2012年05月27日(日)

Wed 120502 アイルランドについて知っていたわずかな事柄(スコットランド周遊記2)

テーマ:ブログ
 アイルランドについて今井君はほとんど何も知らないのである。知っていることとしては
 (1) ペティ著「アイアランドの政治的解剖」(岩波文庫)
 (2) ジョイス「ダブリン市民」(新潮文庫)
 (3) 作家たち:ベケット、スウィフト、バーナード・ショウなど
 (4) 90年代からの奇跡的経済発展と、その挫折
以上4点である。だから、アイルランド滞在はたったの4日。普段の外国旅行が1都市滞在14日を標準にしていることから考えれば、何だかアイルランドに恨みでもあるかのようである。
夕暮れのダブリン
(ウェストベリーホテルから見た夕暮れのダブリン)

 (1)については、中学3年の頃の今井君の勇み足と言うか、「いかにも中学生」なバカげた夢の残骸である。だって、何で中3生が「アイアランドの政治的解剖」なんかを書店で手にすると思うかね? 何か、きわめてバカバカしい夢なり、中学生独特の実行不可能な計画表の存在を感じないかね?
 医者が書いた経済学の古典である。「政治算術」だったか、まるで肉体解剖を行うかのようにアイアランドを冷徹に解剖してみせる。「冷徹に」という副詞をつけて論じられるが、所詮は「算術」であって、足し算引き算や一覧表の域を出ない。
 21世紀の経済学はすでに超高等数学の一領域に進化して、サミュエルソン時代のように一般人や学部生の理解できるシロモノではなくなってしまったが、政治算術は17世紀イングランドが起源。経済学も政治学もたいへんノドカな時代であった。
ダブリン市街
(ダブリン市街)

 ただし、「アイアランドの政治的解剖」の結論は、あまりにも残酷。中学生のころの読書体験だから今井君の記憶もたいへんおぼろげだが、ヒトをヒトとも思わない発言までたくさん含まれていたように記憶する。ま、ここでは書かずに置いたほうが賢明だろう。とっくに絶版だから、興味のあるヒトは図書館でどうぞ。
 それでは、松川七郎訳のこの白帯の岩波文庫が、なぜ中3の今井君の関心を引き寄せたのだろう。だって諸君、アイルランドではなくて、「アイアランド」でござるよ。現地の発音にどこまでも忠実であろうとした、この古色蒼然としたタイトルを見る限り、中3生の関心をそそるようなものは何もないじゃないか。
 当時の中学生用の地図帳では、アイルランドの下に必ず(エール)と記されてあって、この国がカッコ付きの(エール)という別称を持っていることは知っていた。しかしアイアランドだなんて。いや、実際には2つめのアが小さくなって「アイァランド」だったはずだ。うーん、何となくカッコ悪いでござるね。
税関
(ダブリン税関)

 で、大恥を忍んで告白すれば、15歳春の今井君は「これから大学学部を卒業するまでの8年間で岩波文庫を全て読破してやろう」というバカげた夢を居抱いたのだ。文学だけじゃなくて、経済も政治も、哲学も古典も宗教も、残らず全巻である。うにゃにゃ、いいよ、いいよ、バカにしたまえ。でも、あの時今井君はホントに本気だったのだ。
 では、どう読むか。ジャンル別? 哲学や経済は難しいだろうから、まずは文学から? ま、マトモなヒトならそう考えるのである。ところが当時の今井君はあんまり学校の成績が良いものだから、少々頭のネジが狂っている。「ボクチンみたいな天才がそんな譲歩をするのは怠慢に過ぎない」と、トイレの中でふと思いついたりする。
中央郵便局
(ダブリン中央郵便局)

 だいたい、同じジャンルのものを延々と読み続けるのは、相当な勤勉と忍耐力が必要だ。「ボクチンに欠けているのは、忍耐力と持久力だ」と当時のコグマ君は考えた。実際、一番苦手なのはマラソン。マラソンと言っても5kmぐらいの長距離走だが、どうしても我慢ができない。
 だからどうしても各ジャンルをあちこちツマミ食いしながら、楽しく計画を実行したい。そこで思いついたのは「索引順」「あいうえお順」という恐るべき方法である。本屋の店先で岩波文庫目録を無料でもらえた時代だ。文庫目録を手に「よおし、あいうえお順で読んでいくぞ」と決意のコブシを握りしめた。
 というわけで「アイアランドの政治的解剖」から始めざるを得なくなった。あいうえお順で「あいあ」とくれば、そりゃ一番に決まっている。中3の6月のことである。ここから始めて、大学4年の秋頃に「わらべうた」「妾(ワラワ)の一生涯」で締めくくる。何ともバカげた壮大な読書生活の開始となった。
 ついでに書いておけば、もちろんそんな百科事典みたいな読書生活を継続できるわけがない。万が一継続できていたとすれば、そのほうが気色悪いじゃないか。計画は3~4冊進んだところであえなく挫折。この挫折を経て、今井君も少しはマトモな読書ができる少年に成長した。
リフィ
(ダブリン、リフィ川の風景)

