2012年05月29日(火)

Fri 120504 ケルトの虎からPIGSへ シューカツに来たみたい(スコットランド周遊記4)

テーマ:ブログ
 ダブリン→リバプール→ウィンダミア→エジンバラ→ロンドンと回る今回のイギリス大周遊旅行は、こんなふうに(スミマセン、昨日の続きです)何とも盛り上がらない始まり方をした。
 ダブリン滞在2日目になっても、空はいつまでも重苦しい低い曇天。5~6階以上の建物のない背の低い街は、重い曇天と霧雨に頭を抑えつけられたようにうなだれてばかり。意気軒昂とした光景はなかなか見つからない。
 リフィ河は冷たく黒く澱んで、どちらに向かって流れているのかも分からない。だいたい、ガイドブックに写真を掲載されている建物が、ダブリン城と2つの教会以外は①税関 ②中央郵便局 ③銀行 ④刑務所 ⑤市庁舎 ⑥裁判所 ⑦大学というのでは、これはどう見ても異常事態である。
裁判所フォーコーツ
(1802年建築の裁判所 フォーコーツ)

 道ゆく人々もまた同様に意気が上がらない。傘をさしたり閉じたり、防寒具を羽織ったり脱いだり、そういうことの繰り返しに疲れたように見える。鉄道の中央駅を訪ねても、「さあこれから旅立つぞ」という華やぎはない。キップの自動販売機が散在し、人々は地味な近郊区間の行き来に懸命のようである。
 この15年、「奇跡」とさえ呼ばれる経済成長を経験し、異様に明るい夢を見させられた分、かえってこの国の人々の今の落胆は大きいのかもしれない。長い間「安価な労働力の供給元」と揶揄され、うなだれて生きるのが当たり前になっていた国民が、いきなりゴボウ抜きでヨーロッパの先頭に立った瞬間があったのだ。
クライストチャーチ1
(クライストチャーチ大聖堂 1)

 ポルトガルみたいに、1500年代初頭に全盛期を迎え、その後500年間にわたって延々と右肩下がりを続けてきた国は、やはり落胆への免疫力が違うのかもしれない。リスボンの人々は落胆に肉体的に慣れ、成長の空しさを十数世代にわたって熟知してしまったようである。
 その諦めの寂しげな微笑は、すでにリスボンの街の風景にさえ定着して、リスボンの風景と叙情の不可欠の構成要素とさえ感じられる。500年の落胆、500年の失望、確かに成長も夢も大西洋の波に侵食されるように崩れ、融解して元の形すら不分明になっていく。
券売機
(キップの自動販売機 タラ・ストリート駅で)

 長い失望を祖父から父へ、父から息子へと語り継げば、その侘しさは街や国を特徴づける叙情に変わる。同じような落胆と失望の定着をヨーロッパ各地で目にする。バルセロナは、サグラダファミリア周辺の異様な喧噪を別とすれば、街の本質はリスボンと同質の寂しく長い衰退である。
 ナポリもミラノも、マドリードもイスタンブールも、歴史の細部に違いはあっても、事情の本質はほぼ等質と言っていい。落胆と失望の長い連続の中で、日本人や中国人の団体ツアーが時ならぬ喧噪を巻き起こしているのが、ますます深い悲しみをかき立てる。
近郊電車
(リフィ河をわたる近郊電車)

 フィレンツェとヴェネツィアは、その落日が余りにも急速だった分、返って人々は落胆や失望に侵されることが少なかった。急速すぎて人々が没落に気づくヒマさえなかったのかもしれない。叙情の遊園地のように見事に生き残ったこの2都市については、むしろその意味で幸運な没落だったのだ。
クライストチャーチ2
(クライストチャーチ大聖堂 2)

