家でノンビリして仕事に備えたほうがよかった」というイヤな気分は、日本の中年オジサンたちとちっとも変わらない。
 今井君がやっと席に座れたのは、ウィンダミアまで残り2駅か3駅のオクセンホルムからであった。車窓には、濃いピンクの花をつけた背の高い雑草が目立つようになった。線路に沿って延々とピンクの花が続いているかと思えば、雨に濡れた向こう側の丘陵全体がピンクに染まっていたりする。これがヒースである。
 今度の旅に出る前に、E.ブロンテ「嵐が丘」を読み返してきたから、「おお、これがヒースか」「これがヒースクリフのヒースか」と声を上げそうになる。くすんだピンクが冷たい雨に濡れて荒々しい。「荒々しいピンク」などというものは、8月末から9月にかけて、ミゾレまじりの雨に濡れたヒースの群生を見た者でなければ、理解できないかもしれない。
オールドイングランド
(ウィンダミア湖畔 宿泊先のOLD ENGLAND)

 なお、正直に白状しておけば、今井クマ蔵はヒースを初めて見た時、「おお、ムシトリナデシコだ」と、間違った判断を下していた。ムシトリナデシコは、セイタカアワダチソウと同様の「帰化植物」であって、日本では鉄道沿線に群生していることが多い。
 小学生の今井君は国鉄奥羽本線のそばの国鉄社宅で育ったが、社宅の庭にもムシトリナデシコのピンクの花が群生していた。茎のところどころから茶色の粘液を出し、主にアリを粘液で捉えて補食する食虫植物である。ヒースよりずっと背が低いが、この日のクマ蔵はヒースを見て、「おお、さすがにヨーロッパ種は背が高いのう」と感激の涙にむせんでいたりした。
部屋からの眺め
(OLD ENGLANDの部屋からウィンダミア湖を望む)

 ウィンダミアもまた冷たい雨である。「どこまでいってもパッとしないのが、今回の旅のコンセプト」と、さすがの今井君もあきらめ気味。まあいいじゃないか。「ダブリン、ウィンダミア、エジンバラと旅したんですがね。夏なのに、毎日毎晩冷たい雨で、傘と防寒具が手放せませんでしたよ。がは、がはははは」という土産話には十分だ。
 宿泊先のOLD ENGLANDに行ってみると、フロントで「部屋の用意がまだ出来ておりません」と告げられた。仕方ないので雨の中を散歩に出た。目の前にウィンダミア湖。たくさんの水鳥が、雨に打たれて首を振りながら固まっている。
水鳥たち
(湖畔を占拠した水鳥たち)

 さすが近場のバカンスであって、犬を連れた人が多い。大きい犬もいれば、いわゆる座敷犬もいるが、大小に関わらず犬たちは水鳥の群れに怯え、尻込みしたり激しく吠えたりしている。ネコなら身の程知らずに鳥に襲いかかって撃退されるところだが、犬はさすがに賢いので、白鳥たちやカモたちの翼やくちばしの手ゴワさを熟知しているようである。
 湖畔の適当なレストランで昼飯を済ませ、15時にホテルに戻ってみると、また「部屋の支度がまだ出来ておりません」という。14時にチェックインできるはずなので、フロントクラークにそのことを指摘すると、ニヤッと笑ってゴマカしてしまった。うにゃにゃ、こういうのは、クマ蔵の一番許しがたい態度でござるよ。
適当なレストラン
(湖畔のレストラン)

 再び仕方なく、ホテル内のレストランで「アフタヌーンティー」というのをやってみることにする。何しろここはアフタヌーンティーの本場だ。上品な熟年イギリス人夫妻の後ろ姿に感激しながら、雨に煙るウィンダミア湖を一望できるテーブルを選んだ。
 運ばれてきた「ティー」はクマ蔵の度肝を抜くのに十分でござった。まず、フルーツ/サンドウィッチ/ケーキが山盛りの3段重ね。大量のジャムとクリーム。ハーブティー、紅茶、シャンペン、ついでに赤ワイン。これで20ポンドである。まあ、3000円。それなりのオカネは払わされるが、「晩飯前にこんなに食べちゃって、大丈夫?」という分量だ。
上品な老夫婦
(アフタヌーンティーの上品な老夫婦)

 16時半、さすがにもう我慢できなくなって「まだチェックインできませんか?」と強面でフロントに詰め寄った。さっきのニヤニヤクラークが「まだです。お部屋の準備ができません」とまたニヤニヤする。ここに至って、クマ蔵は断固とした抗議に踏み切ることにした。
 Confirmationには「14時チェックイン」と明記されている。私は①14時に1回目 ②15時に2回目 ③16時半に3回目のチェックインを申し出た。それなのにまだ部屋の準備ができないと言う。しかもアナタはニヤニヤしている。おかしいんじゃないか。この抗議は当然のものである。
 今井君の脇でもう1人、たいへん上品なイギリス人中年オバサマが、血相をかえて抗議している。「これは納得できない」「いったい何時に部屋に入れるんだ」「こんなことじゃ困ります」、上品なクウィーンズ・イングリッシュだけれども、表情は相当ヒートアップしている。
めとめと料理
(ランチのメトメト料理)

 そこへ、ニヤニヤ男性クラークの上司と思われる中年女性クラークが登場。見ると、目に涙を溜めて、ニヤニヤどんを厳しく叱責している。どうやらハウスキーピングのメンバーが足りなくて、清掃が全然追いつかないらしい。
 大人数の団体ツアーが何かワガママを言って、突然たくさんのレイトチェックアウトが出たりすれば、こういうことが起こりやすい。エレベーターのドアが盛んに開いたり閉まったり、ハウスキーピングも切迫した表情で、かなり慌てて作業しているようだ。
 結局17時過ぎまで待って、ようやくチェックインの運びとなった。抗議していた上品なイギリス人オバサマもやっと気持ちが収まった様子。外が雨でさえなければ、ゆっくり散歩を楽しんで時間を潰す余裕もあるが、この冷たい雨では狭いロビーにチェックインを待つ人があふれ、どうしようもない。
 いやはや、もともとパッとしない旅が、この1件でますますパッとしなくなってなった。「パッとしなさ」に磨きがかかり、「パッとしなさ」が旅のアイデンティティにかわる。ニャンとも困った旅である。

1E(Cd) Goldberg & Lupu:SCHUBERT/MUSIC FOR VIOLIN & PIANO 2/2
2E(Cd) Wand & Berliner:SCHUBERT/SYMPHONY No.8 & No.9 1/2
3E(Cd) Wand & Berliner:SCHUBERT/SYMPHONY No.8 & No.9 2/2
4E(Cd) Alban Berg:SCHUBERT/STRING QUARTETS 12 & 15
5E(Cd) Richter & Borodin Quartet:SCHUBERT/”TROUT” “WANDERER”
total m65 y712 d8607
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