 アイァランドに最初の一歩を印したクマ蔵の脳裏に、まずそのオソロシイ記憶が去来した。諸君、こりゃキツい。中学生時代の記憶など、オトナになったら間違っても蘇らせてはならないもののようだ。
 ダブリンの街を散歩してみると、霧まじりの冷たい強風が吹き荒れて、「これがホントに8月末なのか?」と呆然とするほどの寒さである。幸いセーターを1枚荷物に入れてきたから、これからの2週間はずっとこのセーターのお世話になりそうだ。
夜明けのダブリン
(ウェストベリーホテルから見た夜明けのダブリン)

 (2)(3)に示した通り、アイルランドがたくさんの文学者を排出したことも今井君は知っている。ホテルの裏には劇場が並んだ通りがあって、さすがダブリンは文学と演劇の都でもあるのである。
 早稲田大学1年の時、大内義一教授「西洋文学」という講座を受講した。確か火曜日2時間目、3号館401教室。春から夏にかけては200人ほど収容の大教室が満員だった。
 東京大学から不合格を言い渡され、政治学なんかちっとも興味がない。そのクセ、「次に偏差値の高いのはココ」というだけの理由で政治学科に入学した。そういう学生たちにとって、「西洋文学」という講座タイトルはそれだけで魅力的だった。
 大内教授が彼の古ぼけたノートをゆっくりと読み上げ、学生たちはそれを懸命に筆写する。それだけの授業である。19世紀的と言ってもいいほどの古色蒼然とした講義だが、ジョイス、ベケット、アイリス・マードックを1学期で論じ終えた。
 2学期がどうなったか、今井君は知らない。授業をみんなサボって、早稲田松竹とか池袋文芸坐で安い映画でも見ているほうが、ずっと楽しくなってしまったからである。諸君、学部生の頃の思い出というのも、オトナになってから考えると気絶するほど恥ずかしいものだったりする。
劇場
(ダブリンで発見した劇場)

 (4)については、奇跡的成長の光の部分は、2009年夏の段階でもうほとんど感じられない。 曇天の下、冷たい霧まじりの強風が吹き荒れる寂しい街を歩いていると、どの建物も黒ずんで低く、みんなウナダレて最近の重い挫折を噛みしめているように見える。
 2000年代に入った直後、アイルランドの国民一人当たりの所得は、ドイツ・フランス・イギリスのそれを凌駕していた(間違ってたらスミマセン)。欧米各国の巨大企業の支社・支店・工場の多くがダブリンとその近郊に集まり、ヨーロッパ中のどの国よりも活気に満ちあふれていたはずなのである。
シチューを食べた店周辺
(最初の夜に入った店付近の風景)

 うにゃ。滞在最初の夜の夕食は、劇場街の裏のパブに入って有名な「アイリッシュ・シチュー」とギネスビールを注文した。階段で地下に降りていく薄暗い店である。
 アイリッシュ・シチューはすぐに来た。ジャガイモとニンジンとタマネギと鶏肉をじっくり煮込んだ温かいシチューは、冷たい風にすっかり冷えてしまったクマとして、これ以上嬉しいものはないぐらい旨かった。
 このシチューの悪口を言うなら言えばいい。確かにアイリッシュ・シチューの味は小学校の給食の味である。何もこんな遠くまで飛行機を乗り継いで、15時間もかけて食べにくるほどのものではないかもしれない。
 しかしこの味は、「8月なのにこんなに寒い」「夏の盛りの雨に身体が濡れてすっかり冷えてしまった」という暗い衝撃の中で食べなければ、価値が分かるものではない。世に言う「おふくろの味」とか、給食のこの上ない旨さというのは、レシピとか料理人の腕とかの問題ではなくて、食べる者の置かれた環境と心境の問題なのである。

1E(Cd) Eschenbach:MOZART/KLAVIERSONTEN①
2E(Cd) Eschenbach:MOZART/KLAVIERSONTEN②
3E(Cd) Eschenbach:MOZART/KLAVIERSONTEN③
4E(Cd) Eschenbach:MOZART/KLAVIERSONTEN①
5E(Cd) Eschenbach:MOZART/KLAVIERSONTEN②
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