 では、ダブリンはどうだったのだろう。アイルランドがイングランドに対して政治的軍事的に優位に立っていた時期は、1000年近い昔の短い一時期だけである。その後1000年にわたる抑圧の歴史は、余りにも長い。
 それだけに、1995年から2007年まで「ケルトの虎」と持ち上げられ、10%を超える経済成長を10年以上にわたって維持し続けたとき、国民の夢があまりにも大きく膨張してしまったのは仕方のないことである。1人あたり所得がEU内で第2位。1位はルクセンブルグだというのだから、実質1位と言っていい急成長だった。
パブメニュー
(パブメニュー)

 ところが2009年からは一気にPIGSの一員に数え上げられるところまで急降下。PIGSとは、ポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペイン。誰に説明されなくとも、経済・金融・財政の自力回復困難な国々の総称であることはわかる。今井クマ蔵がダブリンにいたのは、ケルトの虎からPIGSメンバーへの急激な凋落の真っ最中だったのだ。
 10年余りの間に見た夢を、眠りから覚めないうちに無惨に剥ぎ取られ、「オマエはツマラン夢をみていたのだ」「1000年の抑圧を考えてみろ。虎だなんて、そんな夢を見るほうが悪い」と宣告された国民の真っただ中に立って、「どうもこの国もこの街もパッとしないな」と、今井君は子供みたいにムクれていたわけだ。
パブ1
(パブの人々 1)

 ま、仕方ないじゃないか。クマ蔵は経済学者でも何でもない。経済学にマトモに触れたのは、大学の経済学の授業が最後である。伊達邦春教授「理論経済学」。田中駒男教授「農業経済学」。あとは一般教養の上原一男教授「経済学」。うーん、こんなんで2009年からのアイルランド経済学の凋落を予測できたら、誰も苦労なんかしない。
 だって諸君、立派な経済学部もあるはずの駒沢大学だって、巨額損失を理由にパリバ証券を提訴したりする、そういう難しい世の中だ。経済なんか、世界一の専門家だって予測は不能。「1番じゃなきゃダメなんでしょうか、2番じゃダメなんですか?」のスーパーコンピュータがシミュレーションしてもおそらくダメなものを、愚かなクマ蔵なんかが予測できるはずがない。
パブ2
(パブの人々 2)

 しかし、滞在2日目の夕暮れになっても、人々の手には「Aer Lingus経営危機」の大きな見出しのある新聞が握られていた。その大見出しも、アイルランド独特の緑色。セント・パトリックの影響力だけは何百年経過しても変わらないのである。
 うにゃにゃ、それにしても気分が盛り上がらないから、明日は思い切って遠出することにする。もっとも、「遠出」と言ってみても、アイルランドでは遠出の目的地がなかなか見つからない。困り果てたあげく「キルデア」という町を発見した。
オニールズ外観
(パブ「O'Neill's」外観)

 キルデアは、ダブリンから近郊電車で西に30分あまり。町のシンボル・聖ブリジッド大聖堂は、もともと木材で立てられた教会を1223年にノルマン人が立て替えたもの。おお、何だか今回初めて観光らしい観光ができそうだ。
 だって諸君、繰り返しておくが、ダブリンの2日目は、①税関 ②中央郵便局 ③銀行 ④刑務所 ⑤市庁舎 ⑥裁判所。大学は4日目の楽しみにとっておくとしても、何だかこれではエリート志向な法学部生の就職活動みたいじゃないか。クマどんはわざわざダブリンにシューカツに来たんじゃないでござるよ。
中はガラガラだ
(パブは、外の席が人気。中はガラガラだ)

 明日のキルデア行きを決めて、久しぶりにクマどんは明るい気分で眠ることにした。聖ブリジッド大聖堂には「高さ33m、アイルランドで2番目の高さを誇るラウンドタワー」がある。キルデアの町と広々とした農業地帯を塔の上から眺めて、明日こそ爽快な1日にしようと思う。

1E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES⑥
2E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES①
3E(Cd) Eschenbach:MOZART/KLAVIERSONTEN③
4E(Cd) Eschenbach:MOZART/KLAVIERSONTEN④
5E(Cd) Eschenbach:MOZART/KLAVIERSONTEN②
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